過払い金返還めぐり法律事務所と弁護士会対立 公開審査へ

 

 大手法律事務所の弁護士法人ベリーベスト法律事務所(代表弁護士・酒井将氏)が東京弁護士会から懲戒請求を受けている。過払い金請求事件で司法書士事務所に1件あたり19万8000円の紹介料を支払っていたことが弁護士法27条違反等に当たるとするものだが、これは法曹界を揺るがす議論を呼びそうな内容を含んでいる。

 司法制度改革による規制緩和によって司法書士は簡易裁判所で扱える140万円以下の民事事件を受けられることになり、当時日本最大規模の司法書士法人である新宿事務所は、過払い金返還請求事件を数多く取り扱っていた。

 しかし140万円を超過する事件は代理できないため、新宿事務所は複数の弁護士事務所に事件を引き継いでいた。その一つがベリーベスト法律事務所だった。ベリーベストは当時、債務整理案件の取り扱いで業界最大規模だったことから、新宿事務所から引継ぎの依頼があったという。

ベリーベストは、新宿事務所に裁判書類一式の作成を委託し、対価は1件あたり19万8000円としていた。しかし弁護士法27条では弁護士でない者との提携が禁止されており、また弁護士職務基本規程13条1項で「依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その他の対価を支払ってはいけない」と定めていることから、引継ぎにあたり対価を支払っていたことが問題視された。

 そもそも事件は2016年、ベリーベストの元従業員Sが内部情報を持ち出して東京弁護士会と神奈川県弁護士会、東京司法書士会に懲戒請求をしたことに始まる。

 しかし、神奈川県弁護士会懲戒委員会は法人、勤務弁護士とも処分しないとし、東京司法書士会の綱紀調査委員会も、違反事実は認められないと判断。

 一方、東京弁護士会綱紀委員会だけは勤務弁護士について懲戒審査をしないとしたものの、法人(弁護士法人ベリーベスト法律事務所)については懲戒審査を求めるのが相当だと決議したのだった。
そこで、渦中の酒井将弁護士にこの一件について話を聞いた。

「司法書士法改正で、訴額140万円以下の事件まで代理できることになりました。しかし、最初から過払い金が140万円以下だとはわかりません。法定の利息で計算し直した結果、初めて過払い金の額がわかるからです。司法書士に簡裁代理権を与えた結果、現実に司法書士から弁護士への引継ぎ案件は生じるようになりました。

 本件懲戒請求は“会立件”といって東京弁護士会自体が当法人を立件しているのですが、これはきわめて異例です。通常は会費滞納などでしか立件をしないからです。弁護士会が司法書士からの代理権を超えた引継ぎ案件をどうするかという根本的な問題から目をそらし、当法人が業界で急成長しているから懲らしめてやろうと考えているとすれば、きわめて問題だと思います」

 また酒井氏は、懲戒請求者Sがベリーベストの攻撃材料を探すために送り込まれた産業スパイだと疑い、独自に調査もしてきているとも話す。5カ月足らずで辞めてベリーベストを告発した懲戒請求者Sの前勤務先は、アディーレ法律事務所。大量のテレビCMで大量の債務整理事件を受任していた“ライバル”だったからだ。

 本件懲戒委員会は9月27日に開かれるが、これは異例の公開審査となった。ベリーベスト法律事務所がメディアも傍聴しうる公開での審査を求めたからだという。どの弁護士が本当に依頼者の味方なのか、注目したい。

一部引用 日刊ゲンダイ

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/262342

弁護士自治を考える会

懲戒委員会の審議が公開されることは異例のことです、懲戒委員会に審議が付されたということは綱紀委員会で『懲戒相当』の議決が出たということで、懲戒委員会では、戒告、業務停止、退会命令、除名の中から処分が決まりますが時に「処分まで至らない」という採決もあります。

当会がゲンダイのインタビュー記事で注目をしたい点があります。

それは、酒井代表が懲戒請求者の情報について詳しく答えておりゲンダイも記事にしているところです。

①そもそも事件は2016年、ベリーベストの元従業員Sが内部情報を持ち出して東京弁護士会と神奈川県弁護士会、東京司法書士会に懲戒請求をしたことに始まる。

②また酒井氏は、懲戒請求者Sがベリーベストの攻撃材料を探すために送り込まれた産業スパイだと疑い、独自に調査もしてきているとも話す。5カ月足らずで辞めてベリーベストを告発した懲戒請求者Sの前勤務先は、アディーレ法律事務所。大量のテレビCMで大量の債務整理事件を受任していた“ライバル”だったからだ。

懲戒請求は弁護士法第58条で『何人』でも、弁護士または弁護士法人に弁護士法に違反する行為を知った時、弁護士の業務に関して違法、不当、倫理に反する等、を知った時に『懲戒事由』として所属弁護士会に懲戒の申し立てができるとあります。

元従業員であろうと一般人であろうと懲戒請求者になれます。当事者である必要もなく単なる通報者です。懲戒の端緒になるだけで当事者である必要はまったくありません。つまり、懲戒請求者が誰であろうと関係がなく通報者である懲戒請求者の個人情報は守らなければなりません。ところがゲンダイの記事は懲戒請求者の情報、誰か申し立てたか等、特定できることまで書いてあります。

ベリーベストが処分されるのと懲戒請求者が誰であるかは無関係で公開は不要です。元勤務弁護士であるとか他の事務所からのスパイであるということは懲戒処分の理由に関係ありません。懲戒委員会は「懲戒事由」であるベリーベストと司法書士との関係が非弁提携に当たるかどうか以外審議できません。

ベリーベストが元従業員の行為を問題にするのであれば民事訴訟等法的に対処すればよいことです。懲戒請求者が弁護士であればその弁護士の行為が違法であれば懲戒請求を申し立てればいいのです。

ゲンダイもベリーベストの代表のインタビューをそのまま記事にしたようですが報道機関としてあり得ない記事の内容ではないでしょうか