弁護士裁判情報 裁決取消請求事件 6月1日 15時 822号 弁論
弁護士が原告被告となった裁判 詳細は担当部にお問い合わせください
弁護士が所属弁護士会から懲戒処分を受け、処分が不当である場合、日弁連に審査請求を申立てすることができます。日弁連での裁決が不満である場合、東京高裁で行政不服審査法の規定により日弁連を相手に裁決取消訴訟を提起することができます。懲戒請求者はできません。
本件懲戒処分は所属の埼玉弁護士会が棄却したが、懲戒請求者が日本弁護士連合会に異議申立てを行い異議が認められ、戒告処分となったもの

東京高裁

裁決取消請求事件  令和4年行ケ25 特別部
請求人 大塚嘉一弁護士 20822(埼玉)菊池総合法律事務所
被請求人 日本弁護士連合会
懲 戒 処 分 の 公 告 2022年6月号

 埼玉弁護士会が2021年1月4日付けでなした被懲戒者を懲戒しない決定について、懲戒請求者から異議の申出があった本会は、上記決定を取り消して、一家のとおり処分をしたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第6号の規定により公告する。

          記

1 処分を受けた弁護士氏名 大塚嘉一 登録番号 20822

事務所 埼玉県さいたま市浦和区高砂2-1-16 浦和大熊ビル5階

菊池総合法律事務所 

2 懲戒の種別 戒告 

3 処分の理由の要旨

(1)被懲戒者は、自身の所属する法律事務所のホームページ中の弁護士が執筆するコラムに、PTAに関するAの言動を批判する記事(以下「本件記事」という。)を掲載した。

原弁護士会懲戒委員会議決書(以下「原議決書」という。)は本件記事中の「A(氏名)のA(名前)はなんとお読みするのでしょう。PTAをくさすから●●●、でしょうか、頭がクサっているから●●●に違いない。●●●なら、クソだ、まではすぐ。」との記述を(以下「当該記述という。)を弁護士職務基本規程(以下「規程」という)第6条に反するとした。

その上で原議決書は、本件記事が社会的な関心のある事項に対する被懲戒者の見解として表現の自由の観点から慎重な検討が必要であるとして、本件記事が弁護士の法律事務に関する職務を遂行する過程における記述ではないこと、当該記述につき民事及び刑事の手続で違法有責な行為と認定されていないこと、異議申出人の名誉感情が侵害されて不快感を抱いたことは十分に理解できるが、異議申出人は研究者且つ著名人として各方面から多様な意見批判を寄せられている社会的地位にあるから当該記述のような品位を欠く表現により屈辱されたとしても一般的、平均的な読者がかかる記述に迎合して異議申出人を貶めることは通常考えられず、異議申出人の社会的評価や人格的評価の低下は通常考えにくいこと、当該記述が本件記事の中核的な部分を占めるものではないこと並びに事後的に被害の解消に努めたことなどを総合考慮して、弁護士法第56条に定める「品位を失うべき非行」には該当しないと判断した」

(2)しかしながら、当該記述は、異議申出人の氏名を異なる呼び方で殊更に呼称した上で、これに結び付けてなされており、異議申出人の主張とは全く無関係である上に、個人の人格の象徴と言える氏名を対象に屈辱したものであって、氏名に対する記述には反論が困難であることからしても、悪質と言わざるを得ない。そして、当該記述は、もとより表現内容自体相当に屈辱的であり、論評の域を明らかに逸脱している。

しかも、本件記事はインターネット上に掲載され無制限に拡散して被害が収束しないおそれがある表現方法でなされたものであることも看過できない事情である(現にインターネット上で完全には抹消できていない)

また、被懲戒者の反省の程度は薄いこと、本件は、被懲戒者が自身の所属する法律事務所のホームページ上に代表弁護士の肩書を付して掲載した記事であって、弁護士活動かどうかはさて措き、弁護士の行為となされたと認めるほかないこと、本件記事について民事刑事の責任を問われていないことをが違法不当性のないことを意味するとは言えないこと、研究者や著名人であっても屈辱により名誉感情を害されることについてはそれ以外の人と差異がないことからすると、被懲戒者について酌むことができる事情として、当該記述が本件記事の一部であること、本件記事を掲載したのは一度であること及び事後的に被懲戒者が被害の解消に努めたことなど一切の事情を考慮しても、被懲戒者の上記行為は、規程第6条に反し、弁護士として品位を失うべき非行に該当すると言わざるを得ない、原議決書にも、これを相当とする少数意見があったことが付記されているところである。

(3)以上のとおり、本件異議申出は理由があると言えることから、被懲戒者を懲戒しないとした埼玉弁護士会の決定を取り消し、被懲戒者を戒告とすることを相当とする。

なお、社会的に論争となっている問題に関する弁護士個人の言論活動の中に部分的に品位を欠く表現が含まれていた場合であっても、弁護士会がこれを非行として懲戒処分をすることについては慎重かつ限定的であるべきであり、原弁護士会の懲戒しない旨の判断をあえて変更すべきではないとの少数意見があった。4処分が効力を生じた日 2022年4月18日 2022年6月1日 日本弁護士連合会