一般向けのハンドブックではなくシェルターや女権団体NPO等の指導員、相談員のためのハンドブックです。
【矯風会ステップハウス】DV防止、保護命令申立 ハンドブック(2)保護命令の効果
【矯風会ステップハウス】DV防止法、保護命令申立て=支援のためのハンドブック(1) 保護命令
a、 どこの裁判所で申立てしますか?
保護命令の申立ては、加害者の住所(日本に住所がないとき、または住所が不 明なときは居所)、 被害者の住所または居所、そして過去に暴力が行われた土地、 この3ヶ所の中で選び、そこを管轄する地方裁判所で行います。
被害者が避難した場所・地域を知られたくないときは、加害者の住所を管轄する 裁判所で申立てするのが一番安全です。
加害者の住所のある裁判所に出向くことができない場合もあります(乳児を抱え ている、負傷や病気で長距離を移動するのが困難、 裁判所の近くに加害者の 家・職場などがあり出向くのは危険など)。
避難先の裁判所で申立てたいと希望するときは「元の場所に出向くことができない」「居場所を知られない方法で申立てをしたい」等、裁判所によく事情を説明して相談してください。
加害者の住所を管轄する裁判所の裁判官と、 テレビ電話で面接ができるように取り計らった裁判所もありました。
b、 申立てには費用がかかりますか?
印紙代が1000円必要です。 そして、 相手方に呼出状やあなたの申立て書類を 郵送するための切手を裁判所に預けることになります。切手代は裁判所によって違い ますが千数百円から2千数百円くらいです。
印紙や切手は、たいてい裁判所の中の売店で購入できます。
申立て費用が無い被害者のために、地域によっては貸付資金ができています。
申立て前に必要なことは?
保護命令申立書には、被害者が警察署かDV相談センターで支援を求めたり相談した経過があればそれを記入することになっています。 相談したことがない場合、または加害者の関係者がいるなどの事情で警察やDV相談センターに相談ができない場合は、 公証人役場で「宣誓供述書」を作って申立書に添付します。
費用 (11000円)や時間・エネルギーを考えると、 警察かDV相談センターに相談する方が申立ての準備が簡単に済みます。
被害者が申立てした後、裁判所から警察署やDV防止センターにその事実についての書面を請求する仕組みとなっています。
警察、 DV相談センターへの相談、 公証役場の利用はどこでもかまいません。 警察は、交番や派出所ではなく本署の生活安全課に行って担当者に直接話をすることを勧めてください。 記録が残されていない場合があります。
電話相談は本人であることの確認ができないことがあるのでできるだけ窓口に直接足を運ぶようにします。
裁判所への書面提出は被害者の主張を補強することになりますので、相談を受けたり一時保護をした支援者は、その時の被害者の状態を記録し、暴力被害の経過を聞き取って裁判所からの書面提出請求に備えておきます。
避難前にしておきたいこと
同居中に相談を受けた場合はできるだけ現在いる場所の警察署の生活安全課、 またはDV相談センターに直接足を運んでDVについての相談をしておくことを勧めてください。
病院への受診についても、あとで診断書を使うときのことを考慮してなるべく避難前にしておくことを勧めます。
警察署やDV相談支援センターの場所、診断書の医療機関名などで、加害者が被害者の避難場所を突き止める手がかりにするのを避けるためです。
どんなものが暴力の証拠として使えますか?
陳述書、写真、診断書、 録音テープ、 被害者が暴力の経過を記した日記、メモ、 加害者が「これからは、もう暴力は振るわない」と書いた手紙なども使えます。
陳述書だけで申立てをして、 発令されたケースもあります。
加害者と同居中の被害者から相談を受けた場合、 メモをつくることを勧めましょう。
何時、 どこで、どんな暴力や脅迫など等があったか、記録をとっておきます。
軽い怪我と思っても、あとで必要ができた時のために病院を受診しておきます。写真に撮って、記録しておくことも有効です。 加害者が暴れたときできた壁の穴 や、壊した物、 散乱した部屋の写真もあれば使えます。
脅迫の言葉が含まれるメールも、写真に撮ったりプリントすれば使えます。
申立ての時期は? そのとき注意することは?
裁判所からの呼出状が被害者の申立て書類と一緒に加害者に届いた時から、 保護命令が発令されるまで、 通常1週間から10日くらいは危険が高まります。 この期間は安全な場所に避難し、待ち伏せされるのを避けるために、加害者が知っている場所(職場や病院)には行かないように注意してください。
加害者から避難した直後、 あるいはなるべく遅くない時期に申立てするのが良いと思います。 緊急に保護命令が必要だということが裁判官に伝わりやすいからです。
安全確保のためには一時保護の期間中やシェルター利用中に情報提供を受け、 申立てをして、発令されてから次の場に移るのが最も安全な方法です。
避難してから申立てまで時間が経過している場合、 今の時点での加害者の危険な動きがあればそれを申立書に書くようにします。
被害者は避難してから、加害者に見つからないようにとそれまでの人間関係とは 完全に絶縁して生活している場合がよくあります。 そうした状態では加害者の動きを把握する手がかりが無くなっています。こうした時に、新たな動きが分からなかったら情報を得ることができない被害者の理由を書きます。
また時間が経過して申立てする時は「避難直後は申立ての気力も無くなっていた」 「迷っていて、なかなか決心がつかなかった」など理由を書いておきます。
家から避難して1年以上が経過し、精神的なダメージがやっと少し癒されてから初 めて申立てをして発令された女性がいます。 精神科の医師に「いままでは申立の 文章をまとめるのが困難な状態だった」と診断書を書いてもらって提出しました。
加害者に分からないように家に居る間に申立書をつくり、戸籍や住民票なども準備して、避難した直後に裁判所に申立てする人もいます。 安心感を確保するため に、効果的な活用法だと思います。
保護命令申立て作り方(4)