弁護士自治を考える会

弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2020年1月号に掲載された弁護士の懲戒処分の公告・神奈川県弁護士会・安富真人弁護士の懲戒処分の要旨

処分理由・遺産分割交渉事件 弁護士報酬の説明不足、過大な報酬を請求

依頼した弁護士を解任した時に、円満な解任でなかった場合に弁護士はこういう対応を取ることもある。

弁護士職務基本規程

(受任の際の説明等)
第二十九条 弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事 件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなけ ればならない。
2 弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない。
3 弁護士は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任 してはならない。
(委任契約書の作成)
第三十条 弁護士は、事件を受任するに当たり、弁護士報酬に関する事項を含む委任契約書を作成しなければならない。ただし、委任契約書を作成することに困難な事由があるときは、その事由が止んだ後、これを作成する。
2 前項の規定にかかわらず、受任する事件が、法律相談、簡易な書面の作成又は顧問契約その他継続的な契約に基づくもの であるときその他合理的な理由があるときは、委任契約書の作成を要しない。

懲 戒 処 分 の 公 告

 神奈川県弁護士会がなした懲戒の処分について、同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第1号の規定により公告する。

          記

1 処分を受けた弁護士

氏名 安富真人

登録番号 28320

事務所 横浜市中区山下町70-3 三井住友生命横浜ビル7階

 安富総合法律事務所 

2 懲戒の種別  戒告

 処分の理由の要旨

1)被懲戒者は、懲戒請求者からその母A及び弟Bを相手方とする遺産分割交渉事件を受任し2015年3月17日に委任契約書を作成したものの、その後にその事件の展開から派生して生じた別事件である遺産分割調停及び審判事件並びに遺産分割審判に基づく不動産競売申立事件についても受任したにもかかわらず、それらの委任契約書を作成しなかった、また被懲戒者は、懲戒請求者からAを成年後見人とする成年後見開始申立事件を受任し、同年11月2日に委任契約書を作成したものの、その後にその事件の展開から派生した別事件であるAB間の任意後見契約の無効確認訴訟事件及びその任意後見監督人専任申立事件についても受任したにもかかわらず、それらの委任契約書を作成しなかった。

(2)被懲戒者は、上記(1)の無効確認訴訟事件及び任意後見監督人選任申立事件について、懲戒請求者において上記(1)の成年後見開始申立事件とは別に弁護士費用が発生する事件であるとの認識を持てるような適切な説明を尽くさず、また上記(1)の各委任契約書では日当3万円との記載があるにもかかわらず、その額が10万円となることについて適切な説明義務を尽くさなかった。

(3)被懲戒者は上記の事件につき、2017年2月27日に懲戒請求者から解任された後の同年3月2日に、それまでの事件遂行に際して頻繁なメールのやり取りをしていたにもかかわらず、懲戒請求者に対し、解任に至る経緯及び懲戒請求者の報酬支払の有無の確認を行わないで、適切な説明が尽くされていない過大な弁護士費用131万7600円の一部金108万円を請求債権として、懲戒請求者の不動産持ち分に対し仮差押え命令の申立てを行った。

(4)被懲戒者の上記(1)の行為は弁護士職務基本規程第30条第1項に違反し、上記(2)の行為は同規程第29条に違反し上記各行為は弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

4処分が効力を生じた日 2019年10月2日

2020年1月1日    日本弁護士連合会