令和6年3月7日 愛知県弁護士会
令和4年(コ) 第144号
議 決 書
懲戒請求者 〇〇
愛知県名古屋市天白区平針2丁目808番地 ガーデンハイツ平針
弁護士法人名古屋南部法律事務所平針事務所
対象弁護士 岡村 晴美 (登録番号34964)
上記懲戒請求事件について、当委員会は調査のうえ、次のとおり議決する。
主 文
対象弁護士につき、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。
理 由
第1 懲戒を求めた事由の要旨
対象弁護士は、「小魚さかなこ」 という× (旧Twitter) 裏アカウントを開設し、
1 「支援措置はありもしないDVを主張して受けることができます。 それがどうし たというの?」 (以下、 「投稿1」という。)
2 「私って、 誰でもできる離婚ビジネ スを裁判所と結託してやってて」(以下、「投稿2」という。)と投稿した。
対象弁護士の上記投稿は、 弁護士としての倫理観、資質を疑う行為であり、 弁護士 法56条1項の弁護士としての品位を失うべき非行に該当する。
よって、 対象弁護士の懲戒処分を求める。
第2 対象弁護士の弁明の要旨
1 懲戒を求めた事由に対する認否
「小魚さかなこ」 が対象弁護士が開設したアカウントであること、「支援措置はあ りもしないDVを主張して受けることができます。 それがどうしたというの?」「私って、誰でもできる離婚ビジネスを裁判所と結託してやってて」と投稿した事実は 認め、その余は否認又は争う。
2 対象弁護士の主張の要旨
投稿1については、 当該投稿発信後連続する時間に後続のツイートを次々と行い、 支援措置の制度趣旨にたちかえり、加害者の言い分を聴取しなくてもいいという制度になっているのは、 DVやストーカー被害が生命身体の危険に直結しかねないからで あるということを論じるため、 左記趣旨を述べるため、 一連のツイートを行った。 よって、投稿1については、 嘘をついても構わないという、 という話ではなく、嘘で使われることを加味しても不利益が小さいから問題は少ない、という制度論の話である ことを理解できるはずである。
投稿2については、 自分に投げつけられたツイートが余りにひどいので、定期的に まとめて発信しているものの一つであり、 反語的表現である。 すなわち、 「私って、 誰でもできる離婚ビジネスを裁判所と結託してやってるんですか? (いや、やって いない)」という反語的表現をも含んだものである。
第3 証拠の標目
1 懲戒請求者提出分
甲第1号証
懲戒請求者編集のXプロフィール及び投稿記事抜粋
甲第2号証 懲戒請求者編集の小魚さかなこ投稿記事抜粋
2 対象弁護士提出分
小魚さかなこのツイートの抜粋 戸籍時報抜粋
乙第1号証 乙第2号証 乙第3号証 乙第4号証 乙第5号証 乙第6号証 乙第7号証
第4 当委員会の認定した事実及び判断
1 対象弁護士が 「小魚さかなこ」という名称の×アカウントを開設していること、 投稿 1 及び投稿 2をしたことは当事者間に争いはない。
2 投稿 1に続いて同じ投稿内で、「住所を秘匿する効果しかないんだから、 どうってことないです。双方が申請して、双方に支援措置が認められているケースもあるけど、 何の問題もありません。」 という記述が続き、 投稿 1 の翌日である1月18日付けで、 20件の連続した投稿がされ、 支援措置の説明、 要件、要件のうちの一つである 『危険 性要件』 についての解釈、 名古屋地裁及び名古屋高裁の判決内容の紹介、 「支援措置 は被害者の安全確保を優先する制度である」 「当事者間で住所を秘匿していたとして も、行政を通じて、 司法が当事者の住所をオフィシャルに把握することを可能として います」 「支援措置制度があるから、居場所を隠した相手方に面会交流調停を起こす ことができます。 支援措置を取られたから子供と会えなくなったということにはなりません。」(「」内はツイート原文のまま)、といった投稿がされている。
3 投稿2の全文は、 「私って、誰でもできる離婚ビジネスを裁判所と結託してやってて、立憲民主党と日本共産党のジェンダー政策のブレーンで、信者総動員して13000い いねを得る能力があるのに、 本業閑古鳥でツイ廃なんですか?」 であり、 同投稿の同日の返信に小魚さかなこアカウントで 「 「ツイ廃」 以外、 全部間違ってます (笑)」 という投稿がされている。
また、 投稿2とは別に、 「今日もいつも通り、 普通のことをいちいち発信したいと思いますが、 下記に引用したツイートは、 私が、 「離婚ビジ ネスを裁判所と結託してやってる」 ということを認めるツイートではありません。」 と投稿がされ、同投稿の下に、投稿2が引用されている。
4 当委員会が認定した事実は上記の通りであるところ、 投稿 1については、以降の連続のツイートから、虚偽DVの申請による支援措置を容認するものではなく、 支援措置がされていても面会交流調停申立てを妨げるものではないこと、 DV被害者の安全確保が優先事項であることから勘案すると、 現行支援措置制度は維持されるべき制度 である、という趣旨が汲める。 また、 投稿2については、同ツイート内でその内容を否定していることからすれば投稿 2の事実を容認するものではないことが認められる。
従って、 対象弁護士の行為は品位を失うべき非行に当たらない。
以上の次第であるから、 対象弁護士に、品位を失うべき非行があったものとは認められない。
よって、主文の通り議決する。
令和6年2月29日
愛知県弁護士会 綱紀委員会第2部会部会長
令和6年3月7日
愛知県弁護士会会長 小川 淳