内部告発者の実名を会社側に通知、弁護士を戒告処分

 

内部告発者の実名を会社側に伝えたのは、秘密保持義務に反し、弁護士の品位を失う非行にあたるとして、第2東京弁護士会が、トヨタ自動車販売店グループの外部通報窓口担当の男性弁護士(35)を、戒告の懲戒処分にした。
 2006年に摘発された大阪トヨタ自動車の架空販売・車庫飛ばし事件で、社内の不正を告発した40歳代の男性社員が懲戒請求を申し立てていた。
 公益通報者保護法施行から今年4月で3年になるが、告発者を保護する弁護士が処分されるのは異例。処分は3月3日付。同弁護士会懲戒委員会の議決書などによると、社員は06年4月5日、同弁護士に電話で不正を告発したところ、翌日、会社から10日間の自宅待機を命じられた。
 虚偽申告などを排除するため、通報は実名で受け付け、会社側には匿名で通知する仕組みだが、同弁護士は「社員が『もみ消されると困る』と希望した」とし、実名を会社側に伝えた。一方、社員は「希望した事実はない」と否定していた。
 懲戒委員会の審査に先立ち、綱紀委員会は昨年1月、社員が実名通知を承諾した事実は認められないと判断し、弁護士を「懲戒相当」と議決した。
 これに対し、懲戒委員会は、社員が自宅待機を命じられた後、弁護士に抗議をしていない点などを挙げ、「社員は承諾していた」と、綱紀委員会とは逆の判断を示した。
 しかし、承諾に際して弁護士が、実名通知で起こりうる不利益を、社員に具体的に説明していないことなどから、「社員が自発的な意思で、会社に実名を通知して不正を調査するよう求めた承諾とは認められない」と判断、弁護士は「秘密保持義務に違反している」と結論付けた。
 弁護士は読売新聞の取材に「実名通知について社員の承諾を得ていた、との認定をいただいたことは、よかった。今後の対応は代理人と相談して決めたい」とコメント。社員は「実名通知について事実認定が覆ったのは不満だが、弁護士に非があると認められた点は評価している」と話している。 

弁護士を信用してはいけません