日弁連広報誌〈自由と正義〉2017年3月号に掲載された弁護士懲戒処分の公告
第一東京弁護士会の井上義之弁護士の懲戒処分の要旨
報道がありました。読売新聞東京都内版2016年11月11日
「不当な報酬設定」弁護士を業務停止》
第一東京弁護士会は10日、同会所属の井上義之弁護士(45)を業務停止1か月の懲戒処分にした。
発表によると、井上弁護士は2012年1月、依頼者の女性から、夫との離婚や財産分与のほか、夫の不倫相手に対する慰謝料を請求するよう依頼された。しかし、同年6月に夫と関係を修復した女性が依頼を取りやめたところ、所属事務所が定めた基準の2倍以上の報酬を請求した上、不倫相手の女性の代わりに夫が支払った慰謝料数百万円について「報酬に充てる」などと主張して、13年6月まで返還しなかった。
井上弁護士は取材に対し、「合意の上で契約しており、不当な報酬は設定していない。不服申し立てを検討する」としている。
懲 戒 処 分 の 公 告
第一東京弁護士会がなした懲戒の処分について同会から以下の通り通知を受けたので懲戒処分の公告公表に関する規定第3条第1号の規定により公告する
1 懲戒を受けた弁護士
氏名 井上義之
登録番号 34640
事務所 東京都文京区本郷2
冨士見坂法律事務所
2 処分の内容 業務停止1月
3 処分の理由
(1)被懲戒者は2012年1月28日、懲戒請求者から夫Aに対する離婚請求等に関する事件を受任し、また同年4月14日及び同月20日にAの浮気相手であるB及びCに対する慰謝料請求事件をそれぞれ受任したが、大幅な増減を認める正当化事由がないにもかかわらず、A及びBに対する事件については着手金及び報酬金の合計で被懲戒者が採用する事務所報酬基準の2,7倍強の、Cに対する事件については上記報酬基準の3,2倍強の加算を行い、不合理に高額な弁護士報酬を定める委任契約を締結した。また、被懲戒者は、法律的知識や交渉能力において格段に劣っていると考えられる懲戒請求者に対して、上記各委任契約の弁護士報酬に関して、その納得が得られる程度の説明を果たさなかった。
(2)被懲戒者は2012年5月28日にAに対する離婚等請求の調停を申し立て、同月29日にB及びCに対する慰謝料請求訴訟をそれぞれ提起した。被懲戒者はその後AからB及びCに対する請求額の全額である合計550万円を受領したことから、上記各訴訟を同年6月5日及び29日にそれぞれ取り下げ、かつ懲戒請求者の意向によりAに対する上記調停も同日取り下げたが懲戒請求者から上記550万円から費用や未払着手金を控除した残金の返還を求められていたにもかかわらず、不当に返還請求に応じなかった。
(3)被懲戒者は懲戒請求者が2012年10月19日に預り金の返還を求めて紛議調停の申し立てを行ったところ、その手続においてまずは紛争の解決を図るべきであるにもかかわらず、紛議調停を起こされたことに反発して、敵対的な感情に任せて紛議調停の第1回期日が開催される前の同年11月9日に懲戒請求者に対して弁護士報酬支払請求訴訟を
提起した。
(4)被懲戒者の上記行為は弁護士職務基本規定第24条、第29条第1項に上記(2)の行為は同規定第45条に違反し上記(3)の行為は同規定第26条に違反し、いずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する
4 処分の効力を生じた年月日 2016年11月10日 2017年3月1日 日本弁護士連合会