弁護士に非行の疑いがあれば弁護士会に懲戒請求を申し立てることができます。これは国民が持つ「権利」であるという方がいますが?
どうでしょうか??
「権利」というならば、いつ、誰からか勝ち取ったという歴史的な闘いの足跡がありそうですが、弁護士会発行の本をみてもどこにもそのような記載は一切ありません。
弁護士法で懲戒請求者の立場の記載があるはずですが弁護士法にある懲戒請求者の記述は弁護士法第58条第1項しかありません。
弁護士法58条第1項「何人も、弁護士又は弁護士法人について懲戒の事由があると思料するときは・・・これを懲戒することを求めることができる」とあるだけです。
市民に懲戒権はない
弁護士に対する懲戒権は弁護士会、日弁連にしかありません。そのかわりに市民には誰でも懲戒を出すことができるとしたのです。これは権利ではなく何人も懲戒請求を可能であるということだけです。
2 自治的懲戒制度の根拠
弁護士に対する懲戒権行使が弁護士会・日弁連に委ねられていることは次の理由に基づくものと考えられている。
まず、第一に弁護士は基本的人権の擁護・社会正義の実現という使命を有し、憲法上も国家機関による不当な人権侵害から国民の基本的人権を防御する任務が規定されており(憲法34条、37条3項)国家機関が国民の基本的人権を侵害する恐れがある場合には、国家機関と鋭く対立することも予定されている。したがって弁護士と対立する関係に立ちうる国家機関に懲戒権行使を委ねることは好ましくないばかりでなく、弁護士にその使命を全うさせることも困難になる。そこで弁護士の職務に対する国家機関の監督を排除するため、その自治団体に懲戒権行使の権限を認めたものである。
「弁護士自治」「弁護士懲戒制度」自分たちの仲間の非行、不祥事の処分は自分達同僚が行う、国家権力から護るためだ。そのかわり、「何人も懲戒ができる」これを与えてやったというです。
弁護士への懲戒請求は国民が勝ち取ったものでも交渉で得たものでもなく、弁護士側から与えられたもの、交換条件でくれてもらったものです。
「何人も」をあげたのだから、弁護士会、日弁連は好きにやらしてもらいますというものです。そして好きにやっておられるのです。
「何人も」は上記のような経緯でできたものです、
懲戒請求の申立てがなされた場合、すぐに処分を下すことではなく綱紀委員会においていったん「あらごなし」まえさばきがなされ、綱紀委員会では「懲戒相当」簡単にいえば〇×の判定だけがなされ次に懲戒委員会に付されます。綱紀委員会では処分(戒告・業務停止・退会命令・除名・処分に至らず)は下さす懲戒委員会で処分を決定します。綱紀委員会、懲戒委員会とも弁護士会から独立していますが処分の決定は弁護士会長の名の下に行われます。
懲戒請求者の役目は綱紀委員会で終わります。懲戒委員会に付されてからは懲戒請求者が意見を述べること、事情を聴取されることはありません。処分は弁護士会が出しておきます、通報ありがとうとはいわないがご苦労様でしたで終わりです。懲戒請求とは「通報制度」ですから綱紀委員会で終わりますが、懲戒請求者が弁護士会の下した処分に不服であれば日弁連に異議を申し立てることができます。
現在の弁護士に対する懲戒請求の実状は、弁護士が携わった訴訟等の事件関係者からの不満や預り金を返さない、着手金を受けとりながら事件を放置する。依頼者や相手方に暴言を吐く等が主である。当該弁護士の非行によって被った被害者救済、被害感情の満足を目的としてなされることが多い。被害者救済という一面もある。
しかしこれは弁護士懲戒制度の反射的効果であり本来の目的ではない。
現行法が「何人」に対しても弁護士会への懲戒請求を認めたのは、弁護士懲戒制度の運用の公正を期するための公益的見地に基づくものであり懲戒請求者の個人的利益ではない。(最判昭和38年10月18日民集17巻9号129頁、最判昭和49年11月8日判時765号68頁)したがって、被害者救済という機能は懲戒制度の目的ではなく、その構造を理解するうえでも本質的影響を及ぼすものではない。
弁護士会の懲戒制度は被害救済ではありません。弁護士が依頼者の預り金を横領しても弁護士会は弁済しません。日弁連で「お見舞金制度」ができましたが、お見舞いですから当事者ではなく他人の立場でお気の毒でしたね、ひどい弁護士もいたもんですね、私たち弁護士会は弁済する必要は一切ありませんが、お気持ちだけお渡ししますという制度です、ですから被害者救済ではありません。