綱紀審査会の運用状況  2016年2月

 
綱紀審査会は弁護士の所属する弁護士会で懲戒が棄却され、日弁連で異議申し立も棄却され、最後に懲戒の審議がされるのが綱紀審査会です。
 
日弁連は1年に2回、日弁連広報誌「自由と正義」に綱紀審査会の運用状況と審査相当事案について報告が掲載します。年間に3件から5件程度「審査相当」と議決され次に対象弁護士の所属する弁護士会懲戒委員会に付され処分が決まります。

「自由と正義」20162月号には3件の審査相当事案が掲載されました。
対象弁護士の氏名は記載されていません。 
審査相当事案 3件目
 

 事案の概要

居宅の明渡請求訴訟の被告である綱紀審査申出人(以下「申出人」という)から依頼を受けた対象弁護士が第1回及び第2回口頭弁論期日いずれにおいても答弁書その他の準備書面を提出しないまま欠席した結果、仮執行宣言付敗訴判決を受けたことが弁護士としての品位を失うべき非行にあたるとされた事実
 

綱紀審査会の議決の理由の要旨

原弁護士会綱紀委員会は申出人の居宅明渡事件に関し対象弁護士が第1回及び第2回の口頭弁論期日に答弁書その他の準備書面を提出しないまま欠席し、その結果、欠席裁判が言い渡されたこと、それにもかかわらずこれらを申出人に伝えないまま訴訟手続を進めたことについて、対象弁護士が口頭弁論期日に欠席したことそれ自体によって申出人に対して具体的な不利益が発生しているわけではないこと等を勘案し、答弁書その他の準備書面を提出せずに期日に欠席したことのみをもって、対象弁護士に弁護士として品位を失うべき非行があったとまで認めることができないとした。
 しかし対象弁護士が事件を受任し、委任状の交付を受けていたにもかかわらう、第1回及び第2回の口頭弁論期日いずれにも答弁書その他の準備書面を提出しないまま欠席し、その結果、仮執行宣言付敗訴判決を受けたことは、理由のいかんを問わず、業務怠慢といわざるを得ない。また仮に対象弁護士が和解を成立させるための戦略として上記の方法を選択したのであれば、その戦略に結審されるリスクが伴うことを申出人に十分説明し、その了解を得るべきであったところ、対象弁護士は、これを怠ったものである。対象弁護士の行為は依頼者である申出人が口頭弁論期日において主張をする機会を失わせる行為であるとともに、申出人の希望する和解を成立させる機会を失わせる行為であって訴訟代理人として適切な事務処理とはいい難い。
対象弁護士のこれらの行為は弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に当たるものと認められる。
(3)綱紀審査会の議決の年月日
2015128

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