「棄却された懲戒請求の議決書」
弁護士に非行の疑いがあれば所属する弁護士会に懲戒を申立てることができます。法58条1項「何人も」となっており事件の当事者でなくとも懲戒請求者になることが可能です。対象弁護士に懲戒書が届くと対象弁護士は綱紀委員会に答弁書の提出を求められます。東京の場合は懲戒受理から約1月間です。答弁書を出さない場合でも懲戒処分になることはありません。
弁護士の対応はまちまちです。
超A級の弁護士「懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当との議決を求める」1行のみ、あとは綱紀委員でよきに計らえ!
普通の弁護士 期日までに答弁書を提出、本人の場合もあるが多くは同期の弁護士に書かせる
B級の弁護士 俺様に懲戒を出しやがったな!と綱紀に答弁書を提出する前にSNSで懲戒請求者の個人情報を晒す。
C級の弁護士 綱紀の判断が出る前に速攻、名誉毀損、業務妨害で損害賠償請求訴訟を提起、綱紀を信用していない。
D級の弁護士 追って書面を提出すると答弁しその後書面を出さない弁護士
論外 懲戒請求者の氏名が途中で変わる。最初述べたことと途中から違ってくる。何いってんのか分からない。
主 文
被調査人及び被調査法人につき,懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
事実及び理由
第1 事案の概要
本件は,被調査人が公判事件を受任していた依頼者(被告人)が,保釈中 に国外へ逃亡したのは,被調査人及び被調査法人(以下両者を含めて「被調査人ら」という。)が依頼者に対する管理監督義務を怠ったためであるとして, 懲戒請求がなされた事案である。
第2 前提事実
1、 被調査人は、カルロス・ゴーン(以下「ゴーン」という。)の金融商品取引法違反,会社法違反被告事件(東京地方裁判所平成30年特(わ)第335 0号(以下「第1事件」という。)同31年第14号(以下「第2事件」と いう。),第15号,同31年持(わ) 第992号(以下「第3事件」という。) の弁護人に就任した。
ゴーンは,第1事件につき平成30年11月21日に 勾留され,同年12月10日公訴が提起され,第2事件につき平成30年1 2月23日に勾留され,同31年1月11日公訴が提起され,第3事件につ き平成31年4月5日に勾留され,同月22日公訴が提起された。
2 被調査人を含めたゴーンの弁護人らは,第1・第2事件につき平成31年 2月28日,第3事件につき同年4月22日,ゴーンの保釈を請求したところ, 東京地方裁判所は,上記各事件につき保釈を許可した(丙6~丙8)。その後,ゴーンは保釈により釈放された。
3 ゴーンは,令和元年12月29日,保釈条件に違反して、関西国際空港か ら大阪入国管理局の出国審査を受けずに,トルコ経由でレバノンに入国した (公知の事実)。
第3 懲戒請求事由の要旨 1
懲戒請求事由1について
ゴーンの保釈指定条件は、被調査人らがゴーンを逃亡させないことなどを 条件に異例の条件で裁判所が許可したものであるにもかかわらず,被調査人らは,パスポートの管理及びゴーンの管理監督を重過失により怠り,結果的にゴーンの逃亡を許してしまったものであり,国民の司法に対する信用失墜 及び刑事司法の根幹を揺るがしかねない事態を招いたこと,今後の刑事司法 において長期間の勾留を助長する結果を招く可能性を重過失により導き出 した被調査人らの責任は重く,弁護士全体の信用問題に関わることは,重大な非行に該当する。
2 懲戒請求事由2について
上記ゴーンの国外逃亡は、弁護士の関与なしにできるのか疑問の余地があること等から,被調査人らが関与していた疑いがあり,非行に該当する。
第4 被調査人らの答弁及び反論の要旨
1 懲戒請求事由1について
被調査人らは、ゴーンのパスポートを,裁判所の定めた保釈指定条件に従い,弁護団において適切に管理していた。被調査人らに,保釈指定条件違反 の事実はない。また,被調査人は、ゴーンに対し,保釈指定条件について複 数回にわたり説明し,遵守するように指導していたのであり,この点につい ても何ら不適切な点はない。
また,「被調査人らが被告人を逃亡させないこと」を条件に保釈が許可されたという事実はない。ゴーンの保釈許可決定にあたり問題とされたのは、 もっぱら罪証隠滅の点である。逃亡の恐れについては、そもそも問題とされていなかった。
2 懲戒請求事由2について
被調査人らがゴーンの逃亡に関与した事実はない。 被調査人らは、ゴーンの国外渡航について詳細を関知しないが,仮に,懲 戒請求者が前提としていると思われる,報道されている情報が事実であると 仮定しても,ゴーンがそのような態様で国外に逃亡するなどということは, 裁判所,弁護人及び検察官を含め,誰も想定していない事態であった。国の出入国管理が正常に機能している以上は、起こり得ない事態であることは明 白である。このような異例の,想定外の事態に備えて,弁護人が「管理監督」を行うなどということは,およそ不可能である。 したがって,被調査人らに,ゴーンの「管理監督義務を解念する行為」は ない。
第5証拠の標目
別紙証拠目録記載のとおり。
第6_当委員会第1部会の認定した事実及び判断
1 前提事実は証拠により認められる。
懲戒請求事由1について。
懲戒請求者は,裁判所の保釈許可決定において, ゴーンの保釈指定条件中, ゴーンの弁護人である被調査人が「ゴーンを逃亡させないこと」を条件とさ れていたにもかかわらず,ゴーンの逃亡を許してしまったことは,被調査人 らの管理監督が不十分であった旨を主張する。
しかるに, 第1事件ないし第3事件の保釈許可決定 (丙6~丙8)には「釈放後は,別紙の指定条件を誠実に守らなければならない。」とあり,その別紙 指定条件には,弁護人に対しゴーンの指導監督を求める旨の特段の条項は認められない。また,第1事件ないし第3事件の保釈指定条件変更決定(丙1 0~丙12)にも,弁護人に対しゴーンの指導監督を求める旨の特段の条項は認められない。
また,同指定条件中,ゴーンのパスポートについては第6項「被告人は, 所持する旅券すべてを弁護人に預けなければならない。」との条項,及び保釈指定条件変更決定は第6項を「被告人は, 所持する被告人の旅券すべて(ただし, フランス政府発行のもの(旅券番号省略)を除く)を,弁護人に預け なければならない。被告人は,フランス政府発行の被告人の旅券(旅券番号省略)を鍵のかかる透明のケースに入れて携帯し,その鍵を弁護人に管理さ せなければならない。」と変更した旨の条項が認められるところ,被調査人らがその管理を怠ったと認定するに足りる証拠はない。
また,ゴーンの本件国外逃亡の態様は,極めて異常であり,被調査人らが ゴーンに対して,このような態様における逃亡を防止すべく指導監督することは,およそ予見可能性を欠くものであり,不可能であると解される。そのほか,被調査人らがゴーンの国外逃亡計画を知り,または知り得たと判断で きる事情は見当たらない。 以上によれば、被調査人らがゴーンの逃亡の恐れについて管理監督が不十 分であったということはできず,懲戒請求事由1は認められない。
3 懲戒請求事由2について
被調査人らがゴーンの国外逃亡計画に関与したと認められる事情は見当たらない。したがって,懲戒請求事由2は認められない。
よって,主文のとおり議決する。
令和3年11月19日
東京弁護士会綱紀委員会第1部会 部会長 (記載省略)
証拠目録、
第1 書証
1 懲戒請求者提出
なし
2 被調查人提出
なし
3 職權
丙1 懲戒請求書
丙2 答弁書
丙3 答弁書補充書
丙4 保請求書(平成30年特(力)第3350号,同31年特(力) 第14号,第15号。2019年2月28日付)
丙5 保請求書(平成31年特(力)第992号。2019年4月22日付)
丙6 保許可決定(平成30年特(力)第3350号,平成31年3 月5日付片)
丙7 保积許可決定(平成31年特(力)第14号,平成31年3月5日付)
丙8 保許可決定(平成31年特(力)第992号,平成31年4月25日付片)
丙9 保条件变更申請書(平成30年特(力)第3350号,同31年特(九) 第14号,第15号,第992号。2019年5月24日付于)
丙10 保税指定条件变更決定(平成30年特(力)第3350号。令和元年5月27日付け)
丙11 保积指定条件变更決定(平成31年特(力)第14号。令和元年5月27日付け)
丙12 保积指定条件变更決定(平成31年特(力)第992号。令和元年5月27日付)
第2 人証 なし
左は抄本 で ある。
令和3年12月20日 東京弁護士会事務局長 望月秀一 印