弁護士自治を考える会

弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2026年9月号に掲載された弁護士の懲戒処分の公告・神奈川県  弁護士会・杉山程彦弁護士の懲戒処分の要旨

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処分理由・ネットに懲戒請求の議決書を公開したことが非行とみなされた

日弁連異議 神奈川県弁護士会に申立てた懲戒請求が棄却されたので日弁連綱紀委員会に処分しないのは不当だと異議を申立て処分しないから戒告になった事案。自由と正義9月号に処分要旨が公告として掲載されましたが、元の棄却された議決書等が出されていないため、意味不明となっています。先に今回の処分要旨をご覧ください

懲 戒 処 分 の 公 告

神奈川県弁護士会が2025年1月14日付けでなした被懲戒者を懲戒しない旨の決定について懲戒請求者から異議の申出があった。本会は上記決定を取り消して、以下のとおり懲戒の処分をしたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第6号の規定により公告する。

         記

1 処分を受けた弁護士氏名 杉山程彦 登録番号37300 

事務所 神奈川県横須賀市若松町3-4 山田ビル プレミア法律事務所 

2 懲戒の種別 戒告 

3 処分の理由の要旨

(1)被懲戒者は、懲戒請求者からA弁護士を対象とする懲戒請求事件等を受任していたところ、懲戒請求者に対し、A弁護士につき懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とするA弁護士が所属する弁護士会の綱紀委員会の議決書(以下「本件議決書」という。)をインターネット上で公開してもよい旨の助言等をし、懲戒請求がなされた。

この助言に基づき懲戒請求者はウエブサイトを運営する第三者(以下「ウエブサイト運営者」という。)に対し本件議決書を提供し、A弁護士の氏名とともに本件議決書の内容がウエブサイトに公開された。

(2)原弁護士会懲戒委員会は、弁護士職務基本規程第70条の規定に鑑み、本件議決書の公開の必要性を慎重に検討し、公開を控えるべきであったとする一方で、本件議決書をウエブサイト運営者に提供したのは懲戒請求者であり被懲戒者ではなく、インターネット上に公開されたことについて被懲戒者の責任は認められないこと等から、被懲戒者を懲戒しないことを相当と認められるとの議決をした。

(3)本会懲戒委員会が審査した結果、原弁護士会懲戒委員会の認定に誤りはない。しかし、本件議決書が公開に適さない書面であること、少なくとも、その公開には慎重な検討を要する書面であることは、弁護士であれば当然に認識できるものではある。にもかかわらず、被懲戒者は、本件議決書が届くや、その内容に不満を持ったことから、本件議決書の公開の可否や、インターネット上で公開する正当な理由があるか等について何ら慎重な検討をすることなく、懲戒請求者に上記(1)のように「ネットにさらしてもよい」旨を助言し、インターネット上に公開することを自ら積極的に提案している。

また、被懲戒者は、懲戒請求者に対し登場人物の固有名詞をマスキングするよう助言しているが、マスキングを助言したのは「登場人物の固有名詞と住所、場所」のみであり、A弁護士の登録番号についてはマスキングの指示をしなかった上、懲戒請求者が被懲戒者に対し適切にマスキングができているか確認を依頼したところ、被懲戒者はこれを拒否しており、その結果、懲戒請求者によってA弁護士が特定可能な状態で本件議決書がウエブサイト運営者に提供されているのであるから、被懲戒者が関係者の名誉やプライバシー等に十分な配慮をしたとは言い難く、原弁護士会懲戒委員会の判断は是認できない。

(4)したがって被懲戒者の上記(1)とおり助言した行為は、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当し、被懲戒者を懲戒しないとした原弁護士会の決定を取り消し、被懲戒者を戒告とすることが相当である。

4処分が効力を生じた日 2026年8月2日 2026年9月1日 日本弁護士連合会

この処分に至る時系列

① ある日、男性(父親)の室から、妻(母親)と子どもが姿を消します。

② 男性は杉山程彦弁護士に離婚事件や連れ去り指示をした弁護士への懲戒請求等を依頼

③ 妻と妻側の代理人A弁護士とが、退去した部屋に戻り、必要なものを運び出す。

④ A弁護士に対し懲戒請求を申立て (父親が懲戒請求者)

⑤ 第一東京弁護士会はA弁護士へ出された懲戒請求を棄却 

⑥ 懲戒請求者は日弁連に異議申立 

⑦ 男性は杉山程彦弁護士の事件処理に不満を持ち神奈川県弁護士会に懲戒請求

⑧ A弁護士は弁護士登録を取消(弁護士登録を取消したため異議の審査は終了) 

⑨ 杉山程彦弁護士の懲戒請求は綱紀委員会から懲戒委員会に付されたが棄却、日弁連綱紀委員会に異議申出 

⑩ A弁護士は約1年間登録を取消したが、第一東京弁護士会に再登録をした。日弁連元会長の法律事務所

⑪ A弁護士に対し再登録したのであれば終了した日弁連への異議申立を再度行うべきと異議を再開 

⑫ 日弁連は異議申立期間徒過たと棄却、登録を取消してほとぼりが冷めてから再登録したのではないかと異議は却下 

⑬ 杉山程彦弁護士への懲戒は日弁連で異議が認められ「戒告」 

父親(懲戒請求者・異議申出人)は杉山程彦弁護士の事件処理の問題をいくつか処分を求める理由としたにもかかわらず、日弁連はいくつもある理由のひとつだけ切り取った。つまり、日弁連元会長の事務所に再登録した弁護士についてネットで議決書を公開するなということです。

議決書 (神奈川県弁護士会綱紀委員会)

 主 文 

対象弁護士につき、懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当とする。 

理 由 

第1 事案の概要 

対象弁護士は、2020年5月21日、 懲戒請求者との間でA及びB弁護士に対する刑事告訴事件、 B弁護士に対する懲戒請求事件を受任したところ、

①懲戒請求者が同年12月28日、東京地方検察庁特捜部に告訴状を提出する際に、 対象弁護士が懲戒請求者に不利益な発言をしたこと、

②懲戒請求者 の質問に対して対象弁護士が回答を拒絶したこと

③対象弁護士が懲戒請求者に対し、 B弁護士に対する懲戒請求にかかる単位会の議決書をインターネット上に公開しても良いとアドバイスしたことに関し、懲戒請求をした事案である。 

第2 懲戒請求事由の要旨 

1 対象弁護士の不利益発言 

対象弁護士は、 2020年12月28日 懲戒請求者らとともに東京地方検察庁特捜部にA及びB弁護士に対する刑事告訴状を提出する際、 東京地方 検察庁の担当者に対して、散々怒鳴り散らした挙句 「何が何でも、どうしても起訴したいわけじゃないけど」 などと懲戒請求者に不利益となるような発言をした。 このことは、 弁護士法56条1項の 「品位を失うべき非行」にあたる。 

2 懲戒請求者からの質問への回答拒否 

上記1の発言に関し、懲戒請求者は、対象弁護士に対して、当該不利益発言をした理由を問い質したが、 対象弁護士は理由を回答しなかった。 

また対象弁護士が、懲戒請求者に対し、 2021年1月23日、メールに て、刑事告訴については告訴状の提出をもって懲戒請求者との契約上の義務を果たした旨の説明をしたのに対し、 懲戒請求者は、 対象弁護士に対し、同 年2月11日、委任事項や委任内容の確認、疑問点に関する回答を求める旨や、 B弁護士に対する懲戒請求事件の手続きが相当期間内に終わらないことへの日弁連に対する異議申立や検察庁に提出した告訴状等の送付に関する要望等を記載したメールを送付したものの、 対象弁護士は返答しなかった。 そのため、懲戒請求者は、対象弁護士に対し、 同年2月26日、 適切な対応を求めるメールを送信したところ、 対象弁護士は、 同年3月15日、 懲戒請求者に対して電話連絡をしてきたものの、懲戒請求者の質問などに明確に回答 しなかった。 

さらには懲戒請求者が対象弁護士に対し、2022年10月20日、懲戒に関する決定に関しての法的手続きについて質問したが、 対象弁護士は、「世論に訴えるくらいしかないと思います。」 との不適切な回答をし、その後も懲戒請求者が、 その理由等について質問したが、 2023年1月19日まで 何ら回答がなされず、 同日、今後は懲戒請求者からの質問は一切回答しない旨の回答がなされた。 このことは委任契約上の説明義務を自ら否定するものであり、 債務不履行に該当するため、 弁護士法56条1項の「品位を失うべ き非行」にあたる。 

3 懲戒請求の決定のネット上の公開の助言 

対象弁護士が、 懲戒請求者に対し、第一東京弁護士会の懲戒請求の決定 (以下「本件第一東京弁護士会の決定」 という。)についてネット上に公開しても良い旨、 助言したことは、 非公開の手続きである懲戒請求手続きを冒涜するものであるとともに、 懲戒請求者に対して懲戒請求の決定書の公開という名誉毀損やプライバシー侵害により訴追される危険性のある行為を推奨し、 誘引しているものであることから弁護士法56条1項の「品位を失うべき非 行」にあたる。 

第3 対象弁護士の弁明の要旨 

1 懲戒請求事由の要旨1について 

東京地方検察庁特捜部に告訴状を提出する際、 同行した支援者の4名がヒートアップしてしまい、 対象弁護士の役割としてなだめ役を担ったものであるから、その状況下で必要な発言であった。 

その発言の趣旨は、本件については犯罪が成立しないということはないと確信していたが、 法の解釈で犯罪の成立が困難という場合にまで、 起訴したいわけではないというものである。 すなわち、 法を曲げてまで起訴を望まないという趣旨での発言であり、懲戒請求者に不利益な発言をしたものではない。

2懲戒請求事由の要旨2について 

本件の受任の内容は、懲戒請求事件及び刑事告訴事件であるところ、 懲戒請求事件は前任の受任弁護士からの引き継ぎ案件であり、補充の書面提出、 資料の提出を行っている。 受任の範囲としては、単位会に対する懲戒請求であるが、日弁連に対する異議申立ても行っている 

刑事告訴事件についても所轄の警察署に2~3回赴いて告訴状を受理するよう活動し、東京地方検察庁に対しても告訴状及び資料を提出して受理されている。 不起訴処分に対しても検察審査会に対する申立ても行っている。 いずれも当該手続きを行えば契約としては終了である。またいずれの事件も相当な骨をおっており、精神的に相当疲弊するものであって、回答が遅れることもやむを得ない。 

3 懲戒請求事由の要旨3について 

B 弁護士に対する本件第一東京弁護士会の決定は不当であり、世論にその不当性を訴える必要があると思って助言した。 ネットに上げるにあたっても、 名誉・プライバシーに配慮してマスキングするよう助言している。 また結局、本件第一東京弁護士会の決定はネット上で公開されていない。 

さらには2023年3月28日で当会から戒告処分を受けた事案と本件は 事案が異なる。 

第4 証拠

(省略)

第5 当委員会の認定した事実及び判断 

1 懲戒請求事由1について (対象弁護士の不利益発言) 

対象弁護士は、「何が何でも、どうしても起訴したいわけじゃないけど」 と発言したことについて、 弁明書において積極的に否定しておらず、 甲2の1でも、当該発言について対象弁護士が否定していないことからすれば、対象弁護士においてが当該発言をしたことは認められる。 なお、 怒鳴り散らしていた事実については、 程度の問題でもあり、当該事実まで認められる証拠はない。 

しかし、対象弁護士は、懲戒請求者に対し、「誤解させて申し訳ございま せん。従前の判例とちゃんと比較すれば。 犯罪不成立はありえないと確信を持った上でこのように発言しました。」と謝罪している(甲2の1、乙2の2)。 

また、対象弁護士は、 当該発言の理由として懲戒請求者の支援者とともに、 検察庁に抗議する際、 支援者らがかなりヒートアップしてしまい、なだめ役として、本件については犯罪が成立しないということはないと確信していたが、法の解釈で犯罪の成立が困難という場合にまで、 起訴したいわけではな いという趣旨の発言をしたこと、 法を曲げてまで起訴を望まないという趣旨での発言であり、懲戒請求者に不利益な発言をしたものではないことを説明している (対象弁護士の審尋)。 

さらには、甲5及び甲2の7のメールの内容からすると、本件告訴により 検察庁によって捜査が行われたことが認められる。 

とすれば、 検察庁に告訴状を提出する際に上記発言をすることは不用意であることは否めないものの、 対象弁護士がかかる発言をしたのは告訴状の受理に向けた行動の一環であったとしていること、懲戒請求者からの抗議に対 して、対象弁護士が率直に謝罪をしていること、本件では告訴状が結果的に検察庁に受理され、捜査が開始されていることなどを勘案すると、 弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」 にあたらないというべきである。 

2 懲戒請求事由2について (対象弁護士による懲戒請求者からの質問への回答 

拒否について 

(1)不利益発言の理由の回答について 

対象弁護士は、上記第5.1のとおり、不利益発言における懲戒請求者からの抗議に対し、 「誤解させて申し訳ございません。 従前の判例とちゃんと 比較すれば。 犯罪不成立はありえないと確信を持った上でこのような発言しました。」と回答しているところ (甲2の1)、確かに、懲戒請求者が、 対象弁護士の発言の 「理由」を問うているのに対し、明確な回答にはなっていな い。しかし、対象弁護士は、素直に謝罪するとともに、 「誤解」 である旨説明しているのであり、これを当該不利益発言が真意ではなく、 告訴状を検察庁 に受理してもらうための行動の一環であったとの説明ととらえることも可能である。 

したがって、 対象弁護士の発言に関する「理由」の回答については不十分だったことは否めないものの、素直に謝罪し、一応の説明をしていることから、弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」 にはあたらない。 

(2) その他問い合わせ事項の回答について 

懲戒請求者は、 対象弁護士に対し、 【2020年12月29日付け、 20 21年1月6日付け、同月23日付けメール】にて、 B弁護士に対する懲戒請求の経過報告を求めるとともに、2021年2月3日までに何らかの動き がない場合には、 日弁連に相当期間に終わらないことについての異議申立書を提出すること (甲2の1、3、4)を求めている 

これに対し、 対象弁護士は、 同年1月23日付けメールにて、懲戒請求に 関する通知がないことを報告しているものの (甲204) 異議申立書の提出について回答したという事実は証拠上認められず、相当期間に終わらないことに対する異議を申し立てた事実も認められない。 

また、懲戒請求者は、 対象弁護士に対し、 【2021年1月13日付け、 同年2月11日付けメール】にて、 検察庁に提出した告訴状 資料の変更後のPDFファイルの送付依頼をしている(甲2の3の1、甲2の5)。 

これに対し、対象弁護士が依頼されたPDFファイルを送付した事実は証拠上認められない。 

さらに、懲戒請求者は、 対象弁護士に対し、【2021年2月11日付けメール】にて、 対象弁護士が検察庁に告訴事件の進捗確認のために赴いたこと、その対応に関して最高検察庁に苦情申し入れをしたことに関し、懲戒請求者の事前承諾なく赴き、 独断で行ったことに対する理由の説明、 事前に相 談すべきであるとする依頼、 日弁連に対するBに対する懲戒請求に関する異議申立書の提出依頼 (甲2の5)をしている。 

これに対し、対象弁護士は、2021年3月15日、電話にて懲戒請求者 に連絡したが、 対象弁護士がこれらの懲戒請求者の依頼に明確に回答したと までは証拠上認められない。 

したがって、これら各点に関する対象弁護士の対応は不誠実な対応であっ たことは否めない。 

しかし、2021年3月15日の後は、上記各問い合わせに対し、懲戒請求者から更なる問い合わせがなされていないことからすれば、 対象弁護士は、 同日の電話で何らかの回答をしているものと解され、その回答までの期間も 1~2か月程度であるから長期間の放置とまではいえないこと、 日弁連に対する相当期間異議申立についても、 単位会における綱紀委員会の判断を促進させる意味合いであり必要不可欠の事項とはいえないこと (結局、第一東京 弁護士会より2022年4月15日に議決が出ている。 甲7)、対象弁護士 による検察庁への状況確認・最高検察庁への苦情申立ては代理人の権限の範囲内であり、懲戒請求者に不利益が及ぶ可能性があるものとは解されないから、その事前の承諾が必要な事項とは思われないこと、告訴状等に関しPDFファイルは送付されていないものの、告訴状は受理され、 刑事事件の捜査も行われており (甲2の7、 甲5) 刑事告訴事件について契約の本質的な部分については履行されていることなどからすれば、 対象弁護士の行為は、 未だ弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」 にはあたらないといえる。 (3)2022年10月以降の問い合わせ事項の回答について 

2022年10月20日、 B弁護士に対する懲戒請求に関する本件第一東京弁護士会の決定がなされたのに対して、懲戒請求者が対象弁護士に法的な手続きについて質問したのに対し、 対象弁護士は 「世論に訴えるくらいしかないと思います」と回答をした(甲6)。 

また懲戒請求者が同月21日、 法的手続手段について問い合わせたところ、 対象弁護士は同月28日、「訴えることはできますが、おそらく不毛な裁判になると思います」と回答した(甲6)。 

懲戒請求者が「不毛な裁判」になる理由と根拠を対象弁護士に質問したところ、同年11月9日、 対象弁護士は 「訴えても裁判所は弁護士会の見解を支持して負けます」と回答した (甲2の9、 甲6) 

更に懲戒請求者は、 対象弁護士に対し、 同月10日、 「弁護士会の見解を指示する理由、根拠」 を質問したのに対し、 対象弁護士は、 2023年1月 19日、 「弁護士会の論旨をなぞって、負け判決になると思います」と回答した(甲2の9 甲6)。 

懲戒請求者は2023年1月21日、 対象弁護士にB弁護士への働きかけを調べたうえ理由と根拠を質問したのに対し、 同日、対象弁護士は懲戒請求者に対し、当該調査は受任外であることを付言したうえ、損害賠償請求をすることが考えられるが、 消滅時効期間が経過している旨を説明し、今後の懲戒請求者からの質問には一切回答しない旨を伝えた (甲2の9、10、 甲6)。

この点、 対象弁護士は、 本件第一東京弁護士会の決定に対する異議申立書を2022年9月23日に提出したところ(甲4)、既に当該懲戒請求の対象弁護士であるB弁護士が弁護士登録を抹消したことから、 異議申立てが受理されなかったことがうかがわれる (甲6)。 

これについて懲戒請求者は同年10月2日に何か手だてがないかを対象弁護士に問い合わせ、 それに対し、 対象弁護士は調査を行い、当該第一東京弁護士会の見解も調査していることがうかがわれる(甲6)。 

そのうえで対象弁護士は同月20日に「世論に訴えるくらいしかないと思います」と回答し、 同月28日に 「不毛な裁判」 との表現で訴訟の見通しが困難であることを回答して、その理由として同年11月9日に「訴えても裁判所は弁護士会の見解を支持して負けます」 と1か月内のうちに説明しているのであって、委任契約上の説明義務を一応果たしているといえる。したがって未だ弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」にはあたらない。 

懲戒請求事由3について 

対象弁護士は、 2022年7月17日付けのメールにて懲戒請求者に対し、 B 弁護士に対する懲戒に関する本件第一東京弁護士会の決定 (甲7) について、「懲戒決定が届きました。 予想されたとはいえひどい、そして程度の低い決定です。 B弁護士が受任通知を発送した後だということが全く検討されていません。 日弁連に異議申し立てできますがどうしますか? また、 ネットに さらしてもいう (原文ママ) いいですよ。 ただし、 あなたも含めた登場人物の固有名詞と住所、 場所はマスキングしてください (最後の会長名はマスキングしなくてよいです)」 と助言していることが認められる ( 甲2の8)。 

たしかに対象弁護士は公開するにあたって名誉プライバシーにも配慮して人物の固有名詞、住所、場所をマスキングするように助言している。 

しかし対象弁護士は、 当会より、 2023年3月28日、 公開に適さない家事事件の審判書を、住所、氏名、 勤務先という限定された範囲だけがマスキングされ、その他の個人情報がマスキングされておらず、 マスキングされなかった部分から容易に個人を特定できる状態でSNS上に公開したことで 戒告処分を受けているところ (甲3) 当該懲戒処分に先立ってなされた「懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当とする綱紀委員会の決定」(以下 「当会綱紀委員会決定」 という。)は2022年6月23日になされ、同月 28日に通知が対象弁護士に送達されている(丙1)。 

とすれば、 対象弁護士は、 上記助言をした2022年 7 月 17 日時点で、 公開に適さない文書を、住所、氏名、勤務先という限定された範囲だけがマスキングされ、その他の個人情報がマスキングされておらず、 マスキングされなかった部分から容易に個人を特定できる状態でネット上に公開することが弁護士法上問題になりうることを認識しているといえる。 

前記戒告処分にて対象弁護士が公開した文書は家事事件の審判書であり、 その他周辺事情は本件とは異なるものの、 神奈川県弁護士会では、 「懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする議決」 は公開しておらず、 神 奈川県弁護士会が相当と認めるときに限り、その結果及び理由の要旨等を公表することができるとされているにすぎない(神奈川県弁護士会綱紀委員会及び綱紀手続に関する会規66条)。 同様に、第一東京弁護士会においても、 同議決については公表が制限されており、 B 弁護士にとっても、懲戒請求されていること自体が好ましくない情報といえ、 本件第一東京弁護士会の決定書は公開に適さない文書ということができる。 

しかも、本件で対象弁護士がマスキングを指示したのは登場人物の固有名詞と住所、場所だけにすぎない。 

そして、懲戒請求者は本件第一東京弁護士会の決定書を第三者に提供しており (3) 第三者が管理するWEBサイトに掲載されているとともに、 B弁護士が実名で掲載されているところ、直接的にWEBサイトに掲載したのは第三者ではあるが、 懲戒請求者も、共同不法行為者として、名誉毀損等で損害賠償請求される危険性は現実化しているといえる。 

したがって、 本件では、対象弁護士が直接、本件第一東京弁護士会の決定書を公開しようとしたものではなく、 公開を助言したという間接的な行為であることを考慮したとしても、本件第一東京弁護士会の決定書につき、 登場人物の固有名詞と住所、 場所だけをマスキングしてネット上に公開してもいいと助言したことは、弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」 にあたると認められる。 

以上より、 対象弁護士には弁護士法56条1項に定める品位を失うべき非行があったと認めることができる。 

よって主文のとおり議決する。

 2024年3月6日 神奈川県弁護士会綱紀委員会第一部会 部会長 記載省略 

【棄却された懲戒の議決書】神奈川県懲戒委員会 2025年1月14日

神弁発懲第115号 2025年1月14日  神奈川県弁護士会  会長岩田 武 

通 知 書 

2023年(鬱) 第9号 

懲戒請求者  〇〇

対象弁護士  杉山 程彦(登録番号: 37300) 

上記事案につき懲戒委員会の議決に基づき、 対象弁護士を懲戒しない旨決定したの で、懲戒委員会及び懲戒手続に関する会規第57条第1項の規定により、 決定書及び 懲戒委員会議決書の謄本を添付して通知します。 

懲戒請求者は、この決定について不服があるときは、弁護士法第64条の規定によ り、日本弁護士連合会に異議を申し出ることができます。 

神奈川県弁護士会 2023年 (懲) 第9号 

懲戒請求者 

対象弁護士  神奈川県横須賀市若松町3-4 山田ビル  プレミア法律事務所 

杉山程彦 (登録番号 37300) 

決定書 

本会は、掲記の懲戒審査について次のとおり決定する。 

(主 文) 対象弁護士を懲戒しない。 

(理 由) 

本件懲戒請求について懲戒委員会に審査を求めたところ、同委員会が別紙のとおり議決 したので主文のとおり決定する。 

2025年1月14日  神奈川県弁護士会  会長 岩田武 

議決書  2023年(懲) 第9号事案 

懲戒請求者 〇〇 

神奈川県横須賀市若松町3-4 山田ビル 

プレミア法律事務所 

対象弁護士  杉山程彦 (登録番号37300) 

上記対象弁護士に対する懲戒請求事案につき審査した結果、次のとおり議決する。 

主 文 

対象弁護士を懲戒しないことを相当と認める。 

理 由 

第1懲戒請求事由の要旨 

懲戒請求者は、 対象弁護士に対し、妻Aの代理人であったB弁護士に対する懲戒請求事件を委任した。 

第一東京弁護士会綱紀委員会は、 B弁護士について懲戒委員会に事案の審査を求めないことを議決し、 その議決書の謄本 ( 「本件議決書」) が、 同弁護士会から対象弁護士に送付された。 

対象弁護士は、懲戒請求者に対し、 本件議決書をインターネット上に公開しても良いと助言した。このことは、非公開の手続である懲戒請求手続を冒涜するものであるとともに、懲戒請求者に対して懲戒請求の議決書の公開という名誉毀損やプライバシー侵害により訴追される危険性のある行為を推奨し、誘引しているものであることから弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」にあたる。 

第2 対象弁護士の弁明の要旨 

1 綱紀委員会の議決書を公開することは、法律等で禁止されておらず、 議決書にも公開禁止とは書かれていない。 議決書中の対象弁護士の氏名等をマスキングした形なら、違法とすべきではない。 

対象弁護士は、懲戒請求者に対し、 議決書上の登場人物の名誉やプライバシーに配慮してマスキングするよう助言していた。 

2 懲戒処分の議決書を公開することが公益に資することがある。 対象弁護士を懲戒すると、公益に関わる議決書の公開が萎縮されることになり、表現の自由の点で問題となるから、一律に公開を認めるべきである。 

B弁護士についての第一東京弁護士会の決定は不当であり、世論にその不当性を訴える必要があると考えた。 

3 積極的に本件議決書を公開したのは、 懲戒請求者である。 

懲戒請求者が本件議決書等をCに送付し、Cのホームページに掲載された。その際、 B弁護士の氏名等にマスキングがされなかった。 これは、 対象弁護士の助言を無視するもので、仮に懲戒請求者がB弁護士から刑事、民事の責任を問われても、対象弁護士の責任ではない。 

4 懲戒請求を受けた弁護士が、懲戒請求書等を公開したことを容認する裁判例も存在する。 弁護士が懲戒請求書を公開することが認められるのに、懲戒請求者が議決書を公開してはならないならば、それは背理である。 

第3証拠 

別紙証拠目録記載のとおり 

第4 当委員会の認定した事実及び判断 

1 当委員会の認定した事実 

(1) 懲戒請求者は、2020年5月21日、対象弁護士に対し、B弁護士に対する懲戒請求事件を委任した(甲1)。 

(2) 第一東京弁護士会は、 2022年7月14日 対象弁護士に対し、 B弁護士につき懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする決定をしたことを通知し、本件議決書の謄本を送付した (甲7)。 

(3) 対象弁護士は、 2022年7月17日、懲戒請求者に対し、 「懲戒決定が届きました。 予想されたとはいえひどい、 そして程度の低い決定です。 B弁護士が受任通知を発送した後だと言うことが全く検討されていません。 日弁連に異議申し立てできますがどうしますか? また、ネットにさらしてもいう(原文ママ) いいですよ。ただし、あなたも含めた登場人物の固有名詞と住所、場所はマスキングしてください (最後の会長名はマスキングしなくてよいです)」とのメールを送信した(甲2の8)。 

(4) 懲戒請求者は、2022年8月29日、日弁連のウェブサイトの弁護士検索でB弁護士を検索できなくなったことに気付き、第一東京弁護士会に問い合わせ、 B弁護士が退会していたことを確認した(乙3)。 

(5)2022年9月5日、Cが管理するウェブサイトに、 B弁護士についての懲我申立ては棄却されたもののB弁護士が登録を取消したことをタイトルに掲げる記事が掲載された(「本件記事」。乙4、丙2)。 

(6)懲戒請求者は、2022年9月6日、 対象弁護士に対し、 「B弁護士の懲戒請求の件はCに協力頂き、載せて頂きました」 「もし、 宜しければ Twitter で拡散して頂けますと幸いです!!」 というLINEメッセージを送り、懲戒請求者が本件議決書をCに提供し、本件記事が掲載されたことを報告した(乙3)。 

また、懲戒請求者は、翌7日、 対象弁護士に対し、本件第一東京弁護士会の決定についての異議申立てにおいて、異議申立期間内にB弁護士が登録を取消したことも取り上げてもらいたいと伝えた(乙3) 

(7) 本件記事は、B弁護士の氏名、事務所所在地、 事務所名を挙げ、 第一東京弁護士会の決定後にB弁護士が弁護士登録を取消した事実を指摘して疑問を呈する内容であり、懲戒請求者の問題意識を反映するものであった (乙4、 丙2). 

(8)また、本件記事でB弁護士の氏名等が記載されているのは、本件記事のタイトル及び記事本文のうちウェブサイトの管理者であるCが作成したと思われる部分であり(乙4、 丙2)、 他方、本件議決書が転記されていた部分では、B弁護士を含む登場人物の氏名等はマスキングされていた (乙4、 丙2)。 

当委員会の判断 

(1)一般的に、 弁護士にとり、懲戒請求をされていること自体が好ましくない情報であるといえる。 

第一東京弁護士会では、綱紀委員会が懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする議決をしたとき、その議決書は同会が相当と認めて許可したときを除き開示していない (T1)。同会は、本件議決書を開示しておらず、本件議決書は公開に適さない文書ということができる。 

対象弁護士が、懲戒請求者に対し、人物の固有名詞、住所、場所をマスキングするよう助言し、本件議決書上に登場する人物の名誉やプライバシ一等に一定の配慮をしていたとしても、 弁護士職務基本規程第70条が 「弁護士他の弁護士 (中略) との関係において相互に名誉と信義を重んじる。」と定めていることに鑑みれば、 本件議決書そのものを公開する必要性があるのかどうか、インターネットという媒体を利用するのが適切かどうかなど、より慎重に検討し、 公開を控えるべきであったといえる。 

(2)対象弁護士は、自らがCに議決書を提供したことも、本件記事の作成に関与したこともないと説明しているところ (丁2)、上記の事実から、Cに本件議決書が提供されたのは懲戒請求者によるものであり、対象弁護士は、本件記事の作成にも関与していなかったことが認められる。 そこで、本件議決書の内容等に関連してB弁護士の氏名等がインターネット上に公開されたことについて 対象弁護士の責任は認められない。 

(3)対象弁護士は、 議決書をインターネット上で公開してもよいと助言したことについて、反省している (T2)。 

(4) 以上から、 対象弁護士が懲戒請求者に対し、 本件議決書をインターネットに公開してもよいと助言したことは、名誉毀損やプライバシー侵害により訴追される危険性のある行為を推奨し、誘引していたものとまではいえず、 弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」 にはあたらない。 

よって主文のとおり議決する。 

2024年12月18日  2023年(懲)第9号 神奈川県弁護士会懲戒委員会  委員長 

(別紙) 証挻目録 (省略)

資料

【綱紀審査会申出書】2024年(コシ)第26号対象弁護士野尻裕一(第一東京)新千代田総合法律事務所