<職務上請求不正請求> 懲戒処分 弁護士と司法書士の処分の差
司法書士、弁護士、行政書士は職務であれば職務上請求用紙を利用し戸籍謄本住民票などを取得することができます。条件は必ず依頼者がいること、用紙に不正、虚偽記載をしてはいけないこと等です。
弁護士の不正利用の懲戒処分は、ジャーナリストにタレントの身元調査のために弁護士が職務上請求を不正に使用し戸籍謄本を取得した業務停止6月が一番厳しい処分で、あとはほとんどが戒告です。
現在、当会では3件の職務上請求不正使用の懲戒請求申立ての情報を得ています。一弁1名、二弁2名です。申立て理由は依頼者がいない。虚偽記載、必要のない戸籍取得です。
<職務上不正請求に関する弁護士懲戒処分例>
<職務上請求不正弁護士の記事>
https://jlfmt.com/2017/07/04/31363/
司法書士が職務上請求を不正利用したらどうなるか
それでは、職務上請求不正利用の司法書士の懲戒処分をご紹介しましょう。
『月報 司法書士 9月号』
懲戒処分の公表 日本司法書士連合会
懲戒処分者 大阪府茨木市上中条一町目5番
司法書士 林 栄吉
司法書士法第47条第2号の規定により、平成26年4月30日から6か月の業務停止に処する。(ただし平成26年4月30日から平成29年6月23日までその執行が停止さえたため、業務停止期間の満了日は平成29年11月23日)
第1 処分の事実
当局の調査、大阪司法書士会(以下会という)の報告及び司法書士林栄吉(以下被処分者という。)の供述によれば、以下の事実が認められる。
1 被処分者は司法書士の資格を取得後、大阪司法書士会に司法書士の登録(昭和54年1月1日大阪第○号)をし、上記肩書事務所において司法書士業務を行っている者である。
2 被処分者は平成22年9月頃Aから○市○区○○町目○番の土地及び同所○番○の土地の共有者亡Bについて、共有関係を解消するためとして、亡Bの相続人調査を依頼されて、これを受任しその費用として20万円を受領した。
3被処分者は平成22年10月頃から平成23年2月頃までの間、亡Bの相続人から相続登記の申請を受任しておらず、またAが亡Bの相続人でないことを知りながら、業務の種類を「相続登記」依頼主を「A」、依頼者について該当する事由を「登記申請書に添付し、法務局に提出」などと記載して、事実と異なる戸籍謄本、住民票の写し等職務上請求書(以下「職務上請求書」という)47通(ただし1通については、依頼者について該当する事由の記載がない。)を作成した上、これを利用して、亡Bの相続人の戸籍、原戸籍の謄本、戸籍の附票及び住民票の写し(以下「本件戸籍等」という)を取得した。
第2 処分の理由
1 司法書士は受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合には、当該事件の種類、代理し又は代理しようとする手続及び戸籍の記載事項の利用目的を明らかにして戸籍謄本等の請求をすることができるとされているところ(戸籍法第10条の2第3項及び第4項第2号)なお戸籍の附票及び住民票の写しの請求について、住民基本台帳法第12条の3第2項ないし第4項)上記1の2及び3の各事実によれが被処分者は、司法書士として業務を受任しておらず、戸籍法第10条の2第3項にいう『受任している事件または事務に関する業務を遂行するために必要がある場合』でないのに事実と異なる記載をした職務上請求書を使用して本件戸籍等を請求し、その交付を受けたものであって、被処分者の上記行為は、上記戸籍法及び住民基本台帳法の各規定に違反するものであることは明らかである。
2 この点、被処分者は、共有物分割の登記をする場合、相手方が死亡していれば相続人を特定するために、戸籍等を調査することは司法書士の職務範囲であるなどと主張するようであるが、戸籍法第10条の2第3項にいう『受任している事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合』とは司法書士が特定の依頼者からその資格に基づいて処理すべき事件又は事務の委任を受けて、当該事件又は事務に関する業務を遂行するために必要がある場合をいうと解すべきである。
したがって、被処分者が共有物分割の調停ないし申立てないし訴訟の提起に係る書類の作成等を受任しておらず、他に司法書士の本来業務を受任したと認められる事情がない本件においては、被処分者の上記主張は理由がない。
3 そうすると、上記被処分者の行為は、司法書士法第2条(職責)第3条(会則の遵守義務)、大阪司法書士会会則(ただし平成25年4月1日改正前のもの)第89条第1項及び第2項(品位の保持)第108条(会則等の遵守義務)、戸籍謄本・住民票の写し等及び外国人登録原票記載事項証明書の職務上の請求に関する規程第3条(目的外請求・使用の禁止)第1項に違反する非違行為であり、その責任は重いといわざるを得ない。
4 よって司法書士法第47条第2号により、被処分者を主文のとおり処分する
平成26年3月18日 大阪法務局長
この司法書士は誰からも依頼を受けていないのに職務上請求書を利用して戸籍を請求した。
職務上請求書に虚偽の理由を書いたことで業務停止6月です。
弁護士の懲戒処分とはずいぶん違います。弁護士の仲間内の調査、処分の判断ですから甘いのは当然です。司法書士の場合、懲戒申請は法務局、懲戒事由の調査は司法書士会、処分は法務局です。
現在、二弁に出ている懲戒申立の内容で対象弁護士の弁明は
『損害賠償請求事件の訴訟準備のため』と書いてあるがほんとうは刑事告訴したかったのよ。刑事告訴は身元調査が必要だから戸籍謄本を取ったのよ。依頼人はいません。戸籍法にいう依頼人であれば、「個人である○○が弁護士である○○に依頼したのだから依頼人はあったということになる。」
兄弟で苗字が違うためその調査のために戸籍謄本を取得したのですかという問いに対象弁護士の弁明
対象弁護士が取得した懲戒請求者の戸籍は、筆頭者を懲戒請求者とするものであり、当該、戸籍には懲戒請求者及びその妻子に関する記載しかなく懲戒請求者の兄に関する記載はない。
このように、対象弁護士が取得した戸籍が、懲戒請求者の主張しているジャーナリストAの目的(懲戒請求者と兄の姓が異なる事情の調査)を達成できないものであることからも、ジャーナリストAから懲戒請求者とその兄の姓が異なる事情の調査を依頼されて対象弁護士が懲戒請求者の戸籍を取得したとの懲戒請求者の主張が事実に反することは明白である。
兄弟2人の苗字が違うのはなぜかの調査に2人の戸籍を取得する必要はない。2つの箱がありひとつは腐ったリンコ、ひとつは新鮮なリンゴがある。ふたつの箱を開ける必要はない。
懲戒申立からもう1年になり相当期間異議も2回だしたが、さて司法書士のように厳しい処分は出るだろうか