2025年(綱)第28号 決定書

懲戒請求者 一般人 

対象弁護士 兵庫県明石市太寺4-6-15 いずみ法律事務所 

      泉 房穂 登録番号 25688 

本会は、掲記の懲戒請求事案について次のとおり決定する。

主 文 

対象弁護士を懲戒しない。

上記対象弁護士に対する懲戒の請求について綱紀委員会に調査を求めたところ、同委員会が別紙のとおり議決したので、弁護士法第58条第4項の規定により、主文のとおり決定する。 

2026年(令和8年)3月10日 

兵庫県弁護士会 会長 中山稔規 印

 議 決 書
主 文  対象弁護士につき懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。

懲戒請求者 一般人 

対象弁護士 兵庫県明石市太寺4-6-15 いずみ法律事務所 

      泉 房穂 登録番号 25688 

理 由 

第1 事案の概要

懲戒請求者は〇〇市の在住者である。対象弁護士は、前明石市長で現在は参議院議員である。懲戒請求者は、明石市長であった対象弁護士が小学校で開催された式典の前に市議に対して、市長の問責決議案に「賛成したら許さん」と発言したなど3件の非違行為があるとして、本件懲戒請求に及んだものである。

第2 懲戒請求事由の要旨 

1 令和4年10月8日、明石市内の小学校で行われた式典の開催前に、来賓であった対象弁護士は、同じく来賓であったII市議(A党)に顔を近づけて「賛成したら許さん」と3度繰り返した。その後、E市議(B党)に「問責なんか出しやがって、議員みんな、次の選挙で落としてやる。」などと発言した。A党の元市議にも同様の発言をした。この事案は、議会制民主主義を否定する行為に該当する、

2 対象弁護士は、令和7年の参議院選挙公示前の7月2日に、事前運動とも捉えかねない看板を設置し、公職選挙法違反の疑いで、兵庫県選挙管理委員会から警告を受けた。弁護士であるならば、議会制民主主義を尊重するだけに留まらず、法令を熟知していなければならないにも関わらず、公職選挙法違反の疑いで、兵庫県選挙管理委員会から警告を受けたことは弁護士として品位を失うべき非行に該当する、

3 対象弁護士は、令和6年7月27日、X(旧Twitter)にて、「テレビに出演するとなぜかお腹が減るような気がする。しかも今日は無茶苦茶に暑い。ということで、明石駅から自転車に乗って帰る前に、チョット一息。『ランチにぎり』に『生ビールの中ジョッキ』。さて、このお店の名前は何でしょうか?ヒント、『すし処 酒処〇〇』(〇は漢字2文字)」道路交通法で禁止されている自転車での1杯分のアルコールが抜けるまでに4時間以上かかるとされており、この投稿が本当であれば、飲酒運転となる。

また、令和6年5月24日に道路交通法の一部改正する法律が公布され、同年11月1日に施行された。今回の事案は改正法の施工前であり、罰則の対象外ではあるが、法施工後になされていれば罰則の対象になっており、弁護士全体の信用を害する行為である。

第3 対象弁護士の弁明 

1 懲戒請求事由の1のうちの発言の内容については概ね認めるが、政治家同士のやりとりの中での会話の一部であり、議会制民主主義を否定する行為に該当すしない。

2 懲戒請求2の「公職選挙法違反の疑いで、兵庫県選挙管理委員会から警告を受けた」との事実については、そもそもそのような事実はない。選挙の公示日までは選挙事務所の看板を白い布で覆うという対応がなされるのが通例であるが、令和7年の参議院議員選挙においては通例の対応に加えて、看板の氏名がより見えなくなるような対応をとっていた。

3 懲戒請求事由3のうち令和6年7月27日に懲戒請求者が指摘する趣旨の投稿をしたことは認めるが、この後、自転車には乗っておらず、そもそも飲酒運転はしていない。昼食にランチにぎりと生ビールの中ジョッキをとった後は、バスで移動したものである。

第4 証拠 別紙証拠目録記載のとおり。

第5 当委員会の認定した事実

1 平成23年から令和5年まで、対象弁護士は明石市長を務めていたが、令和4年10月8日、自身への問責決議案提出を予定していた同市議会議員らに対し、「賛成したら許さん」、「次の選挙で落としてやる」などと発言した」(甲2)

2 令和7年7月3日、参議院議員通常選挙が公示されたが、対象弁護士は、これ以前から、神戸市中央区で選挙事務所の開設準備を行っていた。公示前日に撮影された写真には、上記選挙事務所の看板が薄い白色の布で覆われているが、対象弁護士の氏名や顔写真が透けて見える状態であるものと(甲11、12)、この布の上から更に白い布で覆われて、上記の氏名も顔写真も見えない状態になっているものとがある。(甲13)。

3 令和7年7月27日、対象弁護士は、Xにおいて、「テレビに出演するとなぜかお腹が減るような気がする。しかも今日は無茶苦茶に暑い。」ということで、明石駅から自転車に乗って帰る前に、チョット一息。『ランチにぎり』に『生ビールの中ジョッキ』。

対象弁護士が、上記の昼食をとっていたことは、争いのない事実である。

第6 当委員会の判断 

1 懲戒請求事由1について 

懲戒請求者は、令和4年10月8日、対象弁護士がI市議に対して「賛成したら許さん。」と3度繰り返し、E議長に「問責なんか出しやがって、議員みんあ、次の選挙で落としてやる。」などと発言した上、元A党市議にも同様の発言をしたと主張している。上記の発言があったという事実を前提とした上で、これが弁護士としての品位を害する行為に該当するかどうかを検討する。

上記の発言は対象弁護士が明石市長在任中に行ったものであるが、弁護士会の懲戒制度の目的は、弁護士に対する国民の信頼を確保し弁護士の職務執行の公正さを維持することにあるのだから、弁護士として職務を行っている際の言動と、弁護士としての職務を離れて行動している際の言動とでは、おのずから評価に差が生じ、弁護士の職務との関係性が希薄な場合には、これに対する懲戒処分の必要性、相当性については慎重に判断されるべきである。

特に、地方自治体の首長は、民主主義の過程の中で、選挙によって選出されるのであって、その責任の取り方は政治的責任であるのが本則である。市長が弁護士資格を有する場合でも、市長としての不適切な言動が認められた場合には、第一次的には、その責任は、説明、謝罪、辞職、選挙等によって問われるべきであり、そのように考えるのが民主主義社会における一般的な社会通念に鑑みて相当というべきである。

このような、観点からみると、上記の対象弁護士の発言は、自身について問責決議案の提出を予定していた市議に対してなされたものであり、政治性の強い発言であったことが明らかである。

したがって、上記の発言は、弁護士会による懲戒が必要なものとは認められず、弁護士としての品位を害する非行には該当しない。2 懲戒請求事由2について 

懲戒請求者は、対象弁護士が令和7年の参議院議員選挙公示前の7月2日に、事前運動とも捉えかねない看板を設置し、公職選挙法違反の疑いで兵庫県選挙管理委員会から警告を受けたと主張する。
しかし、対象弁護士の選挙事務所の看板は、同日頃、複数の白い布で覆われており、最終的には対象弁護士の氏名も顔写真も見えない状態となっていたことが確認できる。

また、対象弁護士は兵庫県選挙管理委員会から警告を受けたことはない旨の答弁を行っているところ、この警告がなされたことはない。したがって懲戒請求事由2について、対象弁護士に品位を害する非行があったとは認められない。

3懲戒請求事由3について 

懲戒請求者は対象弁護士が令和6年7月27日にXで、「テレビに出演すると、なぜかお腹が減るような気がする。しかも今日は無茶苦茶厚い。ということで明石駅から自転車に乗って帰る前に、チョット一息。『ランチにぎり」に『生ビールの中ジョッキ』。さて、このお店の名前は何でしょう?ヒント、『すし処 酒処〇〇』(〇は漢字2文字)。」と投稿しており道路交通法で禁止されている自転車での飲酒運転をしたと出張する。

しかし、対象弁護士は、昼食にランチにぎりと生ビールの中ジョッキをとあったあと、バスで移動した旨の答弁を行っており、この答弁に反して飲酒運転を裏付ける証拠はない。

したがって、懲戒請求事由3についても、対象弁護士に品位を害する非行があったとは認められない。

第7 結論 

以上の次第であり、当委員会は審議の結果、対象弁護士につき懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当と判断し、主文のとおり議決した。本議決書には、委員長が下記に記名押印する。

令和8年1月26日 兵庫県弁護士会綱紀委員会 委員長 中上幹夫

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