弁護士自治を考える会

弁護士の懲戒処分を公開しています。
弁護士が受けた懲戒処分の詳細(要旨)は日弁連広報誌「自由と正義」に公告として掲載されます。当会には2000年からの自由と正義が保存してあります。

 

弁護士が和解を締結しておきながら、再度裁判提起したという処分例はあるか?

 

最近ネット上で『それにしても、和解者に謝罪させ、金を取った上に提訴とは、』という投稿がありました。弁護士が和解したにもかかわらず裁判を提起し賠償金を求めてきたということだそうです。さすがに、法律の専門家である弁護士が和解して又裁判を提起する弁護士などいるわけがないと思いますが、当会データベースで調査をしました。

代理人が和解を締結しておきながら、再度裁判提起したという処分例はあるか?

当会のデータで『和解』というワードで処分を受けたのは ① 和解金を使い込んだ。横領した、着服した、② 和解金の返還が遅かった。 ③ 和解交渉を放置した。④ 和解交渉が双方代理だった、和解にかんしての処分内容は、ほとんどがこれらの内容です。

裁判上で和解を締結しながら、また裁判を提起して処分されたケースは1件だけありました。

 

勝訴の見込みがあるように説明し、裁判を提起した(棄却)とありますが、実際は和解をしたにもかかわらず、再度裁判を提起した。
さらに、和解した依頼者から紛議調停を申し立てられたが期日に出頭せず、次ぎに懲戒請求を申立られたので弁護士に対する名誉毀損であると懲戒請求者に損害賠償請求を提起したが弁護士が全面敗訴、逆に100万円の支払を命じられた。当初、所属弁護士会は戒告の処分を下したが、懲戒請求者が日弁連に異議申立をし戒告から業務停止1月の処分に変更になった。

この1件しかありません。

和解したのを失念し訴訟提起して処分された例はありません。

そんな弁護士はおりません。

報道がありました。

<奈良地裁>弁護士に賠償命令 説明義務違反認める

毎日新聞 2014年 7月11日(金)
 勝訴の見込みがない民事訴訟を起こし、弁護士の職務を誠実に遂行しなかったなどとして、元依頼人の男性が村嶋修三弁護士(79)=奈良弁護士会=に対し、約120万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が11日、奈良地裁であった。新阜(にいおか)真由美裁判官は、勝訴の見込みがあるように説明したことを認め、村嶋弁護士に約100万円を支払うよう命じた。村嶋弁護士が「名誉を毀損(きそん)された」として男性に起こした損害賠償請求訴訟は「不当訴訟」と退けた。
判決などによると、男性は2004年、農地の小作権を巡る違約金請求訴訟で解決金を支払って和解したが、その後に和解内容を覆す資料があったとして村嶋弁護士に相談。村嶋弁護士が「何とかなるかもしれない」と説明したため11年に提訴したが、訴えは棄却された。新阜裁判官は「事件の見通しに対する説明として不適切」と指摘し、説明義務違反を認めた。村嶋弁護士は「判決文を見てから対応する」とコメントを出した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140711-00000122-mai-soci

故村嶋修三弁護士は元東京地検検事・元奈良県人事委員・元奈良地裁調停委員・元自民党奈良県支部顧問.奈良弁副会長でした。

懲 戒 処 分 の 公 告  2014年2月号

奈良弁護士会がなした懲戒の処分について同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告公表に関する規定第3条第1号の規定により公告する
1 処分を受けた弁護士
氏 名  村嶋 修三
登録番号 13949
事務所 奈良市内侍原町6 村嶋法律事務所
2 処分の内容      戒 告
3 処分の理由の要旨
(1)被懲戒者は懲戒請求者から懲戒請求者とAとの間で懲戒請求者がAに対し解決金として300万円を支払うこと等を内容とする訴訟上の和解が成立した事件について上記解決金の取戻しを相談され勝訴の見込みがなかったにもかかわらず、あたかも勝訴の見込みが多少あるかのように懲戒請求者を誤解させ事件の見通しについて適切な説明をせず2011年9月13日上記解決金を取り戻す等を内容とする不当利得返還請求訴訟を着金35万円で受任した。

(2)被懲戒者は2011年10月31日Aに対し上記不当利得返還請求訴訟を提起した。被懲戒者は上記訴訟において上記解決金の受領は不当利得に当たると主張したのみで、和解の効力が否定されるべき理由その他不当利得の根拠について何ら主張及び立証をしなかった。

(3)被懲戒者の上記(1)の行為は弁護士職務基本規定第29条第1項及び第3項に上記(2)の行為は同規定第5条に違反しいずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失    うべき非行に該当する。
4 処分の効力を生じた年月日 2013年11月7日
2014年2月1日   日本弁護士連合会
(弁護士職務基本規定)第二十九条
弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければならない2 弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない。
3 弁護士は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはならない。

懲 戒 処 分 の 公 告(処分変更)戒告⇒業務停止1月 2014年12月号

奈良弁護士会が2013年11月6日付でなし2013年11月7日に効力を生じた被懲戒者に対する懲戒処分について、懲戒請求者から異議の申出があった。日本弁護士連合会は上記懲戒処分を変更して以下のとおり懲戒の処分をしたので懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第6号の規定により公告する
        記
1 処分を受けた弁護士
氏 名  村嶋修三
登録番号 13949
事務所 奈良県北葛城郡広陵町  村嶋法律事務所
2 処分の内容 業務停止1月 
3 処分の理由の要旨
(1)本件は懲戒請求者から依頼されて提起した不当利得返還請求訴訟において提起前に被懲戒者が勝訴の見込みが乏しいのに適切な説明を」せず(懲戒請求事由1)またその訴訟において誠実な訴訟追行をしなかった(懲戒請求事由2)点が問題とされたものである。

(2)被懲戒者は懲戒請求者から奈良弁護士会(以下原弁護士会という)に紛議調停を申し立てられたが紛議調停委員会に出席せず紛議調停は不正立となった。
そこで懲戒請求者は本件懲戒請求を申し立てたが被懲戒者は懲戒請求者に対し懲戒請求者からの紛議調停や懲戒の申立てにより精神的な苦痛を被ったとして平成24年11月20日損害賠償請求を提起した。そして被懲戒者は上記損害賠償請求訴訟の提起により原弁護士会綱紀委員会の審判は何の意味もないと主張して同委員会の調査期日に出席しなかった。
また、原弁護士会懲戒委員会の審査期日において被懲戒者は同委員会の質問に誠実に対応せず途中で退席した。

(3)被懲戒者は日本弁護士連合会懲戒委員会(以下当連合会懲戒委員会という)が審査期日を通知し質問事項を送付したところ質問事項に対する回答書は提出したものの、審査期日には出席できない旨回答した。そこで当連合会懲戒委員会は審理期日を変更しその旨を改めて被懲戒者に通知したが、被懲戒者は変更後の審査期日に欠席した。なお欠席に至った理由を証明する書面の提出はなかった。

(4)その後、上記損害賠償請求訴訟及び懲戒請求者から被懲戒者に対する反訴請求事件においていまだ確定していないものの被懲戒者はいずれも全面敗訴し懲戒請求者に対して合計約100万円の支払を命じられている。

(5)原弁護士会懲戒委員会は被懲戒者が上記損害賠償請求訴訟を提起したのは本件懲戒請求に対抗する報復的なものであると認定し、さらに原弁護士会綱紀委員会及び同懲戒委員会における被懲戒者の態度い対し懲戒手続の態度も甚だしく、弁護士自治の意義に対する自覚も欠落しているといわざるを得ないと認定しながら、上記損害賠償請求訴訟に係る被懲戒者の行為については同綱紀委員会で懲戒事由とされていないことに鑑み、業務停止処分を選択せず戒告処分を選択したとする。

(6)しかし被懲戒者の原弁護士会及び当連合会懲戒委員会における対応を別におくとしても被懲戒者の懲戒事由1の行為は弁護士職務基本規定第29条及び第37条に違反し懲戒請求2の行為は同規定第37条に違反する。以上のとおり被懲戒者の行為は職業としての弁護士の専門性に対する国民の信頼を損なうものであり弁護士としての品位を失う非行といわざる得ず原弁護士会の戒告処分は軽きに過ぎる

(7)したがって被懲戒者を戒告とする旨の業務を1月間停止することが相当である。
2014年10月21日 2014年12月1日日本弁護士連合会