弁護士の懲戒処分を公開しています。
日弁連広報誌「自由と正義」2017年7月号に公告として掲載された弁護士の懲戒処分(変更)の懲戒処分の要旨
審査請求人は2015年6月30日に戒告処分を受けたが、処分は不当であると日弁連に審査請求を申立て2017年4月11日「処分なし」に変更された。
処分の理由は、対象弁護士は介護施設側の顧問弁護士でありながら介護利用者その家族に、介護施設からの立ち退きを迫り、同時にお年寄りに心無い言葉を吐いたという理由。録音もあり発した心無い言葉は事実であり弁護士としてしての品位を失うと所属弁護士会が戒告とした。
懲 戒 処 分 の 公 告 2015年10月 自由と正義
栃木県弁護士会がなした懲戒の処分について同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告公表に関する規定第3条第1号の規定により公告する
1 懲戒を受けた弁護士
氏 名 澤田 雄二
登録番号 24846
事務所 栃木県宇都宮市昭和1-7-9
宇都宮中央法律事務所
2 処分の内容 戒 告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は2012年9月重度の認知症患者である懲戒請求者の母親Aが入所する介護老人保健施設Bから2010年4月にBの施設内で発生したAの転落事故についての損害賠償に関する交渉、上記事故後支払われなかったAの施設利用料の回収及び懲戒請求者のBの職員に対する不穏当な言動への対応について委任を受けたが、その事務処理のため、上記事故についてのAの損害賠償請求権でAの施設利用料の未納が解消される可能性が高いこと、Aは判断能力がなく法的に無防備であること等を考慮することなく2013年6月11日及び同月14日付けで3週間以内に施設利用料の支払いがなければ介護施設利用契約を解除してAを退所させる等の内容の警告書を契約当事者ではない懲戒請求者に送付した。
被懲戒者の上記行為は弁護士法第56条第1項に定める弁護士として品位を失うべき非行に該当する。
4 処分の効力を生じた年月日 2015年6月30日
2015年10月1日 日本弁護士連合会
裁決の公告(処分変更)
栃木県弁護士会が2015年6月30日に告知した同会所属弁護士 澤田雄二会員(登録番号24846)に対する懲戒処分(戒告)について同人から行政不服審査法の規程による審査請求があり本会は2017年4月11日弁護士法第59条の規程により、懲戒委員会の議決に基づいて、以下のとおり裁決したので懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第3号の規程により公告する。
記
1 採決の内容
(1)審査請求人に対する懲戒処分(戒告)を取り消す。
(2)審査請求人を懲戒しない。
2 採決の理由の要旨
(1)被懲戒者は2012年9月、重度の認知症患者である懲戒請求者の母親Aが入所する介護老人施設Bから2010年4月にBの施設内で発生したAの転落事故についての損害賠償請求に関する交渉、上記事故後支払われなかったAの施設利用料の回収及び懲戒請求者のBの職員に対する不穏当な言動への対応について委任を受けたが、その後事務処理のため、上記事故についてAの損害賠償請求権でAの施設利用料の未納が解消される可能性が高いこと、Aは判断能力がなく法的に無防備であることを考慮することなく、2013年6月11日及び同月14日付けで3週間以内に施設利用料の支払がなければ介護施設利用契約を解除してAを対処させる等の内容の警告書を契約当事者でない懲戒請求者に送付した。
(2)栃木県弁護士会は上記認定につき、懲戒請求者の上記行為は、正常な判断能力を欠き、無力な弱者であるAのサービス利用契約上の権利・利益を正当な根拠なく不当に脅かすものであるとして弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当するとして被懲戒者を戒告の処分に付した。
(3)しかしながら、懲戒請求者がBの職員に対し、その対応に苦慮する言動を繰り返し、それが施設運営上相当程度支障となっていたが、懲戒請求者は入所者であるAの子であってAと面会していたことからすれば、直ちに施設への立ち入りや職員との面談禁止等の仮処分や告訴等の法的措置を採ることにちゅうちょせざるを得ない状況にあったといえる。
懲戒制球者はAの入所手続や利用料金の支払手続、さらには介護事故の損害賠償の交渉を行うなどして、事実上Aの代理人として行動してきた者であり、審査請求人は懲戒請求者に成年後見人手続の必要性を説明してきたが、懲戒請求者はこれに応じようとしていなかった。他方で施設利用料金の督促や示談の手続のため、懲戒請求者の意向を無視して、他の親族や市町村長に働きかけ、Aについて後見開始の審判の申立てをするよう促すのは必ずしも容易なことではなく、法的には問題がないわけではないとしても、まずは事態を打開する契機として、事実上入居者の代理人として行動していた懲戒請求者に対して上記警告書を送付したことは、あながち強く責められる行為とはいえない
懲戒制球者はBの対応に不満を持ちBに対し上記警告書が届く前からAを他の施設に移転させるよう申し入れており、Aは上記警告書だけを理由として本件施設を退所したものとは認められない。
そうすると、法律上は権限ある代理人とは認められない懲戒請求者に対して上記警告書を送付したことは、必ずしも適切な対処とはいえないとしても、その行為はいまだ弁護士としての品位を失うべき非行とまではいえない・
(4)したがって被懲戒者を戒告処分とした原弁護士会の処分を取り消して被懲戒者を懲戒しないこととする。
3 採決が効力を生じた年月日 2017年4月17日
2017年7月1日 日本弁護士連合会
以上、苦しい言い訳が続いた「懲戒取消」の要旨でした。
判断能力のない高齢者に対し施設内の事故に関する件、高齢者に心無い発言をしたことは都合が悪いのか書いてありません。
施設側の代理人弁護士であれば苦情の対応、対処などを行うために就任しているのが代理人のはず、依頼者である病院側の一方的な言い分しか聞かないのであれば、争いがあれば大きくなるだけ、ここまで混乱を大きくした責任は対象弁護士にあると思います。施設側にとってもなんの利益にもならない。もめないようにするのが代理人弁護士、もめた時は素早く収めるのが代理人弁護士だと思うのですが。