『棄却された懲戒の議決書』

懲戒請求申立で棄却となった議決書を公開しています。

薬害訴訟の控訴審で弁護団が印紙を貼り忘れ上告却下となった。弁護士として品位を失うべき非行に該当すると懲戒を申立てして棄却となった議決書

2014年(平成26年)6月16日

第二東京弁護士会 会 長 山 田 秀 雄 殿

第二東京弁護士会 綱紀委員会第1部 部会長 岩 下 圭 一

綱紀委員会の議決の報告について下記懲戒請求事件について,平成26年5月19日,綱紀委員会第1部会において別紙議決書のとおり議決しましたので,綱紀委員会及び綱紀手続に関する規則第56条に基づき報告致します。

                        記

議 決 書

主  文

対象弁護士につき、懲戒委員会に事案の審査を求めないことを相当とする。

理  由

第1 事案の概要

1 対象弁護士は、東京地方裁判所に訴訟提起された薬害イレ○○東日本訴訟弁護団の事務局長を務めていた。

2 上記訴訟について、東京地方裁判所は、平成23年3月23日、被告国と製薬メーカーの一部原告(4名中2名)に対する責任を認める判決を言い渡した

が、東京高等裁判所は、同年11月15日、一審原告4名全員の請求を棄却する判決を言い渡した。

3 上記弁護団は、一審原告4名全員について、同年11月17日に上告状及び上告受理申立書を提出するとともに、4名の上告費用について訴訟救助の申立

を行った。これに対し、東京高等裁判所は、同年12月1日付にて、一審原告のうち2名についての訴訟救助申立を却下する旨決定するとともに、印紙代を5日以内の同年12月7日までに納付することを命じる補正命令を行い、これらの決定・命令は、同年12月2日に、上告手続を担当していた対象弁護士に送達された。

対象弁護士は、同日、所属事務所の事務職員に対し、印紙代の納付を指示したが、同事務職員がこれを失念し、期限内にこれを納付しなかった。対象弁護士もまた、同事務職員に対し、印紙代を納付したか否かの確認を怠った。その結果、上記2名の一審原告について、同年12月8日付で上告及び上告受理申立を却下する決定がなされ、同決定に対する許可抗告も平成24年1月7日に却下された。

4 薬害イレッサ東日本訴訟弁護団は、以上の事実経過について、平成24年1月7日、同弁護団のホームページにおいて報告のうえ、謝罪した。

5 なお、懲戒請求者が上記訴訟について何らかの利害関係を有する者であるか否かについては、これを示す証拠がない。懲戒請求者も、自身の利害関係に関する主張を一切行っていない。

第2 懲戒請求事由の要旨

上告が却下された一審原告は、対象弁護士の過失により、正当な権利行使を阻害されることとなった。

よって、対象弁護士を懲戒することを求める。

第3 対象弁護士の弁明の要旨

対象弁護士の事務職員に対する監督不十分により、上記「事案の概要」記載の事態が生じたことは認める。

しかしながら、本件については、当該―審原告らからの宥恕を得ていること、対象弁護士が長期間にわたって直接任務を解怠し時効期間を徒過したなどの事案と異なり、弁護士は指示したものの短期間で到来した期限内での事務職員の行動の確認が不十分であった監督責任が問われるにすぎないものであること、対象弁護士は責任を痛感し三度とこのような事態が生じないよう努めるとしていること、訴訟は当該原告らの理解を得て最高裁まで闘い続けたこと等から、弁護士の品位を害する非行とまではいえない。

第4 証拠方法

別紙証拠目録記載のとおり。

第5 当委員会の判断

当委員会は、本件について_対象弁護士には、その品位を失うべき非行があったとは認められないと判断する。

すなわち、本件において、対象弁護士には、自ら行った訴訟救助の申立てが却下された以上、委任契約に基づく善管注意義務の一環として、上告が不適法

却下されることを回避すべく、納付期限を徒過することなく自ら印紙代の納付手続をし、あるいは事務職員をして確実に納付手続を行わせるべき職務上の義

務があると認められる。そして、本件において、対象弁護士が上記義務に違反して印紙代の納付を怠ったことは、これを否定することができない。

しかしながら、対象弁護士は、本件について上告却下決定が確定した後、速やかに、当該―審原告らに直接面談のうえ謝罪し、同人らから宥恕を得ている。

当該―審原告らのうち1名については、当委員会に対し、対象弁護士の懲戒処分を求めない旨の上申書を提出している。

以上の事情を考慮すれば、対象弁護士には、その品位を失うべき非行があったとまでは認められない。

よって、主文のとおり議決する。

平成26年5月19日    第二東京弁護士会 綱紀委員会第1部 部会長 岩 下 圭 一

以 上

懲戒請求者が上記訴訟について何らかの利害関係を有する者であるか否かについては、これを示す証拠がない。懲戒請求者も、自身の利害関係に関

する主張を一切行っていない。

 弁護士に対する懲戒請求は弁護士法第58条規定によれば「何人も」であり、当事者、被害者である必要はありません。あくまでも通報制度です。利害関係など関係ありません。普段、弁護士会は「懲戒制度とは被害を救済するものではない」と述べているのに、懲戒請求者が被害者でないからというのは、懲戒請求者になる資格もないから棄却せよと述べたいのでしょう。

対象弁護士は懲戒制度を知らなすぎる。

謝ったから処分しない。謝ったかどうかの問題ではありません。謝罪があった、と処分しないのは別です。当事者が処分を求めなくても法に照らし品位を失うべき行為は処分すべきです。例えば過失であっても交通事故を起こしたが、謝ったから警察は処分しないということがあるでしょうか。謝罪は謝罪、処分は処分です。事務員に責任転嫁して処分を逃れた。事務員のやったことであっても私が責任とり処分を受けるとは言わない弁護士、

ちなみに対象弁護士は第二東京弁護士会の懲戒委員です。

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