ついに日弁連は所属弁護士会が下した「業務停止1月」の懲戒処分を取り消した。

弁護士自治を考える会

当会は弁護士の懲戒処分を公開し、弁護士の懲戒制度、弁護士自治について研究、提言をしています。

弁護士に非行があれば何人でも所属する弁護士会に懲戒を申し立てすることができます。所属弁護士会で非行事由が審議され処分されます。処分を受けた弁護士は処分が不当であれば日弁連懲戒委員会に審査請求を出し再度懲戒の審議を求めることができます。日弁連懲戒委員会で「審査請求」が審議され所属弁護士会で下した懲戒処分が取り消されることがあります。「処分取消」です。

処分取消までならなくても『処分変更』になる場合も多くなりました。退会命令が業務停止2年になるケース、業務停止3月が業務停止2月に変更になるケースが『処分変更』です。処分変更は、「弁護士として品位を失うべき非行に該当(弁護士法第56条第1項)する行為はあったが処分するまでではなかった。処分が重すぎたので軽くするというものです。

ところが「処分取消」は、非行事実はなかった。非行とされた事由は本来処分するべきではなかった。というものです。これも近年増えてまいりました。

しかし、過去の「処分取消」はすべて「戒告」から「処分取消」に変更されたものだけでした。

ところが、ついに2019年4月日弁連懲戒委員会は過去に1回もない「業務停止1月」から「処分取消」を下しました。(日弁連懲戒委員会での審査請求で処分取消の判断が出た場合、懲戒審議は結了となります。)

弁護士懲戒処分は① 戒告 ② 業務停止1月~2年 ③ 退会命令 ④ 除名処分

 

 

「処 分 取 消 一 覧」

 

氏 名 番 号 所属 処分 処 分 日 取 消 日 要月(約)
澤田雄二 24846 栃木 戒告 2015年6月 2017年4月 22か月
西山司朗 15089 香川 戒告 2016年4月 2017年10月 18か月
中村和洋 35126 大阪 戒告 2017年8月 2018年11月 15か月
宮崎好廣 15779 第一 戒告 2017年2月 2018年4月 14か月
内海隆幸 35920 第一 戒告 2017年2月 2018年4月 14か月
高橋一弥 21826 千葉 戒告 2015年12月 2018年8月 32か月
佐藤隆志 49778 神奈川 戒告 2018年4月 2019年6月 14か月
岡本吉平 40448 千葉 戒告 2016年11月 2017年8月 9か月
冨晃之介 42069 熊本 戒告 2015年7月 2016年9月 14か月
棚瀬孝雄 37340 東京 戒告 2014年2月 2015年2月 12か月
森田辰彦 23404 愛知 戒告 2014年5月 2015年11月 18か月
柴田肇 11447 愛知 戒告 2013年8月 2015年1月 16か月
栃木義宏 13164 東京 戒告 2011年10月 2012年10月 12か月
山口宏 21188 第二 戒告 2007年10月 2008年7月 9か月
伊達俊二 19021 第二 戒告 2016年5月 2018年4月 23か月
苗村博子 20089 大阪 戒告 2010年7月 2010年12月 5か月

お気づきだと思いますが、処分取消された処分は「戒告」しかありませんでした。

ついに、日弁連が掟破り、禁じ手を使ったのです。

自由と正義 2016年6月号 懲戒処分公告

新保義隆  21768  第二東京  処分 業務停止1月 処分日2016年4月25日 

裁決の公告 処分取消 2019年4月12日

処分取消の裁決書では、日弁連懲戒委員会委員の賛否が掲載されている場合もあります、委員の〇名は、(処分取消)に反対した。と書かれてあることもありますが、しかし今回の処分取消には反対の委員はおらず、もとの第二東京弁護士会が下さした処分は全く処分の必要もなかったというものでした。

裁決の公告(処分取消)新保義隆弁護士(第二東京)2019年6月号