「弁護士自治を考える会」
日弁連広報誌「自由と正義」2017年1月号から12月号に掲載された弁護士の懲戒処分の要旨、全115件ございました。
□ 単位弁護士会別 官報公告
□ 登録番号別
□ 処分内容別
本日は、2017年懲戒処分ベストセレクトをお送りします。
2017年も「事件放置」、「報酬が高い」、「横領、着服」「暴言」、と毎年、お馴染みの処分ばかりでした。その中でも目新しいもの珍しいもをご紹介いたします。
2017 弁護士懲戒処分の要旨ベストセレクト
① 沖縄にある法律事務所、事務員に対し「関西弁禁止」
懲 戒 処 分 の 公 告 沖縄
1 処分を受けた弁護士氏名 照屋 俊幸 登録番号 23166 沖縄県那覇市松尾1
弁護士法人テルト法律事務所
2 処分の内容 戒 告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は、労働基準法第36条所定の協定の締結及び労働基準監督署への届出の手続を行うことなく、その雇用する事務職員等に法定労働時間を超えて残業させていたのみならず、事務職員の懲戒請求者A及び勤務弁護士のB弁護士については、相当長時間に及ぶ残業が長時間にわたり継続していたことを把握し、または容易に把握することが可能であったにもかかわらず、これらの者の健康に配慮した措置を十分に取らなかった。
また、被懲戒者は2012年3月頃、雇用する事務職員のうち正職員の残業が長時間に及んだとしても残業手当は定額打ち切りとする違法な残業手当制度を設けて、少なくとも2013年3月まで定額超過分の残業代を支払わなかった。
さらに被懲戒者は事務職員の懲戒請求者Cが退職することになっていた同年7月31日までの約1か月の間に、会話言語としていわゆる関西弁を用いる懲戒請求者Cに対して関西弁の使用を禁止したり、懲戒処分等を複数回行うなど、使用者としての優越的地位を利用した従業員に対する嫌がらせ行為を執拗に行った。4 処分の効力を生じた年月日 2017年8月23日2017年12月1日 日本弁護士連合会
② 子ども連れ去りを防止しなかった
懲 戒 処 分 の 公 告
1処分を受けた弁護士 氏 名 田中孝明 登録番号 45313
東京都渋谷区1-12-2 渋谷アクア法律事務所
2 処分の内容 戒 告
3 処分の理由
被懲戒者は、2015年3月中旬頃、Aから別居中の夫である懲戒請求者と同居し、懲戒請求者から面会を拒絶されていた子Bに会いたい、懲戒請求者との話し合いの場に同席してほしいとの相談を受けた。
被懲戒者はAがBを連れ去る危険を予見していたにもかかわらず、Aと懲戒請求者との面会の場をBが預けられている保育園とすることを容認し、懲戒請求者に事前に連絡をすることもなく、同年4月2日、上記保育園に赴き、懲戒請求者と面会しようとした。
被懲戒者は、同日、上記保育園からの移動においてAがBを連れ去ったことについて、上記危険を予見していたにもかかわらず、AによるBの連れ去りを防止するための十分な対応を取らなかった。4 処分が効力を生じた年月日 2017年8月4日
2017年11月1日 日本弁護士連合会
③ 間接強制を妨害
懲 戒 処 分 の 公 告 東京
1 懲戒を受けた弁護士氏 名 内山成樹 登録番号 17126
東京都港区新橋3 田村町法律事務所
2 処分の内容 業務停止1年
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は、懲戒請求者が申し立てた子Aらの引渡しを求める間接強制申立事件等において懲戒請求者の夫の代理人であったが、Bが上記事件につき間接強制決定がなされた2014年3月31日以降もAらを引き渡すことを拒否し続け、上記決定に基づく間接強制金の支払義務を負っていたところ、同年10月頃、Bに対し懲戒請求者に対する強制執行を困難ならしめる目的で、Bが所有する資産を信託譲渡するスキームを提案し、同年12月20日、自宅土地建物、預貯金5000万円等のBの資産のほぼ全ていついて、受益者を被懲戒者及びAらとしてBから信託譲渡を受けた。4 処分が効力を生じた年月日 2017年7月10日 2017年10月1日 日本弁護士連合会
④ お馴染み事件放置、3回目で業務停止!
懲 戒 処 分 の 公 告 大阪
1 処分を受けた弁護士 氏 名 中西 裕人 登録番号17540
大阪市中央石町2 中西法律事務所
2 処分の内容 業務停止3月
3 処分の理由の要旨
(1)被懲戒者は2015年5月12日、懲戒請求者との間で不動産業者に対する損害賠償請求等について委任契約をしたが、上記委任契約の締結から1年7か月以上経過した2016年12月20日に開催された所属弁護士会の綱紀委員会における被懲戒者の調査期日に到るまで何ら事件処理に着手せず、その後も着手しなかった。
(2)被懲戒者は上記委任契約を締結したにもかかわらず、懲戒請求者に連絡することなく、懲戒請求者から問い合せがあってもこれに対応せず、更に懲戒請求者との面談の約束を反故にし、上記調査期日に到るまで、全く懲戒請求者と連絡を取らなかった。
(3)被懲戒者の上記(1)の行為は弁護士職務基本規程第35条に違反し。
被懲戒者が2013年8月及び2014年3月に戒告の懲戒処分を受けていることを考慮し、業務停止3月を選択する。4 処分の効力を生じた年月日 2017年8月29日 2017年12月1日 日本弁護士連合会
⑤ 刑事弁護士でも報酬が高い
懲 戒 処 分 の 公 告 東京
1 処分を受けた弁護士氏 名 杉山博亮 登録番号23069
事務所 東京都港区新橋1 華鼎国際法律事務所
2 処分の内容 業務停止1月
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は2012年8月20日頃、窃盗等の容疑により長野県内で逮捕された懲戒請求者A懲戒請求者B及びCの弁護人に就任したが懲戒請求者Aらから刑事事件を受任するに当たり委任契約書を作成せず、また上記各刑事事件においては、弁護士報酬のみならず、東京から長野へ出向くことから日当が問題となり、実費として交通費、宿泊費、記録謄写代、通訳費用等が考えられるにもかかわらず、これらについて適切な説明をしなかった。被懲戒者は上記各刑事事件において、その請求する弁護士報酬等の計算及び依頼者からの徴収等の計算及び依頼者からの徴収等の金銭処理が極めて杜撰であった。
被懲戒者は上記各刑事事件において事案の難易、時間及び労力その他の事情に照らし、適正かつ妥当な弁護士報酬とは言い難いにもかからず、懲戒請求者Aら一人当たり着手金として105万円を請求し充当し、また弁護士報酬及び費用として総額508万3938円を受領した。4 処分の効力を生じた年月日 2016年10月18日
2017年2月1日 日本弁護士連合会
⑥ 横領・着服系
懲戒処分の公告 東京
1 処分を受けた弁護士氏 名 菅谷公彦 登録番号 25567
弁護士法人菅谷法律事務所
2 処分の内容 除 名
3 処分の理由の要旨
(1)被懲戒者は2013年9月懲戒請求者Aから自己破産申立事件を受任し、着手金等合計28万7500円の支払を受けたが、2016年2月24日までに懲戒請求者Aが上記事件の委任契約を解除するまで、上記事件に着手しなかった。被懲戒者は上記契約を解除された後、懲戒請求者Aから上記契約に基づき受領していた費用全額の速やかな返金を催促されたにもかかわらず、同年7月20日まで返金しなかった。
(2)被懲戒者は預り金口座から合計2382万4036円を引出して自己を相手方とする紛議調停事件の和解金支払のため私的に流用し、受任事件の相手方から上記口座へ入金された1500万円について依頼者に対し清算又は引渡しをしないまま上記口座の残高を4万3918円まで減少させ、2014年6月から2016年3月までの間、上記口座から被懲戒者の法律事務所経費等を支出し私的に流用し続けた。
(3)被懲戒者は、懲戒請求者Bが夫Cに対して申し立てた婚姻費用分担審判事件について2015年10月30日になされた審判に基づき、懲戒請求者Bの代理人としてのCの預金口座に対する債権執行を行って332万円8698円を回収し、2016年3月7日懲戒請求者Bに対し上記回収金から弁護士費用を控除した284万8046円を返金することを連絡したが、2017年5月まで支払を完了しなかった。
(4)被懲戒者は懲戒請求者Dから交通事故に関する事件を受任し2015年12月18日懲戒請求者Dの代理人として、上記交通事故の加害者が加入する損害保険会社から示談金1700万円の支払を受け、2016年2月9日懲戒請求者Dに対し上記示談金から報酬金及び実費を控除した1539万9748円を返金することなどを連絡したが、支払を完了しなかった。4 処分が効力を生じた年月日 2017年7月12日
2017年10月1日 日本弁護士連合会
特集 ① 今年の暴言、心ない発言
2017年、いつもの年より多くの暴言、心ない発言がありました。
⑦ ここまで言っていただければ!
懲 戒 処 分 の 公 告 新潟
1 処分を受けた弁護士 鯰越 溢弘 登録番号 31249
新潟県新潟市西区五十嵐三の町南
2 処分の内容 戒 告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は、管理組合法人Aから2014年5月7日損害賠償請求事件及び競売請求事件を提起された各被告の訴訟代理人であったところ、上記両事件の係属中に懲戒請求者Bを含むA法人の組合員である区分所有者約60名に対し、上記両事件の原告訴訟代理人である懲戒請求者C弁護士について「弁護士の発言とは思えない」、「管理組合法人の代理人を務めることは弁護士倫理に反し、懲戒の対象となる可能性がある」と記載した手紙「なんの勝算もなく、競売事件の裁判を始めたとしか考えられません」「人間感覚がないのではないかと疑いたくなる」「証拠上、間違いが明らかになった後も、組合員の皆さまに嘘を言い続けているのは、信じられません」、「嘘も百篇つけばホントになる」とでも思ってるのでしょうか」と記載した手紙、「『自分がやることは全て正しいが反対派のやることは同じ行為でも間違いである』」と言っていることに等しく、正気とは思えません」と記載した手紙を順次送付し、上記区分所有者に対する客観的な経緯の説明や情報、さらには批判の域を逸脱し、上記区分所有者との関係において懲戒請求者C弁護士を誹謗中傷した。
4 処分の効力を生じた年月日 2017年1月14日2017年5月1日 日本弁護士連合会
⑧ 恥かしくなるような主張だ!
懲 戒 処 分 の 公 告 兵庫
1 懲戒を受けた弁護士 氏 名 内橋 一郎 登録番号 20507
兵庫県神戸市中央区栄町通6 みのり法律事務所
2 処分の内容 戒 告
3 処分の理由の要旨
懲戒者は2014年8月5日、Aの代理人としてBらに対し、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起し、懲戒請求者がBらの代理人に選任されたところ、被懲戒者は上記訴訟の複数の準備書面において、本人の判断と代理人の判断をあえて区別してそのいずれかを殊更問うことは訴訟上何の意味もなく記載する必要性がないにもかかわらず『これは、被告の意思に基づく行為か、それとも被告訴訟代理人の指示か』等と執拗に問う記載をし、Bらの主張に対し『読む方が恥ずかしくなるような主張だ。こんなことを準備書面に書いて、陳述することなどに抵抗感はないのだろうか。』と記載するなど正当な訴訟活動、弁論活動として許容される範囲を超える記載をした。4処分が効力を生じた年月日2017年6月13日2017月9月1日 日本弁護士連合会
報道 神戸新聞
⑨ 先生、言い過ぎましたね !
懲 戒 処 分 の 公 告 新潟
1 処分を受けた弁護士氏 名 高島章 登録番号 22968
新潟県中央区東中通一番町 高島章法律事務所
2 処分の内容 戒 告
3 処分の理由の要旨
(1)被懲戒者は2015年3月31日、多数の者が閲覧することが可能なインターネット上のソーシャルネットワーキングサービスにおいて、懲戒請求者A弁護士に対し『お前は馬鹿だ』、『あなたが弁護士を辞めろ』、『あなたと顔を合わせた際、第一にやることはあなたを殴ることです』等の攻撃的かつ威圧的で懲戒請求者A弁護士を屈辱する書き込みをした。
(2)被懲戒者は、2015年4月13日、上記ソーシャルネットワーキングサービスにおいて、懲戒請求者A弁護士について懲戒事由があることを事実上法律上裏付ける相当な根拠について調査、検討をした形跡もないまま、懲戒請求者A弁護士に対する懲戒請求案として7項目にわたる非行事実の骨子を示した上、相当程度の業務停止処分を科するのが相当である旨の書き込みをした。
4 処分の効力を生じた年月日 2016年8月23日
2017年1月1日 日本弁護士連合会
10 仰ってることは正しいかもしれませんが
懲 戒 処 分 の 公 告 京都1 懲戒を受けた弁護士氏 名 松藤 隆則 登録番号 28623
弁護士法人京阪藤和法律事務所京都事務所
2 処分の内容 戒 告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は、懲戒請求者A弁護士がBの代理人としてBの夫Cに対して申し立てた調停事件においてCの代理人であったところ、2014年9月30日、懲戒請求者A弁護士及びその夫である弁護士Dについて「ことさら紛争を煽り、自らの商売にしている」等と記載し、また弁護士Dについて「お金のためなら事件を煽り何でもする」等と記載した同日付けの主張書面を懲戒請求者A弁護士及び裁判所に対しファクシミリで送信して提出した。4処分が効力を生じた年月日 2017年4月19日 2017月8月1日 日本弁護士連合会
|
特集 2 守秘義務違反
守秘義務違反 今年は豊作でした
11 お前の祖父さんは、捕まってるぞと孫の小学校に手紙
懲 戒 処 分 の 公 告 京都
1 懲戒を受けた弁護士氏 名 岩﨑 章浩登録番号 49819
京都市下京区中堂寺南町134 HERO法律事務所
2 処分の内容 戒 告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は、弁護人を受任した建造物侵入被疑事件及び窃盗被疑事件の被疑者Aから、子である懲戒請求者に現金を差し入れてもらうよう連絡を取ってほしい旨の依頼を受けたが、懲戒請求者の戸籍の附票の写しや住民票の写しを取り寄せて住所を調査した上で手紙を郵送するなどの方法を取ることなく、2015年10月22日Aから懲戒請求者の子Bらが通うと聞いた小学校宛てに、小学校の関係者には、懲戒請求者の実父であり、Bらの祖父でもあるAが、上記事件の罪で逮捕され、警察署に留置されている事実を推認することができる内容の文書を送付し、懲戒請求者らのプライバシーの権利を侵害した。 4処分が効力を生じた年月日 2017年4月19日2017年8月1日 日本弁護士連合会
12 おまえの娘は不倫しているぞと父親に手紙
懲 戒 処 分 の 公 告 広島
1 処分を受けた弁護士 氏名 齊藤有志 登録番号 37512
広島県広島市中区 齊藤法律事務所
2 処分の内容 戒 告
3 処分の理由の要旨
(1)被懲戒者は2015年7月2日、Aの代理人として懲戒請求者を被告とする損害賠償請求訴訟を提起したところ、同日、通知をする必要性、相当性が認められないにもかかわらず、懲戒請求者の父親宛てに、懲戒請求者がAの夫と交際していること、懲戒請求者を被告とする不貞行為に基づく損害賠償請求訴訟を提起したこと等を記載した通知書を送付した。4 処分が効力を生じた年月日2017年4月12日 2017年8月1日 日本弁護士連合会
13 あの事件のことを弁護士になって言うか
懲戒処分の公告 大阪
1 懲戒を受けた弁護士 氏 名 井垣康弘 登録番号 32533
大阪府豊中市末広町 井垣康弘法律事務所
2 処分の内容 業務停止3月
3 処分の理由の要旨
(1)被懲戒者は、殺傷事件について、非行を行った少年Aの保護事件を担当した裁判官であったところ、退官して弁護士登録をした後、発行部数が多数に上る著名な月間誌に掲載されることを意図して、Aの成育歴等、既に家庭裁判所が開示していた少年審判の決定要旨より詳しい認定事実の記載された決定要旨より詳しい認定事実の記載された決定の全文を提供し、上記決定の全文は2015年4月に出版された上記月刊誌に掲載された。
(2)被懲戒者は、Aが執筆した書籍が2015年6月に公刊されたことを受けて、非公開の審判廷におけるAの供述や態度等、上記事件の担当裁判官として初めて知り得た事実が少なからず記載された記事を執筆し、上記記事は同年7月に出版された上記月間誌に掲載された。
4処分が効力を生じた年月日 2016年12月13日 2017月4月1日 日本弁護士連合会