弁護士自治を考える会

 弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2010年3月号に掲載された弁護士の懲戒処分の公告・静岡県弁護士会・杉山伸也弁護士の懲戒処分の要旨

処分理由・利益相反行為

懲 戒 処 分 の 公 告

 静岡県弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。

          記

1 処分を受けた弁護士氏名 杉山伸也

登録番号 30035

事務所  静岡市葵区追手町  杉山伸也法律事務所

2 懲戒の種別  戒告

3 処分の理由の要旨

被懲戒者は2008年2月ころ、Aから相談を受け同人が取締役をしているB株式会社の破産申立、B社の代表者であってB社の連帯保証人である懲戒請求者Cの破産申立、B社及びCがほとんどの債権を有する株式会DDの民事生申立て、D社の代表者であってB社の連帯保証人でもあるAの破産申立てを一括受任したがその際、Cとは面談しなかった。被懲戒者は同月26日すべての受任事件の費用及び報酬としてD社から1200万円を受領したが同金員はB社が同日D社に対し送金したものであった、

被懲戒者は同月28日、B社の破産申立を行い同年3月12日Cの破産申立を行い同年5月23日D社の民事再生手続きの申立を行ったがAの破産申立は留保していた 、その後D社の経営権を巡るAとCの対立が表面化してきたため被懲戒者は同年7月9日Cの代理人を辞任したが費用報酬の清算はしなかった、D社は同年8月27日臨時株主総会及び取締役会を開催し同月29日Aが任期満了によりD社の取締役を退任し、後任の取締役としてCの息子である懲戒請求者Eを選任した旨の登記、Aの取締役任期満了による代表取締役資格の喪失に伴いEがD社の代表取締役に選任された旨の登記がされたためAは同年9月8日 取締役の職務執行停止等の仮処分を自ら申し出て同月26日株主総会決議不存在確認訴訟を自ら提起したが被懲戒者は仮処分の申書及び訴状を作成する等Aに裏で協力した。被懲戒者が利益相反する複数当事者の事件処理を一括処理するにあたり双方の代表者に面談して利益相反の可能性及び将来の辞任の可能性やその影響につき十分な説明をした上で同意を得るべきであるのに、それをせずAと面談しただけでその言から安易にCの真の同意があると軽信して一括受任したうえ、全当事者分の費用、報酬をB社に負担させ利益相反の問題が顕在化しても速やかに適切な辞任をして報酬を清算することなく、自己が代理するD社を相手方とする仮処分の申立書及び訴状を作成する等Aに偏った処理をしたことは弁護士職務基本規定第28条第3号第32条第35条やその趣旨に反し弁護士法第56条第1項に定める品位を失うべき非行に該当する

4 処分の効力の生じた日 2009年11月12日 2010年3月1日  日本弁護士連合会

 

弁護士職務基本規定
第二十八条
弁護士は、前条に規定するもののほか、次の各号のいずれかに
該当する事件については、その職務を行ってはならない。
ただし、第一号及び第四号に掲げる事件についてその依頼者が同意した場合、第二号に掲げる事件についてその依頼者及び相手方
が同意した場合並びに第三号に掲げる事件についてその依頼者及び他の依頼者のいずれもが同意した場合は、この限りでない。
一相手方が配偶者、直系血族、兄弟姉妹又は同居の親族である事件
二受任している他の事件の依頼者又は継続的な法律事務の提供を約している者を相手方とする事件
三依頼者の利益と他の依頼者の利益が相反する事件
四依頼者の利益と自己の経済的利益が相反する事件
第三二条

(不利益事項の説明)
第三十二条弁護士は、同一の事件について複数の依頼者があってその相互間に利害の対立が生じるおそれがあるときは、事件を受任するに当たり、依頼者それぞれに対し、辞任の可能性その他の不利益を及ぼすおそれのあることを説明しなければならない。

第三十五条
弁護士は、事件を受任したときは、速やかに着手し、遅滞なく処理しなければならない。