弁護士自治を考える会
「弁護士自治を考える会」では弁護士に対して申立てがあった懲戒請求の議決書を公開しています。「棄却された議決書」を募集しています。その中から当会が判断をして公開をします。
金融庁 ファクタリングに対する注意喚起
https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html
『給与ファクタリング会社の顧問となった?弁護士に懲戒請求』棄却の議決書
福岡県弁護士会2020年(綱)第60号
対象弁護士 福岡県弁護士会所属
対象弁護士には過去3回の懲戒処分があります。
議 決 書
主 文
対象弁護士について、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
理 由
第1 懲戒請求者の申立内容
株式会社Aカンパニー(所在・長崎県〇〇は以下A会社)「日本ファクタリング〇〇」という名称で違法な「給与ファクタリング」を業として行っている会社である。対象弁護士は同会社のホームページ上に、同会社の「顧問弁護士」として掲載され、同会社の顧問弁護士として稼働している。給与ファクタリング業は違法な営業であるのに、その顧問弁護士として稼働するのは、違法行為もしくは違法行為を助長する行為であり「弁護士としての品位を害する行為である、」したがって同弁護士について懲戒処分を求める。
第2 対象弁護士の答弁及び弁明の要旨
1
(1)同会社のホームページ上に2020年9月はじめころ、対象弁護士の氏名が「顧問弁護士」として掲載されたという事実は認める。
(2)しかし同掲載は対象弁護士の了解なく行われたものであり、対象弁護士は同会社と顧問契約を締結した事実(同会社の顧問弁護士になった事実)はなく顧問弁護士として稼働した事実もない。
(3)対象弁護士が、同会社の代表者B氏(以下「B氏という」㊟ 議決書は実名)から前同年8月はじめころか、「給与ファクタリング業務」について相談を受けたことがある事実は認めるが、これに対して対象弁護士は、同業務は違法という見解が金融庁からの通達などでホームページにも掲載されているので止めたほうがいいというアドバイスをした。対象弁護士が同氏の同業務について関知している事実は、以上のみである。
(4)したがって、対象弁護士が「違法行為」または「違法行為の助長」したことはなく『品位を失うべき非行』(弁護士法56条1項)はない。
2 具体的な経緯(事情)については以下のとおりである。
(1) 対象弁護士は、同氏とは同氏が福岡市内で飲食店を経営していた時代からの知り合いであり、その後、同氏が地元である福岡市内で飲食店を経営していた時代からの知り合いであり、その後同氏が地元であるS市内に移ってやはり飲食業を開業し経営している実業家であるという認識で時々相談に乗ったりする付き合いがあった。(対象弁護士と同氏とは、年齢も近く、仲の良い関係ではあった)
(2) 正確な日時は明らかではないが、前同年8月はじめころ対象弁護士は同氏から、ファクタリングおよび給与ファクタリング業務についての相談を受けたことがあった、
その要旨は、東京在住のある人物が給与ファクタリングを行っており、同人の勧めにより同氏も同会社の名称を使って、給与ファクタリングを含むファクタリング業務を行うようになったが、そうした業務に違法性はないのか、また、同会社が債権を買い取った者とのトラブルがあるので相談に乗ってくれないかという内容であった。
これに対して、対象弁護士は、ファクタリングという業態自体については診療報酬債権などについて金融機関も行っている事業でありそもそも違法ではないと伝えつつ、同時に「給与ファクタリング」業務については違法としう見解がすでに金融庁からの通達などでホームページにも掲載されているのでそうした違法な業務については止めたほうがいいとアドバイスをした。
この対象弁護士の言に対して同氏は、今後また連絡をさせてほしいと言って話を打ち切った。しかしその後、対象弁護士は同氏から給与ファクタリングについての具体的な相談を受けたことはない、対象弁護士が同氏との間で同業務について話したことは以上に尽きており、もとより対象弁護士が顧問弁護士になるなどといった話は一切出ていないし、その余の事実については一切あずかり知らぬところである。
(3) ところがその後、対象弁護士への何ら相談も了解もないまま、同氏が同会社のホームページ上に対象弁護士を「顧問弁護士」として掲載してしまった。本件懲戒請求申立てによる指摘を受けて対象弁護士は同会社のホームページ上に自分が「顧問弁護士」として掲載されていることを初めて知って驚いた。
そこで速やかに同氏に連絡して、上記掲載を削除するよう求めた結果、ただちに同掲載は削除された。何故そのような、了解も無いまま「顧問弁護士」として対象弁護士の氏名を勝手にホームページ上に載せたのか、という理由については同士の言によれば、先述の東京在住のファクタリング業務の「指南役」と名乗る人物から、要旨、「知り合いの弁護士がいるならホームページ上に顧問弁護士として掲載するのが有用である」とアドバイスされたので、つい対象弁護士の氏名を載せてしまった、とのことであった。
(4) 以上により、対象弁護士は何ら「違法行為」または「違法行為を助長」などしていないのであり、「品位を失うべき非行」と非難されるいわれはない。
第3 証拠の標目
(省略)
第4 当委員会の認定した事実及び判断
1 事 実
(1)同会社が違法な給与ファクタリングを業としているかどうかは、証拠上明らかとはいえない。
対象弁護士の氏名が,2020年9月8日ころ、同会社のホームページ上に「顧問弁護士」として掲載された事実(甲証拠1)。および、その後、同会社のホームページ上の「顧問弁護士」以下の記載部分は削除された事実(乙2㊟対象弁護士提出)が証拠上認められる。
(2) 対象弁護士が、同会社ホームページ上に「顧問弁護士」としてその氏名を掲載することを了承していたという事実は、証拠上認めることができない、また対象弁護士が同会社と顧問弁護士をし顧問弁護士になったという事実についても証拠上認めることが出来ない。
(3) 対象弁護士が本件懲戒請求申立てを受けた後の前同年9月30日、同氏に連絡を取って、上記のようなホームページ上の記載を削除するよう求め、同氏がこの要請に応じて同記載を削除した事実については、証拠上認めることができる(乙1.乙2、丙1)
2 判 断
上記の事実認定からすれば、対象弁護士が、違法なファクタリング業務に現実に何らかの関与をしていたと評価することはできない。よって対象弁護士に『弁護士としての品位を害する行為』があったとは判断できない。
第5 結 論
対象弁護士について、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
2021年(令和3年)2月18日
福岡県弁護士会綱紀委員会第2部会 部会長代行副部長 日野孝俊 印
いわゆる「ファクタリング」方式を利用した個別信用購入あっせんの適正な規制を求める意見書
- 意見書全文 (PDFファイル;193KB) 2018年3月15日 日本弁護士連合会
本意見書について
日弁連は、2018年3月15日付けで「いわゆる「ファクタリング」方式を利用した個別信用購入あっせんの適正な規制を求める意見書」を取りまとめ、3月16日付けで経済産業大臣に提出しました。
本意見書の趣旨
1 経済産業省は、販売業者が購入者等に対し取得する割賦販売債権を、あらかじめ提携関係にある債権買取り業者に対し購入者等の異議なき承諾を付して直ちに債権譲渡し、当該債権買取り業者においてその債権回収業務(以下「ファクタリング」という。)を行う取引は、割賦販売法の個別信用購入あっせんの定義に該当することを周知徹底するべきである。
2 経済産業省は、ファクタリング取引を業として行っている事業者に対し、速やかに取引実態の調査把握を行った上で、割賦販売法に基づく適正な規制を行うべきである。
3 経済産業省は、ファクタリング取引を業として行っている事業者において、過剰与信防止義務(割賦販売法35条の3の3、同条の3の4)、不適正与信防止義務(同条の3の5、同条の3の7)の履行が確保されるよう、現行法の解釈を明確化すべきである。
当会より
懲戒請求で棄却された事案をお持ちの方、現在懲戒請求進行中の方、是非情報をお寄せください。送付先など以下の記事でお知らせしています。
弁護士懲戒請求 棄却情報 募集:https://jlfmt.com/2016/11/01/30969/