士業の懲戒処分/ 弁護士と司法書士の処分の差

職務上請求書不正使用し住民票等を取得した場合の懲戒処分弁護士『戒告』司法書士は『業務停止6月』。業務停止中の業務で弁護士は除名処分にはなりません。

弁護士の懲戒処分を公開しています。弁護士の懲戒処分の理由は日弁連広報誌「自由と正義」で公告として掲載される処分要旨を公開しています。

『月報 司法書士』という司法書士会の会報があります。毎月、司法書士会からのお知らせ等が掲載されて日弁連広報誌「自由と正義」と同じく会員の懲戒処分の理由が掲載されています。

司法書士も弁護士と同じく市民に法的サービスを行っています。主に不動産登記関係や相続登記、会社設立等の法人登記、140万以下の低額訴訟(簡裁)が主な仕事です。相続などのの登記事務をしますで職務上請求用紙を利用し戸籍謄本等を取得します。弁護士は自治制度でどこからも管理、監督されません。懲戒処分は同じ弁護士が処分を下します。司法書士は法務局の管轄になります。

弁護士が職務上用紙を利用し不正請求を行い個人の住民票、戸籍謄本を取得しても「戒告」になれば厳しい処分です。個人情報を売買して利益を上げていた場合にようやく業務停止が付きます。

司法書士の場合は必ず業務停止になります。以下に紹介する司法書士の懲戒処分は、職務上請求用紙を不正使用し戸籍謄本を取得したと業務停止6月になったものです、その後、この司法書士は処分停止の仮処分を申請し最高裁まで争ったのですが、結局、処分取消しにならず執行停止期間中に業務を行ったと業務禁止になったもの(弁護士の処分でいえば除名処分)

司法書士懲戒処分書

事務所    大阪市茨木市上中条1丁目5番1号

司法書士   林 栄吉

上記のものに対し、次のとおり処分する。

          主 文

被処分者を、令和2年3月1日から業務の禁止に処する

理 由

認定事実

阪法務局の調査、大阪司法書士会の報告及び被処分者の供述によれば、以下の事実が認められる。

1・被処分者は司法書士の資格を取得後、大阪司法書士会に司法書士の登録(昭和54年1月1日大阪第〇号)をし、上記肩書事務所において司法書士業務を行っているものである。

2・被処分者は、平成26年3月18日付けで大阪法務局から戸籍謄本、住民票の写し等職務上請求書を不正に使用したことを理由に、同年4月1日から6か月の業務停止処分(以下処分『平成26年懲戒処分』という)を受けた。

3・被処分者は、平成26年4月〇日、〇法務局〇出張所に対して株式会社清算結了登記を申請した、

被処分者は、同月〇日、〇法務局〇支局に対して、根抵当権抹消登記を申請した。なお被処分者は本件登記申請書の代理人欄に「司法書士」の肩書を記載していなかったが、依頼者から報酬を受けている。

被処分者は、同月〇日、〇法務局〇支局に対して、所有権移転登記を申請した。なお被処分者は、本件登記申請書の代理人欄に「司法書士」の肩書を記載していなかったが、依頼者から報酬を受け取っている。

4・被処分者は、平成26年4月〇日、〇地方裁判所に対して、平成26年懲戒処分の取消しを求めて、懲戒処分取消請求事件(平成26年(〇)第〇号)を提起するとともに、平成26年懲戒処分の執行停止の申立て(平成26年(〇)第〇号)を行ったところ、〇地方裁判所は、同月〇日、第1審判決言渡し後60日が経過する日まで処分の効力の停止をする決定をした。

〇地方裁判所が平成28年6月〇日に懲戒処分取消請求事件を棄却した(以下「第1審判決という」)ことから、被処分者は〇月〇日、高等裁判所に対して第1審判決の取消しを求め、懲戒処分取消請求控訴事件(平成28年(〇)第〇号)を提起し、同年8月〇日、再度執行停止申立(平成28年(〇)第〇号)を行ったところ、〇高等裁判所は同月〇日同控訴審の判決確定まで処分の効力を停止する決定をした。

〇高等裁判所が平成29年1月〇日に懲戒処分取消請求事件を棄却した。(以下「控訴審判決」という)ことから、被処分者は同月〇日最高裁判所に対して、上告受理申立て(平成29年(〇)第〇号)行ったところ、最高裁判所は同年6月〇日、上告不受理決定(平成29年(〇)第〇号)をしたため、同時に控訴審判決が確定し、これをもって被処分者に対する業務停止処分の執行停止期間は満了した。

被処分者は同月〇日、上記訴訟に係る被処分者の代理人弁護士からFAXにて最高裁判所が上告不受理決定をした旨の通知を受けた。

5・被処分者は平成29年6月〇日、内容証明郵便の作成を司法書士として受任し作成業務を行い、依頼者から報酬を受け取った。

被処分者は同月〇日、〇法務局〇支局に対して、資産の増額の変更を登記の事由とする法人変更登記を申請し、さらに同月〇日、役員変更を登記の事由とする法人変更登記を申請した、

被処分者は、同日、〇法務局〇支局に対して、所有権登記名義人住所変更登記及び所有権移転登記を申請した。

量 定

1 被処分者は、業務停止期間中に司法書士としての一切の業務が禁止されていることを十分に認識していたにもかかわらず、前記第1の3各登記申請を司法書士として繰り返し行った。

2 平成29年6月〇日の上告不受理決定により執行停止期間が満了し、業務停止の効力が生じていたにもかかわらず、上告不受理決定がされた日の翌日から業務停止期間満了日である同年11月〇日までの間、被懲戒者は、前記1の5の司法書士としての業務を行った。

3 上記1及び2の行為はいずれも業務停止期間中に行われた司法書士の業務にあたり、司法書士法第2条(職責)第3条(業務)第23条(会則の遵守義務)、大阪司法書士会会則第90条(品位の保持等)、第109条(会則等の遵守義務)に違反する。

4 戸籍謄本、住民票の写し等職務上請求書の不正使用を行い、平成26年に懲戒処分を受けていたにもかかわらず、さらに業務停止期間中であることを認識しながらも、司法書士としての業務を繰り返し行った被処分者の行為は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して公正かつ誠実にその業務を行うこと(司法書士法第2条)によって、国民の権利の保護に寄与する(司法書士法第1条)司法書士としての自覚を欠くものであり、その責任は極めて重いといわざる、司法書士としての業務を禁止する必要がある。

5 よって、司法書士法第47条第3号の規定により被処分者を主文のとおり処分する。

             令和2年2月21日 大阪法務局長

つまり、市民がたとえば、結婚する相手の調査、タレントの住所、出自等々個人情報を得たければ司法書士に依頼してもやってくれないということです。

 

 

弁護士が業務停止中に法律行為をしても除名にはなりません。

『業務停止中に弁護士業務をして受けた懲戒処分例』弁護士自治を考える会 2024年3月更新

 

弁護士の職務上請求不正での懲戒処分

職務上請求用紙不正請求・使用で懲戒処分例 『弁護士自治を考える会』2024年3月更新