裁決の公告(処分取消) 小笠原忠彦弁護士(山梨)処分取消の要旨

弁護士の懲戒処分を公開しています。日弁連広報誌「自由と正義」2020年9月号に公告として掲載された弁護士懲戒処分(取消)の理由の要旨

審査請求 弁護士が処分を受け日弁連に処分は不当であると再審査を求める制度

年間約100件程度の審査請求があり変更が認められるのは年間2件~3件程度、その審査請求が認められ処分が取消となったもの

元の懲戒処分の要旨

懲 戒 処 分 の 公 告 2019年6月号

山梨県弁護士会がなした懲戒の処分について同会から以下のとおり通知を受けたので、懲戒処分の公告及び公告に関する規程第3条第1号の規定により公告する。

               記

1 処分を受けた弁護士    

氏 名 小笠原忠彦

登録番号 20832

事務所 山梨県甲府市丸の内3-20-7

甲斐の杜法律事務所

2 処分の内容        戒 告【取消】

3 処分の理由の要旨

(1)被懲戒者は、懲戒請求者が株式会社Aから解雇された事件について2016年12月26日に相談を受けた際、懲戒請求者がその事件について日本司法支援センターの代理援助の申込みの趣旨で記載した援助申込書に関して、懲戒請求者の承諾を得ずに相談実施日時欄に2017年2月6日と記載して、同日に懲戒請求者から受けた法律相談についての援助申込書として日本司法支援センターに提出して法律相談料を請求した。
(2)被懲戒者は上記(1)の事件の処理について日本司法支援センターの利用をすることで懲戒請求者と合意しており遅くとも2017年3月5日時点では日本司法支援センターの代理援助がの申請ができる状態であったにもかかわらず、同日、日本司法支援センターを利用せずに懲戒請求者との間で雇用契約上の地位の確認等を求める内容の委任契約を締結し、日本司法支援センターを利用できることを説明しなかった。

(3)被懲戒者は上記(1)の事件について懲戒請求者の代理人としてA社と和解するに際しして、A社が納付していない懲戒請求者の社会保険料を支払うことを和解の内容とすることについて懲戒請求者が明確に要望していたにもかかわらず、懲戒請求者との間で十分な協議をせず、2017年A社との間で上記要望に反した和解契約を締結した。
(4)被懲戒者は上記(2)の行為は弁護士職務基本規程第29条第1項に、上記(3)の行為は同規程第22条第1項に違反し、上記各行為はいずれも弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。

4 処分が効力を生じた年月日2019年2月5日   2019年6月1日日本弁護士連合会

弁護士自治を考える会

当時の当会の処分記事でこの処分は日弁連で審査請求が認められ処分取消しの可能性があると記事にしています、

(当時の記事から)

この処分理由は簡単にいうと
① 日本司法支援センター(法テラス)への利用の説明がない。② 依頼者と約束した和解内容と違った
という内容でした。

当然、処分された小笠原忠彦弁護士は日弁連に所属弁護士会の下した処分は不当であると審査請求を申立てているでしょう。審査請求が認められて処分取消になる可能性は半々だと思います。当会は日弁連で処分取消のデータも多く所有していますが、処分が取消になるとすれば以下の理由です。

① 労働問題が得意のベテランで、日弁連に強い影響力がある自由法曹団の団員であること
② 懲戒請求者が処分前からネットで被懲戒者のことを公開していること、
【甲斐の杜法律事務所小笠原詐欺弁護士、山梨ユニオン〇〇ペテン師との訴訟日記】
https://kainomorimorimori.hatenablog.com/entry/2019/03/02/024559

ヤフーブログhttps://blogs.yahoo.co.jp/kainomorimori/49749551.html
これは、戒告以上の社会的制裁を既に受けているとの反論ができること

③ あなたの為にやった事と言い訳が可能なこと

④ 法テラスの処分は、利用できない人を無理やり利用させたケースがるが今回のケースは過去処分がない
⑤ 日弁連の審査請求の処分取消の裁決の公告では「審査請求人の行為は職務上の義務違反が認められるものの、これら一連の行動が裁判所あるいは相手方代理人との間の信義則に違反していると認められず、いまだ弁護士としての品位を失うべき非行とまで評価できない。したがって、審査請求人を戒告処分とした原弁護士会の処分を取消し審査請求人を懲戒しないこととするのが相当である」こういう文面をよく見る

弁護士の懲戒は難しいものです。審査請求の審議は懲戒請求者は何も言えず文書を出すこともできません。審査請求人からどのような文書が出ているかも分かりません。懲戒請求者さんも異議申立をしっかりやらないと、このまま処分が確定するかは微妙かと思います。

以上でした。

それでは処分取消の理由です。言い訳が多いので普段よりも長い文になっています。

 

裁決の公告(処分変更)

山梨県弁護士会が2019年2月5日付けで告知した同会所属弁護士小笠原忠彦会員(登録番号208325)に対する懲戒処分(戒告)について同人から行政不服審査法の規定による審査請求があり本会は2020年7月14日、弁護士法第59条の規定により懲戒委員会の議決に基づいて、以下のとおり裁決したので懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第3号の規程により公告する。

 

             記
1 裁決の内容

(1)審査請求人に対する懲戒処分(戒告)を取り消す。

(2)審査請求人を懲戒しない。

2 採決の理由の要旨

(1)勤務先から解雇された懲戒請求者から相談を受けた審査請求人が解雇に関して元勤務先と交渉し和解により解決した本件について山梨県弁護士会は①懲戒請求者が事前に要望していた、勤務先が納付していなかった雇用保険及び社会保険料を支払う事(以下「遡り加入」という)につき懲戒請求者の要望を無視して和解契約を締結した行為は弁護士職務基本規程第22条第1項及び第36条に違反し② 本件解雇事件の弁護士費用につき法テラスを利用できる状態であったにもかかわらず、利用しなかった行為は同規程第29条第1項に違反し ③ 懲戒請求者が2016年12月26日に作成した法テラスの援助申込書につき、懲戒請求者の承諾なく日付w書き換えて法テラスに提出し法律相談料を請求した行為は、法テラスの細則等に違反する、と認定、判断し審査請求人を戒告に付した。

(2)本件では主として金銭的な解決を図るべく交渉が続けられていたところ、合意書締結の直前に懲戒請求者から遡り加入に関する要望がなされた。懲戒請求者が遡り加入を強く要望していたことはうかがわれる、それが審査請求人にどの程度正確に伝わっていたのか定かではない。この点、審査請求人と懲戒請求者との間では認識にずれが生じていたということができ、合意書の条項に遡り加入の条項を挿入しなかったことについて遡り加入、審査請求人の全面的な落ち度であると非難することは相当とはいえない遡り加入に関する元勤務先との交渉の結果を伝えはしたが、それ以上の説明を行ったとは認められず、この点で審査請求人は十分な説明、報告をして依頼者と協議を行わなかったといえるのであり、前記(1)①の行為に関し、山梨県弁護士会が弁護士職務基本規程第22条第1項及び第36条に違反したと判断したことは必ずしも不当とはいえないが、合意書をめぐる行き違いについては、審査請求人が成功報酬を請求しないことで実質的に決着がついたという事情が認められ、この点は酌むべきものがある。

(3)前記(1)の②に関し、法テラスを利用せずに委任契約を締結するにつき、審査請求人が具体的にどのような説明を行ったかについて直接的な証拠は存在しない、懲戒請求者があくまで法テラスの利用を望むのであれば、その点を主張していたはずであるが、この契約書作成の手続について特に問題が生じたことをうかがわせる事実は認められない。また契約内容も予定された法的手続を考えれば、金銭的にも相応の範囲にとどまっているだけでなく、着手金の支払を月額1万円の分割払いとするなど、懲戒請求者の置かれた状況に配慮したものとなっている。審査請求人は法テラス利用の可否を検討すべきであったことは否定できず、慎重さを欠いていたものの、審査請求人が報酬請求権を放棄し、これを懲戒請求者が受け入れたことから、法テラスを利用しなかったことにつき、懲戒請求者に金銭的な不利益は生じていないか、生じたとしもわずかなものにとどまっている。

(4)前記(1)(3)に関し、2通の援助申込書の作成経緯については、審査請求人の主張と懲戒請求者の主張のどちらが正当かを判断することは困難である。

しかし懲戒請求者が審査請求人に送信したメールの内容からすると、懲戒請求者自身が書類の書換えを行った事実を認識していたものと思われる、2017年2月6日の時点では審査請求人と懲戒請求者との間には信頼関係が存在していたはずであり書換えの時点で懲戒請求者がこれに異議を述べた形跡がないことからすると、懲戒請求者は書類の書換えについては承諾を与えていたとみるのが自然である。

(5)以上のとおり、前記(1)の3についっては懲戒事由が認められず、前記(1)の①及び②については酌むべき事情に鑑み、審査請求人を懲戒しないものとする。

3 裁決が効力を生じた日 2020年7月17日 

2020年9月1日 日本弁護士連合会

「書庫」審査請求と異議申立、処分取消と処分変更例 2023年12月更新