弁護士自治を考える会

弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2023年2月号に掲載された弁護士の懲戒処分の公告・第一東京弁護士会・前田博之弁護士の懲戒処分の取消の採決の要旨

日弁連広報誌「自由と正義」は毎月発行です。特集の読み物も充実しています。あなたが取った懲戒処分の記念にぜひ1冊。お申込みは、日弁連広報課 自由と正義担当 03(3580)9840年間購読費12000円(税別)1冊でも購入可能です。

処分理由・審査請求による取消

前田 博之 紀尾井町東法律事務所 HPより

【経歴】

  • 昭和48年4月 判事補として任官
  • 昭和58年4月 判事任官
  • 平成10年3月 浦和地裁判事退官
  • 平成10年5月 第一東京弁護士会登録
    以後、大手弁護士事務所パートナーとして活躍
  • 平成17年8月   紀尾井町東法律事務所開設
    弁護士登録後、千葉商銀信用組合の金融整理管財人、清算人として業務を遂行し、また破産管財人として 数多くの破産事件を処理
  • 弁護士職務の適正化に関する委員会委員(日弁連)
  • 紛議調停委員会部会長(第一東京弁護士会)
懲 戒 処 分 の 公 告 2022年7月号

第一東京弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。

                 記

1 処分を受けた弁護士氏名 前田博之  登録番号 26320

事務所 東京都千代田区麹町3-7 半蔵門村山ビル3階

 紀尾井町東法律事務所

2 懲戒の種別 戒告 2022年12月処分取消

3 処分の理由の要旨

被懲戒者は2014年3月に懲戒請求者から遺産分割及び貸金返還請求の件を受任したが、遅くとも2017年2月に打ち合わせをした以降はいつでも委任契約書を作成することが可能であったにもかかわらず、懲戒請求者から2018年7月に解任されるまで委任契約書を作成しなかった。

被懲戒者の上記行為は弁護士職務基本規程第30条に違反し、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

4処分が効力を生じた日 2022年1月18日 2022年7月1日 日本弁護士連合会

委任契約書を作成しなかったのが処分理由となっていますが、委任契約書を作成しないだけで処分はありません、委任契約書を作成しないまでも事件処理が上手くいけば苦情を申立てる、懲戒がでることなどありません。いくつか理由があってその一つになるだけです事件放置があったと裁決書にあるようです。当初の処分要旨も割愛され審査請求で処分取消になるほどの大物弁護士だったのでしょう。

 

裁決 の 公 告(処分取消)

第一東京弁護士会がなした2022年1月18日に告知した同会所属弁護士 前田博之 会員(登録番号26320)に対する懲戒処分(戒告)について同人から行政不服審査法の規定による審査請求があり本会は2022年12月13日、弁護士法第59条の規定により懲戒委員会の議決に基づいて、以下のとおり採決したので懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第3号の規定により公告する。

          記

1 裁決の内容

(1)審査請求人に対する懲戒処分(戒告)を取消す、

(2)審査請求人を懲戒しない、

2 採決の理由の要旨 

(1)本件は審査請求人が、①事件処理を放置して消滅時効を完成させ、また、② 受任にあたり委任契約書を作成しなかったことが、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当するとして懲戒請求された事案である。

(2)第一東京弁護士会(以下「原弁護士会」という。)上記①については、結果的には懲戒請求者に実質的な損害を与えたとまで認定することができないとして、いまだ弁護士として品位を失うべき非行があったとはいえないとしたが、上記②については、審査請求人は委任契約書をしておらず、これらについて合理的な理由は認められないから、弁護士職務基本規程(以下「規程」という、)第30条に違反し、弁護士としての品位を失うべき非行に該当すると判断した。

(3)委任契約書の作成は、依頼者とのトラブルを未然に防止するために極めて有効、有益であることから、規程第30条は、事件を受任するにあたりその作成義務があることを明確に規定しているところ、審査請求人が本件において委任契約書を作成しておらず、そのことについて合理的な理由は認められないことは明らかであって、これをもって弁護士としての品位を失うべき非行に該当した原弁護士会の判断は決して不当とはいえない。

(4)しかしながら、審査請求人は原弁護士会の処分の後に、懲戒請求者との間で訴訟上の和解を成立させ、受領した着手金を超える金員を支払っており、また現在では委任した事件全件につき委任契約書を構築し再発防止のための事務所体制を構築する等していて,真摯な反省態度をうかがうことができる。

(5)審査請求人が委任契約書を作成しなかったことは明らかではあるものの、こうした原弁護士会の処分後の審査請求人のために酌むべき事情も考慮すれば、審査請求人に対し戒告処分を維持することはやや重きに過ぎると考えられ、いまだ弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行があったとまではいえないおのとして審査請求人を懲戒しないとするのが相当であると判断した。

3 採決が効力生じた日 2022年12月19日 2023年2月1日 日本弁護士連合会

 

「書庫」審査請求と異議申立、処分取消と処分変更例 2023年2月更新