棄却された懲戒の議決書
【棄却された懲戒の議決書】沖縄弁護士会 辺野古基地土砂搬入時に反対派の女性と警備員とのトラブルについて弁護士(沖縄 )の発した内容が弁護士として品位に欠けるとの理由で懲戒の申立てがあり、沖縄県弁護士会綱紀委員会は棄却した。
懲戒請求者 一般人
対象弁護士 三宅俊司 (登録番号19063)
三宅俊司法律事務所 沖縄県那覇市壺川2-10-5
主 文
対象弁護士につき、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
理 由
第1 懲戒請求事由の要旨
対象弁護士は、 令和6年6月28日、土砂搬出港の桟橋前の路上 (名護市安和) で発生した警備員と女性にダンプカーが衝突し、 警備員が死亡し、女性も重傷を負った事故に関して、「本来だったら沖縄防衛局が一番の当事者になるが民事賠償請求では、彼らを巻き込むことは難しい。 ただ、この事件の背景として彼らのそういった行為があるんだということはこの訴訟の中でも背景事情として明確に主張しています」 と話したこと (1) また、「(事故は) 沖縄防衛局による強引な工事に起因する」、「本来責任があるのは沖縄防衛局あるいは現場管理をしていた 警備会社だ」 との見解を示し (2)、「被害者を加害者にしてしまうことは絶対に許せない」 と憤った (3) などと主張したことについて、かかる発言は、 沖縄防衛局、 警備会社の社会的信用を貶めるものであり、 また女性の事を被害者と言っているが、県警は加害者として起訴を求める厳重処分の意見を付け、近く書類送検する方向で詰めの捜査を進めているのであり、 誤情報を発信する事など弁護士としてありえない事であり、 弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
第2 対象弁護士の弁明の要旨
1 弁明の趣旨
対象弁護士の発言は真実であり、 虚偽の事実は含まれていない。
2 弁明の理由
懲戒請求者が引用する対象弁護士の発言は、集会における対象弁護士の発言であり、懲戒請求書記載の通りである。
対象弁護士の発言内容は真実であり、 虚偽の事実は含まれていない。
対象弁護士の発言内容は、沖縄タイムス取材記事によって明らかな事実であり、多数の市民においても共通の認識を有している。
沖縄防衛局による実現不可能な辺野古新基地建設名目による大浦湾破壊のための土砂搬入の強行指示、及び、その意を受けてダンプトラックの運行指示を強化 したALSOKの責任を追及することは、 当然であり、正当であり、彼らの責任 を公開することも正当であると確信している。
第3 証拠
1 懲戒請求者提出分
(1) 主張書面
懲戒請求書 (令和8年3月27日付)
(2) 証拠書類(甲号証番号は当委員会において付したものである。)
甲1
X (SNS) ユーザーの投稿写し (令和7年8月4日付)
甲2 琉球朝日放送の記事写し (令和7年10月8日付)
甲3
世界日報 DIGITALの記事写し(令和7年10月22日付) 甲4 産経新聞の記事写し (令和7年8月31日付)
5判決文(平成28年(行) 第394号地方自治法25条の7第1項 の規定に基づく不作為の違法確認請求事件) 写し (平成28年12月 20日付)
2 対象弁護士提出分
(1) 主張書面
弁明書 (令和8年4月6日付)
(2) 証拠書類(乙号証番号は当委員会において付したものである。)
乙1 題名 「警備員による危険な誘導が増えた」 から始まる沖縄タイ ムスの記事写し (沖縄タイムス令和6年9月19日公開)
乙2 題名 「抗議の市民が歩道を渡り切ってから」 から始まる記事写 し (沖縄タイムス令和6年9月19日公開)
乙3 題名 「ゲーム感覚のような」 から始まる記事写し (沖縄タイム ス令和6年9月20日公開)
乙4 題名「みんなが互いの立場を」から始まる記事写し (沖縄タイムス 令和6年9月21日公開)
乙5 題名「陸自訓練場報道」 から始まる記事写し (沖縄タイムス令和 7 年1月18日公開)
第4 当委員会の認定した事実及び判断
当委員会の認定した事実
本件証拠から、懲戒請求者が主張する対象弁護士の発言 (上記第1の1、2、3)が集会においてなされたことが認められる (以下それぞれ 「本件1の発言」 などという)。
2 判断
懲戒請求者は、 対象弁護士の 1ないし3の発言につき、 同発言が事実であれば、沖縄防衛局の職員も業務上過失致死傷の容疑で書類送検されて然るべきであるが、 そのような事実はないのであるから、かかる発言は沖縄防衛局、警備会社の社会的信用を貶めるものであり、 誤情報の発信にあたると主張するので、 以下検討す る。
(1) 本件1の発言について
同発言は、 対象弁護士自身が、沖縄防衛局を民事賠償請求では当事者として 巻き込むことが難しいことを認めるとともに、他方で、 民事賠償請求において この事件の背景として沖縄防衛局等の行為を背景事情として明確に主張していることを集会において報告しているに過ぎない。
また、かかる発言自体は何ら沖縄防衛局の当事者性や法的責任に言及したものではない。
したがって、 対象弁護士の同発言をもって、沖縄防衛局や警備会社の社会的 信用を貶めるものとも認められない。 また、 誤情報ともいえないことも明らかである。
(2) 本件2の発言について
同発言は、 事故が沖縄防衛局による強引な工事に起因すること、及び、 本来責任があるのは沖縄防衛局あるいは現場管理をしていた警備会社であるとの見解を示しているに過ぎない。
また、同主張について少なくとも同発言に沿う報道機関の報道 (乙1ないし 5) が存在しており、 対象弁護士の同発言の見解に至る根拠が存在している。
そもそも、 同発言は、 対象弁護士の見解であり、見解が一定の根拠に基づいてなされており、 発言の内容自体が相当な範囲にとどまるものであれば、 当該発言をもって沖縄防衛局や警備会社の社会的信用を貶めるものとは認められないし、誤情報ともいえない。
したがって、 同発言は、沖縄防衛局、 警備会社の社会的信用を貶めるものとは認められないし、誤情報の発信ともいえない。
(3) 本件3の発言について
同発言は、「被害者を加害者にしてしまうことは絶対に許せない」と憤った というものであり、 「被害者を加害者にしてしまうことは絶対に許されない」 との発言は対象弁護士の意見にすぎず、「憤った」 というのはそれに対する報道機関の評価にすぎない。
また、少なくとも同意見について、 同意見に沿う報道機関の報道 (乙1ないし5) が存在しており、 対象弁護士の同発言の意見に至る根拠も存在する。
そもそも、 同発言は、 対象弁護士の意見であり、 意見が一定の根拠に基づいてなされており、 意見の内容自体が相当な範囲にとどまるものであれば、 当該発言をもって沖縄防衛局や警備会社の社会的信用を貶めるものとはいえず、誤情報ともいえない。
したがって、 同発言が沖縄防衛局や警備会社の社会的信用を貶めるものとは 認められないし、誤情報の発信ともいえない。
この点、 懲戒請求者は、対象弁護士の発言が誤情報の発信に当たること、及 び 沖縄防衛局や警備会社の社会的信用を貶めるものであることの根拠を、 沖 縄防衛局の職員が業務上過失致死傷の容疑で書類送検されて然るべきであるが そのような事実はないことを上げる。
しかし、 沖縄防衛局の職員が業務上過失致死傷の容疑で書類送検されるかどうかと、 対象弁護士の発言が誤りかどうかは直接の関係はなく、 警察及び検察が個別事案についてどのような判断をするかは別の問題であり、かつ、 その判断自体も確定的なものではなく、かかる判断と対象弁護士の見解や意見が異なることをもって、 対象弁護士の発言を誤りとすることはできない。
以上より、 対象弁護士の各発言は、 沖縄防衛局及び警備会社の社会的信用を貶めるものではなく、かつ、誤情報の発信とも認められず、 弁護士としての品位を失うべき非行には当たらない。
(4) 上記のとおり、懲戒請求者の懲戒請求事由について、弁護士としての品位を失うべき非行にはあたらないから、本件懲戒請求に理由はない。 よって、 主文のとおり、 議決する。
令和8年7月2日 沖縄弁護士会綱紀委員会 委員長 (略)
