弁護士の懲戒処分を公開しています。
日弁連広報誌「自由と正義」2018年10月号に公告として掲載された弁護士の裁決の公告、要旨・千葉県弁護士会・高橋一弥弁護士の処分変更の公告
戒告処分から『処分なし』へ変更
戒告処分を受けて被懲戒者が処分は不服であると日弁連へ審査請求を出し認められ、戒告処分が取消しとなったもの。
(懲戒取消)
2016年3月号自由と正義
日弁連広報誌・自由と正義2016年3月号に掲載された弁護士の懲戒処分の公告・千葉県弁護士会・高橋一弥弁護士の懲戒処分の要旨
処分の理由は双方代理
この弁護士さんをネットで検索をすると、今回の事案が出てきています
(特養“乗っ取り”で、懲戒申立、街宣をかけられた弁護士の手口)
懲 戒 処 分 の 公 告
千葉県弁護士会がなした懲戒の処分について同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告公表に関する規定第3条第1号の規定により公告する
1 懲戒を受けた弁護士
氏 名 高橋一弥
登録番号 21826
事務所 千葉県中央区中央4
弁護士法人さくら総合法律事務所
2 処分の内容 戒 告
3 処分の理由の要旨
〔1〕被懲戒者は2010年5月31日、社会福祉法人Aの創業者一族で理事長を務める懲戒請求者B、前理事長C及現理事DからA法人及びA法人が運営する特別養護老人ホームの運営に係る市長の改善措置命令への対応について相談を受け、同年6月3日に開催されたA法人の役員会に出席し創業者一族以外の役員が創業者一族らの退任を要求していること等を知りA法人と創業者一族らの利害が対立する可能性があることを認識しながら、懲戒請求者B,C及びDに対し、事件処理においてA法人と利害が対立する可能性があること、その場合被懲戒者はA法人の代理人として懲戒請求者B、C、Dに対応すること等を説明しないまま、同月6日、A法人と委任契約を締結した。
〔2〕被懲戒者は2010年6月8日A法人の使途不明金に関し懲戒請求者の事務所で行われた警察とCとの話し合いにCの要請で立ち会いながら、同年11月18日、A法人を代理して懲戒請求者B、C及びDに対し上記使途不明金等に関する損害賠償請求訴訟を提起した。
〔3〕被懲戒者の上記(1)の行為は弁護士職務基本規定第5条、第29条及び32条に上記〔2〕の行為は弁護士法第25条第2号に違反し上記各行為はいずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
4処分が効力を生じた年月日 2015年12月1日
2016年3月1日 日本弁護士連合会
弁護士職務基本規定(不利益事項の説明)
第三十二条 弁護士は、同一の事件について複数の依頼者があってその相互間に利害の対立が生じるおそれがあるときは、 事件を受任するに当たり、依頼者それぞれに対し、辞任の可能性その他の不利益を及ぼすおそれのあることを説明しなければ ならない。
第三十二条 弁護士は、同一の事件について複数の依頼者があってその相互間に利害の対立が生じるおそれがあるときは、 事件を受任するに当たり、依頼者それぞれに対し、辞任の可能性その他の不利益を及ぼすおそれのあることを説明しなければ ならない。
弁護士法(職務を行い得ない事件)
第25条 弁護士は、次に掲げる事件については、その職務を行つてはならない。ただし、第3号及び第9号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
二 相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの
三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
上記の戒告処分が取消になり理由の要旨が以下のとおりです。
裁決の公告(処分取消)
千葉県弁護士会が2015年12月1日に告知した同会所属弁護士高橋一弥会員(登録番号21826)に対する懲戒処分(戒告)について同人から行政不服審査法の規程による審査請求があり本会は2018年8月22日弁護士法第59条の規程により、懲戒委員会の議決に基づいて、以下のとおり裁決したので懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第3号の規程により公告する。
記
1 採決の内容
(1)審査請求人に対する懲戒処分(戒告)を取り消す。
(2)審査請求人を懲戒しない。
2 採決の理由の要旨
(1)審査請求人は2010年5月31日、社会福祉法人Aの創業者一族で理事長を務める懲戒請求者、その子である前理事長のB及び理事長のCから、A法人お呼びA法人が経営する特別養護老人ホームの運営に対する市の改善措置命令への対応について相談を受け、同年6月3日、A法人の役員会に出席した。
審査請求人はその役員会において創業者一族以外の役員が懲戒請求者ら創業者一族以外の退任を要求していることを知り、A法人と創業者一族との利害が対立する可能性があることを認識したが、A法人との委任契約を締結するに際し、懲戒請求者らに対し、事件処理において懲戒請求者ら創業者一族とA法人とが利害対立する可能性のあることを説明しなかった。
(2)また審査請求人は、同月8日、Bの要請に応じて、審査請求人の事務所で行われたA法人の使途不明金に関する警察との話し合いに立ち会いながら同年11月18日、A法人を代理して懲戒請求者及びBに対し上記使途不明金に関する損害賠償請求訴訟を提起した。
(3)千葉県弁護士会(以下「原弁護士会」という)は上記(1)(2)の認定事実に基づき審査請求人の上記(1)の行為について、弁護士職務基本規程第5条、第29条及び第32条に違反し上記(2)の行為について弁護士法第25条第2号に違反するとして審査請求人を戒告の処分に付した。
(4)しかし審査請求人の上記(1)の行為について、審査請求人は同年5月31日に上記相談を初めて受け、受任の可否を判断するため、同年6月3日にA法人の役員会に出席したものであり、A法人から委任を受けるに際し、A法人と懲戒請求者らとの利害が相反する可能性がある場合には、弁護士職務基本規程第5条、第29条及び32条の趣旨に鑑み、懲戒請求者らに利益相反する可能性があることを説明すべきであるが、審査請求人は上記役員会において創業者一族以外の役員が創業者一族の退任を求めているという状況の中で創業者一族以外の役員から審査請求人の依頼者は誰かととの確認を一度ならず受け、依頼者はA法人であると明言しており、A法人と創業者一族との間で利害対立する可能性があうことは出席していた懲戒請求者及びCを含む出席者全員が認識できたというべきであり、審査請求人が同月6日の受任の段階で利益相反の可能性の説明をしなかったとしても、説明義務、誠実義務に違反したとはいえない。
(5)次に審査請求人の上記(2)の行為については同月8日、審査請求人はBの要請に応じて、A法人の使途不明金に関する警察との話し合いに立ち会っているが、同月6日にA法人と締結した委任契約では使途不明金の解明及びこれに関する刑事事件への対応も委任事項に含まれており、審査請求人はA法人の代理人として警察との話し合いに立ち会ったとみるべきである。また、市のA法人に対する改善措置命令では法人の運営や施設内での虐待、使途不明金など7項目にわたって是正措置が求められており、同年5月31日の70分間の初回の相談で、使途不明金を含め是正措置をも求められている事項につき具体的な相談があったとは考えられない。さらに相談は改善措置命令に対するA法人としての対応であり、創業者一族の利益擁護の依頼があったとは認められない。したがって、使途不明金問題は「相手方の協議を受けた事件でその協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの」ということはできず、審査請求人がA法人の代理人として懲戒請求者及びBに対して使途不明金に関して損害賠償請求訴訟を提起したことが弁護士法第25条第2項に違反するとはいえない。
(6)したがって、審査請求人を戒告処分とした原弁護士会の処分を取り消して審査請求人を懲戒しないこととする。
3 処分が効力を生じた年月日 2018年8月29日
2018年10月1日 日本弁護士連合会