第二東京 平成30年4月13日 日弁連審査請求で処分取消になりました。
処分の理由の要旨 被懲戒者は、2014年2月26日頃、依頼者夫婦から、隣地に居住する懲戒請求者及びその夫との間のトラブル並びに差出人が不明の脅迫めいた内容の手紙が2通送られてきて、そのうち1通を懲戒請求者の母らしき人物にひったくられて破られる等のトラブルがあったとの説明を受け、これらのトラブルについての対応を受任し、懲戒請求者の自宅には居住していない懲戒請求者の母らしき人物を特定すること及び差出人不明の2通の手紙の差出人を調査して特定することを目的として、同月27日頃から同年3月27日にかけて、順次懲戒請求者の夫の住民票、戸籍全部事項証明書、懲戒請求者の父の戸籍全部事項証明書、懲戒請求者の母の住民票をそれぞれ職務上請求により取得し、同日頃から同年4月2日頃までのいずれかの日に、懲戒請求者の夫の住民票及び戸籍全部事項証明書並びに懲戒請求者の父の戸籍全部事項証明書をそれぞれコピーした上で、上記目的とは無関係又は関連性の極めて薄い情報を含めてマスキング等を一切することなく、依頼者に交付した。4 処分が効力を生じた日 2018年11月2日
4処分が効力を生じた日 2019年7月18日2019年11月1日 日本弁護士連合会
(4)被懲戒者は、上記(2)の事件において、自らが行った懲戒請求者のプライバシー権の侵害を理由とする慰謝料等の支払を命ずる判決が言い渡され、確定したにもかかわらず、懲戒請求者からの請求に一切応じず、自己の預金口座まで差し押さえられていながら、元金11万円程度の賠償金を支払わなかった。
竹原孝雄 12575 懲戒の種別 業務停止6月 2021年6月
処分の理由の要旨(1)被懲戒者は、2015年頃、不動産会社から、懲戒請求者Aの所有する土地の取引の話があり、懲戒請求者Aと折衝したいとの理由でその住民票の写しの取得を依頼されたところ、上記土地の所有者の住所は登記簿謄本上明らかであり住民票の写しを取得する必要性が存在せず、かつ、懲戒請求者Aに関する遺産分割事件を誰からも受任したことがなかったにもかかわらず、同年10月8日、利用目的の内容欄に「相続人確定の為 遺産分割調停の申立事件」等と記載した職務上請求書を使用して懲戒請求者Aの住民票の写しを不正に取得し、その住民票の写しを上記不動産会社に交付した。(2)被懲戒者は、2016年1月頃、Bから、懲戒請求者Cの抵当権設定登記が不実の登記であり、懲戒請求者Cに対し抵当権設定登記抹消登記手続を行う必要があるが、懲戒請求者Cが行方不明であるとの説明を受けて、懲戒請求者Cの所在の調査依頼を受けたところ、懲戒請求者Cから遺産分割調停事件を受任していなかったにもかかわらず、利用目的の内容欄に「遺産分割調停事件 相続人確定の為」と記載した職務上請求書を使用して懲戒請求者Cの戸籍の附票の写しを不正に取得し、同月下旬頃、その戸籍の附票の写しをBが同行した懲戒請求者Cに成りすました人物に対して交付した。(3)被懲戒者の上記各行為は、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。上記(1)の住民票の写し及び上記(2)の戸籍の附票の写しが、懲戒請求者らの成りすましの資料に利用され、上記(1)の土地につき所有権移転登記手続がなされ、上記(2)の抵当権設定登記の抹消手続がなされる被害が発生していることなどから業務停止6月を選択する。4 処分が効力を生じた日:2021年1月28日 2021年6月1日 日本弁護士連合会
今井滋雄 18396 東京 退会命令 2009年2月
処分の理由の要旨 (1) 被懲戒者は甲マンションの1室の区分所有者であるA社を管理しA社が支払うべき管理費を自己の責任で支払ってきたが1996年5月以降管理費等を支払らわくなった。 甲マンション管理組合はA社に対して管理費等の支払いを求める訴訟を提起し2002年11月勝訴判決を得たが、A社の所在や代表者が不明であったため債権を回収できないでいた ところで上記1室には懲戒請求者X社から賃借したと称する入居者がいたため同管理組合がX社に対し上記1室についての権限を問い合わせたところ、被懲戒者は権利関係を複雑にしてA社に対する管理費等の請求を回避するため約20年間も交際のあるX社の代表者Y指示して「A社に対する債権回収のためA社から使用権限を付与された」と回答させた 2003年11月同管理組合はX社に対し管理費等の支払いを求める訴訟を提起したが、被懲戒者は管理費等の支払いを拒絶できる法律上の根拠がないことを知りながらX社に助言して数々の不合理な主張をさせ2004年7月28日以降は自らX社の訴訟代理人として出頭して数々の不合理な主張をして訴訟手続きを長引かせた。 そして敗訴の可能性を知るや、2005年7月14日請求を認諾して訴訟を終結させたがその後も被懲戒者は「不良役員が管理組合を私物化している」などの口実で管理費等の不払いを継続し、同管理組合の権利行使を妨げた 被懲戒者の上記行為は弁護士としての法律知識を濫用し虚偽の主張や証拠によって同管理組合の権利の実現を妨げ義務の履行を回避しようとするもので法律と司法制度を遵守すべき弁護士の品位を著しく傷つけるものである
(2) 被懲戒者は弁護士会の懲戒処分により2002年12月26日から2004年6月25日までの1年6月間、弁護士としての業務を禁止されていたのに、その間甲マンションの管理組合がX社を被告として提起した前記訴訟においてX社名義の 答弁書及び3通の準備書面の原稿並びに懲戒請求者名義の報告書を作成し、また証拠提出についてX社に助言、指導して法律事務を行った
(3) 被懲戒者は乙マンションの区分所有者であるB社から同マンションの管理組合の理事会及び総会で区分所有者の権利を行使することを依頼されたところ、B社又はその代表者Cから委任状を徴収して事前に提出する等の手続きをとることもなく、C本人を偏って理事者や他の組合員を詐網し、組合員本人であるかのように装って懲戒請求者Zの監事選任の議決を行った同管理組合の2005年6月26日の臨時総会並びにその後の同年7月12日の理事会及び同年12月20日の通常総会に出席し、議場の適正な運営を妨害するとともにZを屈辱、誹謗する発言を繰り返した 被懲戒者の上記の行為は弁護士の業務の遂行方法として極めて不適切である
(4) 被懲戒者は2004年8月26日に購入した職務上請求用紙22枚につき所定欄及び改正用の欄外に職印を押捺したのみで白紙のまま、弁護士ではない懲戒請求者Yに漫然と交付し使用し得るようにした 被懲戒者の上記行為は弁護士に対する信頼を著しく裏切ると同時に戸籍法や住民基本台帳法の特例により弁護士が戸籍謄本等を取得し得る制度の存在意義を根底から脅かすものである
(5) 被懲戒者の上記の行為はいずれも弁護士法第56条第1項の弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。そして被懲戒者の非違行為は複数に上りその一部は業務停止処分に違反してされたものであること、被懲戒者は全く反省しておらず1996年以降長期のものを含めて複数回の業務停止処分を受けているがしれらについても不当な懲戒処分であるとの態度を示して全く自戒や反省の姿勢が見られないことにかんがみると新たな業務停止処分が被懲戒者の自覚反省を促し弁護士ろしての姿勢を正す結果をもたらすことは到底期待し得ない そのような被懲戒者が弁護活動を続けることを認めれば非違行為が繰り返され 弁護士に対する社会的信頼と弁護士会の信用が失墜させられるであろうことは明らかである。よって退会を命じた 処分の効力の生じた日2008年10月9日 2009年2月1日 日本弁護士連合会
処分の理由の要旨(1)被懲戒者はA及びBからAら名義の預金口座からの過去の不明な払い戻金に関する調査の依頼を受け、銀行等に対する弁護士会照会の申出を行った8件については同一の銀行に対するAの預金口座に関し照会事由がほぼ同一dあり、その照会事項も一本化することにより1件の照会申出として行うことが十分可能で所属弁護士会からその旨の指摘と補正依頼があったにもかかわらず、その補正を拒否し合理的な理由なくあえて8件とし1件で処理すればAらの負担は合計5万9000円で済んだところ、実費及び弁護士報酬として合計47万2000円を受領した。また被懲戒者は戸籍謄本等計4件の職務上請求に関してその報酬として合計21万6000円を受領した。(2)被懲戒者は2014年12月9日、依頼者であるBから1000万円を借り受けた。被懲戒者は2014年に高額すぎる報酬を得たとして業務停止1月の懲戒処分を受けたことを考慮し、業務停止2月を選択する。4 処分が効力を生じた年月日 2016年3月23日 2016年7月1日日本弁護士連合会
森川正章 19532 兵庫 戒告 2014年6月
処分の理由 被懲戒者はAから研究資料として故人である文豪の関係者の戸籍調査を依頼され2011年9月から2012年7月までの間35回にわたり虚偽の使用目的を記載した戸籍謄本等の請求手続きを行った。被懲戒者の上記行為は弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。4 処分の効力を生じた年月日 2014年3月4日 2014年6月1日 日本弁護士連合会(注)川端康成
芝原明夫 15693 大阪 戒告 2022年10月
理由の要旨
被懲戒者は、懲戒請求者が提起したストーカー行為に関する損害賠償請求事件の被告代理人であったとともに、ストーカー行為等の規制等に関する法律違反の刑事弁護人でもあったところ、2021年4月16日付けで、プライバシーに対する配慮や慎重さを欠くだけでなく、職務上請求書の利用目的欄に遺産分割調停等の申立てという虚偽の事実を記載して、懲戒請求者の世帯全部の住民票の写しを請求した。4処分が効力を生じた日 2022年3月30日 2022年10月1日 日本弁護士連合会
配川壽好 16647 福岡 業務停止1月 2023年1月
理由の要旨
被懲戒者はAから依頼されて2019年10月3日から2020年6月19日までの間、6回にわたり職務上請求書に「訴訟準備のため」等と虚偽の記載をして懲戒請求者有限会社Bの代表者であるCの住民票の写し及び戸籍謄本を職務上請求した。4処分が効力を生じた日 2022年7月25日 2023年1月1日 日本弁護士連合会
谷口進 大阪13658 戒告 2023年2月
理由の要旨
(1)被懲戒者はAとの間で委任契約を締結していないにもかかわらず、Aから懲戒請求者の住所調査の依頼のみを受けて2020年8月20日、懲戒請求者の現在の住所の住民票の写しを職務上請求した。
(2)被懲戒者は上記(1)の住民票の写しを入手後、懲戒請求者がAを刑事告訴していたこと等を十分に知悉していたにもかかわらず、安易に懲戒請求者の現在の住所をAに教えた。4処分が効力を生じた日2022年9月20日2023年2月1日 日本弁護士連合会
被懲戒者は2020年6月頃、Aから懲戒請求者の居所及び住所を調査してほしいと依頼され懲戒請求者の住所等を探索することを承諾し、Aとの間で貸金返還請求事件や損害賠償請求事件を受任していなかったにもかかわらず、同月2日、利用目的欄に「貸金返還請求」等と記載した職務上請求書を使用して、Bを筆頭者とする戸籍謄本、原戸籍謄本及び懲戒請求者の住民票の写しの交付を請求して交付を受け、同年8月にも、利用目的欄に「民事訴訟(損害賠償)」と記載した職務上請求書を利用してBを筆頭者とする戸籍謄本又は原戸籍謄本の交付を請求して交付を受けた。4処分が効力を生じた日 2022年10月11日 2023年2月1日 日本弁護士連合会
県弁護士会は12日、同会所属の松本勝弁護士を11日付けで業務停止4月の懲戒処分にしたと発表した、同会によると松本弁護士は2020年6月依頼人から委任がないにもかかわらず、福島県会津若松市役所に「貸金返還請求」「貸金請求」と記載した職務上請求を行い、住民票の写しなどを取得した。同年8月にも委任が無いまま、同市役所に「民事訴訟(損害賠償請求)」などと記載した職務上請求を行い、戸籍謄本を取得した。
金井塚康弘 大阪 22057 戒告 2023年5月号
処分の理由の要旨 被懲戒者は、2012年頃、探偵事務所Aの代表であったBと顧問契約を締結したところ、Aの調査依頼者Cらの相手方の現住所や家族構成等を確認するために住民票の写しや戸籍謄本等を職務上請求して取り寄せた上、Aに交付し、上記戸籍謄本等の内容がCらにどのように伝わっているか等について全く確認しなかった。また被懲戒者はCらとの間で委任契約書の作成をせず、委任状の徴求もせず、さらにCらから依頼を受けるかどうかにもかかわらず、上記戸籍謄本等の取寄せに当たり、利用目的について「訴訟準備のため」と記載した。処分が効力を生じた日 2023年1月25日 2023年5月1日 日本弁護士連合会
金子利治 旭川 登録番号 13571 戒告 2023年8月号
処分の理由の要旨 被懲戒者は戸籍謄本等の職務上請求を雇用する事務員Aに任せきりにして指導や確認を怠りBから受任した事件につき、2019年4月19日、Aが被懲戒者名で懲戒請求者の母Cの住民票の写しの職務上請求を行う際、相続放棄申述の申立てを受任していないにもかかわらず、職務上請求用紙の利用目的の内容欄に「相続放棄申述の添付書類」と記載し、同月27日にCの戸籍謄本等及び戸籍の附表の写しの職務上請求を行う際並びに同年6月7日に懲戒請求者の戸籍謄本等の職務上請求を行う際にも同様の記載をして、各職務上請求用紙に不実の記載をした。4処分が効力を生じた日 2023年2月14日 2023年8月1日 日本弁護士連合会
被懲戒者は、A及びBから懲戒請求者名義の不動産につき、懲戒請求者に対する処分禁止仮処分命令申立てを受任し、職務上請求手続により懲戒請求者の戸籍謄本を入手したところ、2018年10月31日に仮処分命令の発令を得た後、受任事件と何ら関係性のない懲戒請求者の親族に関する情報で、かつ、一般的には第三者に知られたくないと考えられる情報をA及びBに漏示した。4処分が効力を生じた日 2023年9月27日 2024年3月1日 日本弁護士連合会
(1) 刑罰法規による処罰・資格剥奪の制裁
そもそも、弁護士等の専門家が不正に住民票の写し等を取得することは、犯罪であり、戸籍法、住民基本台帳法、刑法等による処罰が予定されています。そして、それに加え、弁護士法等の士業法に基づく資格の剥奪等の制裁があります。弁護士等の専門家にとっては、資格剥奪は業界における死に等しい制裁であり、そのような危険を冒してまで不正をなすことは極めて稀な例です。
このように弁護士等の専門家は、法の専門家としての自らの使命感に加え、刑罰法規や弁護士法等の士業法の規制によって、不正を防止するための措置が採られているものであり、これをさらに本人通知制度の対象としなければならない必要性はないというべきです。
戸籍法第10条の2
- 前条第1項に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
- 一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
- 二 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合 戸籍謄本等を提出すべき国又は地方公共団体の機関及び当該機関への提出を必要とする理由
- 三 前二号に掲げる場合のほか、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合 戸籍の記載事項の利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由
- 前項の規定にかかわらず、国又は地方公共団体の機関は、法令の定める事務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求の任に当たる権限を有する職員は、その官職、当該事務の種類及び根拠となる法令の条項並びに戸籍の記載事項の利用の目的を明らかにしてこれをしなければならない。
- 第1項の規定にかかわらず、弁護士(弁護士法人を含む。次項において同じ。)、司法書士(司法書士法 人を含む。次項において同じ。)、土地家屋調査士(土地家屋調査士法 人を含む。次項において同じ。)、税理士(税理士法人を含む。次項において同じ。)、社会保険労務士(社会保険労務士法 人を含む。次項において同じ。)、弁理士(特許業務法人を含む。次項において同じ。)、海事代理士又は行政書士(行政書士法 人を含む。)は、受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、その有する資格、当該業務の種類、当該事件又は事務の依頼者の氏名又は名称及び当該依頼者についての第一項各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
- 第1項及び前項の規定にかかわらず、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士又は弁理士は、受任している事件について次に掲げる業務を遂行するために必要がある場合には、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、その有する資格、当該事件の種類、その業務として代理し又は代理しようとする手続及び戸籍の記載事項の利用の目的を明らかにしてこれをしなければならない。