弁護士自治を考える会

弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」に公告として掲載された懲戒処分の要旨、当会では細かく処分内容を分類しています。

弁護士職務基本規定 (依頼者の意思の尊重)第二十二条 弁護士は委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重して職務を行うものとする。第三十七条 弁護士は事件の処理に当たり、必要な法令の調査を怠ってはならない。2 弁護士は事件の処理に当たり必要かつ可能な事実関係の調査を行うように努める

「依頼者の意思確認せず提訴等 処分例」
依頼者の意思を確認せず、また身内のものから依頼を受けたが本人確認をしていなかったので後にもめ事になったケースです。一番多い事件は相続事件です。「相続に関しての意思確認せず提訴」は別に書庫があります。https://jlfmt.com/2017/06/14/31338/
山岸宏彰 東京 24719 戒告 自由と正義 2023年11月号

処分の理由の要旨 被懲戒者は、懲戒請求者の委任意思を確認することなく、権限がない状態で、懲戒請求者の代理人として、2017年10月6日、A株式会社に対し、契約上の義務の履行を催告する内容証明郵便を送付し、同年11月20日にもA社の代理人であるB弁護士に2回目の内相証明郵便を送付した。2023年5月18日 2023年11月1日 日本弁護士連合会

小林茂和 第一東京 20179 戒告 自由と正義 2023年11月号

処分の理由の要旨 被懲戒者は、2018年2月上旬、懲戒請求者の父Aから、株式会社Bに対する懲戒請求者の実弟Cのクレジットカード利用債務の債務整理の相談を受けC名義の債務の債務整理を受任するにあたりCと面談はおろか、電話、電子メールその他一切のやりとりをせず、またAに対して、Cが海外にいる旨及びその生年月日を聞いた以外にCに代理人として同月14日付けでB社に受任通知を送付して交渉を行い、またCへの直接の意思確認を行わずに、同年5月25日付けでB社との和解契約を締結した。2023年5月30日 2023年11月1日 日本弁護士連合会

西野泰夫 愛知 19613 戒告 自由と正義 2023年9月号

処分の理由の要旨 被懲戒者は2020年5月27日、Aの意思確認を確認しないまま、Aの代理人として、Bに対しエステ施術契約を解除する旨を記載した催告書を内容証明郵便にて送付した。 2023年4月26日 2023年9月1日 日本弁護士連合会

金子利治 旭川 13571 戒告 自由と正義 2021年7月号

処分の理由の要旨 (1)被懲戒者は、2017年3月、懲戒請求者の母Aとの間で通帳の保管等の財産管理の依頼を受けるに当たり、Aが事理弁識能力に欠ける常況にあったことを認識し得たにもかかわらず、同人の意思確認を十分にしなかった。

(2)被懲戒者は、上記(1)の依頼を受けるに当たって、委任契約書を作成することが困難な事由もなく、契約書を作成しない合理的理由もないにもかかわらず、委任契約書を作成しなかった。

湯浅勝喜 神奈川 41932 戒告 自由と正義 2019年2月号

処分の理由の要旨(1)被懲戒者は、懲戒請求者の子であるA及びBを被告とする訴訟事件について、懲戒請求者との間で2017年3月13日付けの委任契約書を作成し、懲戒請求者から同日付けのA及びB名義の委任状の交付を受けたものの、A及びBの意思を直接確認することなく、訴訟遂行し、上記事件の取下げに同意した。(2)被懲戒者は上記(1)の事件に関して懲戒請求者から着手金を受領し、かつ報酬請求権が発生していないにもかかわらず、懲戒請求者との明確な合意なくして、その指示によりBの意思を確認することなくBが加入している保険会社に対して着手金として保険金を請求し2017年5月17日にその支払いを受けた。2019年9月25日

直井雅人 東京  21169  戒 告 自由と正義 2019年8月
処分の理由の要旨 被懲戒者は、懲戒請求者Aから共済金詐欺に係る金銭返還の示談交渉事件及び債務整理のための受任通知送付、過払金返還請求訴訟、自己破産申立ての準備並びに懲戒請求者A及び懲戒請求者Bから時間外賃金請求訴訟への応訴事件について、各依頼を受けたが、契約当時者としての委任契約書の署名及び押印並び費用等説明書の説明を受けた旨の署名及び押印はいずれも懲戒請求者ら代理人の肩書を付した懲戒請求者の親族であるCが行い、懲戒請求者らとの間で直接これらの書類等を作成及び交付せず、Cを通じて行った。  2019年4月17日

阿野順一 神奈川 37238 戒告 自由と正義 2015年2月                 

処分の理由の要旨 被懲戒者は2012年11月22日、懲戒請求者から懲戒請求者の母Aを被後見人とする成年後見開始申立事件を受任し2013年1月31日に申立てを行った被懲戒者は同年2月28日懲戒請求者からAを遺言者とする公正証書遺言の作成を依頼されAの意思能力が制限されており、将来遺言の効力が争われる恐れがあることを十分に認識しながら、これを受任した。被懲戒者は同年4月4日に公正証書遺言を作成するにあたり、事前にAと面談して遺言の内容を確認せず、またAの意思能力を確認せず、またAの意思能力を確認するための手立て講じなかった。2014年11月10日

安達浩之 第二東京 39546 業務停止1月 自由と正義 2017年4月
処分の理由の要旨 (1)被懲戒者は2013年12月19日にAの道路交通違反被告事件の上告審の国選弁護人に選任されたが、上告趣意書を提出するにあたAの意思を確認しなかった。(2)被懲戒者は2013年11月12日にBの建造物侵入、非現住建造物等放火及び道路交通法違反被告事件の上告審の国選弁護人に選任されたがBが6件の公訴事実のうち4件の放火事件について無罪を主張しており、またBから上告趣意書の作成に当たっての明確な要望を内容とする書面等の送付を受けていたにもかかわらず上告趣意書を提出するに当たり、Bの意思を確認しなかった。 2016年12月19日 
伊東章  第二東京 12657 業務停止3月⇒2月変更) 自由と正義 2017年11月

採決の理由の要旨 (1)審査請求人にかかる本件懲戒請求事件につき第二東京弁護士会は(以下「原弁護士会」という)は、審査請求人が①法律上有効とはいえない委任状を取得した上で、依頼者本人の意向を確認せず、代理人として依頼者の債権者に対し破産手続開始の申立を準備中である等の旨の介入通知書を発送したこと②依頼者と対立する者らの不正な計画を認識し得る立場にありながら、これを重大な過失により認識せず、依頼者の意思を何ら確認することなく同計画の実現に結果的に寄与したこと、がいずれも弁護士の品位を失うべき非行に該当するとし、業務停止3月の処分とした。(業務停止2月に変更)2017年8月25日  

月本善也 神奈川 25626 戒告 自由と正義 2018年4月 
処分の理由の要旨 被懲戒者は、株式会社A,その代表取締役B、及びA社の取締役又は監査役として登記されているCら5名の計5名の計7名が懲戒制球者から訴えられ、欠席裁判で第1審が終了した事件について、2014年6月30日にA社及びBの控訴の委任を受け、かつ、Bの要請によりCらの控訴審における代理人になることを引き受けて、同年7月7日頃、BがCらの控訴委任状を持参したことから、Cらの委任意思を確認せず、同月8日にA社、B及びCらの代理人として控訴を提起したものの、控訴提起後すみやかにCらの委任意思を直接確認することを怠り、さらにCらの訴訟委任状の真正に疑念を持ち、同年10月15日にそれを裏付ける懲戒請求者の代理人から指摘を受けた以降もCらの委任意思を直接確認する行動をとることは全くないままに、Cらの代理人として漫然と無権代理行為である訴訟活動を遂行した。2017年12月5日 

塚本晶也 千葉 34424 戒告 自由と正義 2018年5月号   

処分の理由の要旨 被懲戒者は、株式会社Aが裁判所から再生計画決定を受けたところ、Bから懲戒請求者に対する債権譲渡を前提とする再生債権の配当金1018万2035円について、懲戒請求者との面談や委任意思の確認を怠り、委任がないにもかかわらず、旧債権者をB、新債権者を懲戒請求者、被懲戒者を新債権者代理人とする2015年4月22日付け再生債権の名義変更届出書をA社に送付し、同年5月20日にA社に送金した上記配当金を懲戒請求者の代理人として受領し、また懲戒請求者に対して何ら連絡もしないまま、Bらの要求に従って、その全額をBの預金口座に送金した。2018年2月13日 

宮下朋子  福島  48294   戒告  自由と正義  2019年8月号

処分の理由の要旨 被懲戒者は、法律事務所を共にするA弁護士と共に、懲戒請求者の母B及び祖父Cから、懲戒請求者の兄Dの死亡事故に関して、Dの勤務先及びその役員であった懲戒請求者の父Eに対する損害賠償請求事件を受任したところ、2017年9月28日、Cが懲戒請求者の名義を冒用した訴訟委任状の筆跡を確認せず、これを信用し懲戒請求者と面談せず、電話その他の手段による意思確認もせずに、その意思に反して、B及びCと共に懲戒請求者を原告の一人として上記事件について訴訟を提起した。2019年4月11日https://jlfmt.com/2019/08/28/39964/

高橋直也  福島  38070  戒告   自由と正義  2019年8月号

分の理由の要旨 被懲戒者は、法律事務所を共にするA弁護士と共に、懲戒請求者の母B及び祖父Cから、懲戒請求者の兄Dの死亡事故に関して、Dの勤務先及びその役員であった懲戒請求者の父Eに対する損害賠償請求事件を受任したところ、2017年9月28日、Cが懲戒請求者の名義を冒用した訴訟委任状の筆跡を確認せず、これを信用し懲戒請求者と面談せず、電話その他の手段による意思確認もせずに、その意思に反して、B及びCと共に懲戒請求者を原告の一人として上記事件について訴訟を提起した。 2019年4月11日https://jlfmt.com/2019/08/27/39957/

江口公一  東京  21159  業務停止3月  自由と正義 2019年3月号
処分の理由の要旨 被懲戒者は、懲戒請求者及び懲戒請求者が代表取締役を務めていたA株式会社が被告として訴えられた訴訟において、懲戒請求者に対する訴状の送達が就業場所であるA社本店所在地においてその従業員に交付する方法によって行われる等したため、懲戒請求者は、自分を被告とする訴訟が提起されたことを知らなかったところ、第三者から2011年10月11日付けの懲戒請求者名義の訴訟委任状の交付を受けて訴訟代理人となるに当たり、面談や電話その他の方法のいかんを問わず、懲戒請求者に対して直接訴訟委任の意思確認を行わずに訴訟代理人として訴訟を行い、懲戒請求者に対して経過説明や訴訟追行について協議する等をせず、その同意を得ずに2012年5月17日に裁判上の和解を成立させた。 2018年11月28日
https://jlfmt.com/2019/04/06/32188/
新谷充則 大阪  17543 戒告  自由と正義 2018年6月号 日弁連異議
処分の理由の要旨
(1)被懲戒者は、懲戒請求者名義の債権譲渡通知書(以下「本件通知書」という)を作成するにあたり、譲渡人である懲戒請求者の債権譲渡意思を直接確認せず、依頼者であるA社の従業員Bの「懲戒請求者の同意を得た」との言を信じ、懲戒請求者の債権をA社に譲渡する旨の本件通知書を、被懲戒者が自ら購入した懲戒請求者名義の三文判を押印して、懲戒請求者の債務者であるCに対し内容証明郵便の発送者に対する郵便局からの通知により、本件通知書の発送の事実を知り、不審に思い調査をして初めて懲戒請求者の債権が無断でA社に譲渡されている(以下「本件債権譲渡」という」事実を知った。
大阪弁護士会(以下「原弁護士会」という)は、被懲戒者の本件行為につき被懲戒者を懲戒しない旨決定した。
(2)しかし、本件通知書にかかる被懲戒者の本件行為は、作成名義人が承諾していない文書の作成及び発送であり、弁護士として認められる行為ではない。被懲戒者は懲戒請求者と面談するか又は同意書の提出を求めるか、少なくとも電話等によって直接、懲戒請求者の承諾を得るべきであった。したがって、被懲戒者がA社の従業員であるBの言を安易に信じた行為には重大なる過失があったと評価するのが相当である。
また、本件行為後の事情として、A社のCに対する共有物分割等請求訴訟において、被懲戒者はA社の代理人として本件債権譲渡に係る金銭債権を請求していたところ、懲戒請求者が本件債権譲渡の承諾をしていなかったことを知ってから約1年間、懲戒請求者から追認を得られる具体的な見込みもないのに、無効な本件債権譲渡にかかる債権額部分の請求金額について訴の減額変更をせず、また、裁判所及び相手方代理人にその事実を告知しないまま訴訟を遂行したという事情も認められる。ttps://jlfmt.com/2018/07/10/31861/
真尾 亮  福岡  18136   業務停止1年  自由と正義 2018年5月号

処分の理由の要旨 (1)被懲戒者はAに対して1995年から2000年まで4件の受任通知を発したが事件処理を行わなかった。(2)被懲戒者は2013年8月から2015年11月までの28か月分の会費を滞納した。(3)被懲戒者は2014年3月24日に所属弁護士会から業務停止1年の懲戒処分を受けたが、その業務停止期間中にBら数名の依頼者の分割弁済等の業務を怠った。(4)被懲戒者は北九州市内の登録事務所以外に2015年8月頃から同年11月頃まで福岡市内にC法律事務所を開設し、また2016年2月から同年6月1日まで福岡市内にD法律事務所を開設した。(5)被懲戒者はE株式会社に対して25名分の委任状を提出したが、依頼者の意思確認をしないまま提出した可能性が否定できず、またこれらの者と面談をせず、委任契約書を作成しなかった。(6)被懲戒者はC法律事務所をFが実質的オーナーである有限会社Cの事務所の一画に開設し、家賃を負担せず、独自に事務員を雇用していなかったところ、「C法律事務所 事務長」なる名刺を所持しG社のホームページに「示談交渉や訴訟の額の助言も徹底サポート」等と掲載していたFに対する監督義務に違反した。(7)被懲戒者は預り金について記録を一切残しておらず、依頼者に対して預り金の収支を報告しなかった。  2018年2月13日 https://jlfmt.com/2018/06/06/31816/

古川雅朗  奈良  27751  戒告 自由と正義 2009年2月号

処分の理由の要旨 被懲戒者は2006年12月、Aの妻BからAの亡父の遺産の分割協議に関して依頼を受けた。被懲戒者はAがかつて病気で判断能力が低下した状態であることを知っており、委任する意思確認があるかどうかについて疑問を抱いていながらAと会わず、その意思を確認せずにBの依頼のみで遺産分割協議事件を受任し同月19日付懲戒請求者に受任通知を送付した、また被懲戒者は上記のとおりAの意思能力に疑問を抱いていながら2007年7月31日までAと面談せず速やかにその意思及び意思能力を確認しなかった被懲戒者の上記行為は弁護士法第56条第1項の品位を失うべき非行に該当する2008年10月10日 https://jlfmt.com/2017/01/24/31127/

佐藤敦史 第二東京 10366 戒告  自由と正義 2014年5月号

処分の理由の要旨 被懲戒者は2010年10月29日頃、Aの財産管理を行っていたAの親族である懲戒請求者に対し、Aの代理人として懲戒請求者がAの現金及び預金を勝手に自己のために費消していると断定的に記載し、業務上横領罪又は背任罪で刑事告訴することを予告する内容の通知書を送付した。被懲戒者は上記通知書の作成にあたりAと旧知のBからの伝聞のみに基づいて上記通知内容を記載し裏付けとなる事実関係の調査を行わなかった。被懲戒者はAが認知症により近々成年後見制度を利用する予定であることを認識していたにもかかわらずAに面談して直接事情を聴取するなどAの意思確認のための適切な方法を講じなかった。被懲戒者の上記行為は弁護士職務基本規定第22条及び第37条第2項に違反し弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。 2014年2月5日  https://jlfmt.com/2014/05/29/29760/

山崎宏征 第一東京 20891 戒告  自由と正義 2012年11月号

処分の理由の要旨 被懲戒者は2007年11月8日懲戒請求者の母A及び懲戒請求者の妹Bの訴訟代理人として懲戒請求者らに対して墓所使用権の確認を求める訴訟を提起した。上記訴訟の紛争の実態はAの財産管理をめぐるBと懲戒請求者の争いであり、その請求内容も単純、簡単な争いではなく、またAは高齢で保佐の審判を受けた後、脳梗塞により長期間入院していた。これらの事情に鑑みると被懲戒者は訴訟の提起にあたり直接Aに会って委任の意思及び訴訟能力の有無を確認すべきであった。しかし被懲戒者はこれを怠りBを通じてAの訴訟委任状を受け取るだけで上記訴訟を提起した。その結果訴訟はAの訴訟能力が否定され却下された。2012年7月27日 https://jlfmt.com/2012/12/02/29178/

浅野憲一 東京 13843 業務停止2月 自由と正義 2009年5月号

処分の理由の要旨 被懲戒者は2005年8月ごろ知人Aを介して懲戒請求者から、同人が賃借している店舗の明渡しに関する交渉を受任した。被懲戒者は賃貸人の代理人弁護士と協議を重ねたがAに経過報告をしていただけで懲戒請求者に交渉経過の報告をせず2006年6月21日相手方から明け渡し料4500万円を支払う旨の条件提示を受け、翌日了承した際も、同月30日に合意書の調印をおこなう際も懲戒請求者の意思確認をしなかった。弁護士は依頼された交渉について依頼者の真意をその都度直接確認するよう努めなければならないところ、被懲戒者はこの義務に違反した合意調印日である同月30日被懲戒者はAを通じて懲戒請求者を事務所に呼び出し高額の報酬とすることについて懲戒請求者に十分な事前説明をせず、その了承を得ていないまま明け渡し料4500万円から弁護士報酬として合計1250万円を支払わせる念書を取り付け未だ受領していない内金2500万円の領収書を作成させて帰途につかせたその上で被懲戒者は相手方から明渡し料内金2500万円を受領しその中から750万円を受領して残金はAに引き渡したが懲戒請求者に対しては領収書すら送付しなかった以上の被懲戒者の行為は依頼者に対する誠実事務に違反するもので弁護士法第56条第1項に定める品位を失うべき非行に該当する 2009年2月10日https://jlfmt.com/2009/11/24/28341/ 

(事理弁識能力)依頼者からの意思確認を十分にせず、相続事件、財産管理、遺産分割事件等を行った弁護士懲戒処分例