2008年9月号 日弁連広報誌[自由と正義]
桑島 浩 登録番号9181 東京弁護士会
東京都千代田区九段北4
桑島法律事務所
懲戒の種別   戒告 

処分の理由の要旨

被懲戒者はAから同人の夫Bの遺産相続をめぐる案件の処理の依頼を受けBの経営していたC社の債務の担保に入っていたA所有の建物及び借地権を売却して代位弁済を行い、C社に求償するなどの事務処理を行ったところ1992年7月2日Aとの間で管理保管している上記売却代金の一部を引き続き管理すること、税務、相続等の出費のないことが判明した時点で報酬として金500万円を受領すること等の内容の覚書を作成した。そして1996年3月5日被懲戒者は相続問題は解決済みとの認識を示し管理している口座から上記報酬500万円を受領したその後被懲戒者は依頼を受けてAの公正証書遺言を作成してその報酬を受領し遺言執行者に指定されていたがAは2003年6月に死亡した。そして被懲戒者は自らの遺言執行費用等112万円を計上した遺産目録を調整し受遺者らに対して遺贈を実行した。受遺者のうち残余財産の包括遺贈を受けることになっていた懲戒請求者は被懲戒者との間で保管金の引渡し及び報酬を協議したところAが金500万円を超えて報酬を支払う旨の意思を有していなかったにもかかわらず、被懲戒者は2005年5月19日付説明書で当時保管中であった約2100万円に相当する高額な報酬額を提示して保管金の引渡しに応じなかった。
上記被懲戒者の行為は適正かつ妥当な弁護士報酬の提示を定めた弁護士職務基本規定第24条に抵触し弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行にあたるところ懲戒請求者に金2000万円を支払って和解が成立し同人が懲戒請求の申立てを取り下げている点を考慮し同法57条第1項所定の懲戒処分のうちから戒告を選択する
処分の効力の生じた日2008年6月2日2008年9月1日 日本弁護士連合会