事件終了、委任終了後に裁判資料等を返却しない弁護士の懲戒処分例
弁護士に預けた、書類。証拠等を返却してくれないという苦情が当会に多く寄せられます。預り金や示談金を返還しないケースはたくさんあり、たまに新聞にも載りますが、裁判資料などの書類を返却しないというのも実はよくあります。報道もされません。
(預り金等の返還)
第四十五条 弁護士は、委任の終了に当たり、委任契約に従い、金銭を清算したうえ、預り金及び預り品を遅滞なく返還しなければならない
とありますが、事件が無事に終了すれば弁護士は書類、証拠等を返却してくれるでしょう。ところが問題は、裁判の途中で弁護士を解任した場合です、『あなたを解任して他に頼みます!書類返して下さい』などと言えば弁護士は素直に応じてくれるわけがありません。こういう場合は解任などと言わず、『今回は一旦訴訟を止めたいので』とか言って、とりあえず書類を返却してもらいましょう。次の弁護士に依頼するためにも、我慢して低姿勢で書類を返してもらいましょう。着手金まで返せというと書類は返らないかもしれません。懲戒などは書類が返却された後にしましょう。
敷居は低いのは入口だけで出る時も敷居はとんでもなく高い弁護士もいるということです。
1 処分を受けた弁護士 松本史郎 登録番号21354 東京都千代田区霞が関3 朝日中央綜合法律事務所
2 懲戒の種別 戒告
3 処分の理由の要旨
(1)被懲戒者は当時所属していた法律事務所において、懲戒請求人から委任を受け1994年12月27日、その所有する宅地の売却を行い、1300万円の報酬を請求しこれを受領した。しかしながら、その報酬額については、契約締結交渉として当時、被懲戒者が所属していた大阪弁護士会の当時の報酬規程第11条の2を適用するのが相当であるところ、その売買代金4億3292万6000円を依頼者たる懲戒請求人の得る経済的利益の額として報酬額を計算すると着手金及び報酬金の合計額は標準額で599万6000円を依頼者たる懲戒請求人の得る経済的利益の額の額として報酬額を計算すると着手金及び報酬金の合計額は599万3112円であり、これを同報酬規程第15条第2項の認める範囲で増額したとしても777万3046である。当該売却にはさしたる法律問題はなかったこと等を考慮すれば上記売却についての担当弁護士として被懲戒者が請求し受領した報酬は不当に高額であり、弁護士は適正・妥当な報酬を定めなければならないとする弁護士倫理第37条に反する。
(2)被懲戒者は1997年5月9日、懲戒請求人から上記依頼案件に関して預けられた資料の返還請求を受けながら、これを2001年2月6日まで返還せず、この間、その一部の資料につき懲戒請求人に対し既に返還済ではないか等の発言をしてその感情を害したり、懲戒請求人からの督促に対し探索のための猶予を求め、その結果についての連絡を約束しながら資料が発見できなかったため連絡を怠り、あるいは懲戒請求人が被懲戒者及び上記法律事務所に対し文書での回答を求めたことに対しこれに応じない等懲戒請求人に対し真摯に対応しなかった。
(3)被懲戒者の上記行為は、弁護士は事件に関する預かり品の返還等を遅滞なく行わなければならないとする弁護士倫理第40条に悖るばかりでなく、弁護士の誠実義務に反し、弁護士の信用を害するものである。4処分の効力が生じた日 2002年9月17日2002年 12月1日 日本弁護士連合
懲 戒 処 分 の 公 告
1 懲戒を受けた弁護士 萩尾孝至 登録番号22364 萩尾法律事務所
2 懲戒の種別 戒告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は1999年1月25日懲戒請求人から、その勤務先に対する不当配置転換等を理由とする損害賠償請求訴訟につき、着手金10万円を受領してこれを受任したところ、同年3月19日同人から訴訟提起の中止、並びに上記着手金及び受任後に受領した訴訟資料等の返還方の要請を受け、これにより上記訴訟委任契約が失効したにも拘わらず、訴訟資料等については2001年2月27日、着手金いついては2001年11月10日までいずれも返還しない等、同訴訟委任契約執行に基づく事件に関する金品の清算、協議等を遅滞なく行わなかった。また、被懲戒者は懲戒請求人との間における上記着手金及び訴訟資料等の返還に関する紛議調停申立事件について事情聴取のため紛議調停委員会から2000年4月10日、同月18日、同年5月9日の各期日に出頭するよう書面をもって呼び出しを受けながら、正当な理由なくそのいずれの期日においても出頭しなかったものである。
懲 戒 処 分 の 公 告 2017年5月号
1処分を懲戒を受けた弁護士氏名 西坂清孝 西坂清孝法律事務所 大阪弁護士会
2 処分の内容 戒 告
3 処分の理由の要旨
(1)被懲戒者は、懲戒請求者に対し、被懲戒者が第三者から受任した事件を2014年8月22日に解任された理由が懲戒請求者から依頼を受けた団体Aとの打合せ等の協力業務で多忙を極めて事件処理が遅れたためであるとして、正当な理由なく、上記第三者に返還したとする30万円を損害金として請求した。
(2)被懲戒者は懲戒請求者から受任した訴訟事件が2014年4月には全て終了しているにもかかわらず、懲戒請求者に対し2015年6月2日付け書面にて、上記30万円の支払と引き換えでなければ懲戒請求者から受任した訴訟事件において入手し預かり中である病院作成のカルテつづり一式を返還しないと通知して返還を拒み、また懲戒請求者が返還を求めているその他の書面を、上記事件の終了後2年半を経過しているにもかかわらず返却しなかった。
4処分が効力を生じた年月日 2016年12月26日2017月5月1日 日本弁護士連合会
懲 戒 処 分 の 公 告 2015年7月号
1 懲戒を受けた弁護士 氏 名 中谷 茂登録番号 12504 大阪弁護士会 中谷茂法律事務所 2 処分の内容 戒 告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は懲戒請求者との間で交通事故に関する自賠責保険の請求を行う内容の委任契約を締結し、懲戒請求者から後遺障害診断書、印鑑証明書、事故状況説明書等の書類を預かり、上記書類を保険会社に提出して自賠責保険の請求を行った後、2012年2月1日に必要書類の提出がないと上記保険会社から上記書類の返却を受けたが2013年4月8日に懲戒請求者から委任契約を解除する旨の内容証明郵便を受領した後も上記書類を返還せず、同年末までに上記書類を紛失した。4処分が効力を生じた年月日 2016年5月31日2015月7月1日 日本弁護士連合会
懲 戒 処 分 の 公 告 2013年11月号
1 懲戒を受けた弁護士氏 名 牛木 純郎 茨木弁護士会 登録番号 40630牛木法律事務所
2 処分の内容 戒 告
3 処分の理由
(1)被懲戒者は2010年6月8日懲戒請求者らから、懲戒請求者らの子の死亡に関連するいじめ等の有無について、勤務先会社等に対して社内調査等を要請すること等を内容とする事件を受任して着手金20万円を受領し事件資料を預かった。被懲戒者は同年7月2日上記会社等に対し受任通知を発送し調査結果の報告等を求め上記会社からの同月12日付け回答書に対し同月30日付け書面をもって更に必要な調査等を求める旨通知し同年8月2日付け書面をもってそれまでの経過を懲戒請求者らに報告した。その後、被懲戒者は上記会社側から同月9日付け書面によりこれ以上の調査は不要との明確な回答を受領する等したが2012年7月27日内容証明郵便により委任契約を解除されるまでの間、懲戒請求者らに対し何等らの報告もしなかった。
(2)被懲戒者は懲戒請求者から上記内容証明郵便により預けた事件資料の返却等を求められたが2012年10月3日まで返却しなかった。
4 処分の効力を生じた年月日 2013年7月17日2013年11月1日 日本弁護士連合会
1 懲戒を受けた外国法事務弁護士氏名 アネット・マリー・エデイ・キャラゲイン 登録番号G176
事務所 沖縄県宜野湾市伊佐2 イーシー外国法事務弁護士事務所
2 懲戒の種別 戒 告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は2006年9月13日懲戒請求者から外国の裁判所に係属していた事件について現地時間同年10月2日午後5時までに書面を提出する必要があるため現地の外国弁護士を探すことの依頼を受け上記事件に関する書類を懲戒請求者から預かった被懲戒者は懲戒請求者の代理を行ってくれる現地の外国弁護士を見つけ懲戒請求者に連絡し被懲戒者の事務所を訪れた懲戒請求者に説明の上、翌週月曜日までに以来するか否かの返事をくれるよう頼んだ。その後懲戒請求者のいとこが被懲戒者の事務所を訪れ上記書類の返還を要求したが、被懲戒者の事務所の事務員からコピーを取ったら返却すると回答されその後懲戒請求者は被懲戒者に対し同年9月25日紹介された外国弁護士に委任しないことに決定した旨を伝え、上記書類の返還を求め、さらに同月27日及び同月29日にも強く返還を求めたが被懲戒者は「引っ越し中でみつけることができない」という趣旨の返事をするのみであった。被懲戒者は同年10月3日本件書類を返還する旨を伝えたが、実際に返還されたのは同月11日であった。被懲戒者の上記行為は弁護士職務基本規定第45条を準用する。
外国特別会員基本規定第30条の2第1項の規定に違反して書類を遅滞なく返還しなかったものであり外国弁護士による法律事務の取り扱いに関する特別措置法第51条第1項に定める外国事務弁護士としての品位を失うべき非行に該当する
4 処分の効力の生じた日2009年10月16日2010年2月1日 日本弁護士連合会
1 懲戒を受けた弁護士氏名 竹 川 進 一 登録番号14702 長野県弁護士会 長野県弁護士会 弁護士竹川進一法律事務所
2 懲戒の種別 戒 告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は懲戒請求者A及びBを含むA、B及びCから申立人DがAら相手方として申し立てた母親の扶養料をめぐる扶養申立調停事件において委任を受けた。被懲戒者は2007年11月16日の期日において調停委員より、調停案に承諾しないB及びCを説得するため次回期日にAら本人を出席させるよう求められたにもかかわらず、調停より審判で決する方がAらに有利であるとの独断からAらに対し期日に出席を求められていることに及び次回期日の報告をしなかったそのため2008年1月25日に調停は不調となり審判に移行したが被懲戒者は同年3月26日にAから調停の進行について問い合わせを受けるまでその旨をAらに連絡しなかった。また審判期日が同年4月25日と定められたが同日はAが希望日として被懲戒者に伝えていた日時ではなく被懲戒者はこれを同月19日になってAに連絡したが既に裁判所に直接問い合わせで同期日を了知していたAは同月21日被懲戒者を会にした被懲戒者は同年3月26日Aからの上記問い合わせの際、調停の経過報告書を送る旨連絡をしたが、審判期日である同年4月25日になるまでこれを送らず、また上記のとおり解任されているにもかかわらず、同年6月27日になるまで、受任以来受領していた資料類をAに返却しなかった被懲戒者の上記行為は弁護士法第56条第1項に定める品位を失うべき非行に該当する
4 処分の効力の生じた日2009年10月14日 2010年2月1日 日本弁護士連合会