懲戒請求の申立てがあれば対象弁護士は弁護士会に弁明書(答弁書)を提出しなければなりません。懲戒請求は97%が棄却になりますが、懲戒書を審査する弁護士会綱紀委員会は対象弁護士の弁護士としての資質、能力等を見る場でもあります。やるならやってみろという態度の弁護士もいるようですが、弁明書は懲戒請求者にも郵送されます。
2021年10月18日
第二東京弁護士会綱紀委員会 御中
第1 本件懲戒請求について
「懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする」との議決を求める。
第2 本件懲戒請求事由について
1 本件懲戒請求事由の内容
本件懲戒請求事由は,対象弁護士が,秩父鉄道の鉄道地内に立ち入り他の複数の鉄道ファンとともに線路を横切った行為(以下,「本件行為」という。) は,職務基本規程第6条,同37条に違反し,弁護士の非行に該当するというものである。
2 職務基本規程について
(1)職務基本規程第37条について
職務基本規程第37条は「事件の処理に当たり,必要な法令の調査を怠ってはならない」との規定であるが,本件行為は個人的活動中のものであり,「事件の処理」とは無関係である。よって,本件行為は,同条に該当しない。
(2)職務基本規程第6条について
職務基本規程第6条は「弁護士は、名誉を重んじ、信用を維持するとともに、廉潔を保持し、常に品位を高めるように努める」との規定であるが,同条は努力義務規定であり,本条に違反したからといって直ちに懲戒の対象になるものではない。
本件行為は,私的な行為が軽微な法違反とされたものであり,後記のように懲戒事由に該当しない。
3 弁護士法第56条について
(1) 「品位を失うべき非行」について
弁護士法第56条は、「弁護士及び弁護士法人は,この法律(外国法事務弁護士法人の使用人である弁護士にあっては、この法律又は外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法)又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連 合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があったときは、懲戒を受ける。」との規定 であり,職務基本規程第6条に違反する程度が高く、弁護士法第56条に定める「品位を失うべき非行」と認められる場合に初めて、当該行為が懲戒の対象 となるものである。弁護士の私的な行為については、その行為が重大な法違反行為である場合にのみ「品位を失うべき非行」に該当する可能性がある。
(2) 本件行為の具体的内容
本件行為は、2020(令和2)年11月3日、対象弁護士が休日を利用して趣味の鉄道写真を撮影するため、長瀞町内の秩父鉄道の線路(以下「本件現場」という。)を横断したという行為である。本件現場は、国道140 号線から 秩父鉄道の線路まで人の踏み跡により道ができており、線路手前の側溝にはコンクリートの渡し板がかけられていた。線路の向かい側には苗木と思われる樹木の植わった畑が広がっており、すでに線路を渡っていた者が複数名いた。対象弁護士は、本件現場を通行可能な箇所であると認識し、列車が接近していない時間帯に、約1秒程度で渡ったものである。
(3) その他の事実
本件行為については、本年9月16日、軽犯罪法違反及び鉄道営業法違反としてさいたま地方検察庁熊谷支部に書類送致されたが、同月30日付で不起訴処分とされた。(軽犯罪法1条32号「入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入った者」,鉄道営業法37条「停車場其ノ他鉄道地内 に妄ニ立入リタル者ハ科料ニ処ス」。) 対象弁護士は、本件行為について軽率な行為だったと深く反省し、今後は行わないことを誓約している。 このほか、本件行為は本件現場の状況から対象弁護士が通行可能と認識して列車が接近していない時間帯にわずか1秒程度で通過した極めて軽微な事案であること、対象弁護士は自らSNSで事実を公表し謝罪していること等に照らすと,本件行為は弁護士法第56条の定める「品位を失うべき非行」には該当しない。
4 結 論
以上のとおり,本件行為は懲戒事由に該当せず,他に対象弁護士について、弁護士として品位を失うべき非行があると認められる事実はない。
以 上
鉄道写真の撮影目的で秩父鉄道(本社・埼玉県熊谷市)の敷地に無断で立ち入ったとして、埼玉県警が今月中旬、共産党の山添拓参院議員(36)を鉄道営業法違反(鉄道地内立ち入り)容疑で書類送検していたことが、関係者への取材で分かった。関係者によると、山添氏は昨年11月3日午前、同県長瀞町の秩父鉄道の線路内に許可なく立ち入った疑い。この日は電気機関車を臨時運転するイベントが開かれ、県警が鉄道ファンの悪質行為を警戒していた。山添氏は他の複数の鉄道ファンとともに線路を横切るなどしたという。山添氏は18日、読売新聞の電話取材に応じ、「線路を渡ったということは事実であって、軽率な行為だったと反省している。今後、そうしたことはしない」と話す一方、「通行可能な道だと勘違いをしていた」と説明。「その場所は近所の人たちに踏み固められた形跡があって、道になっていた」ためだという。「電車が通っていない時に渡ったが、横断禁止だということがわかれば渡らなかった」とも述べた。 山添氏は弁護士として活動した後、2016年の参院選に東京選挙区から出馬し、初当選した。党東京都委員会のホームページなどでは、鉄道ファンの中でも特に写真撮影が好きな「撮り鉄」と自己紹介している。
引用 読売新聞https://www.yomiuri.co.jp/national/20210918-OYT1T50252/
山添拓 登録番号 45357 第二東京弁護士会
山添拓法律事務所 東京都新宿区四谷1-4 四谷駅前ビル2階