弁護士自治を考える会

「弁護士自治を考える会」では懲戒請求の議決書を公開しています。

ファクタリング会社の顧問弁護士に懲戒請求を申立てたら、会社が勝手にやったこと、私は知らなかったと弁明、じゃしょうがないねと福岡弁護士会が棄却、しかも2人目

金融庁 ファクタリングに対する注意喚起

https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html

『給与ファクタリング会社の顧問となった?弁護士に懲戒請求』棄却の議決書 ②
福岡県弁護士会2020年(綱)第5×号
対象弁護士  福岡県弁護士会所属 (42000番代)個人事務所
 
           議 決 書
                  主 文
対象弁護士について、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
                  理 由
第1 懲戒請求者の申立内容
株式会社フリーファクタリング〇〇社(所在・福岡市博多区〇〇)以下同会社と称する)は給与ファクタリングを業として行っている会社である、
対象弁護士は、同会社のホームページ上に同会社の「顧問弁護士」として掲載され、同会社の顧問弁護士おして稼働している。給与ファクタリングは違法な営業であるのに、その顧問弁護士として稼働するのは、違法行為もしくは違法行為を助長する行為であり「弁護士としての品位を害する行為」である。しかがって同弁護士についての懲戒処分を求める。
第2 対象弁護士の答弁及び弁明の要旨
1 懲戒請求事由について
(1)同会社のホームページ上に2020年6月下旬ころから同年8月末ころまでの期間、対象弁護士の氏名が「顧問弁護士」として掲載されたという事実は認める。
(2)同会社が行っている事業内容は「違法なファクタリング業務」とはいえない。
(3)したがって対象弁護士が「違法行為」または「違法行為の助長」をしたことはなく『品位を失うべき非行』(弁護士法第56条1項)はない。
2 具体的な経緯(事情)については以下のとおりである。
(1)対象弁護士は平成24年ころ、現在は同会社の代表取締役である○○氏(以下「同氏」という)からあるトラブル案件について依頼を受け、同案件を解決したことがあった、この時以来、時々、同氏から、同氏の家族の問題等についての相談を受けて助言を行ってきた。
(2)2020年(令和2年)5月頃から同年6月頃にかけて対象弁護士は同氏から数回の相談を申し込まれ助言を行ったが、その中で同氏が代表取締役となった同会社の営業内容(請負・委託・労務賃金等の売掛債権についてこれを売りたい「利用者」と買い取りたい「加盟店」とにそれぞれ同会社に登録してもらい、同会社が利用者と加盟店とを引き合わせるサービスを提供し、それぞれから税込み4130円の手数料を受け取るとしう「マッチングサービス」についての話も出た。 
対象としては、マッチングサービスとはいえ、仮にに同会社の営業内容が社会的に問題になっている「違法なファクタリング」に当たるようなことがあるとすれば、問題視されるおそれがあるなどの話をしたが、それ以上の詳細な話はしていない。
これらの話の中で、同氏が対象弁護士に対して、今後も家族のことや仕事のことなどいろいろな相談に乗って欲しいと頼んだので、対象弁護士がこれを了承したことがある。このやりとりについて、同氏は、対象弁護士が同会社の顧問弁護士に就任することを承諾したものと誤信し、対象弁護士への相談も了解もないまま、同会社のホームページ上に「顧問弁護士」として掲載してしまった。
対象弁護士としては、あくまで同氏個人のいろいろな相談に今後も乗ることを了解したのみであって、従前、個々の相談については「相談料」を受け取った事はあるが、同会社の顧問弁護士になる認識はなかったし現に、同会社との顧問契約に関する条件の取り決めなど一切しておらず、「顧問料」を受け取ったことおもなく、もちろん顧問契約書等の書類を作成されたことはない。
(3)本件懲戒請求申立てを受けて、対象弁護士は、同会社のホームページ上に自分が「顧問弁護士」と掲載していることを初めて知り、同氏に問い合せて、上記掲載を削除するよう求めた結果、ただちに同掲載は削除された。
(4)以上より、対象弁護士は何ら「違法行為」または「違法行為を助長」などしていないのであり、『品位を失うべき非行』と非難されるいわれはない。なお、同会社の業務については、上記のような「マッチングサービス」であって同会社が売掛債権を買い取る訳ではないし「違法なファクタリング」に該当するとはいけない。
第3 証拠の標目 (省略)
第4 当委員会が認定した事実及び判断 
1 当委員会が認定した事実 
(1)対象弁護士が2020年(令和2年)8月ころの一定期間、同会社のホームページ上に「顧問弁護士」として掲載された事実について争いがなく、証拠上も認められる(甲第1号証)。そこで、まず、同会社の営業が違法な「給与ファクタリング」と評価できるかについて検討する。
ア、 東京地方裁判所令和2年3月24日付け判決の要旨によれば、違法な『給与ファクタリング』とは利用者(労働者)が自己の労働の対価として受け取るべき賃金(給与)債権の一部を、その支払日(給料日)より前に、取扱業者(給与ファクタリング業者)に対して、額面より安く売却(譲渡)し、支払日(給料日)に同労働者が同給与を受領すると、同取扱業者に対して、額面どおりの現金を支払う、その結果、額面と譲渡金額との差額が「利息」「手数料」として同業者の利益になる、という形態の取引である。
上記裁判例の事案によると、具体的には利用者が業者から現金4万円を受けとり、その4日後に同業者に7万円を支払うという契約であった、かような契約形態について、同裁判例は、金銭貸付と同様の機能がらい、貸金業に該当する、よって業者は、貸金業法違反(無登録営業)であり、かつ出資法違反の高額金利を受領しているのであり、違法であると判断したものである。貸金業法違反として刑事事件となっている案件も、同様な取引形態であると考えられる。
イ、しかしながら、同会社の業務内容が、上記判例で認められたような「違法な給与ファクタリング」に該当するかについて、認めるに足りる証拠がない。
(2)対象弁護士が2020年(令和2年)8月頃の一定期間、同会社のホームページ上に「顧問弁護士」として掲載された事実については争いがなく証拠上も認められる(甲第1号証)。
他方、遅くとも同年9月14日時点以降は、上記掲載は削除されている事実(乙第2号証)、同掲載行為と削除行為については、同会社の代表取締役であるA氏によって行われた事実が証拠上認められる(乙第1号証)。また、対象弁護士が同会社と顧問契約を締結した事実及び同会社の顧問弁護士として稼働した事実については、認めるに足りる証拠がない。
2 判 断 
以上の事実を前提とすると、対象弁護士について「違法行為」「違法行為を助長」する行為(弁護士職務基本規程第14条・同15条)があったと評価することはできず『品位を失うべき非行』(弁護士法第56条1項)があったと評価することはできない。
よって主文のとおり議決する。 
2020年(令和2年)10月15日 福岡県弁護士会綱紀委員会第2部会 部会長 林 優 (印)
https://jlfmt.com/2021/04/09/47089/