弁護士の懲戒処分を公開しています
2011年2月号自由と正義に掲載された懲戒処分取り消しの採決の公告ですほんとうに最近は所属弁護士会で出された処分がこっそり日弁連で処分ナシになります
2010年7月に大阪弁護士会から「戒告」の処分を受けた苗村博子弁護士は日弁連に審査を求めてこの度、懲戒処分が取り消しとなりました。日弁連の15人の懲戒委員の中で8対7という採決でした。
養育費請求事件で 弁護士が日弁連照会制度を使い、相手の情報を取り相手の勤務先に行き転勤(海外留学)させないように(養育費のため)通告した。勤務先に個人情報を漏らしたということで戒告処分という内容でした
日弁連の照会制度(個人情報の収集)はこういう場合に使っても構わないという内容です。
弁護士の行為はプライバシー保護の観点から弁護士としてはふさわしいとはいえないが弁護士会には責任はないということ、微妙は判断でした みなさんはどういう判断をされますでしょか
採 決 の 公 告(処分取消)
大阪弁護士会が2010年7月6日に告知した同会所属弁護士苗村博子会員(登録番号20089)に対する懲戒処分について同人から行政不服審査の規定により審査請求があり本会は2010年12月15日弁護士法第59条の規定により懲戒委員会の議決に基づいて以下のとおり採決したので
懲戒処分の公告及び公表等に関する規程第3条第3号の規定により公告する
記
1 採決の内容
(1) 審査請求人に対する懲戒処分(戒告)を取り消す
(2) 審査請求人を懲戒しない
2 採決の理由の要旨
(1)審査請求人は依頼者から受任した養育費請求審判事件において事件の相手方である懲戒請求者(依頼者と内縁関係にあり後に内縁関係破棄依頼者の出産した子を認知)が将来研究者として海外留学する予定があり、その場合には養育費の減額を求める可能性があるとの主張をしてきたこと等から海外留学予定の有無の確認をするため大阪弁護士会に弁護士法第23条の2に基づく照会(以下弁護士照会という)申出をした。この申出を受けて懲戒請求者は所属先である大学院研究所属長(以下照会先という)宛てに大阪弁護士会長名で弁護士照会(以下本件照会請求という)がなされた
(2)本件照会請求の申出書中の「申出の理由」には審査請求人において、子の出生の経緯プライバシーにわたる記載をしていたことから大阪弁護士会は当該「申出」の理由の記載が真に照会を求める事項との関係では余事記載の域を越えて明らかに不必要でかつ、懲戒請求者をいたずらに貶めるおそれのあるものであり弁護士会照会の目的を逸脱した品位を欠くものとして審査請求人を戒告の処分に付したそして弁護士会照会はいわゆる副本方式によって申出人が作成したものがそのまま被紹介者に送付されるから記載内容が個人の名誉を毀損しあるいはプライバシーを侵害する場合等には弁護士会の信用を害しあるいは弁護士会としての品位を失うべき非行として懲戒事由に該当する場合があるなどと判断している
(3)しかし弁護士照会は弁護士法によって弁護士に認められた法的裏付けのある重要な証拠収集方法であるそしてこの照会の主体は審査請求人が主張するとおり弁護士会であるこの意味で大阪弁護士会の判断中に審査請求人が「大阪弁護士会をして本照会の申出の理由を照会先に宛てて送付せしめた行為」とあるのは不適切な表現であったといわざるをえないそうすると弁護士会照会に問題があったとしてもその責任はその行為を行った弁護士会にありその申出をした弁護士には故意に虚偽の事実を記載するなど弁護士会の判断を誤らせたというような事実が認められないかぎり、その照会申出行為は懲戒の対象とはならないと判断せざるを得ない
(4)大阪弁護士会においては次ぎの各行為が問題とされている① 照会事項と受任事件の関連性、本件照会の必要性の有無② 虚偽事実の記載の有無③ 申出の理由の記載内容の相当性④ 海外留学を阻止する目的の有無しかし上記①,③.④については大阪弁護士会が審査の上本件照会請求をしたのであるから審査請求人の責任は問題とならない
また④に関して審査請求人が懲戒請求者の海外留学を阻止するため本件照会申出をしたとまで認めるに足る証拠はないさらに②ぶついて「申出の理由」中には「養育費の支払いを拒んだため」との表現をして大阪弁護士会の判断を誤らせた行為とまで評価することはできない
(5) 以上のとおり弁護士照会が弁護士会の行為である以上審査請求人の本件照会申出行為とその申出の理由に記載した内容等に問題があったとしても審査請求人を懲戒の対象とすることはできないというべきである
(6) よって大阪弁護士会のなした懲戒処分(戒告)を取り消し審査請求人を懲戒しない
(7)以上は懲戒委員会15名中8名による意見であるが本件には次のとおり7名の反対意見がある審査請求人は上記申出の理由中に子の出生の経緯等プライバシーにわたる記載をしたことにより大阪弁護士会の本件照会請求という手続きを介して照会先に送付されることの原因行為をおこない懲戒請求者の名誉感情を害しプライバシーを侵害したのでありこれは弁護士としての品位を失うべき非行と評価すべきであって大阪弁護士会が審査請求人を戒告とした処分は相当である
3 採決が効力を生じた年月日 2010年12月22日 2011年 2月1日 日本弁護士連合会
取り消された大阪弁護士会の懲戒処分の要旨です。
懲 戒 処 分 の 公 告
大阪弁護士会がなした懲戒の処分について同会から以下の通り通知を受けたので懲戒処分の公告公表に関する規定第3条第1号の規定により公告する
1 懲戒を受けた弁護士
氏名 苗 村 博 子 登録番号 20089 大阪弁護士会 事務所 大阪市北区西天満2-6-8
苗村法律事務所
2 処分の内容 戒 告
3 処分の理由の要旨
被懲戒者はAから懲戒請求者に対する養育費請求調停事件を受任したが養育費の額に争いがあって不調となり審判手続きに移行したその後懲戒請求者からAの請求通りの額の養育費を支払うことに合意する旨の主張書面が提出されたが同書面の最後には、近い将来海外留学する予定があるので収入の激減が予想される事、その場合養育費の減額が当然認められるべきこと等記載されていた被懲戒者はAが不安を訴えたことや自らも海外留学の予定の有無によっては請求している養育費の額の増減を主張する等の対応をとる必要が生じると考えたことから懲戒請求者の在学する大学院研究室の所属長を被照会者として、懲戒請求者の海外留学希望の有無等を照会事項とする弁護士法第23条の2に基づく照会申出を行うこととし2006年12月7日所属弁護士会に対して照会の申出をしたが、照会の申出の理由に、子の出生の経緯等を詳細に記載した申出を受けた所属弁護士会は照会申出の理由ありとして同月11日申出の理由ありつとして同月11日申出の理由と照会事項をそのまま被照会者に送付したなお、その後、懲戒請求者からAに対して上記照会申出に関し不法行為に基づく損害賠償請求訴訟が提起されたがA及び被懲戒者の行為は懲戒請求者のプライバシーを暴露しょうとしたもではなく不法行為に該当しない旨の判決が出され確定しているしかしながら民法上の不法行為該当性と懲戒事由該当性は別個の問題であり被懲戒者の照会の申出の理由の記載は真に照会を求める事項との関係では余事時記載の域を超えて明らかに不必要でかつ、懲戒請求者をいたずらに貶めるおそれのあるものであるから被懲戒者が所属弁護士会をして上記照会の申出の理由を被照会者宛てに送付せしめた行為は全体として評価すれば弁護士法第23条2の目的を逸脱し所属弁護士会の信用を害するものであって弁護士法第56条第1項に定める弁護士としての品位を失うべき非行に該当する
4 処分の効力を生じた年月日 2010年7月6日 2010年11月1日 日本弁護士連合会