弁護士自治を考える会
棄却された懲戒の議決書を公開しています。当会は懲戒請求の請求自由、綱紀委員会が棄却した理由についてコメントも評価も致しません。
(処分を求めた理由)業務停止中でありながら、事務所の電話、FAXが通信可能であった
決 定 書
第一東京弁護士会 2023年一綱第54号綱紀事件
懲戒の請求をした者 東川 允
対象弁護士 小川正和 登録番号 25450
東京都品川区小山3-21-10 ARK21武蔵小山
小川総合法律事務所
第一東京弁護士会は掲記の懲戒請求について次のとおり決定する。
(主文)
対象弁護士らにつき、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする、
(理由)
本件懲戒請求について綱紀委員会の調査を求めたところ、同委員会が別記のとおり議決したので、主文のとおり決定する。
2024年(令和6年)7月1日 第一東京弁護士会 会長 市川正司
議 決 書
2023年一綱第34号綱紀事件
懲戒請求者 東川充
対象弁護士 小川正和 登録番号 25456
上記対象弁護士にかかる頭書綱紀事件について、当委員会は調査審議のうえ、次のとおり決定する。
主 文
対象弁護士につき、懲戒委員会に事案の調査を求めないことを相当とする。
理 由
第1 懲戒請求事由の要旨
1 対象弁護士は、業務停止1月の懲戒処分中であるにもかかわらず、
(1)電話がつながり、携帯電話の留守番電話に転送し用件を確認して業務を行った。
(2)ファックスが受信可能な状態で業務を行った。
2 対象弁護士の行為は、弁護士法第1条(弁護士の使命)、第25条(職務を行い得ない事件)、第29条(依頼不承諾の通知義務)及び弁護士職務基本規程第27条(職務を行い得ない事件)、第53条(相手方からの利益の供与)、第75条(偽証そそのかし)に違反する。
第2 対象弁護士の答弁の要旨
対象弁護士は、答弁書の提出をせず、綱紀委員会からの呼び出しにも応じない。
第3 判断の資料
別紙資料目録記載のとおり
第4 当委員会の認定した事実及び判断
1 当委員会の認定した事実
(1) 対象弁護士は、令和5年3月23日、当会から業務停止1月の懲戒処分を受けた(2021年第8号懲戒事件、以下「先行事件」という)なお本件懲戒請求者は、先行事件の懲戒請求者でもある。
(2)先行事件の懲戒理由は以下のとおりである。
対象弁護士は原告訴訟代理人として懲戒請求者を被告とする民事訴訟事件を受任し、同事件において、対象弁護士の訴訟複代理人に就任することについて承諾していないX弁護士らを対象弁護士の訴訟複代理人に選任する旨の訴訟委任状を作成するとともに、X弁護士らの氏名を原告訴訟複代理人として訴状に表示し、その名下に対象弁護士の印章をもって代印により訴状を完成して裁判所に提出した。
かかる行為は、弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
(3)先行事件の業務停止期間は、令和5年3月23日から同年4月22日までで」あった、
(4)懲戒請求者は、対象弁護士が上記業務停止期間内に、「電話がつながり、携帯電話の留守番電話に転送し用件を確認して業務を行った」とし、対象弁護士の事務所の電話から携帯電話に転送され、携帯電話の留守番電話の録音を確認した弁護士業務を行ったと主張するようであるが、これを裏付ける資料は提出されておらず、電話が転送された日時、対象弁護士が行ったとする業務内容は特定されていない。
(5)また、「ファックスが受信可能な状態で業務を行った」とするが、これを裏付ける資料は提出されておらず、ファックスがなされた日時は特定されておらず、対象弁護士が行ったとする業務内容も特定されていない。
2 当委員会の判断
(1)業務停止は「一定期間・弁護士の業務に従事してはならない旨を命ずるものであって、この懲戒の告知を受けた弁護士は、その告知によって直ちに当該期間中、弁護士としての一切の職務を行うことができないことになる」(最大判昭和42・9・27民集21巻7号1955頁)。
しかしながら、業務停止期間内に対象弁護士が弁護士としての職務を行ったと認めるに足りる証拠はない。
(2)日弁連では「一切の弁護士業務を停止するとの原則を堅持しながら、諸般の事情から最小限度許容せざるを得ない行為を明らかにするため」、平成4年1月17日理事会の承認を得て、「被懲戒弁護士の業務停止期間中における業務規制」(以下「基準」という)を定めている。
上記基準は「被懲戒弁護士は、その法律事務所を使用してはならない、ただし、受任している法律事件の引継ぎその他基準によって業務停止の期間中も認められている事務等のため必要があるときは、弁護士会等の承認を得てその使用をすることができる」と定められているが、事務所の電話を携帯電話に転送することやファックスを受信可能な状態にしておいたからといって、「法律事務所を使用」したとまではいえない、むしろ、業務停止の懲戒処分を受けた弁護士は、受任している法律事件について、直ちに依頼者との委任契約を解除しなければならず、委任契約を解除した法律事件について、解除後直ちにその継続する裁判所、検察庁及び行政庁に対し、辞任の手続を執らなければならない。
また、直ちに依頼者との顧問契約を解除しなければならない。さらに委任契約または顧問契約を解除した場合は、依頼者及び当該法律事件等を新たに取り扱う弁護士又は弁護士法人に対し、誠実に法律事務法律事務の引継ぎをしなければならない。
以上のような措置を講ずるには、懲戒処分を受けた弁護士と電話やファックスで連絡をとる必要がある場合があるといわざるを得ない
(3)以上によれば、対象弁護士に品位を失うべき非行があったと断ずることはできない。
よって、懲戒請求事由は理由がないから、主文のとおり議決する。
2024年(令和6年)7月1日
第一東京弁護士会 会長 市川正司殿
第一東京弁護士会綱紀員会