弁護士裁判情報 東京高裁

弁護士が原告・被告となった裁判 

弁護士が所属弁護士会から懲戒処分を受けて処分は不当であるとした場合、日弁連に審査請求を申立てすることができます。審査請求が棄却また変更となった場合、まだ不服であるとした場合に行政不服審査法に基づき東京高裁に「裁決取消請求訴訟」を提起することができます。
ただし、過去に処分取消になった例はありません。業務停止1月が戒告に変更された事例が1件(第二東京弁護士会)あるだけです。
宮之原弁護士は当初業務停止2月でしたが審査請求で業務停止1月に変更されましたが、これも納得できず裁決取消請求訴訟を提起されました。

東京高裁裁決取消請求事件 令和3年ワ14号 特別部4部 7月7日弁論 825法廷

請求者 宮之原陽一弁護士 (第一東京)

被請求者 日本弁護士連合会

懲 戒 処 分 の 公 告 2019年11月号

第一東京弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。

          記

1 処分を受けた弁護士氏名 宮之原陽一 登録番号 21987

事務所 東京都千代田区平河町2-16-5クレール平河町202

宮之原法律事務所 

2 懲戒の種別 業務停止2月⇒業務停止1月に変更(2020年9月19日)

3 処分の理由の要旨

(1)被懲戒者はA及び懲戒請求者Bの父親Cが作成した遺言公正証書の内容を知っていたところ、2016年8月2日にCの相続が開始した後にAが上記内容に反した相続登記手続を行うことを知りながら、その手続きを行う司法書士をAに紹介してこれを支援した。

(2)被懲戒者は懲戒請求者Bの代理人弁護士から2016年8月23日及び9月29日にそれぞれ連絡を受ける等して、懲戒請求者Bに代理人がいることを熟知していたにもかかわらず、各連絡に対する同年8月26日付け警告書及び同年9月30日付け懲戒請求者Bに対して送付した。

(3)被懲戒者は依頼者であるD所有の建物の売却に関して、懲戒請求者Eの代理人弁護士から受任通知を受領する等して懲戒請求者Eに代理人弁護士がいることを熟知していたにもかかわらず、上記建物内の懲戒請求者Eの荷物の搬出について相談したい旨持ちかける内容の2017年9月1日付け通知書を懲戒請求者Eに直接送付した。

(4)被懲戒者は2017年9月17日、上記(3)の建物について、荷物搬出業者を同道して来訪し、その建物内にいた懲戒請求者Eに対してその占有がないから荷物を撤去しても構わない旨を告げて建物内に入ろうとした。(5)被懲戒者の上記(1)の行為は弁護士職務基本規程第14条に上記(2)及び(3)の行為は同規程第52条に、上記(4)の行為は同規程第21条に違反しいずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

4処分が効力を生じた日 2019年7月1日  2019年11月1日 日本弁護士連合会

裁 決 の 公 告(処分変更)2020年11月号

第一東京弁護士会が2019年7月1日付けで告知した同会所属弁護士 宮之原陽一会員(登録番号21987)に対する懲戒処分(業務停止2月)について同人から行政不服審査法の規定による審査請求があり本会は2020年9月15日、弁護士法第59条の規定により懲戒委員会の議決に基づいて、以下のとおり裁決したので懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第3号の規程により公告する。

1 裁決の内容

(1)審査請求人に対する懲戒処分(業務停止2月)を変更する。

(2)審査請求人の業務を1月間停止する。

2 採決の理由の要旨

(1) 本件は審査請求人が遺産相続事件において代理人弁護士を差し置いて懲戒請求者に直接通知したこと、遺言公正証書の内容に反する相続登記手続を支援したこと等(以下「本件第1事案」という)について、また建物明渡請求事件において同じく代理人弁護士を差し置いて懲戒請求者に直接通知したこと、懲戒請求者の自宅から反対を押し切って強引に荷物を搬出しようとする自力救済を行った等(以下「本件第2事案」という)についてそえぞれ事件の相手方であった懲戒請求者から懲戒請求された事案である。

(2)これらにつき、第一東京弁護士会(以下「原弁護士会」という)の認定した事実及び判断は原弁護士会懲戒委員会の議決書に記載のとおりであり原弁護士会は前記認定と判断に基づき審査請求人を業務停止2月の処分に付した。

(3)審査請求人の本件審査請求の理由は要するに原弁護士会の前記認定と判断には誤りがあり原弁護士会の処分に不服なのでその取消しを求めるというにある。

(4)審査請求人から当委員会に新たに提出された証拠も含め審査した結果、本件第1事案の懲戒事由のうち遺言公正証書の内容に反する相続登記手続を支援したことについては審査請求人は遺言無効事由が存する場合には遺言書が存在していても相続登記を行うことは可能だが遺言無効事由が存在しない場合には法的に問題があるとの助言を依頼者に対し行っていたところ、同人は父親が死亡した2日後に審査請求人に対し司法書士の紹介を依頼したが、審査請求人としては同人が遺言書の内容と異なる法定相続分に基づく相続登記の依頼を行うことを想定しながら、この時点で遺言無効事由を基礎付ける客観的証拠の存在を確認しないまま、同人に司法書士を紹介したが、かかる審査請求人の行為は弁護士職務基本規程第14条に違反するものといえ、この懲戒事由に関する原弁護士会懲戒委員会の判断は相当である。

また、その他の懲戒事由に関する原弁護士会懲戒委員会の認定及び判断も相当である。

(5)ただし、懲戒請求者らは既に本件懲戒請求を取り下げていること、また本件第2事案の懲戒請求事由のうち、懲戒請求者の荷物を搬出しようとした点については、実際に搬出までに至っていないことなど、審査請求人に有利な事情も斟酌すれば業務停止2月の処分は重きに失し業務停止1月とするのが相当である。

3裁決が効力を生じた年月日 2020年9月19日 2020年11月1日日本弁護士連合会