弁護士自治を考える会

弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2023年12月号に掲載された弁護士の懲戒処分の公告・東京弁護士会・鈴木亜英弁護士の懲戒処分の要旨

日弁連広報誌「自由と正義」は毎月発行です。特集の読み物も充実しています。

あなたが取った懲戒処分の記念にぜひ1冊。お申込みは、日弁連広報課 自由と正義担当 03(3580)9840年間購読費12000円(税別)1冊でも購入可能です。

処分理由・過払い請求事件の杜撰な事件処理

修習期 20期の超ベテラン 昭和15年生まれ 83歳 元三多摩法律事務所(共産党系の事務所)ご本人も共産党員 

過払い請求の長期の放置、杜撰な処理で東弁は戒告としました。

自由法曹団

https://www.jlaf.jp/old/tsushin/2000/977.html

速報!鈴木亜英弁護士 思想調査事件に勝利の判決

東京支部  中 野 直 樹

一 二月二四日、東京地裁八王子支部民事三部(裁判長関野杜滋子、栗原洋三、浅田秀俊裁判官)は、原告鈴木亜英さんが国家賠償を求めた被告国、東京都及び北海道に対し、金三五万円の支払いを命じた。思わず、代理人席で手を打った。裁判長の頬が赤く上気しているのが印象的だった。言渡前の張り詰めた心と顔を一気に解放させ、弁護団、そして支援者と握手を繰り返す鈴木さん。弁護士が原告当事者として活動することへの心理的抵抗感を乗り越え、重圧感を克服してきた六年間の努力が実を結んだ瞬間であった。
二 事件の発生は一九九〇年一月~二月に遡る。三多摩法律事務所所属の鈴木亜英団員は、傷害被疑事件の在宅被疑者となった青年に黙秘権を助言した。青年は、記憶にない供述を押しつけようとする警察官の取調べに対し、黙秘の態度をとった。すると警察官は、黙秘を指導する弁護人の素性に関心を抱き、鈴木弁護士に関する調査行動に出た。そして警察官は捜査報告書に次の記述をした。

「(五)鈴木弁護士に対する調査結果
鈴木亜英(つぐひで) 
昭和一五年五月一六日生
昭和三九年  早大法卒 
昭和四〇年司法試験合格
昭和四三年二〇期修習終了
三多摩法律事務所所属
なお、警視庁訟務課等で調査結果、右事務所は日共系であり、同弁護士も青法協所属でかつ党員として把握されているものである。 鈴木弁護士は、後年民事裁判で取り寄せた刑事確定記録(略式罰金)のなかからこの捜査報告書を目にすることとなり、息を呑んだ。

 この捜査報告書を書いた藤井哲夫警部は北海道警察所属である。警察署長への昇進経路となる中野警察大学校での特別捜査幹部研修を受講中で、警視庁警察官の身分を併任していた。しかも、東京地検での研修中で、指導担当検察官の指揮で被疑者取調べにあたっているときに事件を引き起こした。職権行使がややこしく交錯し、被告は国、東京都、北海道となった。 
三 私たちは、「鈴木弁護士に対する調査」の根っ子に警備公安警察による系統的な情報収集と集積システムがあるとみて、刑事事件証拠としての裁判所への提出行為にとどまらず、警察の調査行為及び藤井警部による捜査報告書の作成と指導担当検察官への提出行為自体が、プライバシー権を侵害すると主張した。
 判決は、残念ながら、一番の根っ子の問題に深入りせず、藤井が記載した情報は、研修仲間の警察官が偶々知っていたことを聞いたものという誠に不自然な被告らの弁解に沿った事実認定に逃げた。
四 事実認定での消極とは対照的に、判決は、プライバシー権の内容について、近時の下級審判例の到達を積極的に本件に応用した。すなわち「他人がみだりに個人の私的事柄についての情報を取得することを許さず、また他人が自己の知っている個人の私的事柄をみだりに第三者に公表したり、利用することを許さず、もって人格的自律ないし私生活上の平穏を維持するという利益」の一環として法的保護が与えられるべきであるとしたうえで、鈴木弁護士に関する私的事柄について、藤井警部が知り得た事実を捜査報告書に記載して作成し、指導検察官に提出した行為を違法と評価した。
 これは従前のプライバシー権裁判が国民への「公表」型の事例であったのに対し、警察から検察への情報移転という権力機関相互における「利用」行為をもプライバシー権侵害としてとらえたものと理解される。
 判決は明示していないが、プライバシーに情報コントロール権としての機能をもたせ、警察が個人情報の「みだりな利用」をすることを規制する権利としての働きを認めたといってよい。
五 私は、緒方宅電話盗聴弁護団で一〇年間、鈴木弁護士と活動を共にした。団の事務局次長二年目の昨年は鈴木団員が幹事長となり、盗聴法反対のたたかいを共にした。警察とプライバシー問題を継続して追いかけてきている鈴木さんが自ら原告となった事件で勝利判決を得たことに喝采を贈りたい。
 被告らの控訴が十分考えられるが、その節には代理人となっていただいている全国の団員の皆様に一層のご支援をお願いしたい。

懲 戒 処 分 の 公 告

東京弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。

          記

1 処分を受けた弁護士氏名 鈴木亜英

登録番号 10996

事務所 東京都青梅市根が布1ー670-2

青梅ぽぴらる法律事務所 

2 懲戒の種別 戒告

3 処分の理由の要旨 

被懲戒者は、2008年2月頃、懲戒請求者A及び懲戒請求者Bから、債務整理事件を受任し、調査の結果、懲戒請求者らが株式会社Cを除くいずれの取引業者に対しても過払金債権を有していることが判明し、同年5月頃から同年12月末までの間に、懲戒請求者Aと取引のあったD株式会社を除く全ての取引業者から過払金を回収し、この回収額からC社に対する懲戒請求者らの各債務を一括弁済したところ、過払金回収額合計から一括弁済金額を控除した後の金額は720万円だったが、約1年間、懲戒請求者らに何の報告も行わず、2009年12月29日、懲戒請求者Aに対し300万円という根拠のない金額を交付したのみであった。

また被懲戒者また懲戒請求者AからD社に対する過払金回収事務が終了していないと指摘を受けてD社との間で過払金返還交渉を行い、2017年10月2日にD社と和解し、同年11月末までに和解金300万円を受領したところ、同年12月6日、上記和解金からD社からの過払金回収事件に関する弁護士報酬を控除した218万4430円を懲戒請求者Aに返還したのみで、上記債務整理事件についてもはや清算金はない旨の虚偽の事実を懲戒請求者Aに対して報告し、その後においても懲戒請求者Bに対する返還のために何ら具体的な措置を講じず、過払金の清算を長期間にわたって放置した。

被懲戒者の上記行為は弁護士職務基本規程第44条及び第45条に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

4処分が効力を生じた日 2023年8月17日 2023年12月1日 日本弁護士連合会