弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2025年5月号に掲載された弁護士の懲戒処分変更の公告・長崎県弁護士会・石井精二弁護士の懲戒処分変更の要旨
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処分理由・日弁連への異議申立により処分変更
戒告→業務停止1月
NCC長崎文化放送https://www.ncctv.co.jp/news/article/15683295
長崎県弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。
記
1 処分を受けた弁護士氏名 石井精二 登録番号 14935
事務所 長崎市賑町5-21 パークサイドトラヤビル401 崎陽合同法律事務所
2 懲戒の種別 戒告
3 処分の理由の要旨
(1)被懲戒者は、被懲戒者の親族Aの手続代理人として、2020年12月24日、Aの成年後見開始審判の申立てを行ったものの、申立書の財産目録にA名義の普通預金口座及び定期預金口座を記載せず、また、2021年4月8日、Aの成年後見人である懲戒請求者B弁護士から上記各預金口座の通帳及び銀行印の引渡しを求められたにもかかわらず、上記普通預金口座から50万円を払い戻し、同月12日、上記通帳の引渡しを拒んだ。
(2)被懲戒者は、2021年4月9日、成年後見人が選任されているにもAの住所を被懲戒者の自宅住所に変更する届出をした。
(3)被懲戒者は、2021年4月9日、成年後見開始審判の申立ての結果、Aが事理を弁識する能力を欠く常況にあると裁判所から判断されて、成年後見人が選任されていたにもかかわらず、2021年4月14日、Aと財産調査等を内容としる委任契約を締結し、同日、懲戒請求者B弁護士から上記委任契約を取り消された後も、Aの代理人として懲戒請求者B弁護士に対し数々の要求行為等を繰り返した。
(4)被懲戒者は、Aが入所するサービス付き高齢者向け住宅を運営する一般社団法人Cに対し、懲戒請求者B弁護士とAとの面会を拒否するよう指示、助言し、また懲戒請求者B弁護士が2021年4月28日にAと法人との契約一切を解除したにもかかわらず、これが無効であるとした上で、C法人に対し、同月30日のAの退所を拒否するよう指示、助言した。
(5)被懲戒者はAの代理人であるとして、懲戒請求者B弁護士にAの財産状況の報告を求め、それを拒否した懲戒請求者B弁護士に対し2021年8月6日付けで送付した書面において、背任罪として告発する旨を記載した。
(6)被懲戒者の上記行為はいずれも、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
4処分が効力を生じた日 2024年5月23日 2024年11月1日 日本弁護士連合会
長崎弁護士会が2024年5月23日付けでなし同日に効力を生じた被懲戒者に対する戒告の懲戒処分について、懲戒請求者から異議の申出があった。本会は、上記懲戒処分を変更して、以下のとおり懲戒の処分をしたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第6号の規定により公告する。
記
1 処分を受けた弁護士氏名 石井精二
登録番号 14935
事務所 長崎市賑町5-21 パークサイドトラヤビル401 崎陽合同法律事務所
2 懲戒の種別 業務停止1月
3 処分の理由の要旨
(1)本件は、被懲戒者が、実母の成年後見人に選任された弁護士である懲戒請求者と後見事務の処理方針をめぐって対立し、懲戒請求者のなす財産管理や入所施設の決定等の療養看護の方針決定等の後見事務を次々に妨害したという事案である。
(2)原弁護士会は戒告よりも重い懲戒処分を科すことも十分に考えられると評価したが、他方、懲戒請求者が、被後見人の居住場所や介護方針の決定に当たって親族らや介護関係者の意見をよく聞いて決定すべきだったこと等を挙げて、懲戒請求者の対応に問題があり、それが被懲戒者の行き過ぎた行動を誘発した側面があるとして、被懲戒者の処分を戒告にとどめることを相当と判断した。
(3)しかし、かかる原弁護士会の判断には誤りがあり、その処分は不当に軽く変更は免れない。
(4)本件で、被懲戒者は、被後見人宛ての郵便物の転送先や住民票上の住所を被懲戒者の住所に変更し、被後見人をサービス付き高齢者住宅に入居させ、更には被後見人には判断能力があり、広範な委任を受けたと主張して、実母の代理人として懲戒請求者に対し、種々の要求を繰り返した。この間、懲戒請求者は、被懲戒者や他の親族から後見事務への協力を得られないだけでなく、次々と起こる事態に対応を余儀なくされており、懲戒請求者が被懲戒者や介護関係者から更に意見を聴取し、協議をするよう求められるのは、現実には極めて困難だった。
そして、その困難はむしろ被懲戒者の行為に起因しており、懲戒請求者の対応が被懲戒者の非違行為を誘発したと評価することはできない。
(5)被懲戒者には一定の反省もみられ、同様の非行が繰り返されるおそれはないと思われること等の事情を考慮しても、被懲戒者の各行為は、成年後見制度の基本的な趣旨を積極的に妨害するもので、その非行の程度は軽いとは言えない。
したがって、本件異議の申出には理由があるものと認め、原弁護士会のなした戒告処分を変更し、被懲戒者の業務を1月停止することが相当である。
4処分が効力を生じた日 2025年3月18日 2025年5月1日 日本弁護士連合会
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