意思確認を十分にせず相続事件、遺産分割事件、財産管理等のおこなった弁護士の懲戒処分例。
事理弁識能力を欠いている依頼者からの事件受任の処分例
自由と正義に掲載された懲戒処分の要旨の一部です
懲戒処分の公告 2017年5月号
懲戒を受けた弁護士氏名 宮 崎 好 廣 登録番号 15779 処分の内容 戒 告 第一東京
処分の理由の要旨 被懲戒者は、亡Aの相続人の一人である懲戒請求者が2010年7月に申し立てた亡Aの遺産分割調停事件について、B弁護士と共に亡Aの妻C及び子Dらから受任したが、懲戒請求者がCについて後見開始及び成年後見人選任の申立てを行っており、Cの意思能力に関して、上記調停事件の当初から調停委員ひいては裁判所が強い関心を示しており、被懲戒者自身も2011年6月27日に行われた第5回調停期日についてDらに対し「調停手続はお母さまの成年後見開始手続の進捗を見た上での進行となります」と報告していることから、同日以降、速やかにCと面会をしてCの意思能力の有無及び程度を直接確かめるべきであり、また同年8月29日の第6回調停期日においては、Cの意思能力について報告と意思能力の程度に応じた適切な対処をすべきであったにもかかわらず、これを怠り、結果として上記調停事件は2012年1月30日の第9回調停期日においてCの意思能力に問題があるので「調停をなさず」として終了し、上記調停事件の進行に関する裁判所の判断を遅らせる等した。 2017年2月6日
懲戒処分の公告 2009年2月号
氏名 古川 雅朗 登録番号27751 奈良弁護士会 戒告
懲戒の理由の要旨
被懲戒者は2006年12月、Aの妻BからAの亡父の遺産の分割協議に関して依頼を受けた。被懲戒者はAがかつて病気で判断能力が低下した状態であることを知っており、委任する意思確認があるかどうかについて疑問を抱いていながらAと会わず、その意思を確認せずにBの依頼のみで遺産分割協議事件を受任し同月19日付懲戒請求者に受任通知を送付した、また被懲戒者は上記のとおりAの意思能力に疑問を抱いていながら2007年7月31日までAと面談せず速やかにその意思及び意思能力を確認しなかった。
処分の効力の生じた日2008年10月10日2009年2月1日 日本弁護士連合会
懲戒処分の公告 2014年5月号
懲戒を受けた弁護士氏名 佐藤敦史 登録番号 10366 第二東京 処分の内容 戒告
処分の理由の要旨 被懲戒者は2010年10月29日頃、Aの財産管理を行っていたAの親族である懲戒請求者に対し、Aの代理人として懲戒請求者がAの現金及び預金を勝手に自己のために費消していると断定的に記載し、業務上横領罪又は背任罪で刑事告訴することを予告する内容の通知書を送付した。被懲戒者は上記通知書の作成にあたりAと旧知のBからの伝聞のみに基づいて上記通知内容を記載し裏付けとなる事実関係の調査を行わなかった。被懲戒者はAが認知症により近々成年後見制度を利用する予定であることを認識していたにもかかわらずAに面談して直接事情を聴取するなどAの意思確認のための適切な方法を講じなかった。2014年2月5日
懲戒処分の公告 2015年2月号
懲戒を受けた弁護士 氏名 阿野順一 登録番号 37238 横浜(神奈川) 戒告
処分の理由の要旨 被懲戒者は2012年11月22日、懲戒請求者から懲戒請求者の母Aを被後見人とする成年後見開始申立事件を受任し2013年1月31日に申立てを行った被懲戒者は同年2月28日懲戒請求者からAを遺言者とする公正証書遺言の作成を依頼されAの意思能力が制限されており、将来遺言の効力が争われる恐れがあることを十分に認識しながら、これを受任した。被懲戒者は同年4月4日に公正証書遺言を作成するにあたり、事前にAと面談して遺言の内容を確認せず、またAの意思能力を確認せず、またAの意思能力を確認するための手立て講じなかった。2014年11月10日
懲戒処分の公告 2012年11月号
懲戒を受けた弁護士氏 名 山崎宏征 登録番号 20891 第一東京 処分の内容 戒 告
処分の理由の要旨 被懲戒者は2007年11月8日懲戒請求者の母A及び懲戒請求者の妹Bの訴訟代理人として懲戒請求者らに対して墓所使用権の確認を求める訴訟を提起した。上記訴訟の紛争の実態はAの財産管理をめぐるBと懲戒請求者の争いであり、その請求内容も単純、簡単な争いではなく、またAは高齢で保佐の審判を受けた後、脳梗塞により長期間入院していた。これらの事情に鑑みると被懲戒者は訴訟の提起にあたり直接Aに会って委任の意思及び訴訟能力の有無を確認すべきであった。しかし被懲戒者はこれを怠りBを通じてAの訴訟委任状を受け取るだけで上記訴訟を提起した。その結果訴訟はAの訴訟能力が否定され却下された。 2012年7月27日
懲戒処分の公告 2011年11月
懲戒を受けた弁護士氏名 中村尚達 登録番号 13881 長崎県弁護士会 処分の内容 戒 告
処分の理由の要旨 被懲戒者は2008年5月下旬、AからAの母親Bについて成年後見開始について成年後見開始の審判申立の依頼を受け、Bの診断書からBについて保佐が妥当であると判断した。その後、被懲戒者はAら及びBを相手方として懲戒請求者が申し立てた遺産分割調停事件に関し、2008年7月8日AらからAらとBの代理人となることを依頼された。被懲戒者は遺産分割調停事件を受任するにあたり、Bに面談して遺産分割調停事件を受任するにあたりBに面談して遺産分割の方法についての意向及び保佐開始の審議申立てについて意向を聴取しBの依頼意思を確認すべきであったにもかかわらずこれを怠ったまた被懲戒者はBの代理人を辞任するにあたりBに面会して意思を確認し信頼関係が失われ、その回復が困難であるか否かを判断した上で、その旨を説明して辞任の意思を伝えるべきであったにもかかわらずこれを行わず2008年9月12日に裁判所へ辞任届を提出した。 2011年7月27日
懲戒処分の公告 2010年8月号
懲戒を受けた弁護士氏名 小林雄資 登録番号 27106 静岡県 処分の内容 戒 告
処分の理由の要旨 相続人Aらは同Bらを相手方として2006年7月遺産分割調停の申立を行い、その後Aらは弁護士である懲戒請求者をBらは被懲戒者をそれぞれ選任した。同調停は審判に移行した後2008年7月18日に審判がなされBらは同月25日に即時抗告を申し立てたが同年9月12日に同抗告を棄却する決定がなされ、その後同決定は確定した。被懲戒者はAが懲戒請求者を訴訟代理人に選任して提起したBに対する離縁請求訴訟においてBの訴訟代理人に就任し同訴訟が継続中という状況の下、BがAとの間で上記遺産分割審判によってAが取得することとなった不動産の持分をBらに取得させること等を内容とする合意書を作成するに当たり、懲戒請求者の承諾を得ずに当該合意書の基となる書面をBに渡した。通常、長期間にわたって争われた遺産分割審判の内容を大きく変更する合意がなされることは極めて希であるところAが本件合意書作成時91歳と高齢であり他者の影響を受けやすい年齢であること、遺産分割審判後もAとBとの間で離縁請求訴訟が係属していたことを考慮すれば本件合意書がAの真意に基づき作成されたものであるか否かをめぐり将来紛争が生じることは容易に想像できるから、このような場面では相手方当時者の代理人を通じて交渉に当たることが求められるしたがって被懲戒者の上記行為は弁護士職務基本規定第5条、第70条及び第71条に違反し弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する 2010年4月6日会
懲戒処分の公告 2016年6月号
懲戒を受けた弁護士氏名 中尾健一登録番号 42517 宮城県 処分の内容 戒告
処分の理由の要旨 被懲戒者は懲戒請求者の長男Aから懲戒請求者らへの求償金債権の代物弁済として懲戒請求者らが所有する不動産の譲渡を受けることについての示談交渉を受任し2013年2月14日不動産登記法所定の本人確認情報を作成することを目的として懲戒請求者と面談した。被懲戒者は植物状態に準ずる状態が1年以上続いている旨の医師の診断書等の客観的証拠から懲戒請求者が当時事理弁識能力を欠いていることが明らかで、かつ75歳と高齢で長期間入院して寝たきりの状態であること等の説明を受けていたことから、法律専門家として懲戒請求者の意思能力に疑問を抱き。本人確認情報提供制度が専門識者に一定の公証機能を付与した制度であることを踏まえ、面談に当たって親切丁寧かつ慎重に本人確認すべきところ十数分間、本人確認から権利取得経過等の一連の事項について、テスト的な質問を除き全てイエスの答えを求める質問をしてまばたきで回答するという極めて形式的かつ表面的な方法で面談を行い、またAから受領した懲戒請求者の本人確認書類を懲戒請求者から交付を受けた旨の事実に反する記載を行うなどして本人確認情報を作成し、同月19日、上記不動産について代物弁済を原因とする所有権及び共有部分の移転登記を行った。 2016年2月10日