弁護士自治を考える会
弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2010年10月号に掲載された弁護士の懲戒処分の公告・第二東京弁護士会・菅野茂徳弁護士の懲戒処分の要旨
処分理由・日弁連異議申立 処分しないから戒告処分、債務整理事件の処理が遅い
懲 戒 処 分 の 公 告
第二東京弁護士会が同懲戒委員会の議決に基づき2009年9月29日付けでなし2009年9月30日に効力を生じた被懲戒者を懲戒しない旨の決定について懲戒請求者から異議の申出があった。日本弁護士連合会は上記決定を取り消して以下の通り懲戒の処分をしたので懲戒処分の公告及び公表に関する規定第3条第6号の規定により公告する
1 処分を受けた弁護士氏名 菅野茂徳
登録番号 21202
事務所 東京都中央区築地2 菅野法律事務所
2 懲戒の種別
3 処分の理由の要旨
(1)被懲戒者は2001年4月にA社の債務整理手続きを受任した。同社の資産、負債の状況からすると最終的には破産手続きによらざるを得ない状況にあったが被懲戒者は受任から約8年も後の2009年2月に至ってようやくA社及び同社代表取締役B個人の破産手続開始の申し立てをするに至った
(2)A社の債務整理の過程において、同社の従業員であった懲戒請求者は2001年12月他の従業員3名とともにA社、B及びA社の他の取締役を被告として未払い給与、退職金、貸付金返還請求(以上対A社)、有限会社法第30条3に基づく損害賠償請求(対Bら)の訴訟を提起(以下「訴訟」という)ところ、訴訟1はその後懲戒請求者と他の3名の訴訟を提起した(以下「訴訟1」という)ところ訴訟1はその後懲戒請求者と他の3人の訴訟手続きが分離され懲戒請求者との間では退職金に関する一部和解が成立したものの懲戒請求者のその余の請求に関しては訴訟が継続し2003年2月26日に「A社は懲、戒請求者に対し3171万8490円【および延滞損害金を支払え。Bらに対する請求を棄却する」との内容の判決が言い渡された。しかし上記金員についてA社からの支払いは全くなされなかった
(3)(1)のように債務整理手続の進行が大幅に遅滞している状況にある場合、受任弁護士は労働債権者その他の債権者等からその進捗状況の問い合わせ等があれば遅滞の理由等を説明するなどより適切な回答・説明を行う義務があるというべきであるしかるに被懲戒者はこのような状況の下で懲戒請求者本人自ら2回にわたり書面により訴訟1の判決の、基づく支払い請求又は債務整理の進捗状況を問合せてきたのに対し適切な対応をせずこれを放置した、かかる被懲戒者の行為は弁護士の職務に対する信頼を失墜させる行為といわざるを得ず誠実義務を定める旧弁護士倫理第4条及び弁護士職務基本規定第5条に違反し弁護士法第56条第1項の「品位を失うべき非行」に該当するというべきである
(4)この点について第二東京弁護士会は訴訟1の判決に基づく懲戒請求者代理人弁護士からの支払い請求又は債務整理の進捗状況の問い合わせのうち4回分についてはA社及びBに対し行われたものであるから、被懲戒者がこれらについて回答・説明しなかったとしてもやむを得ないなどと判断している、しかし被懲戒者はA社から債務整理手続について受任し、訴訟1はその債務整理の過程で発生した訴訟であるから判決後の履行及び弁済について個別の委任契約がなくても実質的に債務整理の一環として被懲戒者の受任業務に含まれるものと解されるのが相当である債務整理手続の受任業務が進行中である以上A社及びBあてに送付された書面であっても債務整理受任弁護士である被懲戒者にその書面が渡るのが通常であろ現に本件においても数ヵ月後にはこれらの書面に対して債務整理の進捗状況を具体的に説明などして何らかの回答説明することは可能であったというべきであるから第二東京弁護士会の判断は形式的に過ぎて相当ではないというべきであるさらに被懲戒者本人から2回にわたる被懲戒者あての催告及び申し入れに対しても被懲戒者はこれらに対して容易に回答できる状況にあったと認められ何の回答・説明もせずに放置した行為は不適切でありおよそ相当とはいえない
(5)以上の点を考慮しまた上記書面以外になされた懲戒請求者の代理人弁護士からの電話での問い合わせに対して1回口頭で回答したという事実があったとしても「非行とはいえない」とする第二東京弁護士会の判断は相当ではない
(6)以上の次第で被懲戒者の上記対応は弁護士として品位を失うべき非行にあたり懲戒処分としては戒告が相当であるから第二東京弁護士会の懲戒しない旨の決定を取り消して被懲戒者を戒告に処することとする
4 処分が効力を生じた年月日 2010年8月24日 2010年10月1日 日本弁護士連合会