福島県弁護士会の弁護士に対し申立てがなされた懲戒請求、棄却(懲戒しない)の議決書、懲戒請求書もお送りいただきましたのでご覧ください。公共事業で福島県を訴えた懲戒請求者、県の代理人の弁護士の行為が非行であるという申立ての趣旨です。
令和4年4月18日
福島県弁護士会 御中
以下のとおり、 対象会員に対し懲戒処分を請求する。
第1 懲戒請求者 住所 氏名〇〇
第2 対象会員 (懲戒を請求する弁護士)
氏名 〇〇 弁護士法人鈴木芳喜法律事務所
氏名 〇〇 弁護士法人鈴木芳喜法律事務所
第3 懲戒を求める事由
1 請求者が原告で対象会員が被告代理人となった原状回復費用請求事件 (以下同事件と記す) 及び公文書一部開示決定取消請求事件(以下同取消事件と記す)、 (共に福島県が被告) に関連し 懲戒事由に該当する行為があったと思料するので懲戒処分を求める。 以下詳細を記す。
2 同事件は、白河簡易裁判所に係属し、 福島県借上げ住宅の貸主であった請求人が原告となり、 本人訴訟で借主である福島県に原状回復費用を請求した事件である。 同事件は第8回迄口頭弁論が行われたが 結審直前に福島地裁白河支部に移送された異例の事件である。
同取消事件は、同事件の口頭弁論を傍聴した福島県職員が職命で作成した
復命書を請求人が福島県情報公開条例に基づき開示請求したところ、 福島県 が一部不開示決定処分をしたので、その取消を求めた事案である。
福島県が 一部不開示決定処分にしたのは、口頭弁論の途中で裁判官が司法委員と協議するという理由で当事者双方と傍聴人に法廷から退廷を命じた後、理由も告 げることなく、当事者一方だけを交互に法廷に呼び入れた際のやり取りであ る。
当初、 福島県は公文書一部非開示決定通知書で一部不開示部分について 「口頭弁論で原告退席のもと裁判官と県で質疑が行なわれた部分」 と記載し、 不開示決定処分とした理由については、 福島県情報公開条例第7条2号 (当事者としての地位を不当に害するおそれがある為) に該当するとしていた。 請求者が福島県情報公開条例に基づき行った審査請求でも、この公文書一部開示決定通知書に基づき、 意見書、 弁明書が提出され審査が行われた。
しかし、 請求人が同取消事件を福島地裁に提訴すると、 対象会員が代理人となった福島県は、 争訟の途中、 被告第2準備書面で突然、 非開示部分は「事実上の進行協議」 と訂正し、不開示事由についても 「事実上の進行協議のや り取りが公開されると、裁判官も当事者も率直な意見交換を行うのに躊躇する可能性がある」 に変更し、 更に被告福島県は 被告第3準備書面で 「本人訴訟が一定数存在する簡易裁判所においては、口頭弁論を休廷して事実上の 進行協議が行われることは存在する。」 と主張した。
これに対し、 請求人は下記の反論を行った。
1 情報公開条例に基づく処分取り消し事件で、不開示事由が変更される判例はあるが、不開示部分の記載事項が変更された事例はない。 それは処分の同一性が失われ、審査請求手続きの行政保障も奪うことになるからで情報公開条例でも認めていない。 口頭弁論調書にも全て公開と記載されており、その証明力は民事訴訟法第160条3項に基づき絶対であるから非公開だった との主張は認められない。
2 裁判は公開主義・直接主義・口頭主義で行うことを制度として憲法第32 条・82条で保障されている。 公開の法廷で適正な手続きの下、裁判を受け られる権利は 簡易裁判所における本人訴訟でも変わらない。 本来、 進行協議は、個別に行うものではないことからしても、事実上の進行協議と称するものは、法的根拠がないだけではなく、 論理的にも破綻している。
もし和解の話をするのであれば、 民事訴訟法に則り、 和解勧告や弁論準備 手続・進行協議期日を設なければならない。
請求人は事実上の進行協議の法的根拠や憲法第82条(公開 原則) 違反でない理由の釈明を求めたが、 釈明が得られず審理不尽のまま結審した。
第4 懲戒事由に該当する理由
(1) 事実上の進行協議は違法行為
裁判公開の目的について、最高裁判例では 「裁判を一般に公開して裁判が 公正に行われることを制度として保障し、ひいては裁判に対する国民の信頼を確保しようとすることにある。」 と判示している。 (レペタ事件 最高裁判 平成元年3月8日民集43巻2号 89頁) つまり最初から最後迄全て裁判を公開することで恣意的な裁判が行われないようにし、 訴訟当事者の権利を守るものととらえている。 口頭弁論は最初から最後まで事実上でも公開しなければならない。
なお、この事実上の進行協議は、 対象会員が裁判官 書記官・同席した司法委員との私的な関係を利用し、 話合いをオフレコでしていたものと推察され、その内容は公に耐えられないものと思料する。 この時同席した司法委員は、 以前対象会員が属する鈴木芳喜弁護士事務所に司法修習生として在籍し、 現在も同じ福島県弁護士会の会員となる横村利勝弁護士であった。 対象会員は、 この私的関係を不当に利用して、事実上の進行協議なる違法行為に関与 したものと思料する。
また、 対象会員は、口頭弁論は公開であることから不開示情報にできない 釈明に窮して公文書一部開示決定通知書の内容を変更し、法的根拠を欠 くことを知りながらも 「本人訴訟がある簡易裁判所では、事実上の進行協議がある旨」 の主張をしたものと思料する。
(2) 懲戒処分となる根拠
「本人訴訟がある簡易裁判所では、事実上の進行協議がある旨」 の法的根拠を欠く不当な釈明を行うことは、 裁判の公正及び適正手続に背反する行為に関与し、 不当な釈明をするもので弁護士職務規定第74条 (裁判の公正及 び適正手続) 第4条 (司法独立の擁護) 第5条 (信義誠実) 及び、 日本弁護士連合会会則 第11条 (非違不正の是正) 違反に該当する。
また、 同取消事件の依頼人である福島県に対し、法的根拠を欠くことを知りながらも、 「本人訴訟がある簡易裁判所では、事実上の進行協議が存在する旨」 の陳述をそそのかしていれば、 弁護士職務規定 75条 (偽証のそその かし) に該当する。 地方自治体である福島県の代理人として、県の品位を貶 める行為であり、極めて不適切で弁護過誤になり得る。 対象会員は、裁判が 法律上の制度であることを知り得ないことはありえず、 釈明に窮し 法的根拠がないことを知りながらも 「本人訴訟がある簡易裁判所では、事実上の進 行協議がある旨」 の不当な釈明をしたものと思料する。
福島県情報公開条例では、不開示とする情報は第7条に記載さており、実施機関である福島県は当該情報を客観的に判断しなければならず、提訴後に恣意的に変更し不開示にすることはできない。 しかし、 対象会員は公に耐え られない情報を不開示にする為、 福島県情報公開条例に反し、 裁判の途中で 公文書公開通知書記載事項を変更したものと思料する。 これは弁護士法第2条 (弁護士の職責の根本基準) 及び弁護士職務基本規程第37条 (法令等の調査委)に違反する。
こうした一連の行為は、 弁護士法第56条1の品位を失うべき非行に該当 する。 よって、懲戒処分を求める。
なお、事実上の進行協議が行われた口頭弁論期日は、約3年前になるが、 今回、懲戒を求めるのは、 法的根拠を欠く事実上の進行協議に端を発し 「本人訴訟がある簡易裁判所では、事実上の進行協議が存在する旨」 の不当な釈明を繰り返す一連の行為を対象とするものである。 よって、現時点においても弁護士法第63条には該当しない。
以上.
附属書類
訴状(令和3年6月2日付)
証拠説明書(和3年6月2日付)
準備書面1(令和3年9月25日) 準備書面2(和3年10月28日)
答弁書 (令和3年7月2日付)
被告第1準備書面 (令和3年7月27日付)
被告第2準備書面(令和3年9月2日付)
被告第3準備書面(令和3年10月1日付) 公文書一部開示決定通知書 (令和3年1月8日)
弁明書(令和3年2月4日)
反論書 (令和3年2月22日)
意見書 (令和3年5月10日)
復命書(原状回復費用請求事件第3回口頭弁論 平成31年1月25日付) 復命書(原状回復費用請求事件第4回口頭弁論 平成31年3月11日付) 復命書(原状回復費用請求事件第5回口頭弁論 平成31年4月19日付) 復命書(原状回復費用請求事件第6回口頭弁論 平成31年5月23日付) 第3回口頭弁論調書(原状回復費用請求事件 平成31年1月24日付) 第4回口頭弁論調書(原状回復費用請求事件 平成31年3月7日付) 第5回口頭弁論調書(原状回復費用請求事件 平成31年4月18日付) 第6回口頭弁論調書 (原状回復費用請求事件 平成31年5月23日付) 福島県情報公開条例
令和4年(綱) 第3号 第4号 第6号 第7号 ( 併合)
本会は,上記懲戒請求事案につき,次のとおり決定する。
主 文
対象弁護士らを懲戒しない。
理 由
上記対象弁護士らに対する懲戒の請求について, 綱紀委員会に事案の調査を求めた ところ、 同委員会が別紙のとおり議決したので、 弁護士法第58条第4項の規定によ り, 主文のとおり決定する。
令和4年11月21日 福島県弁護士会 会長 紺野 明弘
令和4年(綱) 第3号、第4号、6号、7号
主 文
対象弁護士らにつき、いずれも懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
第1 事案の概要
1 本件は、懲戒請求者が福島県を被告として提起した公文書一部開示決定処分取消請求訴訟(福島地方裁判所令和3年(行ウ) 第3号、以下「本件訴訟」という。)に関 し、対象弁護士らのした主張等が不当だとして、懲戒が申し立てられた事案である。
2 本件訴訟に至る経緯と概要について、 次のとおりである。
(1) 懲戒請求者は、その所有する建物を福島県に貸し、福島県は、それをみなし応急 仮設住宅として被災者に供与したところ、供与を受けた者が破損させた。 そこで懲戒請求者は、福島県を被告として、 原状回復費用等請求訴訟を提起した(白河簡易裁判所平成30年 (ハ) 第101号)
(2) 上記(1)の訴訟で被告福島県は、口頭弁論期日の都度、職員を行かせ結果につ き復命書を作成していた。
(3) 懲戒請求者が、福島県情報公開条例に基づいて上記(2) 復命書の開示を求めたところ、 福島県知事は、一部を不開示とし、その余を開示する公文書一部開示決定 (以下「本件一部開示決定」という。)を行った(甲10)
(4) 懲戒請求者は、上記 (3) の決定に対し、不開示となった部分の開示を求めて行政不服審査法に基づき審査請求を行い (甲11ないし13、以下 「本件審査請求」 とい う。)、さらに上記1の本件訴訟を提起した(甲1) 対象弁護士らは、本件訴訟で被告福島県の訴訟代理人になった。
第2 懲戒請求事由の要旨
1 本件一部開示決定に係る公文書一部開示決定通知書では、開示しない部分につき、「口頭弁論で原告退席のもと裁判官と県で質疑が行われた部分」と記載されていた。 そうすると、口頭弁論は公開であるから、 同決定で不開示とされた部分も本来、開示されなければならない。
ところが、本件訴訟で対象弁護士らは、不開示部分を「事実上の進行協議」 、不開示理由につき 「事実上の進行協議のやり取りが公開されると、 裁判官も当事者も率直な意見交換を行うのに躊躇する可能性がある」と主張した。
しかし、「本人訴訟がある簡易裁判所では、事実上の進行協議がある。」という対象弁護士らの主張は法的根拠のない不当なものであり、 そのように主張することで対象弁護士らは、不開示部分が裁判でも開示されないようにした。これは、弁護士職務規程第74条 (裁判の公正及び適正手続)、同第4条 (司法独立の擁護) 同第5条(信義誠実)及び日本弁護士連合会会則第11条(非違不正の是正)に違反する。
2 対象弁護士らが、依頼者である福島県に対し「本人訴訟がある簡易裁判所では、 事実上の進行協議がある」 旨の陳述をそそのかしていれば、 それは、弁護士職務基本 規程第75条 (偽証のそそのかし) に違反する。
3 不開示部分について、 対象弁護士らは、本件訴訟で、 上記1のとおり、 公文書一部 開示決定通知書のうちの開示しない部分の記載内容と異なる主張し、もって、同通知 書の記載を事実上変更した。 これは、 対象弁護士らが不開示部分が裁判でも開示され ないようにするためにしたことであり、 福島県情報公開条例が不開示とする情報につ き規定している(同条例第7条)ことに反し、もって弁護士法第2条 (弁護士の職責 の根本基準)及び弁護士職務基本規程第37条 (法令等の調査) に違反する。
4 上記1ないし3の行為は、弁護士法第56条第1項の品位を失うべき行為にあたる。
第3 対象弁護士の弁明の要旨
1 上記第2の1について
(1)対象弁護士らが本件訴訟で懲戒請求者の言うとおり主張したことにつき、事実で ある。 しかし、 もともと、 公文書一部開示決定通知書のうち開示しない部分の記載 について福島県は、判例に倣い、「口頭弁論を休廷して、事実上の進行協議をした 部分」とすべきだった。 そこで対象弁護士らは、本件訴訟で、不開示された部分は そのようなものだったと主張した。
(2) 「本人訴訟がある簡易裁判所では、事実上の進行協議がある。 」 旨主張したこと につき認めるが、この主張は法的根拠を欠くものではないし、裁判の公正及び手続 等に違反するものではなく、懲戒事由にならない。
2 同2について
懲戒請求者主張の 「偽証のそそのかし」とは、弁護士職務規程第75条が定める 「偽証又は虚偽の陳述」 をいうと思われる。 しかし、これは法律により宣誓した証人 が虚偽の陳述をすること(刑法第169条 あるいは宣誓した当事者が虚偽の陳述 をすること(民事訴訟法第209条) を指す。然るに、 本人訴訟がある簡易裁判所では、事実上の進行協議が存在する」というのは準備書面における主張であるから、 本件で 「偽証のそそのかし」 はあり得ない。
3 同 3について
対象弁護士らが懲戒請求者の言うとおりに主張したことについて、上記1のとおり、 事実であるが、 それは、 非開示部分の名称を変更したものである。 そして、 本件訴訟 の争点について、不開示とされた部分が不開示事由に該当するか否かであるところ、 当該部分が不開示事由につき規定する福島県情報公開条例第7条第6号にあたることは開示決定時も本件訴訟時も変わりがなく、 本件訴訟で対象弁護士らは、不開示とすることを求めた。 したがって、対象弁護士らが懲戒請求者の言うとおりに主張したことについて、 違法でも不当でもない。
4 同4について
対象弁護士らに、 弁護士としての品位を失うべき行為はなく、 懲戒に相当する事実はない。
第4 証拠
1 懲戒請求者提出分
(1)主張書面
懲戒請求書(令和4年4月18日付け)
弁明書について (令和4年6月12日付け)
懲戒請求書(令和4年6月12日付け)
弁明書に対する意見書 (令和4年7月4日付け)
(2)証拠書類
甲1 福島地方裁判所令和3年(行ウ) 第3号公文書一部開示決定処分取消請求事件の訴状(令和3年6月2日付け)
甲2 同事件の原告証拠説明書(令和3年6月2日付け)
甲3 同事件の原告準備書面1(令和3年9月25日付け)
甲4 同事件の原告準備書面2 (令和3年10月28日付け)
甲5 同事件の原告証拠説明書 (令和3年8月13日付け)
甲6 同事件の被告答弁書 (令和3年7月2日付け)
甲7 同事件の被告第1準備書面(令和3年7月27日付け)
甲8 同事件の被告第2準備書面 (令和3年9月2日付け)
甲9 同事件の被告第3準備書面(令和3年10月1日付け)
甲10 公文書一部開示決定通知書 (令和3年1月8日付け)
甲11 公文書開示に係る審査請求事件の弁明書(令和3年2月4日付け)
甲12 同事件の反論書 (令和3年2月22日付け)
甲13 同事件の意見書 (令和3年5月10日付け)
甲14 復命書(平成31年4月19日付け) 甲15 復命書 (平成31年3月11日付け)
甲16 復命書(平成31年1月25日付け)
甲17 白河簡易裁判所平成30年 (ハ) 第101号原状回復費用等請求事件の第3回口頭弁論調書(平成31年1月24日付け)
甲18 同事件の第4回口頭弁論調書(平成31年3月7日付け)
甲19 同事件の第5回口頭弁論調書(平成31年4月18日付け) 甲20 同事件の第6回口頭弁論調書(令和元年5月23日付け) 甲21 復命書 (令和元年5月23日付け)
甲22 福島県情報公開条例
甲23 仙台高等裁判所令和4年(行ヌ) 第3号公文書一部開示決定処分取消請求控訴事件の控訴理由書 (令和4年3月28日付け)
甲24 同事件の証拠説明書(令和4年3月28日付け)
甲25 同事件の求釈明申立書 (令和4年3月28日付け)
甲26 東京地方裁判所令和元年(ワ)第21867号国家賠償法による慰謝料請求事件の答弁書(令和元年10月16日付け)
甲27 東京高等裁判所令和3年(ネ) 第473号国家賠償法による慰謝料請求控訴事件の謄写許可申請書(令和3年8月30日付け)
甲28 仙台高等裁判所令和4年 (行コ) 第9号公文書一部開示決定処分取消請求控 訴事件の答弁書(令和4年4月22日付け)
2 対象弁護士提出分
(1)主張書面
弁明書(令和4年5月11日付け)
弁明書(令和4年6月17日付け)
(2)証拠書類
乙1 福島地方裁判所令和3年(行ウ) 第3号事件の判決
乙2 東京地方裁判所令和元年(ワ)第21867号事件の判決
第5 当委員会の認定した事実
以下の各事実につき争いがなく、 そのとおり認定することができる。
1 本件訴訟に先行する原状回復費用等請求訴訟で、 被告福島県は、口頭弁論期日の都 度、復命書を作成していた (甲14ないし16)
2 懲戒請求者が、上記1復命書につき、条例に基づき開示を求めたが、 本件一部開示 決定があった (甲10)ので、 不開示となった部分の開示を求めて本件審査請求をし(甲11ないし13)、 さらに本件訴訟を提起した (甲1) 対象弁護士らは本件訴訟で 被告福島県の訴訟代理人になった者であるが、そのうち実際に本件訴訟に関わったの は駒田晋一(以下「対象弁護士駒田」という。)のみであって、 残る3名は委任状に 名前の記載があるが実際には関わっていない。
3 対象弁護士駒田が本件訴訟で提出した準備書面に、次の記載がある。
ア 本人訴訟が一定数存在する簡易裁判所においては、口頭弁論を休廷して事実上の進行協議が行われることは存在する。 (甲9の2頁)
イ 「開示しない部分」の範囲は変わらず、不開示事由も変わらず、特定方法が「ロ 頭弁論で原告退席のもと裁判官と県とで質疑が行われた部分」ではなく、「口頭弁論を休廷し、事実上の進行協議をした部分」 に訂正されたに過ぎないから、処分理 由の変更には当たらないと解する。 (甲8の2頁)
第6 当委員会の判断
1 上記第2の1ないし4の懲戒請求事由につき、当委員会の判断は次のとおりである
懲戒請求事由1について懲戒請求者は、対象弁護士らがした 「本人訴訟がある簡易裁判所では、事実上の進 行協議がある。」という主張につき法的根拠がないという。 しかし、本件訴訟の判決 (乙1) も、 原状回復費用等請求事件の期日で行われたこ とについて、 民事訴訟法の 「規定に照らすと、口頭弁論期日を行った上で、一時休廷 して各当事者と個別に非公開で事実上の協議を行い、その後に口頭弁論期日を再開し ている」と判断していて (6頁)、進行協議につき認めている。
そうすると、 対象弁護士らの上記主張は法的根拠を欠くものではなく、また裁判の 公正及び手続等に違反するものでもない。
したがって、懲戒請求事由1は認められない。
2 同2について
懲戒請求者は「対象弁護士らが、 依頼者である福島県に対し、・・・・ 旨の陳述をそそのかしていれば」 と言っていて、 その主張は、そそのかしがあったかもしれない、 あるいは、そそのかしがあったはずだ、という仮定を言うものである。 しかし、そそのかしがあったと認めるに足る証拠はない。
したがって、懲戒請求事由2は認められない。
3 同3について
対象弁護士らが弁明するとおり、本件訴訟の争点について、不開示とされた部分が 福島県情報公開条例第7条の規定する不開示事由に該当するか否かである。 この点、 本件訴訟の判決 (乙1)は、被告福島県の主張につき、本件一部開示決定 時もその後の本件訴訟時も、上記条例第7条第6号に該当するという点に変更はない と判断しているところ ( 8頁)、この判断を覆すに足る証拠は見当たらない。
そうすると、上記判決も認めるとおり、対象弁護士らは不開示とされた部分を特定するための名称を変更したに過ぎず、不開示にした理由を差し替えたものでないから、 違法不当なところはない。
したがって、懲戒請求事由3は認められない。
4 結 論
以上によれば、 対象弁護士らのいずれについても、懲戒請求者主張の懲戒請求事由は認められず、その他、 弁護士法第56条第1項に定める 「品位を失うべき非行」 (懲戒請求事由4に該当する事実) があったと認めるに足る証拠はない。
よって、 主文のとおり議決する。
令和4年 11月 10日 福島県弁護士会綱紀委員会 委員長 大峰 仁
これは謄本である 令和4年11月21日 福島県弁護士会 会 長 紺野 明弘