令和2年東綱第230号、292号  議決書 

対象弁護士  東京都新宿区西早稲田 F法律事務所 M上 (登録番号4937×

当委員会第4部会は頭書事案について調査を終了した審議の上以下とおり議決す。 

主 文

被調査人につ懲戒委員会事案の審査を求めないことを相当とする。 

事実及び理由 

第1 事案の概要 

本件調査人がいわゆる与ファクタリングを業として行う会社と顧問契約を締結して顧問弁護士に就任したとして要な法令及び事実関係 の調査の解念違法行為助長品位を損なう事業への参加弁護士としての位を失うべき非行にあたるとして懲戒請求がなされた事案である。 

第2 前提事実 

1、 東京地方裁判所は令和2年3月24日一般個人(労働者)から給与債権を買るいわゆ給与ファクタリングによる引につい労働基準法第24条第1項の趣旨に徴すれば給与権が譲渡された場合にても使用 者は直接労働者に対し賃金を支払わなければなら労働者である顧客から給与債権を買い取って金銭を交付した業者は常に当該労働者を通じて譲渡に係 る債権回収を図るほかないか業者ら労働者に対す債権譲渡代金の交 付だけでな当該労働者からの資金の回収が一体となって資金移転の仕組み が構築されているというべきであり経済的には貸付けによ金銭の交付と返 還の約束と同様機能を有するものと認めら当該取引における債権譲渡代 金の交付は貸金業法や出資の受入れ預り金及び金利等の取締りに関する法律 (以下出資法いう)にい貸付けに該当し当該取引を行う業者 は貸金業法にいう貸金業を営む者にあたると判示し(以下東京地裁判決という)。 

なお東京地裁判決は訴訟当事者である給与ファクタリング業者が徴収した手数料を年利換算すると貸金業法第42条第1項に定める年109.5% を超過しているとして当該取引は同項により無効でるとともに出資法第5条第3項に違反し刑事罰対象となと判示した

2 貸金業の監督官庁である金融庁は同年3月5日付けで公表した同庁監督局 総務課金融会社室長名の金融庁における一般的法令解釈に係る書面照会手 (回答書)においていわゆる給与ファクタリングのスキームについ 東京地裁判決と同じ論法にて貸金業法にいう貸付けに該当し当該スキー ムを業として行うものは貸金業に該当するとの解釈を示した(以下金融庁回 いう)

3 日本弁護士連合会は同年5月22日付けで公表した同会長名の声明におい いわゆる給与ファクタリングのスキームについ京地裁判決及び 金融庁回答と同様解釈を示したうえで年利に換算すると数百%上にも相 当するような高額な手数料を徴収している業者を貸金業法及び出資法に違反 する違法なヤミ金融業者と断ファクタリング業者の取締りの徹底を求 給与ファクタリング業者と称するヤミ金融撲滅に向けて相談体制を強化するなどの努力をすしている(以下日弁連声明いう)。 

4 式会社ZERU〇〇株式会社さ〇ら株式会社W×corporati on(以下申立外3社とい)株式会社S&〇(以下申立外S&〇とい)株式会社R×MUA(以下申立R×MUAいう)わゆファクタリングを業として行っいた会社でありウェブサイ トにて広告宣伝し顧客を募っていた

5 申立外3社はそのウェブサイトに顧問弁護士として被調査人の氏名を掲載 ており申立外RUMUAはのウェブサイトに顧問弁護士として被調査 人が当時所属していたさくら共同法律事務所の名称を掲載していた

6 申立外RUMUAは令和2年5月26日商号を株式会社ZIZ●変更し事業内容から個人向けファクタリング事業を削除する目的変更登記を 行っており商号変更後のウェブサイトには顧問弁護士として被調査人の氏名 を掲載していた。 

第3懲戒請求事由の要旨 

1 懲戒請求事由1 

申立外3社申立外S&〇申立外R×MUAピ×エムジー株式会社(申立外ピ×エムジーとい)給与ファクタリングとの名目にて無登録で貸金業をういわゆる闇金融業者であり被調査人がこれらの会社と顧問契約を締結して顧問弁護士に就任した行為は必要な法令及び事実関係の調査の懈怠違法行為の助位を損なう事業への参加にあたり弁護士としての品位を失うべき非行にあたるから弁護士職務本規程第37条第14 第15条に違反し弁護士法第56条第1項に該当す

2 懲戒請求事由2」 

申立外R×MUAファクタリングとの名目にて無登録で貸金業を営むこ とができなくなったことから商号と目的を変更後新たな脱法的スキームと してァクタリング業を営む他社の利用者からの申込みを受けて利用者が 支払うべき債務を立て替えて支払い立替金との名目にて無登録で貸金業を行 っているのであり被調査人同社と顧問契約を締結して顧問弁護士に就任し顧問弁護士として氏名の使用を許諾した行為は必要法令及び事実関係の調 の解怠違法行為の助長位を損なう事業へ参加にあたり弁護士としての品位を失うべき非行にあるから弁護職務基本規程第37条第14 第15条に違反し弁護士法第56条第1項に該当す。 

第4 被調査人の答弁及び反論の要旨

1 懲戒請求事由 1について

(1)申立外3社及び申立S&Mとは令和2年2月から立て続けに顧問契約 を締結したいずれも令和2年5月をって終了している顧問契約を締結した当時与ファクタリングについての例はなく令による規制も現在まで行われていない給与ファクタリングのスキームに ついては法人向けファクタリングに関平成29年5月23日東京高等裁判所判決に基づ買い取った債権の回収は別債権譲渡人の財産か回収すると返の約束となってしまうことからこの点を遵守すれば違法ではない考えてい。 

しかし金融庁回答及び東京地裁判決が出されたことから申立外3社に 対しては与ファクタリング事業を中止すことを助言するとともにちに顧問弁護士しての表示を削除するよう要請した。 

申立外3社はいずれも助言に従って同年4月には与ファクタリング事を中止した

(2)申立外R×MUAとは顧問契約を締結しておらずにもかかわらず同社のウェブサイトで顧問弁護士として被調査人が当時在籍してた事務所名が 載されていたとから削除を求め除された

(3)申立外ピ×エムジーは法人向けファクタリングを業として行っているもであり与ファクタリング業として行っていない

2 懲戒請求事由2について 

申立外RUMUAとは商号変更後(現商号株式会社ZIZ●) も顧問契約を締結していない。 調人は申立外RUMUAの代表取締役あるA(以下代表者 Aという)代表取締役の別会社(株式会社くじら)の顧問弁護士であ同社はシステ開発の会社であ給与フクタリングは業として行っていない表者Aは被調査人が別会社の顧問弁護士であったことから無断申立外RUMUAの顧問弁護士として被調査人がかつて所属していたくら共同法律事務所の名称を掲載していた。 これに気付いたさくら共同法律事務所からの連絡を受けて被調査人は上記掲載の事実を知代表者Aに対し上記掲載削除を要請したのであなおくら共同法律事務所は申立外RUMUAの顧問でもなければ同社と何らの関係もない。 

その後代表者A申立外RUMUAの商号を変更し再び無断で被調 人を顧問弁護士として掲載したことから被調査人は再度削除を要請したある。 

第5 証拠の標目 

別紙証拠目録記載とおり 

第6 当委員会第4部会の認定した事実及び判断

1 関係各証拠によれば前提事実のほか以下の事実が認められる

(1)被調査人は令和2年2月頃与ファクタリングを業として行う申立外3社及び申立外 S&Mとの間で顧問契約を締結して顧問弁護士に就任し

(2)被調査人は金融庁回答及び東京地裁判決が出されたこと申立外3に対しファクタリング事業を中止することを助言するとともに問弁護士としての表示を削除すよう要請し申立外3社はいずれも助言に従って同年4月には給ファクタリング事業を中止した

(3)被調査人と申立外3社及び申立外S&Mとの間の顧問契約くとも同年5月末日をもって終了した

(4)申立外3社及び申立外S&Mは被調査人が顧問弁護士に就任して貸金業法第3条第1項所定の登録を受けていかった

2 懲戒請求事由1について

(1) 東京地裁判決及び金融庁回答等によれば与ファクタリングよる取における債権譲渡代金の交付は貸金業法や出資法にいう付けに該当し該取引を行う業者は貸金業法にいう貸金業を営む者にあたるか申立外 3社及び申立外S&Mは金業法第3条第1項(登録)に違反し徴収してた手数料を年利に換算した利率によって利息制限法に違反し貸金業 第42条第1項(金利を定めた金銭消費貸借契約無効)及び出資法第5条第3項(高金利の処罰)に該当する可能性がある。 

しか被調査人が申立外3社及び申立外S&Mの顧問弁護士に就任した とのみをもってちに必要な法令及び事実関係調査の解怠違法行為 の助品位を損なう事業への参弁護士としの品位を失うべき非行にたるとは認められず給与ファクタリングの実態貸付けであると認識しながらあるい法令等の調査や事実関係の調査をすれば容易に認識しえ たにもかかわらずこれを認識せず貸金業としての登録や利息制限法の遵あるいは業務停止といった適正な助言や指導をせず放置したと認められる 場合に上記非行にあたる可能性があるといえる。 

上記認定事実によれ被調査人が目立外3会社及び申立外S&Mにる給与ファクタリングの実態が貸付けであると認ながら適正な助言や 指導をせず放置したと認めるに足りる証拠は存在しない。 

懲戒請求者は東京地裁判や金融庁回答が出された後も被調査人が直ち に顧問弁護士を辞任しなかったことをもって記非行にあたると主張す被調査人が顧問弁護士を辞任するまでの間適正な助指導をせずに 放置したと認められるような具体的事実は適示していないまた懲戒請求 者は被調査人が東京裁判決後も率先して積極的未処理の返還請求に 対応してたと主張するがかかる主張を認めるに足りる証拠は存在しない。 

以上か被調査人が申立外3社及び申立外S&Mと顧問契約を締結して 顧問弁護士に就任した行為をもって要な法令及び事実関係の調査の解怠違法行為の助長品位を損なう事業への参加にあたるとは認められ弁護士としての品位を失うべき非とは認められない

(2)懲戒請求者は被調査人が申立外R×MUAとも顧問契約を締結し顧問弁護士に就任したと主張している。 しか申立外RUMUAのウェブサイトには調査人が当時在籍してい法律事務所名が掲載されているが被調査人の氏名は掲載されていないこ被調査人は令和2年5月8日同社の代表者Aに対し上記掲載の 削除を求し自身が同社と顧問契約を締結しいないことにも及していること提結していることから(乙イ 1)被調査人が同社の顧問弁護士に就任していたとは認められない

(3) 懲戒請求者は申立外ピ×エムジーについて給与ファクタリングを業 として行う会社あり被調査人が同社とも顧問契約を締結し顧問弁護士 に就任したと主張している。 しかし被調査人は同社は法人向けファクタリングを業として行う会社 であると主張していること懲戒請求者が書証(甲イ1)として提出したサ イト画面にも企業向けのファクタリング会社との記載があることからそもそも同社が給与ファクタリングを業として行う会社とは認められない

3 懲戒請求事由 2について 

申立外RUMUAが株式会社ZIZOと商号変した後のウェブサイト には顧問弁護士として被調査人の氏名が掲載されている。 しかし社の代表者A旧商号当時も上記のとおりそのウェブサ イトに顧問弁護士として被調査人が当時在籍していた法律務所名を無断で掲載し被調査人から削除を求められてお上記掲載の事実のみをもって被調査人が氏名使用を許諾したとは認められない被調査人が顧問弁護に就任していたと認めるに足りる証拠存在し ないからかかる事実も認められない。 

よって主文のとおり議決する。 

令和3年10月15日 

東京弁護士会綱紀委員会第4部会    部会長  (記載省略) 

拠目録 

(令和2年東綱第230号) 1書証 

1 懲戒請求者提出 

甲イ1 七福神との記載があるイト画

甲イ2  朝日新聞配信記事

甲イ3_ 日本経済新聞配信記事

甲イ4 給与の買取りで始まる書面 

会社らが業者を提訴との記載があサイト画面 

甲6 貸付認定判の記載があるサイト画面

甲イ7回答書

8 毎日新聞配信記事

甲イ9_給与ファクタリングで違法金利との記載があサイト画面 

甲イ10 現金書留での支払いを要求との記載があるサイト画面

2 被調査人提出 

乙イ1_ 金融庁における一般的な法令釈に係る書面照会手続き(回答書)

乙イ2_ファクタリング取引が金銭消費貸借非該当との記載があるサイト画面 

乙イ3_東京地裁判決(平成31年4月15日) 紹介記事 

乙イ4 東京地裁判決(昭和31年4月23日)紹介記事 乙イ5 東京地裁判決(令和元年9月12日) 紹介記事 

乙イ6_東京地裁判決(平成31年4月12日) 紹介記事

3 職権 

丙イ1 答弁書

丙イ2 被調査人反論書

丙イ3 被調査人反論(2

第2 人証  なし 

(令和2年東綱第292号) 第1書証 

1 懲戒請求者提出 

甲口1の1 登記情報 甲口1の2 会社概要 

甲口2 身代わり地蔵との記載があるサイト画面 2 被調査人提出 

乙 ショートメール日本 

2 人証 

なし 

左は抄本 。 

令和3年11月29日  東京弁護士会事務局長  望月秀