接見時の撮影巡り拘置所と弁護士対立
拘置所で接見した弁護士が、記録のため被告を撮影したことに対し、東京拘置所が「内部の規則に違反する」として、東京の2つの弁護士会に懲戒処分を求める異例の申し立てを行ったことが分かりました。
日弁連=日本弁護士連合会は「法律上の規定はなく、必要な弁護活動だ」と強く反発していて、接見の録音・録画を巡って双方の対立が深まっています。
申し立ては東京弁護士会と第二東京弁護士会に対して行われたもので、東京拘置所の所長が合わせて3人の弁護士を懲戒処分するよう求めています。
申し立てなどによりますと、3人は去年からことし3月にかけて、拘置所で被告と接見中にデジタルカメラで写真を撮ったり録音や録画をしようとしたということです。
拘置所長は、「カメラの持ち込みは施設の管理者として定めた内部の規則に違反するものだ。警備に支障が出るほか、被告のプライバシーが侵害されるおそれもある」と主張しています。
これに対し、弁護士は答弁書などで、「撮影は被告の姿ややり取りを記録するためであり、拘置所が決めたという規則に法的な根拠はない」などと反論しています。
拘置所の所長が弁護士会に懲戒を申し立てるのは異例で、日弁連は法務大臣と東京拘置所長に先月申し入れを行い、「弁護士の撮影を制限する法律上の規定は存在しない。憲法で保障された必要な弁護活動の一環だ」と強く反発しています。
一方、拘置所を所管する法務省は「弁護士であっても接見中の撮影は認めていない。同じ行為を繰り返さないようにするため、懲戒処分を申し立てることは適切だと考えている」としていて、録音・録画を巡る双方の対立が深まっています。

接見時の映像 裁判で証拠にも

接見の際に弁護士が容疑者や被告を撮影した映像は、裁判員裁判で証拠として採用され、法廷で上映されたケースもあります。
接見の際の映像が上映されたのは、おととし東京地裁で行われた殺人事件の裁判員裁判です。
この裁判では、責任能力があったかどうかが争点になりました。
事件を担当し、日弁連裁判員本部の座長でもある高野隆弁護士は、早い時点で容疑者の精神状態を記録すべきだと考え、逮捕の5日後から接見でのやり取りをビデオで撮影しました。
この映像が証拠として採用されたうえ、法廷で上映されます。
判決は、「善悪を判断する能力が下がっていた」と判断され、求刑を大きく下回りました。
高野弁護士は、「事件直後の映像を撮影し、法廷で見てもらったことで裁判員にも理解してもらえた。録音録画が禁止されるのは真実に目をつぶっているのと同じで、正しい裁判を行えない。見たままの客観的な証拠があることで、裁判員も安心して結論を出せるはずだ」と話しています。

接見時の映像消去 裁判に

この問題では、接見中に撮影したデータを拘置所側に消去させられたとして北九州市で弁護士が国を訴える裁判も起きています。
訴えによりますと、北九州市の弁護士はことし2月、市内の拘置所で接見した際、被告から「職員の暴行でけがをした」と言われたため、記録を残そうと携帯電話のカメラで被告を撮影しました。
しかし、接見後に拘置所側から「内部の規則で撮影は認められない」と画像を破棄するよう求められ、データを消去させられたとして、国に賠償を求める訴えをことし6月に起こしました。
この裁判の審理は来月から始まる予定になっていて、接見中の撮影が正当な弁護活動にあたるかどうかは今後、裁判所によって判断されることになります。
 8月26日午後7時NHKニュース
東京拘置所の所長とすれば規定を守って欲しいというのは当然のことでしょう
しかし、弁護士は裁判で被告の有利になるのであればかまわないという論理でしょう
東京拘置所の所長は懲戒請求を出しましたが懲戒処分になることは100%ないと思います。すでに日弁連がコメントを出しています
日弁連=日本弁護士連合会は「法律上の規定はなく、必要な弁護活動だ」と強く反発していています
日弁連は弁護士がいかに有利に商売できるかという団体ですから弁護士側に立つに決まっていますし
もうこんなコメントを出していますから懲戒処分などありえません
拘置所としたら、カメラや携帯の持ち込みを厳重に調査し禁止するしかありません。
今でも厳しいチェックがありますが弁護士には甘いのではないでしょうか
弁護士は依頼者のためなら決められたことなど破ることは何とも思っていないのですから
カメラを構えたらガラスに幕が降りるとか対処していくしかないでしょう
容疑者の取り調べの可視化になかなかならないからとこういう掟破りにでてきたのでしょう
そして拘置所長はこれから各地の拘置所でこのような掟破りが続くと思っているから懲戒請求を出したのです
過去にも同じような例があります。弁護士は確信犯です
 

接見中に撮影で対立 弁護士会と京都拘置所  2011年2月27日


 京都拘置所(京都市伏見区)の接見室で、弁護人が公判で証拠とするため被告の写真を撮影したことをめぐり、拘置所と京都弁護士会が対立している。撮影禁止を定めた明確な法律はない。拘置所はプライバシー侵害や証拠隠滅につながる恐れがあるとしており、弁護士会は「憲法の保障する秘密接見交通権の範囲内だ」と反発している。
京都弁護士会の遠藤達也弁護士は2009年11月と10年1月の2回、京都拘置所の接見室で、公然わいせつ罪に問われていた60代の被告をアクリル板越しに撮影した。被告は無罪を訴えており、被害者の「犯人の歯が2本抜けていた」という供述に対し、身体特徴と合致しないことを証明するためだった。この写真は京都地裁に証拠採用されている。  同2月に弁護士が拘置所を訪れた際、職員から接見室内での撮影禁止や写真の非公表を要請されたが、弁護活動に必要と拒否した。
「今後の面会業務に支障を及ぼしかねない」「被告との自由な意思疎通を妨害している」―。両者はその後、文書で問題点の指摘をやりあった。
拘置所は、撮影禁止が法務省の通達や庁舎管理権に基づく措置とする。理由として▽機器の持ち込みは外部との接触を可能にし、面会と信書に接触を限定する刑事収容施設法などを潜脱▽意図しない外部流出があれば人権侵害-などを挙げる。
一方、弁護士会は、被告との接見を保障する刑事訴訟法の秘密接見交通権の行使だと主張する。「機器による接見の記録行為はメモを取るのと変わらない。拘置所の対応は秘密接見交通権の否定だ」とする。
立命館大法科大学院の浅田和茂教授(刑事法)は、国の通達による拘置所の対応に理解を示しつつも「刑事訴訟法にも刑事収容施設法にも禁止規定がなく、撮影を制限する根拠にはならない」と指摘する。その上で「弁護人は事前に拘置所に撮影を通告し、阻止されれば裁判所の判断を求める方法もあった」と話す。
2011年2月27日  京都新聞