弁護士自治を考える会
弁護士の懲戒処分を公開しています。
日弁連広報誌「自由と正義」2015年3月に掲載された弁護士の懲戒処分の要旨、「処分変更」です。
これは所属弁護士会が下した処分を被懲戒者(対象弁護士)が処分が不当に重いと日弁連に審査請求を申立て認めらえたもの、年に1件か2件あるかないかのケースです。富山県弁護士会が出した「退会命令」を日弁連は「業務停止2年」に変更したのです。この懲戒処分の変更の問題点は次の2点です。
① 富山県は被懲戒者は過去4回の懲戒処分を受けており5回目の処分で過去の反省もないと退会命令という重い処分を出した。
② 日弁連は過去は過去、1件ずつ処分内容を見ていけば富山の出した処分は重すぎるとして処分を変更したものです。
(新聞報道)
富山の弁護士に退会命令 懲戒5回目、弁護士会
富山県弁護士会は6日、犯罪被害者にしつこく示談を持ちかけたな高森浩弁護士(46)を4日付で、退会命令の懲戒処分にしたと発表した。高森弁護士は2001年以降、計4回の懲戒処分を受けており、弁護士会は「過去の処分も考慮し除名に次ぐ重い処分にした」としている。
弁護士会によると、高森弁護士は10年7月ごろ、被告人の弁護を担当した性犯罪事件で、示談を拒否していた被害者の女性宅などに「裁判が終われば、検察官は不要品を捨てるように相手にしなくなる。気の毒なので話し合いたい」などと示談を求めて何度も手紙を送るなどした。
懲 戒 処 分 の 公 告
富山県弁護士会がなした懲戒の処分について同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告公表に関する規定第3条第1号の規定により公告する
1 懲戒を受けた弁護士
氏 名 高森 浩
登録番号 25217
事務所 高岡市本丸町
高森浩法律事務所
2 処分の内容 退会命令 2015年2月6日業務停止2年に変更
3 処分の理由
被懲戒者は2010年6月16日強姦罪等の被告人Aの私選弁護人に選任され、同月21日被告人Aの私選弁護人に選任され同月21日Aを代理して上記強姦罪等の被害者である懲戒請求者を相手方として相当額の不法行為に基づく損害賠償金を支払う旨の調停を申し立てた。
被懲戒者は懲戒請求者が住所を知られたくないと強く希望していることを認識していたにもかかわらず2010年6月22日頃懲戒請求者の住所を抹消することなく上記調停事件の申立書の写しをAの父に送付した。
被懲戒者は開示された懲戒請求者の調書を閲読して懲戒請求者が示談を拒否する意思であることを確認したにもかかわらず懲戒請求者に対し2010年7月5日200万円での示談及び上記調停事件への出頭を求める手紙を送付し同月14日裁判所の不手際で上記調停事件への懲戒請求者に対する呼び出しがなかったが改めて呼び出しをするよう申し付けておいた旨の手紙を送付し同日行われた調停期日後には上記調停事件はこれ以上調停はおこなわないということで終了したが裁判所は懲戒請求者と被懲戒者との間で示談交渉を行っていくべきだとの見解であるという内容の手紙を送付した。
被懲戒者は2010年7月21日頃には検察官から郵送された懲戒請求者の示談はしない、話もしたくない旨の回答書により懲戒請求者の示談を拒絶する意思が明確であることを認識しながらAの父母に助言して同月29日Aの父母に懲戒請求者の自宅を突然訪問させた。
被懲戒者は2010年8月27日懲戒請求者の夫に対し懲戒請求者は検察官に頼り切っており検察官はこれを裁判のために都合よく利用しているが裁判が終わるや相手にしない態度に変わるだろう、それでは懲戒請求者が気の毒なので直接夫と話し合いたい旨の手紙を送付した。
被懲戒者の上記行為は弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
被懲戒者は弁護士登録をしてから9年の間に業務停止を含む4回の懲戒処分を受けていることなどから非違行為が繰り返される蓋然性が高いことなどを考慮し退会命令を選択する。
4 処分の効力を生じた年月日
2013年9月6日 2013年12月1日 日本弁護士連合会
裁決の公告(処分変更)
富山県弁護士会が2013年9月6日に告知した同会所属弁護士 高森浩会員(登録番号25217)に対する処分について同人から行政不服審査法の規程による審査請求があり本会は2015年1月23日弁護士法第59条の規定により懲戒委員会の議決に基づいて以下のとおり裁決したので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第3号の規程により公告する。
記
1・裁決の内容
(1)審査請求人に対する懲戒処分(退会命令)を変更する。
(2)審査請求人の業務を2年間停止する。
2・裁決の理由の要旨
(1)審査請求人にかかる本件請求事件のつき富山弁護士会(以下「原弁護士会」という)の認定した事実及び判断は原弁護士会懲戒委員会の議決書「以下原議決書」という)に記載のとおりであり原弁護士会は前記認定と判断に基づき審査請求人を退会命令の処分に付した。
(2)本件懲戒請求事件は刑事被告人の私選弁護人であった審査請求人が被害者である懲戒請求者の意向に反して懲戒請求者に対し示談に応じるよう繰り返し連絡をしたり刑事被告人の両親に懲戒請求者を訪問させたりするなど懲戒請求者に精神的苦痛を与えたことが弁護士として品位を失うべき非行とされた事案であるが審査請求人の本件審査請求の理由は、要するに原弁護士会の判断に誤りがあり原弁護士会の処分には不服なのでその取消しを求めるというにある。
(3)日本弁護士連合会懲戒委員会が審査請求人から新たに提出された証拠及び同委員会における審査請求人の審尋結果を含め審査にした結果、原弁護士会の認定に誤りはない。また原弁護士会の指摘するように審査請求人において原刑上不利益な情状として認定されたことなどの事情を考慮すると非行の程度は極めて重大といわざるを得ない
(4)しかしながら本件懲戒請求事件は審査請求人が刑事弁護事件活動の一環として被害者との示談交渉をした際に、許容される弁護活動の範囲を逸脱して行った行為を対象としたものであり審査請求人の行為が懲戒請求者らに
対する悪意に基づくものとは認めらない。そうすると原弁護士会の退会命令の懲戒処分は重きに過ぎるので、これを変更して審査請求人の業務を2年間停止することを相当と認め主文のとおり議決する。
3 採決が効力を生じた年月日 2015年1月26日
2015年3月1日日本弁護士連合会