【離婚・面会交流事件】
離婚原因の夫の暴力によって子どもが心的ストレス障害となった。
しかし妻は病院に子どもを連れて行かなかった。医師が子どもを診察
せず妻の証言のみで診断書を書いた。【第1診断書】後日、夫からの申し出で子どもを診断せず診断書を書いたのは問題であると医師に指摘すると医師は別の診断書を書いた。(子どもを診断しなければ詳細は分からない)弁護士は第1診断書を利用し調停や裁判に利用した。
懲戒請求者である夫は第2診断書がありながら第1診断書を利用したのは
弁護士として非行にあたると青森県弁護士会に懲戒請求を提出。
青森県弁護士会綱紀委員会は弁護士の行為を非行とし「懲戒相当」と決議をした。そして平成26年9月5日懲戒委員会は以下のとおり議決した。
 
平成25年(懲)第1号事件
議 決 書
対象弁護士 野中英一 (登録番号26535)
 
上記対象弁護士に対する懲戒請求事件につき審査した結果、次のとおり
議決する。
主 文
対象弁護士野中英一を懲戒しないことを相当と認める。
理 由
第2 対象弁護士の弁明の要旨
1、綱紀委員会が「弁護士の非行」に当たると判断した理由は、要するに第2診断書の方が信用性があり、これと比べて第1診断書の信用性は劣るにあるものと解される。
2.しかし懲戒請求者(夫)の抗議を受けて作成された第2診断書の方が信用性が高いという判断は果たして「正義」に叶っているのか疑問なしとしない。少なくとも一旦は懲戒請求者の○○(子ども)に対する暴行等と○○の不登校との間に因果関係を認めた診断が下っていた事実を明らかにする必要がある。
3、第2診断書の存在を知ったのは青森県家庭裁判所八戸支部平成22年
第××号××号審判前の保全処分申立事件においてであり、その時期は受任した平成23年3月24日から答弁書を提出した同年4月18日までの間である。
第4 当委員会の認定と判断
1、当委員会が認定した事実は以下のとおりである
(1)懲戒請求者とN子は夫婦であったが両者間には平成22年11月頃から離婚等請求事件、配偶者暴力による保護命令申立て事件等、複数の訴訟が係属するようになった。
対象弁護士は同月頃N子から相談を受けるようになったが全事件を受任したものではなかった、受任した事件も当初からではなく途中から受任したものもあった。
(2)N子は同年9月6日○○(子ども)を同行せず自分だけでI医師のもとを訪れ診察を受けた。
その後、N子は懲戒請求者との間の事件において証拠として使用するためI医師に○○(子ども)について診断書の作成を依頼した。
これを受けて平成22年12月17日I医師は第1診断書を作成した。
同診断書には「子どもが父親から暴力を受けた」「父親の暴力と(子ども)の不登校、不安障害には因果関係があると考える」旨記載されている。N子は同月21日第1診断書を青森地裁八戸支部平成22年×号配偶者暴力に関する保護命令申立事件において証拠として提出した。
(3)この副本の交付を受けた懲戒請求者は第1診断書の事情をI医師に確認しその結果同医師は同年12月25日第2診断書を作成した
同診断書には「本人は受診していない、母親からのみの伝聞によるため事実と違う可能性があるため客観的とはいえない。前回の診断書は保留したい」「今後本人の意見を聞くことが可能な場合は医師としての意見を変更する可能性が高い」旨記載されている。
(4)略
2、対象弁護士が第2診断書を知った時期
(1)懲戒請求者側が第2診断書を証拠として提出した事件及び時期、並びにこの写しがN子側に交付されているか否かは以下のとおりである。
(略)
3、対象弁護士による第1診断書の使用
(1)綱紀委員会は「第2診断書は第1診断書についてI医師が診断書として権威を自ら否定しただけでなく診断書として使用しないでもらいたいとの意思を表示したものと解される。にもかかわらず対象弁護士は第2診断書の存在を知ったあとも子が心的ストレス障害となった事実を立証するため以下の事件について第1診断書を証拠として提出し続けた」とする。
(2)証拠として提出した裁判(略)
(3)前記のとおり対象弁護士が第2診断書の存在を知ったのは、(略)
まだ対象弁護士が第2診断書の存在を知る以前のことである。
よってこれらの提出を問題視することはできない
(4)青森家裁八戸支部平成22年(家×)第××号審判前の保全処置申立事件、同×号子の引渡し申立事件における提出は同事件において懲戒請求者側が先に第2診断書を証拠として提出したことに対し、証拠説明書に記載されているとおり「○○子ども同行の上診察の予定であったが○○が同行を拒否したためI医師の指示で母親の状況説明で記載したもの」との立証趣旨でなされたものである。第2診断書をこのような立証趣旨で
証拠として使用すること自体は許容されるべきであり問題視されるべきではない(綱紀委員会も、このような立証趣旨での活用を否定するものではないと認められる)
(5)従って対象弁護士による第1診断書の使用はいずれも弁護士としての品位を失うべき非行に該当しない
 
4、結論
以上のとおり対象弁護士には弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行は認められない
 
よって主文のとおり議決する。
平成26年9月5日
青森県弁護士会懲戒委員会
委員長 山田楊一
委員 石岡隆司・浅石紘爾・中林裕雄・鎌倉正和・外ノ池和弥・中野