新書庫 『責任の行方』 七人の記者 追及リポート
『 職務上請求 責任の行方 ① 』
先般より当ブログでは、書庫 『 職務上請求不正請求弁護士 』にて、弁士職務における職務上請求における 『戸籍謄本の取得』 について発信しています。また今回、新たに七人の記者リポートとして 『責任の行方』 と題す書庫を設け、七人の記者がテーマを掲げ追求リポートを、取材や公開質問も含めて配信していきます。
今回はその初テーマ 『職務上請求』 です。
弁護士職務による 個人情報等の取得
弁護士には、裁判や調停のなどにおいて、相手方の情報を得ることが許されており、「職務上請求」「会請求(弁護士照会制度)」という制度など存在する。この制度利用により取得する情報は、『住民票』、『戸籍謄本』、『口座情報』などがある。
弁護士組織では、情報の取得に際してこのような意見を述べている。
『市民の法に基づく正当な権利の円滑な実現こそをその目的とするのであり、市民の正当な権利利益の保護のため、職務上請求の円滑な行使が確保されなければなりません』 (京都弁護士会 意見書より)
『弁護士が、依頼者の委任を受けて紛争を解決しようとするとき、事実を立証するための資料を収集することは不可欠です。資料は必ずしも、依頼者が持っているとは限らないので、資料を有していると考えられる官公庁や企業などの団体に対して、必要事項を照会することが必要となることがあります。弁護士には、その職務の公共性から、情報収集のための手段が設けられています。』(日弁連Web 弁護士会から照会を受けた皆様へ より)
確かに、訴訟上判断に不可欠な証拠として必要な情報は、入手する方法が必要であろう。
しかし、この 『職務上請求』、『会請求(弁護士照会制度)』の現在は、『弁護士性善説』ゆえ、成り立っているに過ぎない。
裁判所が判断に必要として請求を認容、もしくは、裁判所が訴訟においてこれら請求するものは、中立性に鑑みられる。他方、これでは『時間が掛かる(正当な利益確保ができない 含む)』、『迅速な訴訟進行ができない』、など諸般理由も存在するのも事実としてある。
しかし、『現在の運用状況』や『弁護士性善説』 の下、『職務上請求』、『会請求(弁護士照会制度)』の構築は 危険 であると断じざるを得ないのではなかろうか。
大阪弁護士会では制度(成立)主旨に向け、こんな意見も述べていた。
『 証拠資料としての必要性』
実体的真実の発見には, 的確な証拠資料及びその収集活動が必要であり, 戸籍謄本等は実体的真実を発見するために極めて貴重な証拠資料であり,その職務請求の制度は極めて重要な証拠資料収集の手段である。すなわち,戸籍謄本等は, 訴訟手続において種々の場面で直接的及び間接的に利用されており, 訴訟に不可欠な証拠資料である。実際に訴訟に関与する者にとって, その重要性は直ちに理解できるところであり,裁判官,検察官, 弁護士で, 戸籍謄本等の訴訟資料としての重要性を否定する者はいないであろう。』
今回記事で発信している 戸籍謄本 の取得理由は・・・
『損害賠償請求事件の訴訟準備のため』 である。
『準備』との記載で交付(※自治体による)されたのである。
『訴訟準備のため』 と記載すれば、正当な弁護士業務と認識してよいのだろうか。
準備で交付
自治体にもよるが、今回のケースでは戸籍謄本取得に際して 『本人(情報当事者)通知』 はしないで交付されている。このような場合 『訴訟の実態』 を問わず、問題の発生が皆無であろうか。
訴訟の実態は問わず、しかも本人通知もない場合、この得た情報はどのように『破棄』されるのであろう。情報は目にした時、その時点で取得達成である。
見聞きしたものを皆無にできないのが 『情報』 である。
このような実態を斜視に鑑みると、これら『個人情報』 を “探偵”や“ジャーナリスト” に渡すなど、つまりは“金稼ぎ” も できる行為である。そして下手すれば、その情報を利用する先には、問題視すべき組織団体までも あるのかもしれない。
他方、弁護士性善説に寄らずとも、『依頼人』 が弁護士を騙す場合もあろう。
つまり、個人情報取得のため 『訴訟を考えている』として、賠償内容を相応にでっち上げ進行し、その情報取得をしたら、訴訟はやめたことにすれば良い。弁護士は依頼人を信用する前提なのだから、『神のみぞ知る真実』 は求められていないとして、懲戒対象にすら無いことは、周知の事実である。
『訴訟の準備』 との理由で戸籍謄本の取得とは、余りに抽象的であり、根拠が足りず、必要最小限には尽くさず許される弁護士業務の実態がここにある。
誰の責任(賠償等)か
そもそも、『漫然な請求』、『抽象的過ぎる請求』、『必要最小限に努めた請求』などの判断は誰に求められているのだろうか?にも関わらず、民事上(賠償)の責任は誰が取るのか。
前述の大阪弁護士会意見書 にはこんな記載も示している。
『 請求事由の判断は困難』
戸籍等関係を担当する公務員が請求事由を見て, その請求の妥当性を適切に判断することは困難である。特に, 弁護士の業務の場合は, 非定型的かつ広範囲であるため,他の法律関連職が請求する場合のように定型的な記載方法を求めることはできないことから, 戸籍等関係の公務員がその請求の妥当性を判断することは,より一層困難である。
そして, 保全事件のように緊急を要する事件もあるところ, 公務員が請求事由を見て交付するかどうかの判断を誤った場合,あるいは, 判断に迷って交付の時期が遅れた場合, 実務的に取り返しがつかない困難な事態が生じる。国家賠償訴訟等に発展する可能性も否定できない』
『公務員が請求事由を見て,その請求の妥当性を適切に判断することは困難である』と明言している。しかし、事件として勃発、明るみになれば 公務員や自治体の長が『責任(民事上の賠償)』を取らされるのである。弁護士は懲戒請求に掛かろうと『戒告』程度で済むのが実情である。
しかも『会請求』の結果であろうと、会長並びに執行責任者の職責辞任はもとより、会の行為であるゆえ、懲戒請求の対象にも成らない。『特段に禁じてない』として逃げ切るのが関の山であろう。
『公務員は、請求の妥当性を判断することは困難』 と認識するのは『弁護士組織』である。にも、賠償責任など民事上責任は現在のところ、公開(情報提供)した側の責任に過ぎない。即ち、開示した方が責任を全うさせられるのである。
会請求について、最高裁が下した判例がある。
前科照会事件 ウィキペディアより
開示した京都市区長が責任を問われたのである。
他方、この判決とは異なる解釈が最近判断されることも多くなっている事実がある。
それを機に、一部の弁護士や組織は、更にこの『会請求』の効力を高めるよう躍起に活動している側面もある。しかし、会請求以前に職務上請求で『訴訟の準備のため』で戸籍謄本全部が開示される実情である。
『漫然と』、『ただ漠然と』、具体的理由も示すこと無く『訴訟準備のため』と示し、これで『職務上請求が成立』するのであれば、何のための『理由』であろうか。
「訴訟の準備」は当然であろう。で・・どのような目的のために、戸籍謄本の記載事項でナニが必要なのだろうか。「抄本」では無く 『謄本』 であれば、多々記載事項も多かろうに。
準備は準備。訴訟はしなかったとすれば「免罪符」、法の規定に罰則の明記が無ければ 「特段に禁じられていない」、これが、まさしく 今の 弁護士職務の実態、管轄の組織実情が表されている。
つづく