懲戒請求者 個人
被調査人 弁護士法人カイロス総合法律事務所 (届出番号725)
当委員会第一部会は、 頭書事案について調査を終了したので、 審議の上、以下のとおり議決する。
主 文
被調査人につき、 懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
第1 事案の概要
事実及び理由
被調査人が、「先払い買い取り」 といわれる金融を行う闇金業者と顧問契約を締結して違法行為を助長したとして、 懲戒請求がなされた事案である。
第2 前提事実
1 被調査人は、申立外株式会社✕✕r(以下「✕✕」という) の顧問弁護士法人である
2(1)✕✕ は、 「Mono MONEY」 というウェブサイトを運営している。
(2)同サイトでは、「Mono MONEY」 について、「それはあらゆるものを即時にお金に変えるフラッシュ買取サービス」、 「どこにいても、 あなたのモノはすぐにお金に変わる」、 「あなたがお金が欲しいと思ったその瞬 間にどんなものでも、どこにいても、 あなたの手元にある 「モノ」を写真にとるだけですぐに 「お金」に換えることができます。 写真だけで判断し、 買い取るサービスがフラッシュ買取です。」 などとの記載がある。
(3)また、同サイト内には、 「KAIMONO」 というサイトがあり、 こちらは、「買い物を楽しむお得なオンラインショップ」などと記載されている。
bazzar は、 東京都公安委員会より古物商の許可を取得しており、 「Mono MONEY」、及び、「KAIMONO」 のURLを東京都公安委員会に 届け出ている。
第3懲戒請求事由の要旨
1 ✕✕は、「先払い買い取り」 といわれる金融を行う闇金業者である。 すなわち、✕✕は、「Mono MONEY」の名称で、 物品の買い 取りを装って、顧客 (利用者) に現金を前払いし、後になって、 顧客 (利用者) から物品が届かないとして高額な違約金や手数料を請求するという新手の商法を行っている。
物品売買は名ばかりで、 実際には金銭の貸し借りが、 「Mono MONEY」 (××)と顧客(利用者)との間の暗黙の了解で行われている。 「Mono MONEY」 (✕✕) は、 古物営業など免許を得ていないものと思われ、 そもそも、 物品の売買など存在せず、 実態は貸し付けであり、 貸金業である。
「Mono MONEY」 (✕✕) は、 事務手数料1000円と取引価格の3割の違約金を徴収するのが目的である。
事務手数料や違約金を年利計算すると過大な金利になり、出資法違反、及び、利息制限法違反の問題が発生するし、このような高額な違約金を定めることは、 そもそも公序良俗違反であり、 また、消費者契約法などの法令にも抵触する蓋然性が高い。
2 このような業者の顧問弁護士法人に就任することは、法令等の調査不足であり、 違法行為の助長に相当する。
第4 被調査人の答弁及び反論の要旨
1 ✕✕ は、 古物事業に必要な許可を取得しているし、 物品の売買が存 在しないなどということも事実に反する。
2 ✕✕ は、 昨今のSDGsによるリユース事業の注目やメルカリやヤフオクなどによる市場の急速な拡大に着目し、メルカリやヤフオクでは売却に時間を要するおそれがあることから、写真で物品を撮影し、 気軽に現金化することができ、購入した物品について自社サイトで売却できるプラットフォ ームを作成し、ビジネス化することを考え、 古物商の許可を得て、「Mono MONEY」のフラッシュ買取サービス (以下「本件買取サービス」という) を開始し、 続けて 「KAIMONO」という物品を販売するサービスを展開し た。
3 本件買取サービスの概要について
懲戒請求者が問題とする本件買取サービスの概要は以下のとおりである
(1) 顧客が、買い取ってほしい物品を写真撮影して、 「Mono Y」 (bazzar) に送信する。MONE
(2)「Mono MONEY」 (✕✕) が、 写真をもとに当該物品の査定を行う。
(3)「Mono を支払う。MONEY」(bazzar) が、顧客に当該物品の代金
(4)顧客が7日以内に当該物品を「Mono MONEY」(bazzar) に発送する。
4 顧客からの解約及び解約手数料、 並びに、違約金について
(1) リユース事業において、 在庫を抱えたいわゆる 「転売ヤー」 (インターネッ ト等を利用して転売を行う人) にMonoMONEY」 を利用してもら うことが事業拡大において重要であるところ、 メルカリやヤフオクでより高 額に販売することができたときには、 取引をキャンセルすることができるよ うな仕組みにすることで、 「転売ヤー」 からの一定の取引を確保することができると考えられた。
(2) そこで、 「Mono MONEY」 (✕✕) では、 本件買取サービスにおいて、 代金受け取り後に、 顧客の都合で売買契約を解除する場合、顧客は、24時間以内であれば、 事務手数料1000円のみで、 契約を解除できることとした。
なお、 事務手数料についていえば、✕✕ は 査定を行って 「KAIMONO」 で販売することから、査定、 販売の準備等、一定の手数料が発生する。
(3) また、 本件買取サービスにおいて、顧客が「Mono MONEY」(ba zzar) に売却した物品を発送しないなどの違約をした場合には、 「Mono MONEY」(✕✕) は売買代金の30%を違約金として顧客に請求できる約定となっている。
これを顧客 (「転売ヤー」)の側からみれば、 発送までの7日という猶予期間に、取引価格の3割に相当する違約金を支払って、 取引をキャンセルでき るということになる。
5 (1) 本件買取サービスにおいて、✕✕ は、 顧客との間で売買契約が 成立した後、顧客から物品が発送されれば、自らの意思で契約を解除して、 売買代金の返金を受けて違約金も受け取るということはできないのであり、✕✕が、 本件買取サービスを金銭消費貸借契約のように利用する ことは不可能である。
(2) 「Mono MONEY」 (✕✕) では、顧客が、物品を持って いないにもかかわらず、 金融目的で本件買取サービスの取引を利用するこ とがないよう、 写真撮影をした物品が利用者の所有物であること等をチェ ックボックスを用いるなどして確認し、ウェブサイト上の表明としても 「中古品の買取を目的として取引をするものであり、 金融目的でキャンセ ルを行って金銭を受け取ることは詐欺罪にあたります。 金融目的でのキャ ンセル行為が発覚したときは、 順次、 警察等に被害届の提出を検討させて いただきますのご了承ください。」 等の警告をしている。
現状、キャンセルした顧客から売買代金元本すら返金されないケースや、 破産間近の者が利用するなどの問題も多発しており、 対策の強化をしているところである。
(3) また、 司法書士が顧客の代理人となって、 ✕✕に対し、 売買代金が「不法原因給付」であるとして、 金が 「不法原因給付」 であるとして、一切返金しない旨主張する例が後を絶たないため、 ✕✕ では、 順次、 訴訟的解決を目指して活動中である。
6 懲戒請求者について
懲戒請求者が、本件買取サービスを利用した履歴は一切見当たらなかった。
7 まとめ
本懲戒申立ては、まったくの憶測で根拠もなく、濫用的な請求であり、断 じて許されるものではない。当然ながら、 懲戒請求事由にはなり得ない。
第 5 証拠の標目
別紙証拠目録記載のとおり。
第6 当委員会第一部会の認定した事実及び判断
1 関係証拠によれば、 前提事実のほか、以下の事実が認められる。
(1) 「Mono MONEY」 における買取サービスには、本件買取サービスのほか、郵送による査定・買取サービスがある。
(2) 本件買取サービスの大まかな流れは次のとおりである。
ア 顧客が、買い取ってほしい物品を写真撮影して、「Mono MONEY」 (✕✕) に送信する。
イ 「Mono MONEY」 (✕✕) が、 写真をもとに当該物品の 査定を行う。
ウ 顧客が査定額に同意した場合には、 売買契約を締結し、「Mono MONEY」 (✕✕) が、 顧客に当該物品の代金を支払う。
エ 顧客が7日以内に当該物品を「MonoMONEY」 (✕✕) に発送する。
(3) 本件買取サービスにおいて、 「Mono MONEY」 (✕✕) は、当該物品が利用者の所有物であること等をチェックボックスを用いるなどして確認する仕組みになっている。
(4) 本件買取サービスにおいて、 顧客の都合で売買契約を解除する場合、 顧客は、24時間以内であれば、 事務手数料1000円のみで契約を解除できる。
(5) 本件買取サービスの売買契約書には、 顧客が物品を発送しないなどの違約をした場合には、「Mono MONEY」(✕✕) は売買代金の30%を違約金として顧客に請求できる条項が定められている。
2 以上で認定したところによれば、 ✕✕の実態が貸金業であり本件買取サービスによって物品の買い取りを装って違法な貸し付けを行っていると 認めるまでの証拠はなく、 したがって、 被調査人において、法令等の調査不足 があり、違法行為を助長したとは認められない。
よって、 主文のとおり議決する。
令和4年11月18日
東京弁護士会綱紀委員会第一部会
部会長 (記載省略)
6 第1
書証
証拠目録
1 懲戒請求者提出
甲1 インターネットの記事 「「先払い買取り」 商法が横行 規制強化を弁護士など国に要請」
甲2 会社概要 (✕✕)
甲3 ✕✕の登記情報
甲4 インターネットの記事「コロナ禍に蔓延する違法高利の 「買い取り金融」 」
2 被調査人提出
乙1 乙2の1 乙2の2 乙2の3 乙2の4 乙2の5 乙2の6
乙3 「買取から販売まで」 (✕✕)
令和3年6月24日付け通知書(司法書士前田勝範) ・令和3年6月25日付け通知書 (司法書士〇) 令和3年7月13日付け通知書 (司法書士〇) 令和3年8月18日付け通知書(司法書士〇) 令和3年9月28日付け通知書 (司法書士〇) 令和3年10月22日付通知書(司法書士〇) 令和4年9月22日付け調査事項照会の回答書及び資料 (被調査人 )
第2 人証 なし