当 事 者
1 夫 (1審原告夫)
2 妻 (1審被告妻N)
3 M弁護士 不貞行為の相手 第二東京弁護士会 登録番号266×× 懲戒処分歴2回 国会近くの法律事務所の代表
4 1審被告IN 最初の妻の不貞行為の相手 原告と和解成立
(別件の訴訟)
日弁連会長、第二東京弁護士会会長とM弁護士に対し損害賠償を求めた裁判、まもなく判決が下される予定です。
元はひとつの裁判でしたが妻への裁判が分離され先に高裁判決が下されました、文中のM弁護士は国会議事堂近くに事務所を構えるキャリア約22年の二弁でも実力派の弁護士、住まいは南青山のタワーマンション36階で月額家賃100万円だそうです。真っ赤なポルシェとアストンマーチン2台を所有、独身、弁護士はキャリア20年過ぎれば、これくらいは普通に稼ぐという証か?
妻が1審被告INと不貞行為をしたと夫に訴えられた訴訟で、今度は妻が自分の代理人と関係を持った。妻の代理人がM弁護士、離婚も決まっていない状態でM弁護士のタワマンに同居した。
そもそも弁護士が依頼者とできちゃっていいのか!?
恋多き妻と南青山のタワマンに住み真っ赤なポルシェを乗り回す独身、ボス弁・・・
ドラマになりそうですね。! 💛
令和4年7月20日判決言渡 同日判決原本領収 裁判所書記官 令和3年(ネ)第5012号 損害賠償請求控訴事件(原審・横浜地方裁判所●●支部令和元年(ワ)第375号) 口頭弁論終結日 令和4年5月18日
控訴人兼被控訴人 第1審原告 夫 (以下「1審原告」という。) (1審原告夫)
被控訴人兼控訴人 第1審被告妻 N (以下「1審被告Nという。) (1審被告妻N)
主 文
1 ・1審被告Nの控訴に基づき、原判決を次のとおり変更する。
(1) 1審被告妻Nは、1審原告夫に対し、352万円及びうち 100万円に対する平成30年9月26日から、うち252万円に対する令和2年2月21日から各支払済みまで年 5分の割合による金員を支払え。
(2) 1審原告のその余の請求を棄却する。 1審原告夫の控訴を却下する。
3 訴訟費用は、第1、2審を通じて、これを2分し、その1を1審原告夫の、その余を1審被告妻Nの負担とする。
4 この判決は、第1項(1)に限り、仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
1 1審原告夫
(1) 原判決を次のとおり変更する。
(2) 1審被告妻Nは、1審原告に対し、402万円及びうち150万円に対する平成30年9月26日から、うち252万円に対する令和2年2月21日 . から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 1審被告妻N
(1) 原判決を次のとおり変更する。
(2) 1審原告の1審被告妻Nに対する請求をいずれも棄却する。
第2 事案の概要 (以下、略称は、新たに定義しない限り、原判決の例による。)
1 本件は、原審において、夫である1審原告が、「妻である1審被告N及び 原審相被告IN(以下「1審被告IN」ということがある。)に対し、両名の不貞行為及び1審被告INの脅迫により精神的苦痛を受けたなどと主張して、不法行為に基づき、損害賠償金330万円(慰謝料300万円、調査費用 30万円)及びこれに対する損害発生後の日である平成29年9月30日から 支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。) 所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めるとともに、
2 1審被告Nに対し、1審被告Nと原審において1審被告妻Nの訴訟代理人弁護士であった訴外M(以下「M弁護士」ということがある。)との不貞行為により精神的苦痛を受けたと主張して、不法行為に基づき、損害賠償金440万円(慰謝料400万円、調査費用及び弁護士費用40万円)及びこれに対する
損害発生後の日である平成30年9月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、さらに、
3 1審被告妻Nに対し、1 審原告夫は1審被告Nの委託を受けて1審被告妻Nの奨学金返還債務を連帯保証し、1審被告Nに代わって奨学金252万円を弁済したと主張して、委託を受けた保証人の求償権に基づき、求償金252万円及びこれに対する弁済日 である令和2年2月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅 延損害金の支払を求めた事案である。
3 原審は、1審原告夫の前記11の損害賠償請求について、1審被告妻N及び1審被告INに対し慰謝料100万円及びこれに対する平成29年11月10日 から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で認 容しその余を棄却し、前記12の損害賠償請求について、1審被告妻Nに対 し、慰謝料150万円及びこれに対する平成30年9月26日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却し、前記13の求償金請求について、1審被告妻Nに対し求償金252万円及びこれに対する令和2年2月21日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却した。
そこで、1審原告夫が原判決の1審原告敗訴部分の一部を不服として控訴し、1審被告N及び1審被告INが、原判決の各自の敗訴部分全部を不服としてそれぞれ控訴した。
1審原告は、当審において、前記11の損害賠償請求について、請求額を200万円(慰謝料100万円、調査費用100万円)に減額するとともに遅延損害金の起算日を平成29年11月10日に変更するとの請求の減縮をし、前延前に 記12の損害賠償請求について、請求額を150万円(慰謝料150万円)に 減額するとの請求の減縮をし、前記13の求償金請求について、遅延損害金の起算日を令和2年2月21日に変更するとの請求の減縮をし(いずれも減縮部 分につき訴えの一部取下げ)、1審被告妻N及び1審被告Iは、これに同意した
その後、当審において、1審原告夫と1審被告妻N及び1審被告INとの間に おいて、前記11の損害賠償請求(ただし、上記請求の減縮後のもの)について訴訟上の和解が成立した。その結果、当審における審判の対象は、1審原告の1審被告妻Nに対する前 記12の損害賠償請求(ただし、上記請求の減縮後のもの)及び前記13の求償金請求(ただし、上記請求の減縮後のもの)となった。
3 「前提事実」及び「争点及び争点に対する当事者の主張の要旨」は、原判決を以下のとおり補正し、当審における当事者の補充主張を後記4のとおり付加 するほかは、原判決「事実及び理由」第2の2並びに 3(2)及び(3)に記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決2頁21行目の「二女」の次に「(以下、長女と二女を併せて「子ら」ということがある。)」を加える。
(2) 原判決3頁1行目冒頭から同頁14行目末尾までを以下のとおり改める。
「ア1審被告妻Nは、平成29年11月末頃、横浜家庭裁判所●●支部に対し、1審原告夫を相手方として婚姻費用分担調停及び夫婦関係調整(離婚 調停の申立てをし、1審原告夫は、平成30年に入って、同支部に対し、夫婦同居調停の申立てをした(以下、上記各調停をそれぞれ「別件婚姻費用分担調停」、「別件離婚調停」「別件同居調停」といい、これらを併せて「別件家事調停」という。)(甲33)。
別件離婚調停は、平成30年10月4日、不成立で終了し、別件婚姻費用分担調停及び別件同居調停は、いずれも審判に移行し(同支部平成30年(家)第425号婚姻費用分担申立事件、同第426号夫婦同居申立事件。以下、両事件を併せて「別件家事審判事件」ということがある。)、
同支部は、平成31年1月31日、別件家事審判事件について、1審被告妻N及び1審原告の各申立てをいずれも却下する決定をした(甲1、33)。
(イ) 1審原告及び1審被告妻Nは、前記アの決定を不服としてそれぞれ抗告 したが(東京高等裁判所平成31年(ラ)第430号)、東京高等裁判所は、各抗告をいずれも棄却した(甲4)。」 (3) 原判決3頁16行目の「離婚訴訟」を「離婚等を請求する訴訟」に、同頁19行目の「同訴訟では」を「同支部は、別件離婚訴訟について」に、同頁20行目の「棄却判決が出された」を「被告妻Nの請求をいずれも棄却する判決をした」に、同頁23行目の「令和2年3月13日」を「令和2年2月13日」にそれぞれ改める。
(4) 原判決13頁4行目の「(2)」を「(1)」に改める。 (5) 原判決15頁2行目から同頁 21行目の「被告妻Nに」までを以下のとおり改める。
ウ 損害
1審原告は、1審被告妻NとM弁護士との不貞行為により、精神的苦痛を受け、うつ病が悪化した。また、子らも上記不貞行為により精神的 苦痛を受け(甲30、31)、それを見た1審原告の精神的苦痛も増加した。これらの1審原告の精神的苦痛に対する慰謝料は150万円を下らない。
(1審被告妻Nの主張)
ア 1審原告夫と1審被告妻Nとの婚姻関係は、以下のとおり、平成29年2月26日に夫婦としての信頼、絆が完全に切れ、回復の見込みがない 状態に至り、破綻したから、その後に1審被告妻NがM弁護士と交際し 同棲をした行為は、1審原告に対する不法行為を構成しない。
(ア) 1審原告夫は、婚姻後、1審被告妻Nに発覚しただけでも、池袋や神戸の風俗店で不貞行為に及び、また、強度の精神病である社会不安障害に起因するストレスから、1審被告妻Nや主に二女に暴力暴言を常習的に浴びせるなどし、性格の不一致もあったので、1審被告妻Nは 遅くとも平成29年2月26日までに離婚を決意した(丙1)。
(イ) 1審原告夫は、同居中、1審被告妻Nに家計管理を許さず、1審被告妻Nは、別居資金が全くなかったので、まずは家庭内で別居してアルバイトなどで資金を貯めることにした。.
(ウ) 1審被告妻Nは、平成29年2月26日以降、1審原告夫と食事も休日も共にせず、性的関係も持たず、極力会わないようにして、家庭内別居を始めた(丙1)。
1審原告夫は、平成29年2月27日、1審被告妻Nに対し、LIN Eで、「止めないから夜働け」、「努力しないクズなんだからクズら しいセイカツヲしろ」、「俺の金で生きようとするな」、「親はクズ」 等、1審被告妻Nを侮辱するメッセージを送信したため(丙2)、婚姻関係の破綻は決定的となった。 付1審原告も、1審被告妻Nが、家事を行わなくなったこと、家族との行動を怠りがちになったこと、1審原告夫との会話を拒んでいたこと、 長女の部屋で寝るようになり、性的関係がなくなったこと等の事実を 認めている(丙3、4)。
イ 仮に、平成29年2月26日時点での婚姻関係の破綻が認められないとしても、以下の事情から、1審原告夫も自認するとおり、遅くとも同年 9月30日(本件別居時)には、婚姻関係は破綻していた。
(ア)本件別居後、1審原告夫は、1審被告妻Nに対し、婚姻費用を全く支払わず、同居の条件として400万円の支払を求めた(丙5)。
(イ) 1審原告夫は、本件別居後、1審被告妻Nに対し、「何もしないと思って無礼な態度を取っているんでしょ?人を馬鹿にするのもいい加減 にした方がいいよ。後悔するのは自分だよ。」、「今後はパートも学校も全部やめる覚悟をもって、無視してね。」、「ここでやることはない、とかは無しね。地獄はあなたが選んだ道なんだから。」(丙6) と脅迫的なメッセージを送信する等、婚姻関係継続のための努力を一切していない。
ウ 1審被告妻Nに判決16頁2行目冒頭から同頁3行目末尾までを以下のとおり改める。
「(2) 求償金請求の可否」
(7) 原判決16頁17行目の「令和2年2月20日」を「令和2年2月21日」 に、同17頁2行目の「求償債権行使」を「求償権行使」にそれぞれ改める。
4 当審における当事者の補充主張
(1審原告夫の主張)
(1) 争点(1) (1審被告妻とM弁護士との不貞行為の有無等・損害)について
ア 別件家事審判事件の抗告審は、1審原告夫と1審被告妻Nとの婚姻関係に ついて平成30年9月30日の本件別居後の破綻を認めたが(甲4)、この破綻は、同居義務(民法752条)の存否を判断する上で認められた軽度の破綻にすぎない。また、別件離婚訴訟の控訴審は、離婚原因である婚抵関係破綻の時期を、1審原告が本件訴訟を提起した頃(令和元年8月1 5日頃)と判断した(甲33)。したがって、婚姻関係の破綻の時期に関する上記抗告審及び控訴審の各判断は、1審被告妻NとM弁護士との不貞行為の開始時期である平成30年8月頃当時、1審原告と1審被告妻Nと の婚姻関係は破綻していなかったとする1審原告の主張及びこれを採用した本件の原審の判断と矛盾しない。.
イ (ア)1審原告が1審被告妻Nに対しLINEのメッセージにより帰宅を促したのは、平成29年11月9日が最後であるが、これは、この頃から 1審被告妻Nが1審原告夫からのLINEのメッセージに応じなくなったためである。1審原告夫は、その後も、別件同居調停の申立てをして1審被告妻Nの帰宅を促し、別件家事調停の手続において提出した主張書面(甲87)により婚姻関係の修復を求める心情を伝えたり、別件離婚訴訟において提出した陳述書(甲34)に、1審被告妻Nの帰宅を待つ心情を記載したりして、婚姻関係修復の努力を続けていた。
(イ) 1審原告夫は別件家事調停の手続において、主位的に、1審被告妻Nの離婚請求を承諾しない旨を主張していた。1審原告夫がこれらの調停手続において提出した陳述書に離婚条件の記載があるのは、調停委員から離婚を拒否する場合でも離婚条件を提出するように指示されたため、予備的に記載したにすぎない。
(ウ) 1審原告が自宅を売却したのは、うつ病の症状が出ていたため、仕事を続けることができなくなると考えたからであって、婚姻関係とは関係がない。また、自宅売却の際に1審被告妻Nの荷物の一部を廃棄したのは、転居先の収納スペースの都合上やむを得ず行ったものであって、婚姻関係の修復をあきらめたからではない。
1審原告夫は、本件訴状において、1審被告妻Nと1審被告INが少なくとも平成29年9月には不貞関係にあり、同月30日に1審被告妻Nが本件別居をしたことで、1審原告夫と1審被告妻Nの婚姻関係が破綻した旨を記載した。しかしながら、1審原告夫は、その後、上記記載の内容が自らの認識とは異なる不正確なものであったことから、令和元年11 月20日付けの訴えの変更申立書をもって、上記記載を改め、平成29年9月30日に1審被告妻Nは本件別居をし、将来、婚姻関係が破綻する蓋然性が著しく高まった旨を主張した。したがって、1審原告夫は、原審において、1審被告妻Nと1審被告INとの不貞関係によって婚姻関係が破綻したとは主張していない。
(2) 争点(2) (求償金請求の可否)について
本件奨学金返還債務は、1審被告妻Nの固有の債務であって、財産分与による清算の対象とはならないし、仮に1審被告妻Nの固有の債務ではないとしても、財産分与の基準日には、1審被告妻Nの1審原告に対する求償金支払債務は発生していないから、いずれにせよ、財産分与による清算の対象にはならない。
また、1審原告は、1審被告妻Nの1審原告に対する求償金支払債務について、財産分与により清算することを承諾していない。1審被告妻Nが引用する1審原告夫の平成30年9月30日付け主張書面(4)(丙10)は、不成立となった調停の手続で提出されたものであり、同書面に記載された意思表示には効力がない。
(1審被告妻Nの主張)
(1) 争点(1)
1審被告妻NとM弁護士との不貞行為の有無等・損害)について
ア(ア) 原審は、1審被告妻Nが、遅くとも平成29年9月13日頃には1審被告INと性的関係を持ち、同月30日の本件別居後も、平成30年8 月頃まで不貞関係を続けた事実を認定したにもかかわらず、平成29年9月30日から平成30年8月までの婚姻関係の状況を考慮することなく、上記不貞行為によって婚姻関係が破綻したとまでは認められないとして、1審被告妻NとM弁護士との平成30年8月以降の不貞行為の存在を前提に、上記不貞行為が不法行為を構成すると判断しており、その認定判断には、審理不尽、理由不事実誤認の違法がある。
(イ) 別件家事審判事件の第1審及び抗告審は、1審原告と1審被告妻Nと の婚姻関係は、1審原告夫と1審被告INとの不貞関係によって本件別居の日である平成29年9月30日に破綻したと認定して、1審被告妻Nには同日以降、1審原告夫との同居義務はないと判断し、この判断は確定している。1審被告妻Nによる悪意の遺棄、同居協力扶助義務違反を認 めた原審の判断は、上記の別件家事審判事件についてされた確定した判断に反するものであり、誤りである。
イ 1審原告と1審被告妻Nとの婚姻関係は、以下のアないし(かのとおり、 平成30年8月以前に、1審被告妻Nと1審被告INとの不貞行為及び本件別居などが原因となって、既に破綻していた。一方、1審被告妻NとM弁護士が交際及び同居を始めた時期は、平成30年9月以降であるから、 1審被告妻Nには、M弁護士との交際及び同居について、1審原告に対す る損害賠償責任は生じない。
(7) 1審原告夫は、平成29年12月以降、婚姻関係の修復のための努力をしていない。1審原告夫がLINEのメッセージ等により1審被告妻Nに対し帰宅を促したのは、同年11月9日が最後である。その後のLIN Eのメッセージの内容は、1審被告妻Nを問責したり、関係修復をあきらめた心情をうかがわせたりするものにすぎない。1審原告夫が平成30 年2月8日付けでした別件同居調停の申立ても、1審被告妻Nに対し、同居をする中で行動を反省し償うことを望むというものであり、婚姻関係の修復のためのものではない。
(イ) 1審原告夫は、平成30年5月24日、別件家事調停の手続において提出した陳述書(丙5、9)の中で、1審被告妻Nと1審被告INが不貞関係にある旨を記載するとともに、1審被告妻Nに対し、離婚についての和解案を提案しており、婚姻関係の破綻を認識していた。
(ウ) 1審原告夫は、平成30年9月27日、自宅を売却して、自宅内の1審被告妻Nの荷物を全て廃棄処分しており、1審被告妻Nとの婚姻関係が 破綻していることを認識し、婚姻関係の修復をあきらめていた。
(工) 1審原告夫は、婚姻関係破綻の原因は1審被告妻Nと1審被告INとの不貞及び本件別居にあり、平成30年9月以降の1審被告妻NとM弁護士との同棲は婚姻関係破綻の原因ではないと認識していた。そのことは、1審原告夫が、令和元年8月15日付けの本件訴状において、1審被告妻Nと1審被告INは平成29年9月には不貞関係にあり、同月30日の 本件別居により婚姻関係が破綻した旨を記載し、令和2年3月23日付け訴えの変更申立書において、M弁護士が平成30年9月26日に1審原告夫に電話をして、1審被告妻Nと同棲していると話し、離婚するように求めた旨を記載していることによって裏付けられる。
ウ 上記イのとおり、1審原告と1審被告奈緒との婚姻関係は、平成29年9月30日の本件別居時には破綻していたのであるから、1審被告妻Nに同居協力扶助義務違反はなく、悪意の遺棄も認められない。
(2) 争点(2)(求償金請求の可否)について
1審被告妻Nと1審原告夫は、生活費や子らの学費がかさむことが見込まれたことから今後の家計について話し合い、1審被告妻Nが看護師の資格を取得すれば、現在の准看護師の給与よりも高額の給与を得ることができ、家計を助けることができるなどと協議した結果、1審被告妻Nは、1審原告夫の連帯保証の下、訴外病院から本件奨学金の貸与を受けた。したがって、1審被告妻Nの本件奨学金返還債務は、婚姻生活に必要な債務であったものであり、財産分与で清算されるべき債務である。そして、1審原告夫の本件奨学金に関する連帯保証債務、同債務の履行によって生じた1審被告妻Nの1審原告夫に対する求償金支払債務も、同様に、婚姻生活に必要な債務といえるから、婚姻関係の破綻した以上、財産分与で清算されるべき債務というべきである。のみならず、1審原告は、別件家事調停の手続において提出した平成30年 9月30日付け主張書面(4)(丙10)の中で、本件奨学金に係る求償金につ いて財産分与等で清算することを承諾している。
したがって、現時点において、1審原告の求償権の行使は認められない。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は、1審原告の前記第2の12の損害賠償請求(請求の減縮後のも の)は、慰謝料100万円及びこれに対する平成30年9月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余は理由がなく、1審原告の前記第2の13の求償金請求(請求減縮後のもの)は全部理由があると判断する。その理由は、以下のとおり原判決を補正し、後記2のとおり当審における1審被告奈緒の補充主張に対する判断を加えるほかは、原判決「事実及び理由」第3の1ないし4に記載のとおり であるから、これを引用する。
(1) 原判決18頁6行目の「誓約書」を「誓約書(甲45)」に、同頁7行目の「認められた時」を「認められたとき」にそれぞれ改める。
(2) 原判決18頁19行目冒頭から同19頁 2行目末尾までを以下のとおり改める。
(6) 平成29年2月27日、1審原告夫は、1審被告妻Nに対し、LINEで「止めないから夜働け」、「努力をしないクズなんだからクズらしいセイカツヲしろ」、「俺の金で生きようとするな」とのメッセージを送ったところ、1審被告妻Nは「就職して子供といえでてく」と返信した。さらに、 1審原告夫が「親はクズ、浮気はする、家事や育児はしない、家族と噺もしない、学校は自主退学で親権取れるわけないだろ。一人で●●(地名)帰れ」と送信すると、1審被告妻Nは「浮気なんかしてない。子供と離れたくない」、「●●(地名)になんて帰らない」、「家事と育児はもう少し気をつける」 と返信した。これを受けて1審原告夫は「ありがとう」、「朝は言い過ぎたごめんね」と返信した(甲37、丙2)。」
(3) 原判決19頁6行目の「ピアノの発表会と」を「ピアノの発表会に、いず れも」に、同頁26行目の「得る訳ですから、何としても」を「得る訳ですから何としても」にそれぞれ改め、同20頁2行目の「思う気持ちと」から 同頁8行目末尾までを以下のとおり改める。「思う気持ちが交互に浮かんで、整理がつきません。」、「念の為だけど、帰って来るのをいつでも待っているからね」などと送信し、また、「鬱症状がでているのですが、育児が出来なくなったらどうしたら良い?情けない話で申しわけない。」と送信したところ、1審被告妻Nは「離婚してください。 子供は私が引き取ります」と返信した。また、1審原告夫が1審被告妻Nに対 し、LINEで「俺や子供の人生を滅茶くちゃにして、みんなに怨まれても 離婚したいの?」と送信すると、1審被告妻Nは「はい!したいです」と返信した(甲28、59)。」
(4) 原判決20頁14行目の「被告INが」を「1審被告妻Nが」に、同頁15行目の「被告妻N」を「1審被告IN」にそれぞれ改め、同頁17行目の その後も」から同頁18行目の「原告は」までを以下のとおり改める。 「 1審原告は、平成29年11月9日、1審被告妻Nに対し、LINEで「元気?みんな寂しがってるから帰っておいで」などのメッセージを送信するなど、その後もLINEでメッセージを送ったが(甲59)、1審被告妻Nかから返信はなかった。1審被告妻Nは、同月末頃、横浜家庭裁判所●●支部に対し、別件婚姻費用分担調停及び別件離婚調停の申立てをした。1審原告夫は、同年12月8日
(5) 原判決20頁22行目の「メッセージを送った。」を「メッセージを送った(甲33、59、丙6)。」に改める。
(6) 原判決20頁23行目から同頁24行目にかけての「平成29年12月27日作成の内容証明郵便で」を「平成29年12月27日付けの通知書(甲26)を内容証明郵便により送付して」に改める。
(7) 原判決21頁3行目冒頭から同頁14行目末尾までを以下のとおり改める。 「(15) 1審被告妻Nは、平成29年11月末頃、横浜家庭裁判所●●支部に対し、別件婚姻費用分担調停及び別件離婚調停の申立てをし、1審原告夫は、平成30年に入って、別件同居調停の申立てをした。
(16) 別件家事調停の係属中の平成30年8月、1審被告妻Nは、M弁護士と性的関係を持つようになり、同年9月頃から、M弁護士の自宅で同居生活 を開始し、現在まで同棲している。M弁護士は、同月26日頃、1審原告に電話をして、1審被告妻Nと同棲していることを告げ、1審被告妻Nと離婚をするよう求めたが、1審原告夫は応じなかった
(弁論の全趣旨)
1審原告夫は、別件家事調停において提出した同月30日付けの主張書面(4)(甲87)において、1審被告妻Nが不倫を繰り返していると主張し、同月頃からM弁護士とも不倫の交際を開始し、同棲をしていることから不貞行為の事実は明らかであるなどと主張したが、その一方で、1審被告妻Nに対する愛情を喪失していない旨を主張し、また、同居後の生活につい ては、1審被告妻NがDVを主張していることを考慮して「夫婦喧嘩をし ないように心がける。また、相手のことを責めず、認めるように務める。 具体的な関係修復方法においては専門書を参考にし、心が落ち着いてきたら趣味や旅行などを計画する。」などと主張した(甲87)。
別件離婚調停は、同年10月4日、不成立で終了し、1審被告妻Nは、 同月16日、別件離婚訴訟を提起した(甲33)。また、別件婚姻費用分 担調停及び別件同居調停は、いずれも審判に移行し、平成31年1月31日に1審原告及び1審被告妻Nの各申立てをいずれも却下する決定がされ、これに対して双方が抗告したが、同年4月22日、いずれの抗告も棄却された。
(17) 横浜家庭裁判所●●支部は、令和元年8月5日、別件離婚訴訟について、1審被告妻Nの請求をいずれも棄却し(甲7)、1審被告妻Nは東京高等裁判所に控訴したが、同控訴は、令和2年2月13日に棄却された(甲33)。
(8) 原判決21頁20行目から同頁21行目にかけての「令和2年2月6日、同年3月15日、内容証明郵便で」を「令和2年2月6日付けの通知書及び同年3月15日付けの通知書を、いずれも内容証明郵便により発送して」に 改める。
(9) 原判決21頁25行目冒頭から同23頁25行目の「反論する。」までを以下のとおり改める。
2 争点(1)
(1)審被告妻NとM弁護士との不貞行為の有無等・損害)について
(1) 前記1で認定した事実によれば、1審被告妻Nは、別件家事調停が係属中の平成30年8月、M弁護士と性的関係を持つようになり、同年9月頃からM弁護士の自宅で同居を開始し、現在まで同棲していることが認められる。
(2)ア 1審被告妻Nは、1審原告夫との婚姻関係は、家庭内別居を始めた平成29年2月26日に破綻し、同月27日の1審原告夫からの侮辱的メッセージにより破綻は確定的になったから、それより後に、1審被告 妻NがM弁護士と性的関係を持った行為等は、1審原告に対する不法 行為を構成しないと主張する。」。
(10) 原判決24頁12行目の「これは」を「原審に提出し陳述した令和元年11月20日付けの訴えの変更申立書において、本件訴状の記載を改めるとして、平成29年9月30日に1審被告妻Nが本件別居をし、将来、婚姻関係が破綻する蓋然性が著しく高まった旨を主張したことにも鑑みれば、本件訴状の上記記載は」に改める。
(11) 原判決24頁22行目の「ウ」を以下のとおり改める。
「ウ前記1の認定事実によれば、1審被告妻NがM弁護士と性的関係を持っようになった平成30年8月頃の時点では、平成29年9月30日の本件 別居から10か月余りが経過しており、この間、同年11月末頃には1審被告妻Nから別件婚姻費用分担調停の申立て及び別件離婚調停の申立てがされ、また、この頃には、1審被告妻Nが、1審原告夫からのLINEのメ ッセージに応答しなくなるなど、1審原告夫が婚姻関係の修復のための努力をしても、1審被告妻Nとの関係の改善の兆しがみられない状態が続いて いたことは否定できない。
しかしながら、他方、前記1の認定事実によれば、1審原告夫は、そのような状況の中でも、平成30年に入って別件同居調停の申立てをし、同年 9月26日にM弁護士から1審被告妻Nとの同棲を告げられた後も、別件家事調停の手続において同月30日付け主張書面(4)(甲87)を提出して、1審被告妻Nに対する愛情を失っていないこと、1審被告妻Nと再び同居したときには、夫婦喧嘩をしないように心がけ、1審被告妻Nのことを責めず、認めるように努めることなどを主張して、調停の手続における主張等を通じて、1審被告妻Nとの婚姻関係の修復を図る努力を続けていたことが認められる。
以上の事実に照らすと、1審被告妻NとM弁護士が性的関係を持つようになった同年8月頃及び同棲を開始した同年9月頃においても、1審原告夫は、婚姻継続の意思を失っておらず、婚姻関係修復のための努力を続けていたものであり、一方、1審被告妻NとM弁護士との交際及び同棲は開始されたばかりであって、両者の関係が今後も続くかどうかは不明であったのであるから、別件家事調停の手続等を通じて1審原告夫と1審被告妻Nとの婚姻関係の修復が図られる可能性は、なお存在していたものと認められる。
したがって、1審被告妻NとM弁護士が交際を開始して同棲をするよう になった頃には、既に1審原告と1審被告妻Nとの婚姻関係が破綻していたとする1審被告妻Nの主張は、採用することができない。
(12) 原判決25頁4行目冒頭から同27頁9行目の「認められる。」までを以下のとおり改める。
(3) そうすると、1審被告妻NとM弁護士は、平成30年8月頃に不貞行為 ・ に及び、同年9月頃に同棲を始めて不貞関係を継続したことにより、1審原告夫と1審被告妻Nとの間の婚姻共同生活の平穏を侵害したというべきで あるから、1審被告妻N及びM弁護士の上記行為は1審原告に対する不法行為を構成する。
そこで、損害額について検討するに、1審被告妻NとM弁護士が不貞行為に及んだのみならず、同棲をして不貞関係を継続していること等に鑑みると、これにより1審原告夫が受けた精神的苦痛は相当程度大きいものと認められるが、その一方で、前記認定説示したところによれば、1審原告夫と1審被告妻Nとの婚姻関係は、1審被告妻Nと1審被告INとの不貞行為 及び本件別居によって悪化していたこと、1審被告妻NとM弁護士が不貞行為に及んだ平成30年8月頃には、本件別居から10か月余りが経過していたこと、この間、1審原告が婚姻関係の修復のための努力をしても、改善の兆しがみられない状態が続いており、婚姻関係が破綻に瀕していた ことも認められ、その他本件に顕れた一切の事情を総合考慮すると、上記 の1審原告夫の精神的苦痛に対する慰謝料は、100万円とするのが相当で ある。
(13) 原判決27頁13行目冒頭から同頁23行目末尾までを削る。
(14) 原判決27頁24行目を以下のとおり改める。
3 争点(2) (求償金請求の可否)について
2 当審における1審被告妻Nの補充主張に対する判断
(1) 争点(1)
1審被告妻NとM弁護士との不貞行為の有無等・損害)に関する補充主張について
ア 1審被告妻Nは、1審原告夫と1審被告妻Nとの婚姻関係は、1審被告妻Nと1審被告INとの不貞行為及び本件別居などが原因となって平成30年8月以前に既に破綻しており、1審被告妻NとM弁護士が交際及び同居を始めた時期は、それより後の同年9月以降であるから、1審被告妻Nには、M弁護士との交際及び同居について、1審原告夫に対する損害賠償責任は生じないと主張し、その根拠として、1審原告夫が、
1 平成29年12月 以降、婚姻関係の修復のための努力をしていないこと、
2 別件家事調停の手続において提出した陳述書(丙5、9)の中で、離婚についての和解案を提案していたこと、
3 平成30年9月27日、自宅を売却し、自宅内の 1審被告妻Nの荷物を全て廃棄処分したこと、
2 本件訴状に、1審被告妻Nと1審被告IN平成29年9月には不貞関係にあること及び同月30日の本件別居により婚姻関係が破綻したことを記載していたことを挙げる。
イ しかしながら、前記ア1については、1審原告夫が、平成29年12月以降も、別件同居調停の申立てをしたり、調停手続において、1審被告妻Nに対する愛情を失っていないことや、同居するときには夫婦喧嘩をしない ように心がけることなどを記載した主張書面を提出したりして、婚姻関係 の修復のための努力を続けていたと認められることは、前記1の引用に係 る原判決「事実及び理由」第3の1及び2で認定説示したとおりであり、 上記の別件同居調停の申立てが婚姻関係の修復の意図でされたものではな いことを認めるに足りる証拠はない。したがって、前記ア1の主張は、採用することができない。
ウ 前記ア2の主張については、証拠 (内5、9)及び弁論の全趣旨によれ ば、1審原告夫が、別件家事調停の手続において提出した平成30年5月2 4日付け陳述書(丙5、9)において、離婚には応じないが、1審被告妻Nが「なお離婚を強行する場合には止むを得ませんので、以下の条件にて承諾致します。」と記載しし、婚姻継続の場合の和解条件と共に、仮に離婚する場合の和解条件を提案したこと、これらの記載は、1審原告夫が、調停委員から、離婚を拒否する場合でも離婚条件を提出するように指示されたため、これに従って行ったものであることが認められる。上記認定事実に照らすと、上記の陳述書の記載から、1審原告夫が平成30年5月当時、婚姻関係の破綻を認識していた事実を認めることはできず、前記ア2の主 張は、婚姻関係が同年8月以前に既に破綻していたことを基礎づける事実を主張するものとはいえない。
エ 前記アの主張については、証拠(甲88、丙11、12)及び弁論の 全趣旨によれば、1審原告は、平成30年9月27日に自宅を売却して転居した際、自宅内にあった動産のうち、転居先に収納可能な量を超えるも のを処分したこと、その中には1審被告妻Nの所有に係る物が含まれてい たことが認められるが、その一方で、1審原告夫は、1審被告妻Nの所有に係る動産を全て廃棄処分したのではなく、その一部を現在も転居先で保管 していることが認められる。
したがって、前記ア3の主張は、そのすべてを採用することはできない し、1審原告夫が、自宅を売却し1審被告妻Nの所有に係る動産の一部を処 分したことをもって、1審被告妻Nとの婚姻関係の修復をあきらめていたと認めることもできない。
オ 前記ア4の主張については、1審原告夫が、本件訴状において、1審被告妻Nと1審被告INは不貞関係にあること及び本件別居により婚姻関係が破綻したことを記載していたが、原審で提出し陳述した令和元年11月20日付け訴えの変更申立書により、本件訴状の上記記載を改め、1審被告妻Nが1審被告INとの不貞行為により本件別居をし、将来、婚姻関係が 破綻する蓋然性が著しく高まった旨の主張に改めたことは、前記1の引用に係る原判決「事実及び理由」第3の1及び2で認定説示したとおりであり、同事実に照らすと、本件訴状の上記記載から、1審原告夫が、1審被告妻Nの1審被告INとの不貞行為及び本件別居により、1審被告妻Nとの 婚姻関係が完全に破綻したと認識していた事実を認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
カ 以上のとおりであるから、1審原告夫と1審被告妻Nとの婚姻関係は、平成30年8月及び同年9月頃当時、完全に破綻するには至っておらず、1 審被告妻NがM弁護士と、同年8月頃に不貞行為に及び、同年9月頃同棲を始めて不貞関係を継続したことは、1審原告夫に対する不法行為を構成するとした前記1の引用に係る原判決「事実及び理由」第3の2の認定判断を左右するものではない。
(2) 争点(2)
(求償金請求の可否)に関する1審被告妻Nの補充主張について
1審被告妻Nは、1審被告妻Nの本件奨学金返還債務は、婚姻生活に必要な債務であるから、本件奨学金に関連する求償金支払債務も、同様に、婚姻生活に必要な債務であり、財産分与において清算されるべき債務であると主張する。
この点、1審被告妻Nは、看護学校に入学するに当たり、1審原告との間 で、1審被告妻Nが看護師の資格を取得すれば、現在の准看護師の給与よりも高額の給与を得ることができ、家計を助けることができるとの話が出ていたなどと主張するが、そのような事情のみをもって、性質上、1審被告妻Nの資格取得の学費を支弁するための貸金返還債務であることが明らかな本件奨学金返還債務が、婚姻生活に必要な債務であり、財産分与で清算されるべ き債務であると断じることはできない。
なお、1審原告夫が別件家事調停の手続において提出した平成30年9月3 0日付け主張書面(4)(丙10) の中には、本件奨学金について、1審原告が返済せざるを得ない場合は、1審被告妻Nの主張のとおり財産分与等で清算する旨の記載があるが、同主張書面によれば、1審原告夫は、自らが本件奨学金を返済する考えはない旨を述べた上で、自らが本件奨学金を返済せざるを得なくなった場合の仮定的な話として、財産分与等で清算する旨記載しているにすぎないから、同主張書面の記載をもって、1審原告夫が、1審被告妻Nの求償金支払債務について財産分与による清算の対象とすることを確定的に承諾したと認めることはできない。 したがって、争点(2)に関する1審被告妻Nの補充主張も、いずれも採用することができない。
(3) 1審原告夫の控訴の適否について
一件記録によれば、
1 1審原告が、令和3年11月1日付け控訴状において、原判決中、1審原告夫の1審被告妻N及び1審被告INに対する損害賠償請求を一部棄却した部分の一部を不服とし、原判決主文第1項について、両名に対し130万円及びこれに対する平成29年11月10日から支払済みまで年5分の割合による金員の連帯支払を命じる主文に変更することを求めたこと、
2 その後、当審において、前記1の損害賠償請求(ただし、当審で請求を減縮した後のもの)について、1審原告夫と1審被告妻N及び1審被告INとの間に訴訟上の和解が成立したこと(前記第2の2)は、明らかである。 そして、1審原告夫は、前記第2の2のとおり、1審被告妻Nに対する前記 1の損害賠償請求以外の各請求については、当審において、原審認容額の限度まで請求の減縮をしたため、前記和解が成立して前記1の損害賠償請求が当審の審判の対象ではなくなった結果、1審原告夫の控訴の趣旨は、原判決主文第2項と同旨となり、1審原告の控訴については、控訴の利益が失われることとなった。
したがって、1審原告夫の控訴は、控訴の利益を欠くものとして不適法であるから、これを却下することとする。
第4 結論
以上の次第で、1審原告夫の1審被告妻Nに対する前記第2の12の損害賠償請求(請求の減縮後のもの)は、100万円及びこれに対する平成30年9月26 日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから、その限度で認容すべきであり、その余は理由がないから、これを棄却すべき であり、1審原告夫の1審被告妻Nに対する前記第2の13の求償金請求(附帯請求につき請求の減縮後のもの)は、全部理由があるからこれを認容すべきである。
よって、これと異なる原判決は一部相当でないから、1審被告妻Nの控訴に基づき、原判決を主文第1項のとおり変更し、1審原告の控訴は不適法であるから、 これを却下することとして、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第11民事部 裁判長 大竹昭彦 令和4年7月20日,