弁護士に非行があれば所属している弁護士会に懲戒を申立てることができます。弁護士会が非行と認定すれば懲戒処分となります。処分の種類は戒告、業務停止、退会命令、除名です。所属弁護士会から処分を受けた弁護士は処分が不当であれば日弁連に異議を申し立てることができます。(審査請求)年間約100件程度の処分が所属弁護士会から下され年間2件から3件ほどの審査請求が認められます。(処分変更・処分取消)
大阪弁護士会、井筒壱弁護士が2018年10月2日に受けた戒告処分が日弁連懲戒委員会で処分取消となりました。これで、この懲戒請求事件は結了となります。
当初の処分の公告・処分要旨
大阪弁護士会がなした懲戒の処分について同会から以下の通り通知を受けたので懲戒処分の公告公表に関する規定第3条第1号の規定により公告する
1 処分を受けた弁護士氏名 井 筒 壱
登録番号 39029
事務所 大阪府堺市中瓦町1-1-21
弁護士法人四ツ橋総合法律事務所堺オフイス
2 処分の内容 戒 告(処分取消)
3 処分の理由の要旨
被懲戒者は、Aが提起した懲戒請求者に対する連帯保証債務の元金1000万円及び遅延損害金の支払を求めた訴訟について、履行により債務は全部消滅したとしてAの請求が認められずその判決が確定していたにもかかわらず、その後Aの代理人として内容証明郵便により、懲戒請求者に対し、上記訴訟の訴訟物となっていなかった約定利息請求権をAが有していることを前提に法定充当を計算し直すと、上記保証債務の残元金及び利息が存在する旨断言し、その合計金額を支払うように請求した。被懲戒者の上記行為は弁護士職務基本規程第31条に違反し弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。4 処分が効力を生じた年月日2018年10月2日 2019年1月1日日本弁護士連合会
大阪弁護士会が2018年10月2日に告知した同会所属弁護士 井筒壱会員(登録番号39029)に対する懲戒処分(戒告)について同人から行政不服審査法の規程による審査請求があり本会は2019年6月11日弁護士法第59条の規程により、懲戒委員会の議決に基づいて、以下のとおり裁決したので懲戒処分の公告及公表等に関する規程第3条第3号の規程により公告する。
記
1 採決の内容
(1)審査請求人に対する懲戒処分(戒告)を取り消す。
(2)審査請求人を懲戒しない
2 採決の理由の要旨
(1)審査請求人は、依頼者Aの代理人として元金請求権と遅延利息請求権を訴訟物とした訴訟を遂行したところ、その請求棄却判決確定後に、訴訟外で同じ貸金につき月3分の利息合意があったと主張して利息制限法所定の制限利率により再計算した残元金と利息を当該訴訟の被告であった懲戒請求者に対して書面で請求した。
(2)大阪弁護士会は(以下「原弁護士会」という)は上記認定に基づき審査請求人の上記行為について審査請求人を戒告の処分に付した。
(3)審査請求人は前訴判決の既判力に抵触する請求を行っており、法律の専門家でない懲戒請求者に誤った支払いをさせる可能性があったこと、原弁護士会綱紀委員会では、自己の行為の正当性を強く主張していたことに鑑みれば、弁護士職務基本規程第31条に反するものであるという原弁護士会の判断は必ずしも不当とはいえない
しかし、審査請求人は自己の行為が弁護士として許されないものであること、依頼者からの相談の際に請求することを思いとどまらせるべきであったことについて、真摯に反省していることが認められる、また懲戒請求者には実害が発生していないこと、原弁護士会の懲戒処分後、懲戒請求が取り下げられていることに鑑み、審査請求人を懲戒しないとするのが相当であると判断した。
(4)したがって、審査請求人を戒告処分とした原弁護士会の処分を取り消して審査請求人を懲戒しないこととする。
なお本件については、原弁護士会の判断が相当であって審査請求を棄却すべきであるとする意見があったことを付言する。
3 採決が効力を生じた日 2019年8月26日
2019年10月1日 日本弁護士連合会
3 採決が効力を生じた年月日 2019年6月14日
2019年8月1日 日本弁護士連合会
審査請求と異議申立事例