弁護士の懲戒処分を公開しています。
日弁連広報誌「自由と正義」2018年6月号に公告として掲載された弁護士の懲戒処分の要旨・第一東京弁護士会・内海隆幸弁護士の処分変更の公告
戒告から『処分なし』へ変更

 

戒告処分を受けて被懲戒者が処分は不服であると日弁連へ審査請求を出し認められ、戒告処分が取消しとなったもの。
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(懲戒取消)
(懲戒処分を受け日弁連に審査請求を申立て処分が変更になるまでの日数)
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【変更される前の処分の要旨】
 

 

 

 

懲 戒 処 分 の 公 告

 

 
第一東京弁護士会がなした懲戒の処分について同会から以下の通り通知を受けたので懲戒処分の公告公表に関する規定第3条第1号の規定により公告する
1 懲戒を受けた弁護士
氏名       内海 隆幸
登録番号     35920
事務所      東京都千代田区平河町2    
         宮崎法律事務所  
2 処分の内容   戒 告
3 処分の理由
被懲戒者は、亡Aの相続人の一人である懲戒請求者が2010年7月に申し立てた亡Aの遺産分割調停事件について、B弁護士と共に亡Aの妻C及び子Dらから受任したが、懲戒請求者がCについて後見開始及び成年後見人選任の申立てを行っており、Cの意思能力に関して、上記調停事件の当初から調停委員ひいては裁判所が強い関心を示しており、被懲戒者自身も2011年6月27日に行われた第5回調停期日についてDらに対し「調停手続はお母さまの成年後見開始手続の進捗を見た上での進行となります」と報告していることから、同日以降、速やかにCと面会をしてCの意思能力の有無及び程度を直接確かめるべきであり、また同年8月29日の第6回調停期日においては、Cの意思能力について報告と意思能力の程度に応じた適切な対処をすべきであったにもかかわらず、これを怠り、結果として上記調停事件は2012年1月30日の第9回調停期日においてCの意思能力に問題があるので「調停をなさず」として終了し、上記調停事件の進行に関する裁判所の判断を遅らせる等した。
被懲戒者の上記行為は弁護士職務基本規定第74条、第76条に違反し弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する
4 処分の効力を生じた年月日 2017年2月6日
2017年5月1日   日本弁護士連合会

 

 

 

裁決の公告(処分取消)
第一東京弁護士会が2017年2月7日に告知した同会所属弁護士  内海隆幸
会員(登録番号35920)に対する懲戒処分(戒告)について同人から行政不服審査法の規程による審査請求があり本会は2018年4月10日弁護士法第59条の規程により、懲戒委員会の議決に基づいて、以下のとおり裁決したので懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第3号の規程により公告する。
 
             記
1 採決の内容
(1)審査請求人に対する懲戒処分(戒告)を取り消す。
(2)審査請求人を懲戒しない。

 

2 採決の理由の要旨

 

(1)審査請求人は懲戒請求者とA他3名との間の被相続人Bの遺産分割調停(以下「本件調停事件」という)において、Aらの代理人として手続代理行為を行ったがAほか3名から本件調停事件を受任する際に、Aの意思能力に問題はないとする、他3名の説明を信じ、Aについても受任した。
本件、第1回期日(2010年11月24日)の手続冒頭より、懲戒請求者からAの意思能力が問題視され、懲戒請求者から審査請求人に対してAの後見人選任への協力を求められていたほか、調停委員もAの意思能力の有無に関心を示しており、審査請求人もAの依頼者に対する第5回期日(2011年6月27日)の報告において裁判所が懲戒請求者申立ての関連後見事件手続の進捗及びAの意思能力の有無に関心を持っているとして、審査請求人自身もその見極めが必要であると受け止めていた。
そのような経緯に鑑み、審査請求人は遅ればせながらも第5回期日以降速やかにAの意思能力の有無、程度について直接確認すべきであり、Aの意思能力の程度に応じて適切な対応をすべきであったが、本件調停事件の第1回期日(2010年11月24日)から最終、第9回期日(2012年1月30日)まで一貫してAの意思能力を直接確認することをせず、調停手続を進行させたものである。これにより、本件調停事件の進行に関する裁判所の判断を遅らしめ、また関連後見事件における後見人の選任を遅らしめた可能性があり、これは裁判所との関係における信義則(弁護士職務基本規程第74条及び第76条)及び相手方代理人との関係における信義則(同第70条)に反し、ひいては弁護士としての誠実義務(同第5条)に反するものである。
(2)審査請求人に係る本件懲戒請求事件につき、第一東京弁護士会(以下「原弁護士会」という)は前記認定した事実及び判断に基づき、審査請求人を戒告の処分にした。
(3)原弁護士会が認定した事実に誤りはなく、審査請求人は、遅くとも2011年6月27日の第5回調停期日以降速やかに依頼者Aと面会して同人の意思能力の有無・程度を直接確認するべき義務があったものとして、手続の最後までこれを履行しなかった審査請求人に、弁護士として職務上の義務違反があるとする原弁護士会の判断に誤りはない。
(4)しかしながら、審査請求人から新たに提出された証拠及び審査期日における陳述と、原弁護士会の認定事実を併せ考慮すると以下の事実が認められる。
ア 本件調停手続においては、既に第1回期日からAの意思能力が争点の一つとされていたが、手続を進めていく前提というほど重きを置かれていたわけではなかった。審査請求人は、第5回期日には、懲戒請求者が実際に後見人選任の申立てを行っていることを知るに至ったがAが意思能力を欠いていたとする証拠は存在せず、審査請求人においてもその点に何ら疑問は有していなかった。
イ Aの意思能力の存否を手続の前提問題として判断するのではなく、これと並行して遺産の範囲や各相続人への配分額等実質的遺産分割協議を行うという調停の進行は、専ら調停委員会の考えに基づくものであり、終了直前の第8回期日まで申立人(懲戒請求者)もその進行を容認し、自身への分配額を計算し請求していた。
ウ 審査請求人は、本件調停手続を進めるに当たっては、調停委員会の意向に従って行動しており、第6回期日以降は調停委員会に対し、申立人(懲戒請求者)がAの意思確認にこだわるのであれば取下げ等により手続が終了になってもかまわない旨を伝え、最終、第9回期日まではAの代理人を辞任してもかまわない旨表明した。
エ 審査請求人は、仮に話し合いが進んで調停成立となる場合にはA本人を家庭裁判所に出頭させるなどしてその意思能力を関係者全員の前で確認し、仮に能力を欠いていると認められる場合には後見人等法定代理人を付することを当然と考えており、そのような手続きを経ないでA本人の権利変動を生じさせる調停を成立させる考えは全く有していなかった。
(5)以上の事実を総合考慮すると、審査請求人には、依頼者に直接面談の上その意思能力や依頼意思を確認することなく長期間本件調停手続に関与したという職務上の義務違反が認められるものの、これら一連の行動が裁判所あるい相手方代理人との間の信義則に違反していると認められず、いまだ弁護士としての品位を失うべき非行とまで評価できない。
(6)したがって、審査請求人を戒告処分とした原弁護士会の処分を取消し審査請求人を懲戒しないこととするのが相当である、
なお、本件については、原弁護士会の判断が相当であって審査請求を棄却すべきであるとの意見があったことを付言する。
3 採決が効力を生じた年月日  2018年4月13日
2018年6月1日 日本弁護士連合会