原告 K氏 代理人 村田智子、我孫子 理良、宮下 萌
被告 小川正和
1 被告は、原告に対し、1069万6374円及びこれに対する令和4年12月15日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを25分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
被告は、原告にた意思1118万1324円及びこれに対する令和4年12月15日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は、弁護士である被告に対し、事故で死亡した亡夫の遺産の分割及び加害者に対する損害賠償請求の交渉を委任された原告が、被告が同交渉により受領した示談金を引渡さないとして、被告に対し、委任契約に基づき、示談金1125万円から被告が亡夫に代わって支払った金員6万8676円を控除した1118万1324円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和4年12月15地にから支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1 前提事実
(1) ア 原告は、外国籍の女性であり、某Tの妻である。
イ 被告は、弁護士である。
(2) 某Tは、平成26年8月21日、通勤途中に工事現場の過失事故により死亡した。
(3) 原告及び某Tの兄S(平成29年死亡)は平成26年11月10日、某Tの遺産の分割及び某Tの死亡について上記工事を施行していた建築会社らに対する損壊賠償を委任した。
(4) 被告は、平成28年5月12日、建築会社との間で、建築会社らが連帯して、原告に対して488万3650円の各損害賠償義務を負うこと、そのうち、原告に対して340万0950円、某Sに対して113万3650円をそれぞれ支払済みであること、建築会社らが同年6月30日限り、被告の預かり口座に、原告に係る残金1125万円及び某Sに係る残金375万円の合計1500万円を振り込んで支払うことなどを内容とする示談を成立させた。
(5) 上記建築会社らは、平成28年5月24日、保険会社を通じて、上記示談金合計1500万円を被告の預り金口座に振り込んで支払った。
(6) 被告は、平成28年5月30日、株式会社ジーシービーに対し、同社に対する某Tのショッピング債務等のうち、原告が相続した債務6万8676円を立替払いした。
(7) 被告は、令和5年5月15日の本件口頭弁論期日において、被告の原告に対する示談金1125万円の返還債務と原告の被告に対する立替金債務を対等額で相殺するとの意思表示をした。
2 争点及びこれに対する当事者双方の主張
(1) 争点1(被告から原告に対する示談金支払の有無)について
(被告の主張)
被告は、原告に対し、建築会社からら預かった原告分の示談金1125万円から報酬及び立替金を差し引いた金員を支払った。
(原告の主張)
否認する。
(2) 争点2(被告による市民税等の立替払いの有無)について
(被告の主張)
被告は、某Tの市民税86万5300円のうち、原告の法定相続分4分の3に相当する64万8975円を立替払いしたから、原告は、被告に対し、同額の返還金を負う。
(原告の主張)
争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(被告から原告に対する示談金支払の有無)について
被告は、原告に対し、原告分の示談金1125万円につき、経費等を控除して支払った旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。
2 争点2(被告による市民税等の立替払いの有無)について
証拠及び弁論の全趣旨によれは、被告は、平成28年6月3日、某Tに代わって、某Tの平成26年度市・県民税のうち63万7600円及び同年度固定資産税・都市計画税のうち9000円(合計64万6600円)を納付したことが認められ、被告の主張は、原告が被告に対して上記64万4950円の返還義務を負うとの限度で理由がある。
3 結語
よって、原告の請求は、被告に対し、1069万6374円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和4年12月15日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
令和5年8月1日
東京地方裁判所民事第1部 裁判官 梶浦義嗣
被告 小川正和弁護士 登録番号25456
事務所 東京都品川区小山3-21-10 ARK21武藏小山2階12
小川総合法律事務所
原告代理人
村田智子 登録番号24751 東京 TOKYO大樹法律事務所
我孫子理良、登録番号35497 東京 TOKYO大樹法律事務所
宮下 萌 登録番号57832 東京 弁護士法人戸野・小佐田法律事務所