常軌を逸したゴーン氏の弁護人高野隆弁護士の懲戒の答弁書
超一流弁護士としてあり得ない対応

 

海外逃亡したゴーン被告の弁護人の高野隆弁護士(第二東京)に懲戒請求の申立てがありました。(1月17日サンケイ報道)懲戒請求の申立があり綱紀委員会に審査が付されれば被調査人は綱紀委員会に「答弁書」を提出しなければなりません。

その答弁書を高野弁護士は自身のブログで公開をしました。(2月5日)

高野弁護士はおそらく巨額の報酬を得られるであったろう顧客が海外に逃亡し、その上、被告人の管理責任も問わて頭に来たのではないかと思いますが、それでも超一流の弁護士といわれておられるのなら冷静に対応しなければなりません。

 

(1)懲戒請求の審査は非公開です。審査の途中で答弁書をネット上で公開することは許されません。

(2)懲戒請求者に被調査人の答弁書が届いていません。先にネットで公開してしまいました。

(3)高野弁護士はネット上に懲戒請求者の氏名を公開しました制度上、懲戒請求は弁護士の非行に対する告訴、告発と同じ扱いです。告訴内容がどうであれ、その告訴人である市民の氏名を公表することは許されることではありません。告発者の氏名を公表することは刑事弁護を得意とする弁護士にはあり得ません。懲戒請求者が弁護士、あるいはジャーナリストであれば、まだしも一般市民である懲戒請求者の氏名を公開することは許されません。

(4)懲戒請求者はツイッター、ブログもせずネット上での対抗措置を持っていません。そもそも、ネットで答弁書を公開し、また反論を述べるのであれば、綱紀委員会は不要です。

告発の内容に不満であっても市民の意見として聞くことも必要なことです。懲戒を求める理由が無ければ綱紀委員会が棄却をするのですから、高野弁護士が懲戒請求者の氏名をネット上に公表しさらし者にする必要は全くありません。高野弁護士はゴーン氏の件で主張したいのであれば答弁書ではなく意見として掲載すればよいことです。

こんな、くだらん懲戒を出す奴は名前を公表してやるとした高野弁護士、また懲戒が出るのではないかと心配をしますが・・・

 

『弁護士懲戒手続の実務と研究』 調査の公開・非公開・閲覧・謄写等 

 第2章 弁護士会の懲戒制度  

 4 綱紀委員会の調査手続

(2)調査の公開・非公開・閲覧・謄写等

(イ)綱紀委員会の議事等の非公開

綱紀委員会の議事及び議決は、事案の真相解明を図るためには委員相互の自由な議論を保障する必要があることから原則として非公開とすべきである。調査期日も対象弁護士及び関係者のプライバシー保護のため非公開とすべきであるが、場合により綱紀委員会の認める者に傍聴させることは許されるだろう。ただその場合でも弁護士会の会長等が出席して意見を述べることを認めることは、綱紀委員会の独自性を害し、審理の公正を疑わしめるものであって許されないと解される。

(ロ)記録の謄写・閲覧

記録の閲覧・謄写については、綱紀委員会の議事録そのものは委員会の合議に関する記録という性格上、何人にも閲覧・謄写を許すべきではない(同旨、昭和60年7月5日及び同月24日付け日弁連会長回答)

その他の調査期日調書、証拠書類等は対象弁護士等に対しては適正手続の保障の見地から閲覧、謄写を許すべき場合が多いであろうが、懲戒請求者に対し閲覧・謄写を許可すべきかどうかは、綱紀委員会の裁量に任されていると解される。したがって、この場合、懲戒請求者が対象弁護士等の弁解に対する反論や異議の申出の目的を有する限度においてのみ閲覧・謄写を許可することも許されるであろうし、許可の際に謄写した書類について右の目的以外の使用を禁止するといった条件を付することも許されるであろう。

(注)平成3年3月4日付日弁連事務総長回答は、懲戒手続において審査を受ける弁護士には審査期日調書、証拠書類及び証拠物の閲覧、謄写権が与えられており、異議申出人には懲戒委員会の裁量により記録の閲覧、謄写を許すことができると述べている。この点に関して平成6年11月29日付日弁連事務総長回答は、懲戒請求人らが報道機関に被懲戒請求人の答弁書の内容を開示したことにつき。弁護士会が綱紀委員会の個別、具体的要請により懲戒請求人、その代理人弁護士ないし雑誌編集者等に対して事実関係に関し調査を行うこと、調査結果に基づきこれらの者に対して注意、勧告ないし警告等を行うことは法31条1項により可能であると述べている。

(目的及び法人格)弁護士法第31条

弁護士会は、弁護士及び弁護士法人の使命及び職務にかんがみ、その品位 を保持し、弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図るため、弁護士及び弁護士 法人の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。

以上 日弁連調査室編『弁護士懲戒手続の実務と研究』

ネット上に公開された高野弁護士のブログ

懲戒請求に対する弁明書

●●●●氏≪実名記載≫による懲戒請求に対して私が第二東京弁護士会綱紀委員会に提出した弁明書の内容は次のとおりです。

Ⅰ 懲戒請求の趣旨に対する答弁

 本件懲戒請求には理由がなく、懲戒すべき事由がないことは明らかであるから、懲戒不相当の決議をされたい。

Ⅱ 懲戒請求の理由に対する答弁

1 弁護人は被告人を管理監督する者ではない

 請求人●●●●氏≪実名記載≫はカルロス・ゴーン氏の弁護人である私が「被告人を管理監督する立場にい[る]」といい(「懲戒の理由」1頁)、この義務に違反したという(同2頁)。しかし、弁護人には保釈中であれ身柄拘束中であれ、依頼人である被告人の行動を「管理監督」する義務などないし、そうしたことを行う権限もない。

 弁護士は依頼人の親でもなく教師でもない。依頼人の善行を保証する身元引受人でもない。弁護士には依頼人を「管理監督」する権限も義務もないのである。弁護士がプロフェッショナルとして負うべき第一の職責は「依頼者の権利及び正当な利益を実現する」ことである(弁護士職務基本規程21条)。そして、この任務を遂行するために「依頼者の意思を尊重し」なければならないのである(同規程22条1項)。

 刑事事件の訴追を受けている被疑者・被告人の弁護を依頼された弁護士(弁護人)の最大の任務は、依頼人である被疑者・被告人に保障された防御権を「擁護するため、最善の弁護活動」をすることである(同規程115条)。そのために、弁護人は被告人の「身体拘束からの解放」のための努力をする義務を負っているのである(同規程47条)。こうした職責は日本国憲法が保障する基本的人権の実現にとって不可欠の活動である。わが国の憲法はすべての個人に対して、行動の自由を保障し「正当な理由」がなければ抑留拘禁されない権利を保障している(34条)。この権利を実質的に保障するために、憲法は資格のある弁護人の援助を受ける権利をすべての個人に保障しているのである(34条、37条3項)。弁護人が、依頼人のために、身体拘束の正当性がないことを主張し立証して、裁判官に依頼人を解放するように説得する活動をすることを十分に保障されていなければ、こうした憲法の保障は形骸化するであろう。

 刑事弁護人に被告人の行動を監視する義務を課し、被告人の違法行為に対する責任を負わせるとすれば、被告人の権利擁護、自由確保のための活動は著しく萎縮してしまうであろう。依頼人の自由を確保すればするほど弁護士は依頼人の生活に対する干渉、介入、監督の責任を負担することになる。むしろ、被告人に自由を与えず、拘禁状態を継続させておいたほうが、弁護人は安心して弁護士業務を行うことができることになる。これは、依頼人と弁護士とを利益相反状態におくことに他ならない。刑事被告人は、自らの自由確保のために法律専門家の援助を十分に受けることができず、一人、強大な国家権力と対峙することになる。それは正しく警察国家、全体主義国家への道にほかならない。

 わが国が自由で民主的な国家であるためには、刑事弁護人を「被告人を管理監督する立場」におくようなことを決してしてはならないのである。

2 「弁護人が被告人を逃走させないこと」という保釈条件は存在しない

●●氏≪実名記載≫は「保釈の条件は対象弁護士***が被告人を逃走させないこと」であったと述べている(懲戒請求の理由、1頁)。しかし、そのような条件は存在しない。カルロス・ゴーン氏の保釈条件は2019年3月5日付及び同年4月25日付保釈許可決定(乙1、2)のとおりである。弁護人が行うべきこととして求められているのは、

1)ゴーン宅に設置された監視カメラに保存された画像データを1ヶ月に1回裁判所に提出すること
2)ゴーン氏の携帯電話の通話履歴明細書及びインターネット・ログを1ヶ月に1回裁判所に提出すること
3)ゴーン氏が第三者と面会した記録を1ヶ月に1回裁判所に提出すること

である。私をはじめゴーン氏の弁護人はこの条件を厳格に遵守した。一度もこの条件に違反したことはない。

 なお、私はゴーン氏から、彼が法律上携行を義務付けられたパスポート以外のパスポート3通を預かり、厳重に保管していた。その管理を怠ったこと(懲戒請求の理由、1頁)などまったくない。

3 ブログの記載は不適切なものではない

 永沢氏は、2020年1月4日に投稿した私のブログを引用して、その内容は「違法行為を肯定する発言」「違法行為を助長する行為」であって「不適切」であるという(同前)。通常の日本語の理解力がある人がこのブログ記事を読めば、これが違法行為を肯定してもいないし、助長もしてもいないし、不適切でもないことは十分に良く理解できるはずである。

 このブログのなかで私は、ゴーン氏が密出国した事実を知って衝撃を受けたこと、その動機としてわが国の非人道的と言われても反論できない「人質司法」の現実や極限的にまで停滞し、迅速な裁判を受ける被告人の権利を著しく侵害している訴訟進行の現実があるのではないかという意見を述べた。そして、ゴーン氏が感じた絶望には共感できる部分があると告白した。こうした私の発言には十分な事実上の根拠がある。そして、これらのどこにも違法行為を肯定したり、助長したりする要素はない。
以上